無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A.ゴテゴテ過ぎて普通の神機使いじゃ無理。
ルーキーちゃんは普通じゃないので着ても問題無し。
キグルミは元々悔しいほど強いとエリナが言うくらい。
無口さんはご覧の通り。
極東のウサギはヴァジュラも喰らう猛者ばかり。
未来で一緒に戦う人は楽できそうですね、副隊長。
足跡辿ってトコトコと。
歩いた先には大きな瓦礫。
「…先輩?この瓦礫がどうかしたんですか?」
ん?どうかも何も…あぁそうか悪い悪い。
裸眼じゃこの足跡は見えないんだったな。
人の背丈以上は優にあるコンクリートの塊。
足跡は真っすぐとその中に溶け込むように伸びている。
というか今見えている最後の足跡が丁度瓦礫の下敷きになっている。
二人を追ってきたアラガミがやったのかまでは知らないが。
どうやら瓦礫は二人がここを通った後に崩れ落ちてきたようだ。
幸いスプラッターの痕跡は無いのでぺちゃんこになったという線は捨てている。
流石にそんな痕跡あったら即アネットを帰還させる必要があるからな。
俺は親で見慣れてるから平気。
現実には一度っきりだが結構フラッシュバックするのよアレ。
まぁその話はおいとこう。
ウサミミアンテナの感度を上げて瓦礫の表面を叩いてみると。
予想通り瓦礫の向こうには通路のような空間が続いている。
探索を続けるにはこの瓦礫をどかさないといけないのだが。
流石に人の手で持ち運ぶのは無理があるサイズというのは見てわかる。
となればここはいつも通り。
我が愛刀の出番だな。
この世において斬れぬ物無し。
一文字流、斬岩剣--
…しまった。
今日はショートブレードに換装してたんだった。
仕方ない、アネットそのハンマーで一発派手にかましてくれない?
アナグラの自販機と違って遠慮なく壊してくれていいからさ。
「…あ、もしかしてこの瓦礫を砕けばいいんですか?わかりました、神機が壊れるくらいの全力で行きます!」
待った待った待った。
そこまでしろとは言ってない。
ちょいちょいと瓦礫を指差しつつ視線を向けたところ。
気合と共にチャージクラッシュの構えを取り始めたので緊急制止。
確かに派手にとは言ったが限度があるだろ。
何しろ瓦礫が崩れてきてるくらいなんだし。
そんな強烈な一撃かましたら通路も一緒に崩れてしまうよ。
と言うか神機の方も多分歪む。
この前それで怒られたばっかりなんだよ。
この上アネットの神機まで歪ませたなんて言った日には。
間違いなくリッカに「何吹き込んだんだ!」ってしばき倒される。
うーん、となるとショットガンで吹き飛ばすしかないか。
しかし如何せん、弾が足りるか少々不安…
お、疑似ユーバセンスレーダーに反応有り。
小型種が二、三匹。オウガテイルのはぐれ集団といったところか。
ついてる、まさにカモネギ。
狼っぽい見た目だけど。
という訳で。
………
どうしてだろう。
アネットから向けられる視線がなんか重い。
まぁ何となくだが理由はわかる。
やっぱり思ったより瓦礫の撤去に手こずったのが印象悪かったか。
だってしょうがないじゃん。
撃ってから気付いたけど、オウガテイルのアラガミバレットって貫通属性なんだもの。
しかも威力不足で杭打ち代わりにすらならなかったし。
ショットガンだって本来はソフトターゲットにぶち当てるもの。
表面は砕けてもブラストのように一撃で木っ端微塵という訳にはいかないんだ。
むしろ最後まで破壊しきった技量と根性を褒めてもらいたい。
弾切れと同時に繰り出される神速のリロード。
補給が終わればすぐさま変形切り上げからの散弾斉射。
そして近くに転がしてるオラクルリザーブが空になったら蹴っ飛ばしてマグチェンジ。
仕留めてしまうとすぐに霧散して消えてしまうアラガミだが、こうして手足を詰めて転がしとけば襲われる心配も無く長持ちする。
ベテランの経験から来る知恵というやつだ。
余談だがアラガミってオラクル細胞奪いまくるとスカスカな感触になるんだな。
蹴った時なんか丸めた紙屑みたいに軽かったし。
まぁそれはさておき。
無事瓦礫撤去も完了し、足跡の追跡を再開出来たのは良いんだが。
砕いた方が早かったじゃないかとか思われてたらどうしよう。
やっぱりリッカに怒られるの覚悟でチャージクラッシュしてもらった方が良かっただろうか。
アネットからすれば自分のせいで先輩二人が危険に晒され。
今か今かと助けを待っているかもしれないこの状況。
にも関わらずどこぞのベテラン様は気にするなと他人事。
おまけにドヤ顔で発破作業をやり始めたくせに、やってる事は花火遊びと来たものだ。
うん、冗談抜きで殴られそう。
次にアネットがアナグラで壊すのが俺の身体ではない事を祈ろうか。
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トコトコ捜索を進める事数時間。
そろそろ作戦時間も良い頃合なので帰投準備のため調査状況を整理する。
「け、結構歩きましたね。煉獄の地下街からこんな所まで道が続いているなんて…」
持っていたハンマー神機を床に降ろし、ぺたりと地べたに座り込むアネット。
顔には出さないようにしていたようだが案の定かなり疲労が溜まっていたようだ。
まぁポイントが絞られているというならまだしも。
バスターブレード持って広域捜索とか正直苦行でしかないからな。
「でもこうしている間にも先輩達が…こんなところでへこたれてる訳には…ってせ、先輩?何でそんなに顔が近…あうっ。」
こらこら、疲れてるくせに空元気で立とうとするんじゃない。
気合で立ち上がろうとするアネットの正面に素早く移動し。
眼前に顔を近づけた状態で肩を押さえて座らせる。
セクハラ?
着ぐるみ越しだからセーフだろ。
真面目な話、疲れているのに無理して動き回った所で効率なんぞ上がる訳がなく。
そんな状態でアラガミに襲われでもすれば、下手すれば雑魚相手に不覚を取るなんて事態にもなりかねない。
捜索任務はお兄さんがいっぱい確保してきてるから。
焦らず休める時にはちゃんと休みなさいな。
やや強引にアネットを座り込ませた所で俺の方も状況確認。
とりあえずマップを確認しつつ、地表の現在位置と合わせてみる。
ここまでの道筋は煉獄の地下街付近と違ってマグマの吹き出しがあまり無く。
そのせいか出会ったアラガミもオラクルリザーブ…じゃなかった、オウガテイルのような小型種が殆ど。
待ち伏せされると厄介なコクーンメイデンも特に見かけなかったので。
辿ってきた足跡はまず二人の物と見て間違いなさそうだ。
そしてずっと薄暗い地下を通ってきたから方向感覚がわからなかったが。
地図的にはもうすぐ行くと愚者の空母付近への出入り口があるそうな。
となればアラガミの追撃を振り切った二人は地表へ出た可能性が高いという事か。
確かに大して安全とも言えない地下にずっと潜伏している訳にもいかないからな。
それじゃあ二人が辿った道すがら。
俺とアネットも同じ出口から出て帰るとするか。
………
休憩もそこそこに切り上げ、進む事しばらく。
地下には似つかわない夕焼けと思しき光が差し込む隙間が視界に映る。
…うん。
本当、この着ぐるみって便利だな。
出口を出てすぐ左手。
愚者の空母の地名にふさわしくない艦載機の反応がある。
戦車だけど。
空飛べないくせに対地ミサイルの方はご丁寧に装備してやがる。
誰だよ空母とか名付けた奴。
揚陸艦の間違いだろ。
「どうしました先輩?急に立ち止まって…」
アネットが声をかけてきたので心の中の愚痴りを中断し。
改めて戦力的に勝てるかどうかを思案する。
俺の武器はショートブレードとショットガン。
ショートブレードは使い慣れてない武器な上、クアドリガタイプのアラガミとは相性が良くない。
ショットガンは有効だが既に弾切れ。
ベテランの癖に肝心な時に置物になってるとか、アネットにバレたらいよいよ本気で殴られるかもしれないな。
そんなアネットの武器はハンマー型バスターブレード。
相性こそ合っているものの、疲弊した状態の新人に任せられるほど現実と言うのは優しくない。
よし、来た道戻って帰るか。
あのデカブツなら後ろから地下に侵入してくることもなさそうだし。
そう結論付けて踵を返した次の瞬間。
地上から挑発するようなアラガミの咆哮が地下空間に染み込み、木霊する。
ふん、一丁前に煽ってるつもりか?
生憎俺はインテリでな、日本語でしか会話しないと決めているんだ。
もしうちの可愛い後輩を口説きたいならまずは上司の俺に話を通せ。
懐の万国共通言語でわからせてやるから。
アネットはお前の部隊所属じゃないだろって?
この話はもう止めようか。
ウサギのハートは繊細なんだぞ。
ウサギ部隊撤収開始。
アネットはウサギじゃないって?
そんなあなたにウサミミのヘアアクセサリ。
無口さんに言えばきちんと外堀埋めてから差し出してくれます。
元上官殿の教えの賜物ですね。