無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.いつものアレ。
Q2.日本語でしか会話しない?
A2.マルチリンガル。特に物理言語が得意です。
ちなみにこの人、自身の無口扱いによく"喋れるに決まってるだろ"と思ってますが。
正確に言うと"話した"という過去形になる事の方が多い人。
話したんだから喋れると考えるのは当然。
たとえそれが口から言葉を発していなくても。
行方不明中の神機使い「ブレンダン・バーデル強襲兵」、「台場カノン衛生兵」の捜索について
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1.戦闘現場における痕跡、並びに生存ビーコンの反応より両名は未だ生存している可能性が濃厚である。
2.現場からの脱出路出口に接触禁忌種【テスカトリポカ】の存在を確認。当時の両名の状況を鑑みるに強行突破を行うのは現実的ではないため、地上からの帰投を諦めて再度地下へ戻った可能性が高い。
3.地下ルートを選択した場合における最寄りのセーフティエリアとして「エイジス島」が候補に挙げられる。このエリアは元々移動のための地下通路が存在しており、前支部長が提起した「アーク計画」賛同者のブレンダン強襲兵は事前にこのルートの存在を認識していた可能性がある。
4.現在上記ルートは「アーク計画」失敗の影響により、アナグラ方面への道が崩落により封鎖されている。両名が帰投を目的に本通路を発見、利用したと仮定した場合、誤ってエイジス島へ到達している可能性があると推測される。
以上の理由より、現時点で最も両名が潜伏している可能性が高いのは「エイジス島」と断定、速やかな捜索隊の派遣を要請する。
ただし万が一当該地域にアラガミが侵入していた場合、遮蔽物の無い直接戦闘が発生すると想定されるため、派遣に当たっては戦闘力に優れた神機使いを推奨する旨を提起する。
--報告者:ユウマ・マカヅチ特務少尉
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ここは極東支部のエントランスホール。
報告書を提出したその翌日、にわかに騒がしい周りを他所に一人静かにコーヒーを傾ける。
新発売のブラック缶コーヒーだ。
出来れば酒の方が嬉しいが、流石にこれから任務というタイミングで呑むようなアル中ではない。
命懸けで救った息子が依存症になってるとか、それこそ両親が報われない。
お酒はお墓に添えるだけ。墓どころか遺骨すら残って無いけどな。
ハッハッハ、イッツ・ア・部隊長ジョーク
そんな事より生きてる人間の話をしよう。
何でも昨日俺が提出したレポートを元に生存ビーコンの発信位置を再計算した所。
俺の予想ズバリ、エイジス島からカノンの反応が検知されたとの事らしい。
残念ながらブレンダンの反応は出なかったらしいが。
ビーコン反応が消えてない辺り、はぐれてこそいるが恐らくまだ生きてはいるだろう。
-生存確認用ビーコンの精度は最悪だな!本部の連中は現場を見ずにガラクタばかり作る…!-
ツバキさんは珍しく立場半分、私情半分と言った感じであんな事を言ってるが。
俺的には生きていると分かるだけでも大分ありがたいと思うんだがなぁ。
我らがフェンリルはこのご時世屈指のホワイト企業。
そう簡単にヴァルハラなどという田舎企業への引き抜きを許したりはしないのだ。
そんなこんなでコーヒーを啜っている内。
次々とカノン捜索隊のメンバーがエレベーター前に招集されていく。
聞くところによるとこちらも俺が懸念していた通り。
アネットが新種と呼んでいた"ツクヨミ"とかいうアラガミが作戦エリアのど真ん中に侵入しているとの事。
悠長に立ち去るのを待っている余裕が無い以上戦闘はまず避けられない。
が、相手は新人がいたとはいえそれなりに経験を持った神機使い二人を退ける程の相手。
こちらも相応の手練れを差し向けなければミイラ取りがミイラになりかねない。
故に最初に突入するのは極東が誇る最精鋭部隊。
ルーキーを筆頭とした対アラガミ討伐を専門とする第一部隊の面々である。
しかもこの部隊、以前似たアラガミと戦り合った事があるらしい。
俺は新種はおろか、その似てるアラガミとやらも見た事すら無いけれど。
まぁ俺は古参兵とはいえ討伐専門の部隊じゃない。
知らないアラガミの一つや二つあるものさ。
そして先発隊がアラガミの無力化に成功した後。
第二陣が作戦エリア内のどこかにいると思われるカノンの捜索を行う。
こちらを率いるのは同じく第一部隊所属のサクヤ衛生兵。
索敵強襲の戦力であると同時に元オペレーターの経験を生かして前線で直接捜索の指揮を行うという流れだ。
ちなみに今回俺が参加するのはこちら側。
まぁ妥当な線ではないだろうか。
いくら俺がそれなりの古参兵とはいえ。
実力的にはどんなに甘く見ても上の下。
正攻法での戦闘力で言えば、どう贔屓目に見たところで第一部隊の面々の方が優れている。
そうそう、戦闘力と言えば。
よくコウタが第一部隊の中では一段劣るのではと話題に上がるんだが。
俺から言わせればそんな事は全くない。
寧ろここ一番の"生き汚さ"と言う点では第一部隊の誰よりも優れていて好ましい。
一度戦闘訓練の機会があったので本気でしごいた事があるんだが。
二言目には死ぬ死ぬと喚きながらも、最後まで戦闘不能にならなかったのはコウタただ一人である。
アリサとルーキー?しごいた事がないんでわからんな。
サクヤ?レディは手を取ってエスコートするものだろうが。
あ、ソーマ君は次から年上をいたわるように。
俺はごく一般的な神機使いなんだぞ。
ルーキーみたいな人外と一緒にするんじゃない。
お前らの全力に付き合ってたら並みの人間はスタミナが持たないんだよ。
若いんだから平気だろって?
それはまぁその通りだg…いやいや流されんぞ。
そもそも十代との体力と比べるな。
俺は今でも十分若いけど。
それに思考はアレだったが俺にだって初々しい少年時代と言うものが…
閑話休題、話を戻そう。
とりあえず今回の作戦を端的に言うと。
第一部隊が邪魔なアラガミを殲滅し、後詰部隊がどこかに隠れているであろうカノンを見つけ出すと言うのが大まかな流れ。
俺の所属する第二陣は捜索部隊。
そしてエイジス島は元々アーク計画のために最近作られたばかりの施設であり。
実態としてはアナグラのような居住施設に近い。
一つ一つの区画が狭く、即ち作戦エリア
もうわかったな?
つまりまたまた登場、御存知ウサギスーツの出番だという訳だ。
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「…貴方も物好きですね。またそれ着込むんですか?」
倉庫でひっそり着替えている途中。
何時の間にか室内にいるレンに呆れた様子で問いかけられた。
何見てるんだ。
見世物じゃないぞ散れっ散れっ。
シッシッと答える事無く手で追い払おうとしたものの。
ウサギヘッドのままでは威厳が無いのか、相変わらず苦笑いを浮かべたまま着ぐるみを着込む様子を観察するレン。
「確かにその着ぐるみが普通の着ぐるみじゃないのは知ってますけど…貴方どういう心境でそれを着込んでるんですか?」
言うな。言うんじゃない。
自覚すると余計に悲しくなるだろうが。
確かに大事なのは仲間の命で。
この着ぐるみにはそれを救える可能性を秘めた機能が多数備えられている。
それを考えれば俺の羞恥心など安い物。
例え見た目がちょっと微妙…もとい可愛らしいウサギの容貌で。
それを着ているのがいい年こいた成人男性だったとしても。
おまけにカノンは俺より年下。
男の尊厳と少女の未来、天秤にかけたらどうなるかなんて聞くまでもなく--
(人間って本当不思議だなぁ。確かに便利なのはわかるけどあんな思考をしてる人がどうしてこんな…)
(あぁいや。寧ろあんな思考回路だからこそこんな恰好する事に抵抗が無いのか。流石の僕もまだこの域には到れそうにないかな…)
聞こえてるんだよこんちくしょう。
何だよ、最近の隊員は部隊長のメンタルを抉っていくのが流行りなのか?
これから仲間を助けに行くのに救助側のメンタルを先に削るってどういう事だよ。
よしわかった。
そっちがそうくるなら俺にだって考えがある。
この着ぐるみの本質はパワードスーツ。
着用すればカッコよさ以外の全てのパラメータにプラス補正が掛かるという特級珠物。
そしてそれを纏う俺は極東有数の古参兵。
素質もさることながら経験に裏打ちされた実力はこのアナグラでも随一との自負がある。
ルーキーとソーマは除く。
あくまで比較対象は人間の範疇だ。
リンドウ?…現在のアナグラでは随一だ。多分。
そんな事はどうでもいい。
重要なのはこれを纏った
本当ならカノンの救助に成功した時点で撤収するつもりだったが気が変わった。
ここまで白い目で見られたとあっては実力を示さぬ方が無作法と言うもの。
ツクヨミだったか?
聞いた事も無いアラガミだが対戦相手があの第一部隊とは気の毒に。
相手は極東屈指の精鋭部隊。
文字通り一瞬の隙も命取りになる強敵揃い。
どうあがいたところで討伐されるのは必定。
何なら一万fc賭けてもいい。
もっとも。
アイツらがケリをつける前に俺が
待望の新入りが見ているんだ。
このまま好き好んでウサギの着ぐるみを着込む変人と思われる訳にはいかない。
少しは隊長らしいとこを見せとかないとな。
という訳で。
新種のアラガミの一匹二匹、文字通り瞬殺してみせようか。
煽るレン君ちゃんと煽り耐性皆無の無口さん。
無論レン君ちゃんにそんな意図はありませんが。
残念ながら無口さんはちょっと思い込みの強いお人。
加えて"百聞は一見に如かず"と考える節がある。
結果"何も言わずに行動で示す"というアウトプットが出てくる訳です。
一回土佐の人斬りに怒られるといいですね。