無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.本編開始?
A.新型さんもまぁ無口。

追記)タイトル間違えてたので修正。


無口と無口な新型さん1

ついに期待の新型使いがやってきた。

当分はリンドウ率いる第一部隊で経験を積んでいくそうだ。

 

ちなみにもう一人一緒に入ってきた新人がいる。

こちらは新型ではなく従来通りの銃型神機使いだ。

 

たまたまホールに居合わせた時にリンドウが紹介してくれたが、中々好感の持てる好青年だった。

言っちゃあ何だが神機使いって結構性格がアレな人が多いからな。

 

何より家族のためにっていう意気込みが気に入った。

自分以外の誰かのために戦う奴っていうのは、土壇場でも最後まで生きる事を諦めないからな。

 

俺はもう家族がいないからな。これがお話の中でなら生まれ育った孤児院の皆とでもなるんだろうが。

フェンリル直営といえばまぁ言わずもがなわかるだろう。

 

「あぁ、返事が無いけど気にするな。コイツは色々あって喋れないんだ。俺もまだ声聞いたことが無いんだわ。」

 

おい待て、何を勝手に変な属性足してきている。

その色々とやらを俺はご存じないぞ。

 

視線を向けると"ごまかしといたぜ"とばかりに目配せされる。

誰もそんな事頼んでないだろ馬鹿野郎。

 

ほら見ろ、「あっ…」って言われちゃったじゃないか。

今更訂正なんてしたらそれこそ変な空気になるだろうが。

 

余計な事しやがって。

今度お前が飲んでるビール奪い取ってやるからな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは通称"贖罪の街"。

朽ちかけた建物が並び立つ前時代の遺物。

かつては繁栄を象徴していたであろう街並みも、アラガミの襲撃に曝された今は廃墟と表現するより他は無い。

 

人っ子一人いない寂れた街。

俺の他にはもう一人。"新型"の期待を一身に浴びる噂の少女がそこにいる。

 

装備はロングブレードにアサルトとシールドの新型可変神機。

元々の装備はショートブレードだったらしいが、訓練を通じてこれに落ち着いたらしい。

 

うん、中々活発そうな見た目なんだか。

顔を見た瞬間、そんな第一印象は吹き飛んでしまった。

 

あぁ、可哀そうに。この子もこちら側の人間か。

 

道理でリンドウが俺に頼むと言ってきたわけだ。

何しろあのビール好きが、礼代わりと今度の配給をこちらに回すと言ってきたくらいだからな。

 

改めて噂の新人の表情を伺う。

どうしたんだお嬢さん、そんな暗い顔じゃせっかくの美人が台無しじゃないか。

 

もっとも、ここでそんな軽口を叩くほど空気の読めない人間ではない。

ミッションを開始する前に改めて、事前に渡された新人の経歴について目を通していく。

 

…うん、悲惨。

いや、お前もだろと言われると何も言えなくなるんだが。

この子の表情を見る限り、明らかに時期尚早と思えてならない。

 

この子の傷はまだ癒えていない。

恨み、怒りという痛み止めが効き過ぎてて、心身の上げる悲鳴が聞こえていない。

 

とはいえ、ゴッドイーターになってしまったからにはのんびり癒していく時間など無い。

である以上、取れる手段は荒療治しかないんだよなぁ。

 

ちなみに神機使いになってから知ったやり方で、別に俺がそうやってトラウマを克服したわけではない。

 

…うむ。この子にそこまで肩入れする義理は全くないが。

知ってしまった以上素知らぬ振りも目覚めが悪い。

 

手荒なやり方で申し訳ないが、まずは()()()()()()()()()()

 

感性が人並みになったところで今一度、自分の声に耳を傾けてもらおうか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

今回のミッションは小型アラガミの掃討だ。

群発的に小型アラガミが大量発生する事象を利用して、主に新人訓練も兼ねたミッションとして利用されている。

 

「………………………」

 

コクーンメイデンが湧いて出る。

少女は突っ込んで足元付近から刈り飛ばし、宙に浮いてるそれを捕食してそのまま大地に叩きつける。

 

オウガテイルが湧いて出る。

少女は跳び掛かってくるそれを意に介せず、正面から力押しに顎から上を跳ね飛ばす。

 

ザイゴードが湧いて出る。

少女は先程のオウガテイルを真似るように跳び掛かり、地面に叩きつけながら首筋に神機を突き付ける。

 

-うん、まだまだ余裕がありそうだ。-

 

「………………………」

 

コクーンメイデンが湧いて出る。

足元付近を斬りつけるが刈り飛ばすには至らず、射出される針に手こずりながらも唐竹割に仕留めて見せる。

 

オウガテイルが湧いて出る。

跳び掛かってくるそれに力負けしてしまい、地面に押し倒されるが零距離からのインパルスエッジでアラガミを吹き飛ばす。

 

ザイゴードが湧いて出る。

銃形態に切り替えて撃ち落とそうとするが攻めきれず、逆に突っ込んできたアラガミに苦戦しながらも剣形態に切り替えて切り伏せる。

 

-うん、まだまだいける。問題無い。-

 

「………………………」

 

コクーンメイデンが湧いて出る。

勢いよく切りつけるも致命傷には至らず、針と射撃に翻弄され始めてしまう。

 

…ここまでだな。

針が射出される直前、後ろから真っ二つにして終わらせた。

 

オウガテイルが湧いて出る。

跳び掛かってくるそれを迎撃するほどの余力もなく、喰いつかれないよう防戦一方の様相を呈していく。

 

…ここまでだな。

跳んだ瞬間、喰われる前に横一文字に引き裂いて終わらせた。

 

ザイゴードが湧いて出る。

流石に飛び掛かる気力も残っていないか。

 

…ここまでだな。

問答無用のチャージクラッシュで地面に叩き落として終わらせた。

 

-うん、まぁそろそろ頃合か。-

 

「………………………」

 

前に進み出ようとすると少女がこちらを睨んでいる。

まだやれる、とでも言いたげな視線だが肩で息しているその様に説得力などありはしない。

 

精神は肉体を凌駕する、なんて謳い文句はよく聞くが。

肉体も精神を凌駕するものなのだ。しかもこっちは生きてる限りほぼ永続。

 

所詮負の感情なんてドーピングみたいなものだしな。

長続きなぞするはずも無し、ちょっと数で押されてしまえば語るまでもなくご覧のありさまだ。

 

疲労が満ちて少しは頭が冷えただろう?

 

さて、次は客観的にさっきの君を見てもらおうか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

コクーンメイデンが湧いて出る。

足元付近から刈り飛ばし、宙に浮いてる神機の表で殴り飛ばす。

飛んでった、これは大きい、ホームラン。(一句)

 

オウガテイルが湧いて出る。

跳び上がる前に縦切りし、僅かに繋がり残った細胞を鋸引きのように引き切ってちぎり飛ばす。

跳ばせるか、甘いわ犬ころ、遅すぎる。(二句)

 

ザイゴードが湧いて出る。

出現と同時にチャージクラッシュを叩き込み、体が二つになるまで地面を引きずり駆け回る。

しゃらくさい、これでも古参だ、なめるなよ。(三句)

 

適当な俳句を詠みながら流れ作業のようにアラガミを討伐していく。

傍目には真面目に仕事していないように見えるが、これでも至って大真面目だ。

 

無駄に、不要に、かつ大げさに追撃を加える。

周りの人間からしてみれば感情的になっている以外の何物でもない無駄な動き。

 

そう見えるように倒していくのが目的だからな。

 

二周目、三周目、四周目。

繰り返し、繰り返し、繰り返す。

 

斬って、千切って、刈り飛ばして。

潰し、引き裂き、抉り出す。

 

気付けば神機がアラガミの破片で変な色に染まっている。

 

わかるかルーキー?

さっきまでのお前はまさしくこれだ。

 

死に体の相手に無駄な追い打ちをかける。

体力の消耗を気にせず無駄に力任せにごり押しする。

待てばいいのに自分から無駄に仕掛けていく。

 

まさにそういう感情に侵された人間の典型例。

効率よりも自身の気持ちを納得させる事を優先する。

 

否定はしないさ。()()()()するだろう?

俺も覚えがあるからな。

 

だが感情任せのそれがいつまでもまかり通るほど、この仕事は甘くない。

何より周りが見てて良い気分しないしな。

 

俺?俺はまだまだ体力持つよ。

これでも一応古参だからな。鍛え方が違うのだよ。

 

気付けば睨んでいた少女の視線が変わっている。

どうやら言いたかった事は伝わったようだ。

 

疲労の色はまだ残っているものの、その瞳に初めの頃に感じたよろしくない感情は見受けられない。

 

うん、いい表情だ。憑き物が落ちたかな?

やはり女の子にはそういう顔がよく似合う。

 

まぁここでこんな臭い台詞を言おうものなら査問会待ったなしだから言わないが。

とりあえずリンドウが期待していた成果は出せただろう。

 

あと適当に二、三体倒したらミッションは上がろうか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

ここは極東支部のエントランスホール。

周りの任務上がりの喧騒の傍らに、苦笑するオペレーターの前で報告書とにらめっこしている。

 

うん、やり過ぎた。

いや、討伐数が多いのは別に問題ではないんだが。

 

神機使いはアラガミの討伐だけが目的ではないのだ。

小型であろうと、退治したアラガミのコアは数少ない貴重な資源となる。

 

「討伐数と回収したコアの数が合っていなくないですか?」

 

言われて気付いた。コア回収していない。

ていうかすっかり忘れてた。

 

仕方ないじゃないか、討伐よりも新人訓練の方が目的としてはメインだったんだから。

噂の新人が思ったより地雷案件だったのと、更生が上手くいったようでちょっとだけテンションが上がってしまったんだから。

 

アラガミ?みんな挽肉になりました。

…うん、真実なんだがこんな事口走った日にはサイコパス認定待ったなしである。

 

マズい、このままだと怒られる。

助けを求めてホールを見渡そうとすると、不意に横から申し訳なさそうな声が紡がれた。

 

「ごめんなさい。私が足を引っ張ってしまって、先輩がコア回収をする余力を奪ってしまいました。」

 

大きくはないがはっきりと、よく通る声でそう言われた。

 

あ、君普通に喋れるのね。




-その後の神機保管室-

「あの子の事はちょっと気にしてたんだ。迷いが晴れたようでよかったよ。」

「………………………」←冷やしカレードリンク飲んでる。

「…で、君の神機なんだけど。この凄まじい使いっぷりについて何か言い訳はある?」

「………………………」←言い訳が思いつかなくて黙ってる。

「それに新型君の神機も傷だらけだよね。君は他人の神機も大事に扱えない人なのかな?」

「………………………」←言い訳すると怒られそうなので黙っている。

「…黙ってやり過ごそうとか思ってない?」


結局やり過ごせずにめちゃくちゃ怒られた。
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