無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.地雷踏んだ?
A1.ビックリ箱開けちゃった。

Q2.一触即発?
A2.ルーキーちゃんの時と同じ。

一周回って冷静になるタイプの無口さん。
やらかしたと思って黙り込むまでがワンセット。


無口な無口な再決意3

無音で満たされる部屋の中。

青い瞳と燈の瞳が、一歩も譲る事無く互いの眼を真っすぐに見つめている。

 

「…貴方でもそんな風に怒る事があるんですね。ああいや、言葉を話せない以外は普通に感情を持ってる人でしたね貴方。」

「………………………………………………」

 

 

 

 

 

やっちゃった。

 

いくらレンの言葉に反論出来ず。

堪りかねたとはいえこの暴挙。

 

確かに会話は打ち切れたけど。

ここから良い感じに言い含めるとか中々に高難易度なミッションである。

 

加えてここは俺の自室。

都合よく第三者が宥めてくれるなんて事も期待できない。

 

ついでに言うとテーブルに思いっきり靴のへこみが刻まれた。

 

誰がどう見たって蹴りかストンピングを叩き込んだ証にしか見えない。

修理申請でも出そうものなら備品破壊で始末書待った無しである。

 

ていうかこの手の修理って最終的に整備班、つまりリッカの部署にも話が回って--

 

 

-キミさぁ、いよいよもって神機以外も雑に扱い始めたのかなぁ?-

 

 

女神の笑顔でレンチをペシペシするリッカの姿が見える見える。

紳士として常に優雅たれと心掛けてきた俺なのに、何がどうしてこうなった。

 

まぁいい、やってしまった事を後悔しても始まらない。

大事なのは今だ今。

 

一応、俺とて考え無しに黙っている訳ではない。

目的変更については俺の一方的な解釈に基づくものである以上、何とか波風が立たないよう言葉を選んでいる最中である。

 

"目的変わりました、はいさようなら。"ではあまりに筋が通らなさすぎるからな。

確かに多少煽られた感は否めないが、その程度でそんな答え方をする程俺はお子様ではない。

 

とはいえ、だ。

現状は文字通り強引に場を停滞させただけ。

 

こんなものは時間稼ぎにすらなりはしない。

一分と経たずに続きが再開されるのが関の山。

 

さて、どう答えを返したもの…

 

 

-ピリピリピリッ!-

 

 

不意に響き渡るのはメール受信を告げる端末の音。

 

思わずこれ幸いと飛びつきそうになるものの。

寸での所で思い留まり、目の前のレンに視線を向け続ける。

 

-ピリピリピリッ!ピリピリピリッ!-

「………………………」

「…出ないんですか?」

 

-ピリピリピリッ!ピリピリピリッ!-

「………………………」

「…構いませんよ。僕も貴方も、少し頭を冷やした方が会話になりそうですし。」

 

むぅ、何だか言い方にトゲがある気がする。

 

別に長い付き合いという訳ではないが。

君こんな意地悪い言い方する人間だったのか。

 

まぁいい、別にレンの言葉が間違ってるとは思わない。

 

頭を冷やすには確かにちょうど良いタイミング。

お言葉に甘えて体よく利用させてもらうとしよう。

 

という訳でミッション来い、ミッション来い。

急ぎじゃなくても適当な理由付けてすぐ向かうから。

 

視線は彼に向けたまま。

悟られないよう表情を取り繕いつつ、懐から端末を取り出して操作する。

 

差出人は第一部隊隊長のルーキーちゃん。

要件は神機の持ち出し承認をしてほしいから保管庫まで来て欲しいとの事。

 

…よしミッションだな!

これは早急にルーキーの元に向かわなくては!

 

古今東西、レディを待たせるというのは古参どころか紳士の風上にも置けぬ所業。

即ちこれは紳士として早急に解決しなければならぬ緊急ミッションに該当する。

 

であればこの場を中座せざるをえないのも致し方なし。

という訳で携帯をレンにパース。

 

「わわっ、何ですか急に…リーダーさんからの連絡?」

 

一瞬不意に放り込まれた携帯に驚くものの。

反応にそぐわないナイスキャッチで受け取るレン。

 

同時にスッと席から立ち上がり、急がず真っすぐ部屋の外へと歩を進める。

 

「あ、待ってください!まだ僕の話は終わって…!」

 

安心しろ。

俺の話も終わってない。

 

けど上手い言い訳が思い付かないからまた後でな。

 

三十六計逃げるに如かず。

分が悪い時は躊躇わず引くのが優れた古参兵というものなのだ。

 

 

………

 

「神機の持ち出し…他者の承認がいるって事はつまりそういう…」

 

端末に送られてきた内容からもう一方の状況を理解し。

自嘲気味な溜息をついてから無人となった室内の天井を見上げる。

 

「あっちも上手くいったみたいで何よりだけど…まさか僕の方が上手くいかなかっただなんてなぁ。」

 

確かに予期しないトラブルはいくつかあったが。

けれど途中までは間違いなく順調に進んでいた。

 

おかげで迎えた二つの最悪を前に準備は万端。

 

図らずもリーダーさんを交えた事で包囲にも隙が無くなり。

加えて僕もあの人も心身共に()()()()()()()()()()()()と断言できる。

 

しかし結果はご覧の通り。

リンドウには逃げられ、あまつさえ彼自身もリンドウを殺す事に否定的になってしまった。

 

感応現象に頼るまでも無い。

消滅とまではいかないものの、明らかに殺意そのものが薄れてしまっている。

 

覚悟が引けた?

寧ろその方がよっぽどよかった。

 

諦めとか絶望とか、そう言った後ろ向きの感情による消失なら幾らでも焚きつける手段はある。

しかし彼の場合、恐らくは()()()()()()()を思いついた事により、殺害という手段の優先度が下がってしまったのだ。

 

それがどんな良い方法なのかは分からない。

それを知る前にこうして逃げられてしまったし。

 

「…ああいや、今となっては僕が無理にそれを知る必要も無いのか。」

 

手にした端末に視線を落としてつつ。

気付いたように言葉が漏れる。

 

もしこれが僕一人しかいないという状況であったなら。

是が非でも彼の戦意を呼び戻す必要があったけど。

 

 

…そうだね。

袖にしたのはあの人からだし。

 

僕は僕で、あちらのサポートが出来ないか考えてみようか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部の神機保管庫。

 

今は部屋主とも言えるリッカ嬢の姿は無く。

若くして部隊長となった新人と、その娘に頼まれて端末を操作する紳士の二人きり。

 

「すみません。リッカさんから神機の持ち出し申請をしてほしいと頼まれたんですけど…よくよく考えたら私、端末の操作方法知らなかったなって引き受けた後に気が付いて…」

 

 

うっかりちゃんめ。

言ったら肘で突っつかれそうだから言わないけど。

 

まぁ仕方ないと言えば仕方ない。

 

いくら腕の立つと言っても。

彼女はまだ入隊してまだ半年経つかどうか。

 

一般的な神機使いとしての仕事については憶えたであろうが。

流石に普段担当していない作業や部隊長特有の承認関連については把握しきれてなくてもしょうがない。

 

というか本来なら教えてやるべき人間が不在だしな。

マニュアルとかは確かにあるが、一応支部運営に関する情報だから参照するにも別口の申請が必要だし。

 

まぁそれについては追々教えてやればいいか。

とりあえず今日の所は俺が操作してやればいいし。

 

 

しかし珍しいな。

いくら信頼関係が良好とは言えリッカが()()()、それも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

まぁ彼女も忙しい身。

たまには人に任せる時くらいあるか。

 

こういう時のための承認機能だしな。

複数人でチェックするんだから間違いなんてあるはず無いし。

 

えーとどれどれ…

 

 

申請者、隣にいるルーキー本人。ヨシ。

持出理由、定期メンテナンスのため。ヨシ。

 

持出期間、本日中。ヨシ

神機の状態、不活性状態。ヨシ。

 

良し、良し、良しで全部ヨシ。

それじゃあ最後に承認--

 

 

 

 

 

「………………………」

「…どうしました?後は承認ボタンを押すだけですよね?」

 

 

 

 

 

ちょっとタンマ。

もう一回申請内容見直す。

 

 

 

 

 

申請者は隣にいるルーキー本人。

持出理由は定期メンテナンスのため。

持出期間は本日中。

 

 

神機の状態は不活性状態?

 

 

おいおい駄目だろ。

休眠状態になっていないぞ。

 

不活性状態というのはわかりやすく言うとスイッチをオフにしているだけの状態。

完全に火を落としている休眠状態とは異なり、手順を踏めば使用可能な状態へと移行出来てしまう。

 

流石にボタン一つで直ぐ起動するというものでは無いが。

この状態での運搬が許されるのはこれからミッションへ向かう時か、ミッションから戻って神機を保管庫へ戻しに行く時のみ。

 

メンテナンス程度で破っていい程緩い運用ルールではない。

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

というか本当に珍しいな。

休眠状態へ移行させるのは整備班の仕事だろ?

 

 

あのリッカがこんな所まで畑違いの人間に任せるなんて。

よっぽど今日の彼女は忙しいと見え--

 

 

 

 

 

--違う。

 

 

 

 

 

確かに彼女は多忙だ。

忙しさに手が回らなくなることだってあるだろう。

 

だがまかり間違っても自身の領分を他人に丸投げするような人間ではない。

 

ましてやこの申請、通った時点で神機のロックが外れて持ち出し可能な状態になる。

不活性状態とはいえ、一つ間違えれば人命に関わりかねない重大な申請処理。

 

 

あのリッカがこれほどまでにいい加減に仕事を進めるか?

 

否。

 

普段の彼女を知る者であれば全員が全員迷うことなく否やと答えるだろう。

俺だってそう答えるし--

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「あの、何故固まってるのかはわかりませんけど…」

 

 

 

 

 

-ボタン、押しますね。-




最終戦まであと少し。
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