無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.新型さんはしっとり?さっぱり?
A.アリサやリッカと同じくらい。


無口と無口な新型さん2

本物を見た。

あるいは、私自身の成れ果てとも。

 

他の奴には内緒だぞと、リンドウさんから今日一緒になる神機使いの経歴は聞いていた。

知った瞬間、私と気が合いそうだと柄にもなく喜んでしまった。

 

コウタの戦う動機は嫌いじゃない。

でも、私にとってそれは既に失ってしまったものなのだ。

 

アラガミはただの仇に他ならない。

結局のところ、私の戦う動機は自己満足の復讐でしかないのだ。

 

きっと今日一緒になる人もそうなのだろう。

 

………

 

戦えと言ってくれた。

聞いてた通り、言葉にはされなかったが思う存分やれと示してくれた。

 

やっとだ。やっと、やっとこの時が来たんだ。

任務だからとか、そんな複雑な理由など付ける事無く。

 

好きなだけ、アラガミを殺せる。

心の赴くままに、アラガミを殺せる。

 

許さない。絶対に、一匹たりとも生かしておくものか。

私の家族を奪ったコイツらを、私は決して許さない。

 

…あれ?

 

私の家族を奪ったのって…

 

-こんなアラガミだったっけ?-

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

ここは極東支部のエントランスホール。

忙しそうに任務を受注して出かける同僚をしり目に、一人昼間から酒をかっくらう。

 

サボりじゃないぞ、珍しく非番なんだ。

ブラック全開な職場なだけに、たまの休みは嬉しいものだ。

 

目の前にあるのは新入荷していた酎ハイ缶。

蛍光色が眩しいが飲んでみると予想に反して悪くない。

 

うん、戦いばかりじゃ精神が摩耗するからな。

こういう穏やかな日も悪くない。

 

不意にミッション受注用の端末が鳴動する。

画面を見て若干考え、見なかったことにしようとしまい込む。

 

だってもう飲んでるもの。

緊急性は無さそうだし、その内誰か行くだろう。

 

「ミッションですよ。どうぞ、アルコール分解特化のデトックス錠です。」

 

あぁ、これはどうも親切に。

職業柄か、疑う事無く差し出されたそれを飲み込んでしまう。

 

「………………………」

 

薬の効果でみるみる酔いが冷めてきた。

顔を上げると件の新型神機使いがそこにいる。

 

「私が受注しておきました。今日も同行メンバー、よろしくお願い致します。」

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

ここは通称"愚者の空母"。

以前は大海を悠々跋扈していたであろう軍艦も、今となっては亡骸のように無残な身体を曝している。

科学の粋を集めたそれも、全てを喰らうオラクル細胞には歯が立たなかったという訳だ。

 

エイジス計画の要である島が一望でき、神機使いからは中々景観の良い場所として好評を得ている。

 

空母と言うだけあって人の集まる中心部からはそれなりに距離が開いている。

その立地も相まって、この近辺に出没したアラガミはここにおびき寄せて討伐し、被害を最小限に食い止めようという方針がある。

 

「ここは絶対に超えさせない…」

 

期待の新人は今日も絶好調だ。

初めて会った時のようなヤバさは感じないが、それでも少し気負い過ぎな面が見えなくもない。

 

うん、憑き物と言うか迷いが晴れたのは良い事だと思うんだが。

 

よくわからんが妙に懐かれてしまった気がしないでもない。

事あるごとにミッションに連れまわされるのだ。

下手したら第一部隊との出撃とどっこいどっこいかもしれない。

 

-よう、色男。どんな手管であの手強い新人落としたんだ?-

 

大事な後輩なんだから取ってかないでくれよな。

ケラケラ笑うリンドウに、この前公の場でそうからかわれた。

 

おいばかやめろ、言いがかりにも程があるだろうが。

いくら一瞬だけとはいえ、この周りの突き刺す視線はめちゃくちゃ痛いぞ。

 

覚えておけよ、第一部隊の隊長さんは新型さんにお熱だと、サクヤにチクってやるからな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

今日の獲物はコンゴウ二匹。

個別に戦うならまだしも、まとめて相手取るには少々面倒な組み合わせだ。

 

しかも残念ながら到来予定時刻も同じらしい。

俺一人なら奇襲で一匹討伐し、残った奴と一騎打ちという形を取るんだが…

 

チラリと横の少女を見る。

最初に会った時からは考えられない、見違えるような意思の強さがそこにある。

 

「行けます。やれます、やってみせます。」

 

オーケーわかった、これでも一応部隊長だからな。

根拠の無い言葉でも、信じてみせる度量を持つことも必要か。

 

こっちは任せろ。

そっちの一匹、任せたぞ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

ここは極東支部のエントランスホール。

周りの任務上がりの喧騒の傍らに、苦笑するオペレーターの前で新人にジト目で睨まれている。

 

「…任せてくれたんじゃなかったんですか?」

 

初めの頃とは質の違う、湿った感情がこもった声で問い詰められる。

 

いや違うんだ。信じていたんだ信じてくれ。

技量も心も、問題無いと思ったから背中を任せたんだ。

 

悪いのは全部アラガミ、それもコンゴウが一番悪いんだ。

だって、あんな無防備に()()()()()から。

 

これでも古参、万全の状態で一対一ならコンゴウなんかに遅れは取らない。

速攻で倒して振りかえるとまだ戦闘中の君達がいた。

 

実力伯仲の猛者二人。

俺は片方の敵であり、同時にもう片方の味方である。

 

うん、普通不意打ちするだろう?

相手はアラガミ、尺度する義理も義務も無いんだし。

 

ちなみにこの前のシュンとの一件で神機の脆さは学習済みだ。

鍔迫り合いは避け、離れたタイミングを見計らって後ろの袈裟からずんばらりん。

 

見事アラガミだけを真っ二つだ。

君もお疲れ新人さん。

 

ねぎらいの言葉が出る前に。

不満全開の神機使いがそこにいた。

 

 

報告の後、ご機嫌取りの甘味を相当数奢らされた。

リンドウは何かを察したのかビール片手に爆笑していた。

 

覚えておけよ、サクヤにある事無い事吹き込んでやるからな。




新型さんは親しくなると口数増えるタイプです。
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