無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
当社比二倍、長いので休み休み読むとベネ(良し)。
区切れなかっただけとか言ってはいけない。
Q1.ルーキーちゃん間に合う?
A1.間に合う。
Q2.そういえば左腕大丈夫?
A2.君のような勘の良い(ry
ルーキーちゃんの左腕はアラガミ化していませんが。
神機由来のオラクル細胞が左腕にくっついたままなっています。
なので条件が揃えばリンドウさんとお揃いのアラガミアームになります。
効果?大丈夫、ブラッドレイジみたいなものですよ。
暴走さえ抑えられるならこれほど優れたシステムはありません。
Q3.…なれ
A3.このルートは大団円(レン君ちゃん生存)ルートです。
安心ですね。安心ですね。
大事な事なので二回言いました。
眼下に映るのは五匹のオウガテイルの群れ。
地上から空に向かって。
止むことなく尾から弾幕の雨が展開されている。
例えるなら対空砲。
いや、射出物の形状から言えばバリスタと言う方が適切か。
狙われてるのは地上から緊急避難したと思われるヘリ。
射的の的というには少々ゴツイ鉄塊だが。
悲しいかな、オラクル製の矢にかかれば一発命中しただけでも落下にリーチの致命傷。
しかも仮にこのまま空中回避を続けれたとしても安全とは言い難い。
辺りに響くのはヘリが浮かぶために奏でているローター音。
それに目標を外した射出物が、合いの手を打つかのように落下先で甲高い音を打ち鳴らす。
地上にいるアラガミは言うに及ばず。
聴覚に優れたアラガミなら例え地下に潜っていようとも存在を察知し、這い出して来る。
万が一それが飛行可能なアラガミであった完全に詰みだ。
しかたない。
注意を引く意味も兼ねて、少々荒っぽくいくとしよう。
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片手にハンドル。
片手に神機。
アクセルを踏み込み。
勢いよくアラガミの群れへと突っ込む。
意識を天に向け切っていた射手達に迎撃など間に合おう筈もなく。
すれ違いざま。
三匹ほどまとめて飢えた狼の牙を食らわせる。
一般的には制御を緩めたオラクル細胞の刀身が暴れないよう。
しっかりと踏ん張るようにして展開するプレデターフォームだが。
加速によるGを利用して一方向にのみ負荷を集め。
急ハンドルによる遠心力も加えて薙ぎ払うように捕喰。
一際大きく噛みつかれていたオウガテイルの身体が。
グシャリと小気味良い音を立てて千切れ飛ぶ。
比較的噛みつきが浅かった奴は地面に引っかけるように叩きつけ。
速さのままに引きずりまわして引き千切る。
まずはひとつ。
ゴクリと何かを飲み込んだような感触とともに力が満ちる。
別に早くも奥の手を服用した訳ではない。
神機と腕輪を直結させて通常よりフィードバックを大きくした事により。
捕喰によってオラクルリソースを取り込む感触が、さながら飲食をしたかのような錯覚となって現れただけの事。
とはいえ、身体に満ちる力の活性は錯覚ではない。
ハンドルを切って急旋回し。
再びアラガミの群れへと牙を向ける。
唐突に出現した捕喰者へ、アラガミ達が空中の獲物からその矛先を変える。
向けられているのは鋼鉄すら貫くオラクル細胞の矢じり。
仮に無策の生身で突っ込もうものならばただの的。
数秒と待たずに人から蜂の巣へと化けるだけ。
もっとも無機物への転生願望は無いので撃ち出される弾幕を躱しつつ。
二の矢が構えられるより早く、加速のままにアラガミの喉元へ神機を噛みつかせる。
おおっ、我ながらいい感じに喉元に入ったな。
ここまで完璧に決まればそうたやすくは外せまい。
食らい付かせたそれを地面に押し付け。
さらにアクセルを踏み込み、地面で後頭部を削りつつ喉仏も噛み砕く。
これでふたつ。
神機に直結された腕輪から。
文字通り溢れんばかりの力が流れ込んでくる。
雑魚相手ならこれで十分だろうが。
生憎今の俺に慢心は無い。
残るアラガミに向けてアクセル全開。
直線だけの攻撃では避けられるというのを悟ったのか。
今度は逃げ道も塞ぐかのよう、扇状に尻尾から矢を撃ち出してくる。
軌道から察するに狙いは車。
なるほど、将を射んとすればまず馬を~というやつか?
畜生の分際で小癪な知恵を見せてくれる。
それならこっちからご要望に答えてやるよ。
言うが早いか。
踏むというよりは蹴り抜くようにして急ブレーキをかける。
言うまでも無く今は戦闘行動中。
平時の移動であればともかく、万が一の時に行動を阻害するシートベルトなどというものは装着していない。
当然、固定されていない身体は慣性のままに勢いよく。
さながら弾丸のように勢いよく前方へ打ち出される。
迫る矢の嵐は神機の装甲を展開して防ぎつつ。
その勢いのままアラガミに衝突し、後ろの瓦礫へと吹き飛ばす。
そら、お望み通り降りてやったぞ。
願いは叶えた。
ではさらばだ。
-グシャリッ!!-
みっつ。
これで下準備は整った。
………
通常、戦闘中にアラガミを捕喰しても。
バーストレベルが独力だけで1を超える事は決してない。
実はレベル2以上というのは本来到達はおろか制御する事すら非常に難しく。
ルーキー達新型神機使いが現れるまでは研究室内だけで再現可能な現象だった。
生きているアラガミを直接喰らう事で神機を活性化させ。
その副次効果として使い手自身もその恩恵に預かるというのがバースト状態。
言うなれば人間はおこぼれに預かっているだけというのが正しい。
そしてそのおこぼれというのは、
アラガミのように鋼鉄の胃袋を持たない人間がそれをされるとどうなるか?
比喩表現無しに食べ過ぎで身体がはち切れる。
故に捕喰形態で得られたリソースと言うのは、安全マージンを超えた分は意図的に神機の外へ排出される仕組みとなっている。
…が、それはあくまで一般的な方法で神機を運用している場合の話。
そしてその運用方法自体、実はわりかし新しめに定められたもの。
機会があればソーマやツバキさん…は銃型神機だから俺の元上官殿にそれまでどう制御していたのか聞いてみると言い。
ゲンさんまでいくとさすがに古すぎるが。
"食べ過ぎないよう注意する"ってしょうもない回答が返ってくるから。
--さて、与太話をするのはこのくらいにして。
とっとと残りのアラガミも
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バーストのためだけに歪にコアを食い千切られたアラガミの身体。
それを積み上げた異形の山にありったけの挑発フェロモンを振りかける。
霧散しないようあえてコアを摘出されなかったその身体は。
四肢頭部を失ってなお息絶える事無く、ただもがくように身体を無様に痙攣させる。
うむ、実に生きの良い生き餌だ。
量も十分、これなら大物が釣れる事間違いなしだな。
空になった入れ物を餌の上に放り投げつつ。
事前のミッション内容を思い出す。
オウガテイル以外の相手はコンゴウやシユウ、グボログボロのような中型種。
普段なら取るに足らない相手と言えど。
今の俺は少々余裕がない。
下手に持久戦に持ち込まれでもしたら困るのだ。
どうせ死ぬことになるんだし、いるならいるでさっさと出てきてもらいたい。
道筋ならわかるだろう?
ここに来る最中も迷わないよう
童話のようにパンくずを撒いてきた訳ではないが。
お菓子の家とまでは言わずとも、肉の宮と言える程度に上等な物は用意出来たぞ。
--グシャリ!!--
うむ、美味い。
身体の底から力が漲り溢れるようだ。
早く来ないと、俺だけで一匹残らず喰い尽くしてしまうぞ。
………
待つ事数分。
唐突に辺りにアラガミの咆哮が響き渡る。
…咆哮?
猿と魚と鳥もどきが?
疑問がよぎるのとほぼ同時に前方へ飛び出す。
次の瞬間、先程まで自身のいた位置に
あぁ、誰かと思えばお前らか。
そう言えばお前らもリンドウの一件に関わってくれていたな。
少し小高い位置に陣取る三匹のアラガミ。
ヴァジュラ神族の冠名を戴く"ヴァジュラ"。
そして近縁種であると同時に接触禁忌種と評される"ディアウス・ピター"とその近縁種である"プリティヴィ・マータ"。
それぞれコンゴウ、シユウ、グボログボロの頭部を口に加え。
こちらに見せつけるように噛み砕く。
スピーカーモードにしている通信機から。
ヒバリのつんざくような声が響き渡る。
叫ぶな叫ぶな、大声出さなくてもわかってる。
この極東じゃよくある事だ。
討伐予定のアラガミが喰われてしまって。
想定外の上位種が乱入してきたってだけだろう?
悲しいけどこの極東ではよくある事なのだ。
しかし俺はその極東で第一線を張り続けている古参兵。
それなりに場数は踏んでいる。
確かに第一部隊の面々に比べれば戦闘力では劣るかもしれないが。
この程度の死地や修羅場なんぞ、当の昔に経験済みだ。
むしろ手間が省けて都合が良い。
--グシャリ!!
--グシャリ、グシャリグシャリグシャリ グチャリグチャリグチャリッ!!
先程まで目の前に山を成してた肉塊が音を立ててこの世から消え去る。
--最期の回復錠を飲む。
--最期の筋力増強錠を飲む。
--最期の体力増強剤を飲む。
--最期の体躯増強錠を飲む。
--そして、最期の強制解放剤を飲む。
LvMax、最大解放。
フフフ、フフハハハ。
フハハハハハハハハハハハハ。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッッッッッ!!!!!!」
畜生どもめ
"殺してやるぞ"はこちらの台詞だ。
あの時と同じように。
俺の両親と同じように。
一匹残らず、潰れたザクロに変えて喰い殺してやる。
……………………………………………………………………………………………
--威勢の良い言葉を吐いてはみたが。
正直余裕はおろか小細工を弄する暇すら存在しない。
元々の想定は精々中型種が二、三匹。
正面からスペック差で磨り潰してそれで終いとする予定だったが。
流石に接触禁忌種混じりの大型種三匹となるとそうはいかない。
飛び交う雷撃。突き刺さる氷柱。
ただの人間にとって、そのどれもこれもが食らってはならない致命の一撃。
もちろん警戒すべきはそれだけではない。
体格と質量を生かしたコンクリートすら砕くタックルに。
鋼鉄の装甲車さえもやすやすと引き裂く爪牙の一閃。
一介の神機使いにそれら全てを避けきるなんて芸当は出来ようはずもなく。
かろうじてシールドを展開して直撃を防ぐのが関の山。
当然、受ける度に身体を肉は裂けるし骨が軋む。
その絵面はまさしく満身創痍。
頼みの綱のアイテムは尽き、膝が折れれば今度こそ立ち上がる事は叶うまい。
折れればな。
ディアウス・ピターの剛腕が唸りをあげて襲い掛かり。
躱しきれず装甲越しに殴りつけられた身体が"く"の字に折れ曲がる。
おっとしくじったか。?
いや、まだ動く。ならば計算通り。
死ななきゃ安い。
倒れなければ、別にどうという事はない。
いや、どうという事ないは流石に言い過ぎか。
痛い。それはもう、文字通り死ぬほどに。
筋が裂けたのか骨が千切れたのかはわからないが。
息を吸う事すらままならないほどの激痛が全身に走る。
まぁ死んでない以上、戦闘行為に支障は無いがな。
アラガミを殺すのに必要なのはあくまで神機。
神機使いはそれを振るうだけの存在に過ぎない。
極端な話、神機さえ無事なら俺が死んだ所でアラガミを殺すのに支障は無い。
ましてや死んでないのであれば、そこに迷いを抱く余地も戦闘を中断する理由も存在しない。
振り抜かれたアラガミの腕を逃すことなく。
プレデターフォームへと変化させた神機で捉え、噛み千切る。
死に体の獲物の反撃が予想外だったのだろうか。
千切れ飛んだ腕を見据えながら、一瞬何が起こったかわからないといった風にアラガミが固まる。
おいおい、何をそんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
たかだか腕の一本二本で情けない。
こちとら骨の何本かは確実にイっているんだぞ。
だがその程度で硬直する隙を見逃す程俺は素人ではない。
どうせ簡単に死にはしないんだ。
困惑するならせめて頭の一つでも失ってからにしろ。
--グシャリ!!--
返す神機の刃、もとい牙で無防備なアラガミの頭部に喰らい付き、噛み砕く。
LvMax、最大解放。
…ん?どうした?何を化け物と出会ったような怯えた目をしている?
アラガミの頭部を食い千切り。
捕喰して取り込む間は絶好の攻撃チャンスであっただろうに。
依然残る二匹のアラガミは戦闘態勢を解いていない。
だが長年の経験からか、その姿勢が備えているのは攻撃行動のためではなく。
捕喰などのためにその場から逃走するための姿勢なのが見て取れる。
…逃走?
逃走だと?
アラガミが、人間一人喰らいもせずに?
「………………………」
フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。
オイオイオイオイオイ、笑わせないでくれよ。
こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際なんだぞ。
神機使いじゃない、抗う術を持たなかった俺の両親を皮切りに。
エリックだってリンドウだって、神機使いもお構いなく喰い殺したくせに。
おまけに俺やルーキーには柄に触れただけで喰らおうとしたし。
何ならレンは喰うどころか、喰らいもせずにただ穿ち殺したくせに。
どうして今更餌を前に背を向ける?
どうして今更獲物を前に踵を返す?
シオを見習え。
アラガミのくせに"イタダキマス"も"ゴチソウサマ"も知らんのか。
…あぁ、それともアレか?
お前らもシオと同じように人間を食べたくないとかいうやつか?
ククッ、フハハッ、アハハハハハハ。
笑わせるなと何回言わせる。
アラガミなのに、人を食べたくないと自ら旅立っていった彼女と。
アラガミのくせに、命惜しさに人を食べず逃げ出そうとするお前らが。
同じ訳無いだろう。
同じ訳無いだろう。
同じ訳、無いだろうが。
一匹残らず、
………
…どうした、もういないのか?
本当にもう終わりか?
まさかもう本当に、喰らえる相手が一匹も残っていないのか?
いやいや、俺はこれでも古参兵。
このように慢心した時が一番危うい事を知っている。
こういう時こそ。
とびきりのヤバいアラガミがやってくるという事を知っている。
まだか?まだか?
来るなら早くしろ、間に合わなくなっても知らんぞ。
俺は所詮一山いくらの旧型神機使い。
バースト状態が切れてしまえば、もうこれ以上為す術はない。
お前らだってどうせ喰うなら。
生きの良い美味い肉を喰いたいだろう?
まだか?まだか?
…ってうるさいなヒバリ、そんなに大声出さなくても聞こえて--
「………ッッッッ!!!!!!!!」
--今更ながら。
運命の女神というどこまでも底意地が悪い。
まさかクソトカゲとルーキーを一緒にこの場に連れてくるとは。
まるでルーキーと
まぁいい。
ルーキーが来た以上、もう俺の勝利は確定している。
守り切った。
今度こそ、今回こそ。
…あぁいや訂正。
レンは、守り切れなかったか。
となればやはり。
エンディングに相応しいのはルーキーだな。
俺のように下手を打った役立たずの出る幕ではない。
となれば冥途の土産に--
ひとつ
景気よく、あのクソトカゲの首を跳ね飛ばして終わろうかぁ!
……………………………………………………………………………………………
取るは先手。
後手に回れば間違いなく負ける。
既に身体は限界。
先程までさんざ喰らい尽くしたアラガミも既に無く、維持していたバースト状態も残すところあとわずか。
これが正真正銘のラストラン。
射程圏内に入った途端、勢いよく駆け出し襲い掛かる。
アラガミはその場から動こうとしない。
いや、それとも一緒にいるルーキーのせいで動きたくとも動けないのか。
好都合、何もわからない内に素首跳ね飛ばしてやる。
………
--刃を振り上げ。
全身全霊を込めてアラガミの首へと振り下ろす。
完全に不意を突いた。
アラガミは真面に反応する事も出来ず、苦しまぎれにその異形の左腕で防ごうとするのみ。
しかしいくらアラガミの細胞が強固と言えど限度はある。
ましてや俺の得物はバスターブレード、生半可な防御などお構いなしに噛み潰す事が出来る。
-ガキイィン!!-
--にも関わらず。
結論から言えば駄目だった。
首が宙を舞う代わりに響いたのは。
過去に幾度となく聞いた不快な高音。
それは神機からの拒絶音。
未適合のオラクル細胞を斬ろうとした時に響く、忌まわしさすら覚えるあの音だ。
…おかしくないか?
クソトカゲだぞ?
ハンニバル種だぞ?
もう片手じゃ効かないくらい切り殺してるのに。
どうして今更"
「………………………………………………」
………もしかして、こいつはクソトカゲじゃない?
ひょっとして俺は、何か取返しのつかなくなるような勘違いをしている?
-ガシッ!-
「大丈夫だって、言ったじゃないですかッ…!!」
異形の腕が、神機の刀身を掴みながら言葉を続ける。
「私、信じたんですよッ…!大丈夫だって、全て上手くいくって、他でもない貴方が言ったから…!!」
ルーキーが泣きながら言葉を絞り出す。
…どういうことだ?
目の前に広げられる現実に思考が追いつかない。
俺はルーキー達を回収するヘリを守るべく。
ルーキー達が戻るまで付近のアラガミを掃討してヘリを護衛していたはず。
それがどうして何時の間にかルーキーが目の前にて。
俺の神機を直に押さえながら泣きそうな顔で文句を言って…
……待った。
誰の何を直に押さえてるって?
唐突に事実を認識した脳が目の前の光景を整理する。
何時の間にかルーキーがいる。それはいい、後で聞く。
泣きそうな顔で何か言っている。それはいい、後で聞く。
…他人の神機を直で触っている?
しかも触ってる腕が異形になっている。
………馬鹿野郎ッ!!
コイツ性懲りも無くまたっ!
思考がそこに辿り着くや否や。
一も二も無く刀身を握る彼女の腕を引き剥がしにかかる。
口で言ってる暇はない。
既に腕がアラガミ化し始めている以上、一刻も早く彼女と俺の神機を引き剥がす必要がある。
「ッ!!貴方っ、この期に及んでまだッ…!!」
そんな俺の思いとは裏腹に、憎々し気に言葉を吐きながらルーキーが抵抗する。
引き剥がせない。
むしろ引き剥がされてなるものかと言わんばかりに、ルーキーの指が強く刀身を握りしめる。
クソッ、クソックソクソクソォッ!
何で抵抗しやがるんだルーキー!
「…いい加減に、してくださいッ…!」
--空気が、変わった。
「貴方も、リンドウさんもッ…」
「極東の古参兵と呼ばれる人達は、どうして誰も彼も命を粗末に扱うんですかっ…!!」
神機を握る俺の右腕に。
その神機を抑える異形となったルーキーの左腕。
そしてそれを引き剥がさんとするのは俺の左腕。
怒りのままに弓の如く振り絞る彼女の右腕を。
止められるものはどこにもいない。
「…逃げるなぁっ!!」
-生きる事から、逃げるなぁっ!!!!-
……………………………………………………………………………………………
ここは極東支部のエントランスホール。
今日も今日とて同輩である神機使い達が忙しそうに任務を受注し、出かけて行っている。
俺?サボりではない。
数か月ぶりの長期休暇を満喫中の真っただ中なだけである。
思えばここ数か月は本当に色濃かった。
ルーキーを筆頭に新型神機使いが何人も配備されたり。
極東でも指折りの実力者たるリンドウがMIAやKIAになったり。
悲しみに暮れる間もなく人間と全く変わらないアラガミのシオがアナグラにやってきたり。
何時の間にか前支部長が計画してたヤバい計画の手先になっていたり。
KIA判定されたリンドウが実は不完全にアラガミ化して生き延びていたりと。
まぁとにかく筆舌に尽くしがたい色濃い日々だった。
結果だけ見て言えば。
アナグラの支部長が入れ替わった以外は特に大きな変化は無し。
強いて言うなら死んだと思われていたリンドウが第一部隊に復帰したくらいか。
いいねいいね、こういう話夢のある話は是非とも今後続いていってほしい。
いずれは俺の両親も"実は生きてました~"なんて話に繋がるかもしれないからな。
ちなみに今は来ないでほしい。
部屋汚いって怒られるのが目に見えてるからな。
若いとはいえこれでも立派な成人男性。
親に見栄張るにはそれなりに準備期間が必要なのだ。
閑話休題。
「………………………」
「………………………」
クピクピと酒を煽る視線の先にいるのはルーキー。
人類の大半を贄とするヨハネス前支部長のアーク計画をくじき。
アラガミ化したリンドウを人間へと引き戻したまさに救世の聖女…
もとい、自ら神機を振るって荒ぶる神を誅する、生ける戦女神(ヴァルキュリア)その人である。
「………………………(クピクピ)」
「……お酒ってそんなに美味しいんですか?」
美味いぞ。
他人が汗水流して働いているの尻目に飲む酒は特にな。
見たまえ、リンドウ君のあの恨めしそうな眼差しを。
ほらほら、こっちを見てないでとっとと受注した任務を片付けてきたまえ。
まぁいたいけな少女にこの味を教えるのはまだ早いので言わないが。
女神様と酌を共にする権利はエインフェリアにしかないのだ。
別にダメ人間呼ばわりされそうだからという理由で言わないのではない。
君は君の隣にいるヴァルキュリアを満足させるためにも。
今まで休んでいた分きりきり働きたまえ。
一息に酒を煽り、これみよがしに息を付く。
聞こえるのは今を全力で生きようとする日常の音のみ。
「あぁっ…」とうらやまし気に手を伸ばすリンドウに。
「飲むなら任務の後でね」と苦笑しながらもどこか幸せげなサクヤ。
「今喋りました…?」とか変な事言ってるルーキーはあえて無視。
決してゆとりのある日々とは言えないまでも。
それでもなお今を充実させて送る日常が奏でる音。
うむ、うむ。
--すべて世はこともなし、かな。
…リンドウ、本気で第一部隊から引き抜こうかなぁ。
今は半分フリーみたいなものだし。
ほら、リンドウも俺の部隊のバックは知ってるだろ?
あの人なら多少ビール三昧しても見逃してくれるから(必死)。
なおツバキさんには無力。
論破されるかぶっ飛ばされて終わります。
BURST編終了。
ここからはエンディング後のキャラクターエピソードを交えてから2へ進む予定だったのですが…
リザレクション編どうしましょうか?(ネタはあるので投稿順or投稿するかどうかが代わるだけです)
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