無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A.ソーマと同じノコギリタイプ。
ここは極東支部のエントランスホール。
今日も今日とて同輩である神機使い達が忙しそうに任務を受注し、出かけて行っている。
珍しく朝一からミッション依頼が入っていた。
大型アラガミの発生を検知したので、事前に脅威を排除してほしいとの依頼だ。
今日のターゲットはヴァジュラの討伐。
出現数が増えているにも関わらず、まだまだ討伐できる神機使いが少ないという現状だ。
故に小隊単位でのミッションが基本となるので、大抵は特定の部隊に対してミッション発注される形となるのだが。
何故か俺の所に回ってくる際は一人で行ってこいとの指示が多い。
何だイジメか?部隊の所属隊員が俺一人な事に対する当てつけか?
いや、まぁ倒せるけどさ。
でも一人で大型アラガミ倒してるとか、傍目に見るとハブられてる人みたいじゃないか。
うん、最近誰かとミッションに行く機会が増えたせいか。
一人きりのミッションに妙に抵抗を覚えるようになってきた気がする。
誰か暇してる奴いないかなぁ。
ホールを見渡し、暇してそうな神機使いを探してみる。
「ヴァジュラですか、私でよければ同行しますよ。」
後ろからの提案に首だけ向けて確認する。
ここ最近、俺を連れ回し続けているルーキーちゃんがそこにいた。
ちなみに同行を要請された場合、基本的に俺に拒否権と言うものは存在しない。
表向きには他部隊支援を目的とした独立遊軍的な立ち位置だからと言うのもあるが、実際は特務任務のために半ば無理やり再編成されたような部隊である。
故にカモフラージュ的な観点から、基本的に特務が無い限りは他部隊からの要請を断る事は出来ない仕組みになっている。
まぁこのルーキーちゃんはそこまで知る由も無いだろうが。
どちらかと言うと単に俺が頼みを断れない系の人間だと思っている節すらある。
しかし、うーん。
同行申請は普通に嬉しいところだが、欲を言えばもう一人か二人は欲しいところ。
実力は十分でも俺から見ればまだまだヒヨッコなのだ。
新人と言う殻が取れていない以上、御守が必要と言う認識からは免れない。
んー、誰か暇してそうな人いないかなぁ。
「不満ですか?…そうですか、では誰か女性の方を呼びますね。」
おいばかやめろ、なんでわざわざ女性に限定して募集をかける。
そういう方面で不満だなんて一言たりとも発していないだろうが。
マジか、と言う視線が向けられる。
そういう人だったんだ、と言う視線が向けられる。
最低、と言う視線が向けられる。
ちくしょう誤解だ。
こいつ等全員、肉体言語で弁明してやろうか。
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「………………………」
ここは通称"贖罪の街"。
朽ちかけた建物が並び立つ前時代の遺物。
まぁ前にも来た事がある場所だし、細かい説明は割愛しよう。
あの後同行メンバーを募集したところ、ちょうど手空きになっていたサクヤとコウタが名乗りを上げてくれた。
近接、射撃、支援が一人ずつにどれでもこなせる新型1と構成的には悪くない。
強いて何か言うならこれ普通に第一部隊の作戦行動だな。
部外者感がそこそこするが、まぁ気にしないことにしよう。
ちなみにコウタはミッション条件をよく読んでいなかったようだ。
女性限定という文言に応募が済んでから気づいたらしく、「俺は男ですよ…?」とミッション前にご丁寧に説明してくれた。
どつくぞお前、見りゃわかるわい。
なおルーキーちゃんが当てつけだと説明してくれたので誤解は解けた。
現地に付いてからコウタが分けてくれたガムを食べながら待つことしばらく。
オペレーターが目的のアラガミが出現したことを告げる。
さて、今回のミッションなんだが最近受注したものに比べると正直楽な部類である。
特殊個体でなければ変な条件がある訳でもない。
おまけに今回は単独ミッションではない上に、連携も期待できる面々で味方側の懸念点も無いに等しい。
久しぶりにのびのびした気持ちで戦えそうだ。
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「………………………」
はい瞬殺。流石に四対一で袋叩きにすると楽勝だな。
明日までに何で負けたか考えてくるように。
「私、何だかんだで貴方とのミッションは初めてなんだけど…」
「あ、やっぱりサクヤさんから見てもそうなんですか?」
何だ?言いたい事があるならはっきり言いなさいな。
会話はコミュニケーションの基本だぞ。
「エグいというか効率的と言うか…一撃で仕留めようという感じの戦い方ではないわよね。」
言われてみればそうかもしれない。
俺的には神機使いとして研修を受けた時の話をそのまま実践しているだけなんだが。
ゴッドイーターは偏食因子の影響で身体能力が向上しているが、それでも中型以上のアラガミとやり合うには分が悪い。
それゆえ正面から正攻法で押し込む事はせず、体力を削って弱ったところを仕留めるという戦術をまず初めに叩きこまれる。
背後から仕掛けて体力を削る。四肢を削って動きを鈍らせる。
互角以上に弱ったのを見計らって、全力かつ間断無い攻撃で反撃許さず仕留めて見せる。
何だかんだでこれが最も効率よく討伐できるのだ。
一人でも出来るし仲間がいるなら殊更楽だ。
「前足全部切り離して、終わったら今度は後ろ脚って…貴方くらいの実力ならそんな事しなくても倒せるでしょうに。」
…ちょっと待て、何か残虐な人間のように言われていないか?
僅かな隙を突いて一瞬で命を持っていくのがアラガミと言う存在なんだ。
間隙すら紛れないレベルで戦局を詰めていくのは基本中の基本だと思うんだが。
ちなみに斬り飛ばした足はその辺に転がっている。
ゲームであれば足とか尻尾と言った部位別の資源として回収出来たりするのだろうが。
アラガミの場合は細胞レベルでそれっぽく見せているだけなので足だけ切り離しても別に特有の資源が手に入る訳ではない。
言ってしまえばヒレもロースもタンもホルモンも全部"アラガミのお肉"と表現されると言えばわかりやすいか。
当然足を捕食してもコア回収は行えない。
まぁ仮にできたとしたら足の先に心臓があるようなものだしな。
まぁいいや、とりあえず倒したアラガミのコア回収に…
おや?コイツまだ生きてるな。
反応はもう死にかけだけれど、睨むその目が
いいね、俺はその眼は嫌いじゃない。
でも悲しいかな。俺は神機使いだから、助けてやるわけにはいかないんだ。
お休み、また会おうな。
止めを刺そうと思った瞬間、ルーキーちゃんが進み出る。
何のことは無い、コア回収しようと前に出てきただけの話だ。
あ、ちょっと待った。コイツまだ生きてるから-
言うが早いか、肘から先の無い腕が新型神機使いに繰り出される。
首根っこを引っ張って位置を入れ替え、勢いのままに後ろへ投げ捨てる。
痛かった?悪い、流石に余裕が無かった。
次の瞬間、身体は空中に吹き飛んだ。
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「………………………」
ここは極東支部の救護室。
怪我をした神機使いがお世話になる場所だが、実は利用率はそこまで高くない。
何しろ大抵はここを
命が残っているならただそれだけで儲けものと言う話だ。
さて、何故俺がこんな場所の世話になっているのか。
真っ先に思いつくのは先程ルーキーを庇った時に受けた一撃である。
死にかけとは言え大型種に属するアラガミの一撃。
庇うために無理やり体勢を入れ替えたこともあり、そのまま木っ端のように宙を吹き飛ばされてしまった。
不意を突かれて軽く脳震盪を起こしたのかもしれない。
受け身を取る事も無く、近くの廃材の山へ叩きこまれたらしい。
…まぁ実は言うとノーダメージなんだがな。
アラガミ相手に防具も無しに挑むわけなかろうに。
大枚はたいて調達していた防弾チョッキ。
防刃性や防貫性こそ持たないものの、衝撃に関して言えば密接した状態からのC4爆破すら無効化すると謳われる代物だ。
大型アラガミの腕力は認めるが、それでも零距離発破と比べれば分が悪いだろう。
ましてや死にかけのその様でどんな奇跡を起こせばこの重装備を貫けるのかと言う話だ。
ただまぁ流石に吹き飛ばされた際の衝撃までは無効化できなかった。
軽くピヨっている内にサクヤが駆け付け、意識がはっきりする頃にはブチ切れた新人ちゃんが手足をもがれたアラガミを嬲り倒していた。
―軽い脳震盪ですね。念のため今日一日は安静にして様子を見てください。-
やった、今日はお休みだ。
寝たふりしながら聞こえた言葉に危うく小躍りして喜びを表現しそうになる。
「…ごめんなさい。私のせいでこんな事に…」
あ、君付き添いだったのね。
顔を見るとなんかボロが出そうな気がしたので、寝返りの振りして壁向きに体勢を切り替えた。
…寝たふりがバレ、グイと身体を引き戻されて睨まれた。
何故わかったし。
何か一話一話が長くなってきた気もしますが、即興書きなのでご容赦を。
ついでに新型さんとの話は長くなりそうなので別口に切り分けました。
投稿するかはその内に。