無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.ラ〇ホー?
A.夢の世界へようこそ。

あの日見た 蒼いあの空を もう一度
荒野でなくとも アレは駆け行く

※タイトルが抜けてました。


-After_Mission-Distortion of Failure story2

「さて、救助に至るまでの流れはこんな感じで良いだろう。問題はここから先、リンドウ君は元より、君や入院中の彼も深く関わってくる話だ。」

 

おおよその話も一区切りつき。

軽い小休止を挟んだ後、再び真面目な口調で話し始める榊博士。

 

「アラガミ化の抑止に成功し。その進行を右腕のみに抑える事に成功した…と、ここまでは先の説明で問題無い。ならば次の課題の焦点はズバリ--」

「…"今後彼らのアラガミ化が進行する事はないのか?"という事ですか?」

 

博士の言葉に先んじて言葉を紡ぐ私に博士は満足げに頷き、目を細めたまま話を続けます。

 

「偏にアラガミ化といってもそれがもたらす問題はいくつもあるが…なにより厄介なのは"一度アラガミ化が始まれば進行を止める術がない"という一点に尽きる。」

 

-一度発症してしまえば治療も対処も不可能。-

-遅かれ早かれ例外無く、その身は全てを喰らう荒ぶる神へと堕ちる。-

 

「故に発症者はその時点で"人間ではなくなった"と見なされ。一切の例外無くアラガミとして処分するというのがフェンリルの基本的な方針だ。…そして有り体にはっきり言ってしまえば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

机の上、眼前に組んだ手に顔を近づかせ。

普段よりも幾分低い声色で榊博士が断言する。

 

「そんなっ…!確かに腕だけは変わってしまいましたけど、リンドウさんは何も変わってなんて…!」

「"発症してしまった"事そのものが問題なんだ。部位も範囲も、今がどうであるかすら関係無い。」

 

-ましてや目に見える形でアラガミ化している部分が確認出来る以上、いくら現状を説明しようとまず間違いなく本部はリンドウ君の介錯を命じてくるだろうね。-

 

「ツッ…!!」

「付け加えるならこの話は君にとっても無関係な話ではない。適合しない他人の神機を二度も使用した事に加え、リンドウ君の救出時は明確に左腕がアラガミ化したとも聞いている。」

 

-当然この事は正直に報告するつもりはない。が、もし何らかの形で先の事実を知られた場合…いよいよもって本部が強引に介入してくる公算が極めて高くなる。-

 

「そうなれば本当にどうしようもない。極東支部はあくまでフェンリルという巨大組織の一部門。一度事実が露呈してしまえば全てアウトだ。故に…」

「"露呈する前に誤魔化す"ですか…でもこれはどうやって誤魔化すつもりなんです?」

 

榊博士の言葉を鵜呑みにするなら。

アラガミ化というのはそもそも発症した時点でアウトである。

 

そしてリンドウさんは今なおその右腕が異形となったままで。

私自身、確かに適合しない神機に飲み込まれた左腕がアラガミと変わらぬ物になっていた。

 

それをアラガミ化と言われれば言い訳のしようも無い。

 

「それについては良い案がある。本部からの横槍を防げるどころか、何だったら逆に支援すら申し出でられかねない程の、ね。」

「し、支援すら?何ですかそれ、話が旨すぎて何か怖いんですけど…」

 

ニヤリと妖しい笑みを浮かべて告げる榊博士。

その自信に満ちた黒い微笑みに、席に着いたままとはいえ思わず身体を後ろに引いてしまう。

 

「なに、別に難しい話じゃない。それにさっき君自身も言ってただろ?」

 

 

--検体として"お買い得だ"と。

--少し君が協力してくれればそれで万事済む話さ。

 

 

…………………………………………………………………………………………

 

「…はぁ、つまり榊博士が私やリンドウさんをモルモットにするから本部から手出しは許さない、と?」

「ハッハッハ、いやぁ悪い悪い。私も研究者の端くれ、せっかくだからたまには君が提供してくれたネタに便乗してみようと思ってね。」

 

"モルモットとは人聞きの悪い"と悪びれも無く前置きしてそう答える博士をしり目に。

私は榊博士が説明した話の内容を要約していきます。

 

アラガミ化というのは本来は不可逆かつ進行を止める術の無い致死の症例。

加えて変異が進めば見境なく人間へ仇なす存在へと成り果ててしまう。

 

故に発症した場合は介錯の名の元に例外無くその身を処すというのがフェンリルの絶対的な方針。

しかしこれはあくまで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「"大を生かすために小を殺す"。これは言ってしまえばそれ以外に生き延びる術がないから現れる選択肢だ。最初から全体が生き延びられる術が選べるのであれば、このような選択を取る理由など存在しない。」

 

-それに介錯に用いるのは結局のところ他人の神機。-

-適合しない神機を用いる弊害は今更言うに及ばず、実際介錯を行った後その本人も神機に喰われたり、介錯相手アラガミ化してしまったという事例は多数ある。-

 

「つまり介錯という方針自体が止むにやまれず生まれたもの。フェンリルとしてもそれが続くのはそもそも不本意という事ですか。」

「その通り。私の提案は本部にとってもメリットしかなく、かつ現状維持を理由に否定のしづらい話でもあるんだ。」

 

あくまでこれは人類の益となるべく行う研究。

 

研究成功の暁にはまた一つ。

人類はアラガミの脅威に対抗するための手段を得る事が出来る。

 

故に誰かを庇おうとかそういう個人的な感傷からではなく。

被験者本人すら望んでそれに協力しようというのだ。

 

「自慢じゃないが私はこの分野に関しては第一人者だ。仮に無理矢理君達の身柄を本部で引き取り、研究テーマだけをそのまま引き継いだとして…」

 

片や専門の知識と一支部の長たる権限で柔軟に対応し。

加えて被験者すら積極的に研究に参加してくれる現場。

 

片や知識量はともかくも、上意下達が徹底されて融通は利かなく。

無理矢理連れてきた事で被験者のモチベーションも低下しているような現場。

 

「どちらがよりよい研究成果を上げる事が出来そうか…聞くまでも無いだろう?」

「…でも博士。話の限りでは誤魔化す事は出来そうに聞こえるんですけど…」

 

そう、それは研究を行う事を前提とした話。

 

「肝心の研究成果はどうするんですか?私、正直そっち方面は全く力になれそうにないんですけど…」

「そうだね。先程までの話はあくまで当面を凌ぐための建前。研究と銘打って君達の処分を留めておく以上、何らかの形で継続して本部を納得させられるだけの当てを用意する必要がある。」

 

研究とは即ち積み重ねだ。

成果が上がるにしろ上がらないにしろ、それまでの経緯というものは目に見える形で残るもの。

 

「も、もしかして定期的に献血が必要になるとかですか?いえ、それが必要なら我慢しますけど…その、注射も。

 

"注射"と口ごもった所で榊博士が噴き出した。

 

「ンッフ、失礼…歴戦の第一部隊隊長の君でも注射は苦手かな?」

「いや、だって痛いじゃないですか。偏食因子の投与と違って腕に直に針刺されますし…」

 

今度は堪える素振りも見せず声を出して笑い出す榊博士。

 

ちょっと、笑わないでくださいよ榊博士。

私、今真面目な話をしてるつもりなんですけど。

 

「ハッハッハ、いやすまないリーダー君。第一種の接触禁忌種相手に一歩も引かない君が、たかだか数ミリ程度の注射針を嫌がるというのが何ともおかしくてね。」

 

ジト目で榊博士を睨む事数分。

ようやく波が引いたのか、息と眼鏡を整えつつ榊博士が話を戻します。

 

「ふぅ…さて、話を戻そう。君が中々に覚悟を決めた事に対してこう言うのも気が引けるが…まぁ結論から言うと血液サンプルだけじゃ到底納得しないだろうね。リンドウ君なら右腕の細胞サンプルと合わせればそれでいけるかもしれないが…残念ながらというか、今のリーダー君の腕は普通の人間と変わらない。送った所で追加の研究資料を出せと言われるのが関の山だ。」

 

それはまぁ何となくそう言われる気はしていましたが。

 

榊博士の言葉に自身の左腕に視線を落とす。

 

一度は神機のオラクル細胞に侵喰され。

堕天種とはいえ力づくでハンニバルの口をこじ開ける程に強靭だった左腕。

 

しかし今こうしている分には特段変わった点は見られず。

動かす事に支障は無く、妙な力が漲っているというような自覚もない。

 

「ふむ、ちょうど良い機会だ。改めて、君自身の検査結果について伝えておこう。」

 

………

 

「まずリンドウ君の神機を触った事による影響だが…一般的に起こりうる外的変化は見られず、君自身も特に自覚症状等は訴えていない。単純な所見で言えばこれといった問題点は無しだ。」

「そうですね。本当に他人の神機に触ったのかってくらいには違和感も何もないですし。」

 

先程のように軽く腕を摩りつつ答えたところ。

榊博士から返ってきたのは予想していなかった意外な言葉。

 

「ところがだ。精密検査を行って様々な数値を計測したところ…予想通りと言うか予想以上というか、君の体内のオラクル細胞は()()()()()()()()()()()()()()()()。数値だけで見ればソーマとさして変わらない、と言えば凄さがわかるかな?」

「…へ?」

 

榊博士の言葉に思わず間の抜けた声が漏れ出てしまう。

 

あれ?確かソーマって自身で偏食因子を生み出しているんですよね?

その影響で普通の神機使いよりもオラクル細胞が活性化して高い身体能力を誇るって聞きましたけど。

 

…いや、正直結構眉唾ですねその話。

 

だって私、ソーマを正面から組み伏せた事ありますし。

何だったらあの人だって…いや、あれはスタンガン持ち出してますから流石にノーカンですね。

 

まぁ私は小細工無しの正面からですけどフフン。

コンゴウとか言った人は後で外部居住区の外れに来てください。

 

「念のため何度か計測してみたが間違いない。そして何故このような状態になっているのかなんだが…」

 

-あくまで私の推測に過ぎないが。-

-恐らく今君の身体の中では異なる二つのオラクル細胞がお互いを取り込まんと喰らい合っている状態なのではないかと思われる。-

 

「君は元々自身の神機との適合率が高く、一般の神機使いよりも多くのオラクル細胞が君の神機を通じて体内に存在していたと考えられる。そこへリンドウ君の神機に触れたことにより、適合していないオラクル細胞が君の体内に侵入する事になった。」

 

-基本的にオラクル細胞というのは何でも喰らう。それは誇張でも何でもなく。人間は元より、自身以外のオラクル細胞が対象であっても変わらない。-

 

「しかし知っての通り彼らには"偏食"と呼ばれる面白い性質が備わっている。人間のように細胞レベルで食事に対する好みが存在し、好みの餌があるのなら他を無視してそちらを重点的に喰らい取り込もうとする。」

 

-この"好み"が何なのかについては一概に定義する事は出来ないが。おおよその傾向としては"より高エネルギーな物"が該当するケースが多い。-

 

「ここで一つ君に質問だ。オラクル細胞と人間の細胞…"より高エネルギー"なのはどっちだと思うかね?」

「それは…話の流れ的にオラクル細胞の方ですか?」

「その通り。そしてさっき言ったように今君の体内には今二種類の異なるオラクル細胞が存在している訳だが…」

 

あ、そういう事ですか。

 

「一方は元々私に適合している細胞だから私自身は捕喰の対象外。もう一方は私よりもより好みの捕喰対象がいるから…」

 

追いついた理解を口にすると榊博士が満足そうに頷く。

 

「君に適合している方の細胞は偏食因子というリミッターにより、必要以上に活性化しないよう抑制されている。対して体内に侵入した細胞はその制御の影響下になく、言ってしまえば暴走状態のようなもの…喰い合いになればどちらに軍配が上がるかは火を見るより明らかだ。」

 

-そうして暴走したオラクル細胞に自身の身体を侵喰され。-

-果てにアラガミ化という結末を引き起こす。-

 

「--というのが今までの定説だったんだが。」

 

ピンと榊博士が人差し指を立ててこちらに向き直る。

 

 

「ここにきてもう一つのイレギュラーが現れた。それが彼、ユウマ君の今の状態という訳さ。」




システムスタンバイ。
ステンバーイ、ステンバーイ…

NT新型か?

長くなったので区切ります。
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