無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.感応現象?
A1.Yes。

Q2.何が見えた?
A2.腕がアラガミ化したルーキーちゃんや黒ハンニバルとのラストバトル。

無口さんは最終戦不参加だったのでまだリンドウさんの生還をその目で見ておりません。

なのに感応現象でレン君ちゃんが消える光景まで見てしまい。
おまけにルーキーちゃんの中に残ってるアラガミ化したリンドウさんと同じ気配まで感知。

そういえば気を失う直前にレン君ちゃんを守り切れなかったとも嘆いてましたね。

持ち上げてから叩き落とされたので抵抗失敗。
SAN値チェックのお時間です。


-After_Mission-Explained1

「--起きてください、リーダーさん。」

 

…聞き覚えのある声が、呆れたように呟きながら私の肩を揺り起こす。

 

「…レン…?どうして、何時の間にアナグラへ…?」

「"何時の間に"はこっちの台詞です。まったく貴女って人は、わざじゃないっていうのはわかってますけど。」

 

覚醒しかけのため鈍くはあったものの。

声かけに反応を返した私を見て、レンがやや呆れたように言葉を続けていきます。

 

「寝起きの直ぐで申し訳ありませんが、とりあえず状況の認識合わせをしましょうか。まず貴女がいるこの場所についてですが…」

 

言いながら辺りを見回すレンの姿に。

私は軽く頭を振って意識をはっきりさせながら、追従するように周りの景色を確認していきます。

 

月明かりに淡い銀光を反射させる雪景色。

先程まで自身が居たアナグラの救護室とは似ても似つかない自然の光景。

 

「…間違いなくアナグラではありませんね。というより感覚的にですが、もしかして感応現象でリンドウさんの意識に入った時と同じやつだったりしますか?」

「御名答です。流石に二回目となれば貴女もすぐにピンと来たようですね。」

 

アラガミ化したリンドウさんを救い出すべく。

感応現象によって消えゆく意識の中へ潜入し、心身を蝕むアラガミを倒した時に体験したあの感覚。

 

現実とは明らかに異質なものの、夢と断じるには余りにも質感を伴った不思議なあの世界は今もまだ記憶に新しい。

 

ただ仮にそうだとするといくつか辻褄が合わない事柄が浮かび上がってくる。

 

「あれ?でもリンドウさんの時はオラクル細胞に意識ごと飲み込まれかけてたからこそ起こった現象でしたよね?それにあの時はただお互いの身体が触れ合っただけでもないですし…」

 

前提として。

感応現象は未だ謎の多い現象ではあるものの、どのような事象が起こるのかはおおよそ体験を通じて明らかになってきている。

 

主なものとしては接触者同士の間で、相手の記憶にある過去の体験を追体験するというもの。

 

まるで当事者の中に入り込んだように主観で当時の様子を体験出来るが。

言ってしまえばこれはリプレイと同じようなものであり、体験者の意思で何かを変えると言った事は行えない。

 

またあの時は制御を失ったオラクル細胞によってアラガミ化したリンドウさんのコアと、自身に適合しない--即ちリンドウさんに適合した神機由来のオラクル細胞によってアラガミ化した私の腕。

これらが直接触れ合った事で通常発生しうるものより遥かに強いレベルの感応現象が発生し。

追体験どころか相手の潜在意識化にまで入り込むに至った結果、果ては体内に巣くっていたアラガミの意思とも呼べる存在を倒す事に成功した。

 

そこから行くと、先程私が行った行為と言えば。

 

「…まぁ確かにアリサの時と違って、ちょっと頬をつねったりはしましたが。」

 

いえ、言いたい事はわかりますが少し言い訳させてください。

 

だってあの人、大丈夫って言ったくせにあんなボロボロになるまで無茶してたんですよ?

 

確かに私だって多少の無茶はしましたのでそこまで声を大にして怒る事は出来ませんが。

それでも嘘ついてまで無茶したりなんかしていません。

 

…ちょっと内緒にしたままだった感はありますけど。

 

ただ私は帰投した後ソーマやアリサに物凄くこっぴどく怒られたというのに。

共犯とも言えるあの人はというと、こんな風にスヤスヤ素知らぬ顔で眠り込んでいたというんですよ?

 

命に別条がなかった事自体は私も心の底から良かったと思える事ではありますが。

こうして改めて無事を確認してみると、私だけ怒られているという事実にモヤっとしまして…

 

あ、ちなみに思いの外柔らかかったです。

そのせいで思ったよりギュってやってしまったのは内緒です。

 

閑話休題、話を戻しましょう。

 

ともかく"接触の強さが関係する"と言われれば多少はわからないでもありませんが。

流石にそれで意識下にまで入り込む程の感応現象が起こるとまでは思えません。

 

ところがそう思っていた矢先に返ってきたのはレンからの予想外の指摘。

 

「いえ、合ってますよそれ。」

「え?」

「正確には触れた方の腕が関係していますね。貴女、右と左どっちの手で彼に触れました?」

 

別に印象に残るような行為でもないので朧げな記憶ではあるものの。

再現しろと言われたらまたそうするであろうと断言出来る程度には明確な理由が説明できる。

 

「左手ですね。右手だと普通に腕輪が邪魔になりそうでしたし。」

「という事はつまり…」

 

おもむろに、左手を持ち上げてみせながらそう答えると。

きっぱりと断言するかのように即座にレンが言葉を告げた。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()。-

 

 

 

 

 

…あえて弁明させてもらうとするなら。

 

私がそれに気づいたのは今この瞬間であり。

同時に今この瞬間においても、この腕に全くの違和感は感じない。

 

当然この空間にくる直前。

即ちアナグラの救護室であの人の頬に触れた時は何の異変も生じていなかった。

 

 

 

 

 

なのに、今こうして持ち上げた事で自身の視界に入り込んだ私の左腕は。

 

 

「まぁ驚きますよね。自分の腕が何時の間にかアラガミ化してたりなんてすれば。」

 

…………………………………………………………………………………………

 

目を覚ました場所からそう遠くない場所にあった廃屋の中。

私は何度も確かめるように異形と化したその手の開閉を繰り返していく。

 

榊博士は言っていた。

私の体内のオラクル細胞そのものは極めて高い活性状態にあると。

 

それは見た目こそ平時のそれと変わりないように見えるものの。

体内では私自身と適合したオラクル細胞とそうでない細胞の両方が活性化しており、互いを喰らい尽くさんと鎬を削りあっている状態。

 

もし何らかの要因で下手に均衡が崩れてしまった場合。

リンドウさんのように即座に身体がアラガミ化し始めたとしてもなんら不思議な事ではない。

 

「…これってやっぱり、私の中に残っていたリンドウさんの神機のオラクル細胞が活性化して、私もアラガミ化が進行し始めたって事なんでしょうか?」

 

そんな風に考えている私の疑問に対し。

レンが安心させるかのように優しい口調で質問の答えを返してくる。

 

「活性化に関して言えばその通りです。でも安心してください、少なくとも僕がこうしてここに存在している間は貴女を喰らったりなんかしませんよ。」

 

"私を喰らわない"。

さも当然のように告げられるその言葉

 

レンの正体を知ってる身としてはそれに違和感はなく。

むしろ他ならぬ彼がそう言っている以上、当面は私がアラガミ化してしまうという心配はないのだろう。

 

「幸いあの時と違ってまだ時間には幾分余裕がありますが、あまり悠長にしているというのも何ですし。貴女の疑問に答える形で現状の説明をしていきますね。まず貴女がこの空間にやってきた理由ですが…」

 

-実はリンドウの時のように貴女の方からここにやってきたという訳ではありません。-

 

「正確には彼の意識に入り込んだのではなく、彼の方からこの空間に()()()()()()()というもの。…貴女が不用意に伸ばした手を文字通りいきなり掴んで、ね。」

「引きずり込まれた?それは一体どういう…」

 

レンの表現がいまいち理解出来ず。

私は率直に疑問に抱いた言葉を口にする。

 

現状、感応現象は当人の意思に関係無く発生し、お互いの記憶や深層意識を共有する。

確かに相手の同意を得ずにそれを行ったというのであれば、"引きずり込んだ"という表現もわからない気がしないでもないが。

 

「まず彼の状態についてですが。榊博士からどの程度、貴女との違いについて聞いていますか?」

「私との違いですか?たしか私は体内のオラクル細胞が高い活性状態にあるけど、あの人というとそうではないって…」

 

私の体内にはリンドウさんの神機…あえて言うならレンの物ともいえるオラクル細胞が残っている。

 

それにより元々自身に適合していた細胞と今なお互いを喰らい合っており。

相手から取り込んだエネルギーによってどちらも高い活性状態を維持し続けている。

 

対してあの人の方にはレン由来のオラクル細胞が残っていない。

 

迫りくるアラガミの群れを蹴散らす力を得るために、危険な方法で神機で捕喰した細胞を取り込み続けた結果。

自身の身体よりも先に自信を蝕むオラクル細胞の方が喰い尽くされてしまったからだ。

 

「貴方達も知っての通り、オラクル細胞には偏食傾向によって優先的に取り込もうとする、もしくは取り込みに消極的になるものが存在しています。後者につきましては一概にこれと言えるものはありませんが…前者についてはそれに該当する条件が大まかに二つ挙げられます。」

 

-一つは自身を進化させるべく、今まで取り込んだ事の無い未知の物質である事。-

-そしてもう一つは単純明快、細胞にとって()()()()()()()()()()()事。-

 

「オラクル細胞というのは言うなればエネルギー御馳走の塊。それが自身の目の前に置かれ、しかも自由に食べていいとあっては我慢する理由がない。」

 

-そして貴女達の中にある彼らはそれを口にした。-

 

-それはこれまで口にした何よりも美味であり。-

-文字通り喰らうほどに活力が溢れてくる滋養に満ちた代物。-

 

「…何だかお腹が空いてくるような話し方しますね。」

 

妙に美味しそうな表現で説明するレンに思わずそう言葉を挟む。

いえ、真面目な話だというのは理解してますけど。

 

先に聞いた話の通りならここはいわゆる精神世界であり。

現実の肉体のように空腹を感じる事はおそらく無いでしょうけど。

 

「ですが、重要な点なんです。何しろこれこそが貴女がこの空間に引きずり込まれた理由であり方法なのですから。」

 

 

 

 

 

-率直に言いましょう。-

-彼が感応現象によって、貴女がリンドウを助けたあの日の光景を見た結果。-

 

 

 

 

 

「彼と彼の中にあるオラクル細胞は貴女の中に残る僕を()()()()()()()()()()()()()と認識し--」

 

 

 

 

 

-左腕に僕を宿した貴女を、()()()()()()()()()()()と判断しました。-




リンドウさん生還を都合の良い現実と判断してしまったため。
それを裏付けするための悪夢がやってきました。

しくじってしまったあの日をもう一度。
全部喰い潰していきましょう。


長くなったので区切ります。
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