無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
読み辛いかもしれませんがご容赦を。
Q1.曇らせすぎでは?
A1.晴れるので大丈夫。
Q2.晴れた先には?
A2.
いつも通りの日常まであと少し。
あの雲を超えていきましょう。
「どういうことです?私がアラガミ化したリンドウさんというのはともかく、レンがリンドウさんを喰らったアラガミというのは…?」
レンから告げられた言葉の意味を理解出来ず、疑念を込めてレンに質問を投げ返す。
今私の左腕はあの時のリンドウさん同様。
人間のそれからは明らかに逸脱した異形を成している。
何故リンドウさんに見立てられたのかはさておきとしても。
見た目だけで言うなら私がアラガミ化した神機使いと判断されても別段不思議とは思わない。
だが気になったのはもう一つの方。
何をどう解釈すればレンがリンドウさんを喰らったアラガミと言う事になるのだろうか?
確かにレンの正体はリンドウさんが使っていた神機。
もっと言えば神機を構成するオラクル細胞が意思を持った存在とも言えます。
仮にあの人がレンの事をオラクル細胞そのものであると見立て。
腕輪による制御を失った事で暴走し、リンドウさんを蝕んだ--と言うのであれば一応わからなくもありませんが…
そんな私の考えを余所に。
レンから返ってきた言葉は--
「その質問に答える前に僕からも一つ質問を。貴女はリンドウの神機である僕との間で起こった感応現象によってリンドウの生存を知った訳ですが…不思議に思いませんでしたか?」
-どうして
「あっ…!!」
どうして今の今まで。
私はその事を疑問に思わなかったのだろう。
感応現象というのはあくまで当人同士の記憶や体験を共有しあうだけのもの。
どちらかがそれを知っている事が前提である以上、互いに知り得ない情報についてはどうやったところで知りようはずがない。
なのにどうしてレンは自分を手放した後のリンドウさんの様子を知っていたのか?
神機を失ったリンドウさんの姿を、何故私はレンとの感応現象で見る事が出来たのか?
その答えは至極単純。
言われてしまえば別に何の事はない。
「簡単な話です。端的に言ってしまいますと…
リンドウがまさにアラガミ化するその瞬間に。
…………………………………………………………………………………………
「--何…ですか、それ。つまりあの人、本当に最初から全部知ってたって事ですか。」
そもそもの事の発端は。
リンドウさんアラガミ化に苦しみながらも生きている事を知ったレンが動き出し。
私もまたレンを通じてそれを知り、リンドウさんを救うべく行動を開始したというのが始まりだ。
私がリンドウさんと遭遇する前にリンドウさんの様子を知れた理由。
それはレンとの間に起きた感応現象でその光景を見たからに他ならない。
ではレンは何時何処でその光景を見聞きしたのか?
私と同じように感応現象でその光景を見たのだとしたら、レンと感応現象を起こしたのは一体誰なのか?
先も述べたようにレンの本体はリンドウさんの神機だ。
私とアリサの時とは違い、物理的に接触出来る存在は本来リンドウさんをおいて他にいない。
加えて以前アネットとフェデリコが着任した時の光景を思い出すに。
恐らくレンの姿は私達以外の人には見えていない。
あの時はツバキさんにしては珍しいミスだとくらいにしか思っていなかったが。
そもそも存在を認識出来ていなかったとすればあの時の周りの反応にも納得がいく。
つまり人の姿をしたレンが誰かと接触する事はまず不可能。
恐らくあの頃にレンに触れる事が出来たのは--
例外的に神機本体と接触を行った人間。
即ち私とあの人のただ二人のみ。
そして私にまだ人の姿をしたリンドウさんと遭遇した事実が無い以上。
神機を失った後のリンドウさんと接触したのは誰かなど最早言うまでも無い。
「支部長の命令とか任務の途中で確信したとかではなく。最初から、最初から全部知っていての行動だったって事ですかっ…!」
確かにあの人の行動には最初から不審な点が多かった。
私の場合はレンとの感応現象によってリンドウさんの生存を確信し。
即座に榊博士とツバキさんに協力を仰ぎ、リンドウさんを救い出すために行動を起こした。
そこまでの間に一日たりとて間が開いた記憶はなく。
仮に私より先んじて動いている人間がいたとするなら、それは別の手段を以てリンドウさんの生存を確信していたんだと私は思い込んでいた。
が、こうして初めて事の真相を聞いてみればなんの事はない。
既にアラガミ化してしまったリンドウさんと接触していたが故に、ただ一人で秘密裡に事を片付けようとしていただけの事。
誰にも言葉を喋れない。
故に誰からも
「…上手くいっていたんです。殺すしかないと考えていた僕の想いを他所に、あの人は僕の期待をこの上なく望ましい形に裏切ってくれました。」
怒りに似た感情に身体を震わす私に。
レンが諭すように落ち着いた声色で言葉を続けます。
「貴女同様、リンドウの自我が残っている事を認識した事で介錯から救出へと目的を変更し。リンドウの元へ貴女を手引きしてくれた事で、リンドウを人間のまま生きて救い出してくれたおかげで…全ては最良の形へと落ち着くはずでした。」
-けれど肝心の僕が詰めを誤ってしまった。-
「殺してあげるしかないと諦めていた未来。それが思いもよらぬ形で実を結んだ事をもう一人の僕を通じて知ってしまい…ここ一番で取返しのつかない油断をしてしまった。」
先程と変わらぬ声色。
けれど何時の間にか後悔の色を帯びた声で、レンは私に続けます。
自分の正体はリンドウの神機そのもの。
リンドウが人の身のまま生還できたというのであれば、こうして
彼に迫る目の前の脅威も無力化されていよいよ憂う事も無くなった結果。
あの人の目の前で、
「私達はこうして生きて帰ってきたじゃないですか!それの一体何が不満だって!」
溜まり切った鬱憤が堰を切ったようにレンの言葉を遮り溢れ出す。
しかしレンは動揺する事なく静かに首を横に振り。
淡々と続きの言葉を私に返してきます。
「けれど、そこに僕はいなかった。」
「ッッ…!!」
「アラガミ化したリンドウは人の姿を取り戻し、貴女もリンドウを殺す事なく共に生きて帰ってきた。--けれど結果として、僕は最後まであの人と戦う事が出来なかった。」
-消えるその瞬間までキミと語らい、想いを交わした僕と違って。-
-一方的に伝えたい事だけを告げ、そのままあの人の目の前で意識を手放してしまった。-
「気が付いた時には全てが遅かった。貴女とリンドウが生きて戻ったという事実と共に、彼の心には仲間を失ったという事までも刻み込まれてしまった。」
-後に残ったのはどこまでも深い後悔と懺悔。-
-ただひたすらに己が無力を呪い続け、それでも絶望する事も諦める事も認める事が出来ず。今なお必死に彼は足掻き続けている。-
「全力を尽くし、最善を尽くし、天命を尽くし。しかしそこまでやったとしても望む結末をこの手に得られなかったというのであれば…それはあの人にとって、
そう言ってレンが一度言葉を止め。
私と真っ直ぐに視線を重ねた後、結論付けるようにこう告げました。
「故にこうして、貴女がここに引きずり込まれました。」
「リンドウと貴女の生還、それを最も害したであろう存在。即ちリンドウのアラガミ化に関わる全ての原因を文字通り根こそぎ喰らい尽くして--」
--今度こそ、これ以上誰一人失わないように、と。
【ノルン(NORN)と言う名のメタ補足その2】
最良の結末とは全員生存ENDの事。
現状ではレン君ちゃんが欠けてるのでフラグ消失中。
しかもルーキーちゃんはリンドウさんの方へ向かってしまうのでこのルートでは絶対に到達不可。
ターニングポイントは例の廃寺での戦闘。
ストーリーではハンニバル捕喰直後にアラガミ化していたので、もしかするともう少し早く討伐出来ていれば今しばらく猶予があったのかもしれない。
つまり規定時間以内にハンニバルを倒せば隠しルートへ分岐します。
長くなったので区切ります。