無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
実はこっちの方がネタ切れで書くのが遅くなっているというジレンマ。
唐突ですが。
レン君ちゃん曰く"半身"らしいですね。
「…結局の所、あの人はもう私とレンを殺さない限り止まれないという事になるのでしょうか?」
先の言葉からどれほど時間が経っただろうか。
あの後レンに促されて廃屋を後にし、無言でレンの背に従っていた私でしたが。
冷たい雪風に思考を落ち着ける事が出来たのか、ようやく意を決して彼に確認の言葉を投げかけます。
「根本的な問題は彼があの日、自分が間に合わなかったせいでリンドウがアラガミ化してしまったと思い込んでしまっている点に他なりません。それが本来存在しない筈の神機使い…即ち僕の事を仲間として認識した事と強く紐づき、ただ仲間を失った以上の絶望感に支配されてしまった。」
「…あれ?という事は私があの人にレンが生きている事を伝えてあげれば解決するのでは?」
レンの言葉に率直に感じた疑問を口にする。
感応現象を通じてとはいえ、レンはこうして私と会話を交わせている。
これを生きていると言わずして何というのか。
しかしレンから返されたのはそれを否定するかのような首を振る仕草。
「いえ、貴女がこうして引きずり込まれている以上、恐らく今の彼はアラガミと神機使いの区別がついていません。会話による説得はまず不可能でしょう。」
「むぅ…」
「ですが幸いにも、こうして僕と貴女が揃った事で奇しくもあの日の悪夢を再現するための舞台が整いました。であれば対話以外の方法で彼の無念を晴らしてあげる手段も無くはありません。」
「悪夢の再現?それって一体…」
返された言葉をオウム返しに聞き返す私の声を耳にし。
レンはアラガミ化した私の左腕に視線を向けながらさらに言葉を口にしていきます。
「意図した遭遇ではなかったとはいえ、彼はあの日アラガミ化寸前のリンドウと邂逅を果たしました。そう、その時のリンドウはちょうど今の貴女の腕がそうなっているのと同じ状態であったと言っても過言ではありません。」
腕輪の制御を失って暴走するオラクル細胞。
それは本来であれば人間などあっという間に喰い尽くされる事態であろうが。
感応現象で見たリンドウさんもまた、今の私がそうであるように何らかの理由でそれが抑制出来ていたのであろう事は想像に難くない。
「リンドウは彼女から分け与えられた偏食因子を保つためにより強いエネルギーを持つアラガミを狩り続け、遂に不死身と称されるアラガミ"ハンニバル"へと辿り着きました。…身体を蝕むオラクル細胞の侵喰に抗うため、進行したアラガミ化によって生み出された刃を神機のように振るい。リンドウはひたすらハンニバルのコアを喰らい、己が糧として生き凌ぎました。ですが…」
ハンニバル。
それはコアを引き抜かれても再生する程に強い生命力に満ち溢れたアラガミ。
その強靭なオラクル細胞はリンドウさんの偏食因子と反応して人間のまま生き抜かせたのと同時に。
喰われてなお朽ちる事なくリンドウさんの身体を蝕んでいった文字通り諸刃の剣。
「糧としていたのはリンドウの方だけじゃない。喰らわれたハンニバルのオラクル細胞もまた、自身が生き延びんとリンドウの中にあるオラクル細胞を喰らい始めた。」
「ッ!それってまさか…!」
レンの言葉に榊博士が言っていた事を思い出す。
私は今体内のオラクル細胞が非常に高い活性状態にあり。
その理由は体内にある二種類のオラクル細胞が相互捕喰を繰り返しているからだという。
そして荒野を彷徨っていたリンドウもまた、自身のオラクル細胞とハンニバルから取り込んだオラクル細胞が体内で互いに喰らい合いを始めた。
即ちその時のリンドウさんの状態は姿形だけでなく。
「理解しました、だから私がリンドウさんに見立てられたんですね。腕のアラガミ化という目に見える部分だけでなく、いわゆる感覚として感じる部分までもがあの時のリンドウさんと同じだから。」
「その通りです。共に生きる大切な仲間であると同時に、その仲間に牙を向けようとする仇の同類…彼にとって今の貴女はそのような存在に他ならない。」
私の言葉にレンが頷き、肯定するようにそう告げる。
しかしこれだけでは先の私の疑問に対する回答には至れていないため、私はさらにレンに話を続けます。
「あの人が今の私をどう見ているのかについてはわかりましたが…結局あの人は私の事はどうしたいのでしょうか?」
仲間と仇、これに対する反応は文字通り真逆のものになるであろうという事くらいは説明されるまでもなくわかる。
ならば問題は今の私はどちらに見られているのかという事だ。
仲間と見れば生かすのだろうし。
仇と見なせば殺すのだろう。
「無策で行けば間違いなく後者です。仲間を失った負の感情に満たされている今の彼が、少しでもアラガミと思しき存在を見逃す事はありえない。ですが--」
「--仲間を失ったという、
唐突に足を止めたレンが、こちらへ向き直って私の顔を見据えてくる。
気付けば辺りに建物の気配はなく。
何時の間にか自身が感じていた以上の距離を進んでいたのだろう。
しかしそんな周りの様子よりも気にかかるのは。
レンの姿越しに視界に映ったとあるもの。
「っ!?あれは、私…!?」
それはうつ伏せに地面に横たわっているため、顔こそここからでは確認出来ないものの。
髪色や着ている衣服、そして何より今の自分と同じようにアラガミ化した左腕が。
顔すら見えない得体のしれないナニカは自分であると雄弁に語りかけているように感じられる。
「正確にはリンドウに見立てられた形代。あの人に掛けられた呪いを解くに当たって用意された、都合の良い
「…さっきも気になったのですが、何故"悪夢"何です?こういうのって普通"都合の良い夢"とかになるんじゃないんですか?」
レンの言葉の意味がイマイチ飲み込めなかったため、率直に感じた疑問をぶつけてみる。
「…難儀な人なんですよ。誰よりも変えれぬ過去を変えたいと願い、変えれぬならそれこそ
-いざ好きに変えれるとなったら"そんな都合の良い世界はありえない"と。-
-こんな風に歪な絶望を作り出してまでして無理矢理落し所を生み出そうとする。-
「本当、リンドウよりもずっと手のかかる困った人ですよ。」
言いながら、困ったようにレンが苦笑する。
あの日、別れを告げるレンが私に向けた時と同じ表情で。
「…だからこそ、あの人にはこれからも貴女達と共に歩んでほしい。役目を終えた僕に縛られるのではなく、あの人が自身を捻じ曲げてすら歩むと決めた先の世界に。」
--話し終えたレンが、再び振り返って私の姿をしたナニカへと歩を進める。
それは生きているのか疑問に思うほど全く身じろぎする様子はなく。
レンが傍らにまで近寄ってなお一切の反応を見せようとしない。
「--ここは彼の精神世界。夢の世界に等しいそれは、良くも悪くも彼が望んだものを映し出す。」
言いながら頭のすぐそばに片膝を付き。
撫でるかのようにレンが手を伸ばした次の瞬間。
-ゴキリッ。-
「ッッッ!!??レンッ!!!!」
突如私の姿をした紛い物が突如として上半身を持ち上げて。
アラガミ化した左腕でレンの首に掴みかかり、一瞬のうちに鈍い音を奏で上げる。
「大、丈夫です、リーダーさん。僕の正体は知っているでしょう?それよりも危ないから離れて…」
気道を潰され物理的に消え入るような声しか出せなくなりながらも。
レンはさも何でもないと言わんばかりにその腕を引き剥がすために駆け寄った私の身体を押し返す。
「…例え自身の手で殺すという結末になろうとも、あの人はリンドウを救おうと動き続けていた。そしてアラガミ化してなおリンドウが意識を保っていると知ってからは彼を生きていると断言し、最後まで諦める事無くその生還を願い続けてきた。」
手の届かない所まで私を押しのけたレンの手が、今度は自身の首を締め上げる腕へと両手を添える。
-グシャリ!!-
そして次の瞬間、お返しと言わんばかりに掴んだその腕を握り潰す。
「願いは叶い、リンドウは無事に生きて帰ってきた。けれど肝心の僕があろうことか、あの人の目の前で死ぬような真似を見せてしまった。」
-グシャリ!!-
「最良の結果ではなくなってしまったんです。あれほど望んだリンドウの生還を、この人は
-グシャリ!!-
「--そしてそれはあの人にとって、
-グシャリ!!-
-グシャリ!!-
-グシャリグシャリグシャリ!!-
独り言のように言葉を続けながらも。
一言毎にレンがその手に掴んだ腕を握り潰す。
その光景は正に神機でアラガミを捕喰する様のそれ。
私達が振るうように捕喰形態へ変形させた訳でもなく。
人の腕のまま、人の姿のままでアラガミの腕を一方的に貪っていく。
「--ッ待ってレン!身体が…それ以上捕喰したらいけないっ!」
眼前に広げられる凄惨な光景に言葉を失って茫然と立ち尽くしていた私でしたが。
貪るにつれてみるみる異様な変形をし始めるレンの身体に気付き声を上げる。
しかしそれでもレンは止まらない。
喰い千切られた腕は僅かな筋を残し、かろうじて本体に繋がっているような状況。
レンの首を締め上げる事は最早叶わず、逆にここは喰らい尽くしたと言わんばかりにレンの手が私の姿を形取る何かの顔に掴みかかる。
「ハンニバルを喰らって生き延びていたリンドウでしたが。あの日ついにそれは限界へと達し。最も多く取り込んだ取り込んだ因子に従って同じ形態へのアラガミ化を果たしました。」
その言葉と同時にレンの指が掴んだものを握り潰す。
それと同時に突如不快な音と共にレンの背中が裂け。
得体の知れない泥状のナニカと共に
「レンッ!!!!」
「都合が良いだけの理想なんか認めない。けれど絶望と諦観に支配され、希望を失う事はそれ以上に許されない。--であるならば。」
「悲しみも絶望も、神機の僕が全て喰らい尽くしてみせる。…僕は、リンドウの神機だ。」
-グシャリ!!-
「
…………………………………………………………………………………………
「…長らく偏食因子を投与する事が出来なかった神機使いは、早晩己が身をオラクル細胞に侵されて、アラガミへとその身を堕とす。」
「--レン…その、姿は…グウゥッ!!??」
捕喰を終えたレンがゆっくりとこちらへと向き直る。
私が状況を確認すべく質問しようとしたのと同時に突如として堪え難い激痛が左腕を走り抜け。
私は言葉を紡ぐ途中であったにも関わらず、思わず苦痛に腕を押さえて頭を垂れてしまう。
「かつて苦楽を共にした仲間のアラガミ化。そしてアラガミ化したかつての同志が、自身の仲間達を喰い殺す。あの人にとってそれは、今回の事における最悪の結末に他ならない。」
-けれどあの時リンドウが置かれていた状況を考えれば、それは避けられない現実であり。-
-故にこの前提が無くしては、彼が望んだ理想の結末を迎える事は叶わない。-
激痛に苛まれ私の額から汗が滴り落ちる中。
レンが言葉と共に近寄ってくる気配を感じる。
「結局無駄になってしまったと思っていたけど、まさかこんな形で使う機会がこようなんてね。」
「レン…!これって、まさか…!!」
その痛みはかつて私が神機使いになって初めて経験したあの痛み。
私の両親を殺した忌まわしいオラクル細胞をこの身に受け入れ。
ゴッドイーターとしての私がこの世に生まれ
「アラガミ化した神機使いは、本人が使っていた神機でしか殺せない。そしてこの刃はリンドウを殺すために、僕が僕自身を基に生み出したもの。」
-アラガミ化した神機使いを殺すためには、本人にしか適合しなかった神機を使う必要がある。-
-しかし自身に適合しない神機を用いれば当然、介錯を行った当人も神機に侵喰されてアラガミ化してしまう。-
「--けれど、僕の半身をその手に宿すリーダーさんなら、きっと。」
未だ顔を上げられず、視線を合わす事も出来ない私に対し。
レンは言葉を紡ぎつつも、アラガミ化した私の手に優しく手を添える。
すると先程まで感じていた激痛が、まるで嘘のように途端に落ち着き。
痛みが引くのを見計らってレンが腕を離すと、余裕が出来た私の思考が自分の左手の中に握られているものをはっきりと認識する。
黒を基調とした刀身に切られた溝から映る鮮やかな紫を魅せる、どこかあのアラガミを思われる神機。
-ドゴオォォンッッ!!-
「ツッッ!!??」」
「さぁ、これで全てのお膳立ては出来ました。後は舞台の幕を引くだけです。」
突如として響き渡る爆撃音。
突然の事に完全に思考が中断されて固まってしまう私を他所に。
レンは飛びのくようにその場を離れ、神機を持った私と相対する。
そこに居たのは私の良く知る神機使いとしてのレンではなく。
あの日リンドウさんと共に刃を交えた、
「--遅くなりましたけど、先程の質問に答えます。"彼がアラガミと見なした貴女をどうしたいのか?"ですが…アラガミ化によって仲間同士で殺し合いになりかねない懸念がある限り、彼は決してアラガミ化の可能性を持った貴女を見逃す事はないでしょう。」
-僕や貴女が覚悟していたように、誰かがアラガミ化した貴女を殺す事になるかもしれない。-
-もしくは先程のリンドウのように、アラガミ化によって我を失った貴女が仲間を殺してしまうかもしれない。-
「その危険性がある限り、彼は決して迷いはしない。
-…けれど。-
「その可能性は
-後はリンドウの形代たる貴女が生きたまま。-
-あの時彼が戦ったアラガミの形代となった僕を討伐すれば。-
「彼は晴れて貴女が掴み取った結末に辿り着く事が出来る。僕という神機使いを失ったという過程も、
「なっ…それじゃ結局レンが…クゥッ!?」
自分が消えれば全ては丸く収まると言わんばかりのレンの言葉に思わず声を荒げるも。
続く言葉は振り抜かれる腕によって遮られる。
-ガキイィィンッ!-
そして咄嗟に翻した体勢を整えようとするのと同時に。
耳障りな高音が辺りに響き渡る。
そう、それは数こそ多くは無いけれど。
私も幾度か耳にしたことがある。
「なっ…そん、なッ…!!」
顔を上げ、乱入者の姿を確認して絶句する。
真紅に染まった青い瞳。
先程の砲撃の主である事を指し示す、左手に構えた銃形態の新型神機。
そして何より生き物のように捕喰形態を蠢かせる、
その表情に感情の色は感じられない。
何時もと変わらぬ、無口無表情の鉄仮面。
しかしその視線は瞳の色を表すように、これ以上ない程の明確な殺意を帯びていて。
「悪夢は既に結実した。言い換えればこの後にどれほど夢物語じみた結末が訪れようとも、この人はそれを拒絶する事は出来ない。」
-"そんな都合の良い事はありえない"と否定したのは彼自身。-
-自ら悪夢も欲したのは他ならぬ彼だ。-
「都合の良い事同様に、
アラガミと化したレンが腰を落とし。
はっきりと戦闘態勢に移行する。
同時にあの人もまた神機の銃形態を解除し。
両手に刃を携えて目の前のアラガミと相対する。
「…リーダーさん。最後に一つだけ、泣き言を聞いてもらっていいですか?」
あの人と相対したまま、レンが私に話しかける。
「僕の目的はさっき話した通りです。そのためにここで僕が全てを引き受けていなくなる…その事に対して悔いや後悔はありません。」
-けれどどうしてですかね?-
-僕は神機だから、この辺りは人間と違って割り切れると思っていたんですけど。-
「…欲を言えばもう少しだけ、
言い終えると同時にレンが弾けるようにあの人へ飛び出し。
それに呼応するようにあの人も神機を振りかぶり、レンの頭上へと振り下ろす。
--気付いた時。
--私は神機とアラガミ化した腕をもって両者の間へと割って入っており。
感情を感じさせない真紅の瞳が
狂化EX、思考回路が固定中。
今更ですがルーキーちゃんの容姿を作中で説明したかどうか忘れてしまいました。
もし書いてなければ前書きとかにでも書こうと思うのですが如何でしょうか?
ルーキーちゃんの容姿の詳細…
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知りたい
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知ってる(書いてあった)
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BGM:煉獄の地下街