無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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追記:
感想欄でご質問頂いていたので後書きのメタ話を補足に差し替えました。

ラストバトル直前。
長いので休み休み読むとベネ。

戦闘前にしっかり()()()()()()()()()()()()()ね。

Q1.今のルーキーちゃんは?
A1.喚起率400%。

Q2.稼働限界時間は?
A2.300秒。

Q3.それを過ぎると
A3.オーバーヒート。

神機マシンに力が漲ってくるとか言ってはいけません。

凌げば勝ちです。凌げば勝ちです。
大事な事なので二回言いました。

誰一人と死なせない殺さないからこその大団円。
このルートに敗北宣言などいらないのです。


-After_Mission-Explained4

アラガミの腕と神機の一閃が。

示し合わせたように私に向かって振り抜かれる。

 

「グゥッ…!!」

 

防ぎこそしたものの真面に耐える事までは叶わず。

私は成すすべなく木っ端のように壁際まで身体ごと吹っ飛ばされてしまう。

 

死に体となった今追撃を受ければタダでは済まない。

 

全身の苦痛を押し殺し、何とか体勢を立て直す。

しかし五感を済まして身構える私を他所に、予想していた追撃が放たれる気配が感じられない。

 

『…っ今ですリーダーさん…!!早く、この人と一緒に僕をっ…!!』

 

戸惑う私に投げられる声に急ぎ顔を上げると。

あの人の神機が異常な蠢きを見せる捕喰形態で、ハンニバルと化したレンの左腕に喰らいついている光景が飛び込んでくる。

 

本来であれば神機使いの身体能力を以てしても全身の力を込めて制御するその形態。

それを両手どころか片手で完全に制御しつつ、もう一方に握った神機の刃をレンに振り下ろす。

 

私やアリサと同じ、ブレードタイプの刀身。

 

普段あの人が使っているバスターブレードに比べれば軽量とはいえ。

凡そ私達が両手で斬りつける時と遜色ない速度を伴ってレンの頭上へと振り下ろされる。

 

 

-ガキイィィン!!!!!!-

 

 

が、あわや直撃という所で横から殴りつけられて目標を外し。

返す拳で続けざまにあの人の身体を殴り飛ばす。

 

音から察するに神機で防ぐ事には成功している。

 

しかし身の丈を超すアラガミの一撃が軽いはずもなく。

先程の私同様、あの人の身体はそのまま空を飛ばされ、先にあった木造物へ叩き込まれる。

 

「ユウマさんッ!!」

 

言葉が返ってこない事はわかっていつつも。

思わず安否を確認するようにあの人の名前を叫ぶ。

 

『大、丈夫です…当たる直前に、自分から後ろに飛んでました…。見た目よりダメージはない筈…それよりも…ッ!!』

「ッレン!やっぱりレンも、アラガミ化しても意識は残って…ッッッ!?」

 

-ブォンッ!-

 

あの人の代わりに答えるレンの声に振り返り口を開く。

が、間髪入れずに繰り出された拳を回避するために私の続きの言葉が遮られる。

 

「ッレン…!!」

『気を抜かないでリーダーさん…!こうする必要があるとはいえ、僕も思ったより加減が出来そうにありません…!』

 

言いながらハンニバルレンが右手を上げて何か構えるような仕草をとり。

次の瞬間、紫炎で作られた槍がその手の中に握られる。

 

『ただ殺されるだけじゃダメなんですッ…!()()()()()()()貴女達を喰らおうとした果てに死ぬのでなければ、この人は決してこの奇跡を認めないっ…!』

「そんなッ…!!」

『だから、リーダーもその神機で僕をッ…!』

 

言いながらレンが飛び掛かるように手にした槍を私のいる位置に突き刺してくる。

 

私はそれを寸前の所でいなし。

斬りつけるべきか僅かな時間迷った後、そのまま何もすることなくレンの足元をすり抜けて距離をとる。

 

跳ねるように振り返って体勢を立て直した直後。

突如目の前のレンの背中で爆発が起こる。

 

何が起こったのかわからず思考が一瞬硬直する。

そして状況を理解した後、答え合わせのために背後の人物を確認する。

 

そこにいたのは無口無表情の鉄仮面。

 

腕輪とコードで直結された旧型神機を肩に担ぎ。

六本の銃口から煙をたなびかせながら、新型神機をこちらに向けている神機使いの姿。

 

「ッ撃たないでください!あれはレンなんです!」

 

思わず叫び、前に出る。

途端私の後方を差していた銃身が明確に私の正面へと突き付けられ--

 

 

『リーダーさん離れてッッ!!!!』

 

 

-ズガガガガガガッッッッ-!!!!!!

 

 

後方から突き飛ばされた身体が宙を舞う。

 

反射的に身を丸めて衝撃に備える中、頭上…否、頭の方から激しい銃声と甲高い金属音が鳴り響き。

全てを聞き終える前に肩口から地面に叩きつけられ、思わず苦悶の声が洩れる。

 

『気を付けてくださいッ…!貴女は彼が引きずり込んだリンドウの形代。良くも悪くも、貴女はあの時のリンドウに他なりません…!』

 

息も絶え絶えに必死で起き上がり状況を確認する。

 

そこで繰り広げられていた戦いは。

私の知るアラガミと神機使いの戦いとは遠くかけ離れたものだった。

 

空気を裂く轟音と共に、ハンニバルの尾が振り抜かれる。

 

人間どころか車ですら粉砕するその一撃。

まともに食らえば例え装甲で完璧に防いだとしても木っ端のように吹き飛ばされる--筈なのに。

 

 

-ズシャリッ-!!

 

 

あの人は吹き飛ばされるどころか正面からバスターブレードで切り払い。

間髪入れずに隙を晒した無防備な背中にロングブレードを叩き込む。

 

「レンっ!!」

『平気、ですッ…!そんな事より、何を大人しく見ているんですかリーダーさんッ…!早くこの人に倣って僕をッ…グゥッ!!』

 

向き直り、反射的に身構えて防御態勢を取るレン。

しかしほぼゼロ距離から放たれたインパルスエッジによってその防御はこじ開けられ、その隙間に片手とは思えない速度と勢いでバスターブレードの刃が叩きこまれる。

 

もはやどちらがアラガミなのかわからない。

 

先にレンが言ったように決してハンニバルの動きも鈍っている訳ではないのに。

あの人は明らかにアラガミを上回る人外の力で一方的にレンを蹂躙していく。

 

 

このままではレンが死んでしまう。

しかし、しかし一体どうすればいい?

 

レンがアラガミとして死なない限り、この人は現実世界で私達にその刃を刺し向けてくる。

そしてレン自身も既にハンニバルへとその身を堕としている以上、もう元に戻す方法なんて--

 

 

-『悪夢は既に結実した。言い換えればこの後にどれほど夢物語じみた結末が訪れようとも、この人はそれを拒絶する事は出来ない。』-

 

 

(…いえ、待ってください。)

 

 

-『"そんな都合の良い事はありえない"と否定したのは彼自身。』-

-『自ら悪夢も欲したのは他ならぬ彼だ。』-

 

 

(そんな…でも、もしその言葉もまた正しいのだとすれば…)

 

 

-『都合の良い事同様に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。悪夢に釣り合うだけの奇跡を、貴方には是が非でも受け取ってもらいます。』-

 

 

(…出来るかもしれない。文字通りの都合の良い奇跡…私はそれを知っている!)

 

 

私がそう結論に至るのと同時にレンの脚があの人のバスターブレードに切り払われ。

体勢を崩したレンがあの人の前に崩れ落ちる。

 

幸い切断には至っていないものの、大きなダメージを負ったその脚ではもう俊敏な動きを期待する事は出来ない。

 

そしてその場から離れられなくなったハンニバルレンの頭上目がけて。

あの人がロングブレードの刃を振り上げる。

 

振り下ろすであろう先には片膝を付くレンの頭部。

腕でガードこそしているものの、あの馬鹿げた力で振り下ろされたなら今度こそレンも無事では--

 

 

 

 

 

「ウアアアアアァァァァァ!!!!!!」

『…ッッ!!いけないリーダーさん!!その腕を彼に見せちゃ駄目だ!』

 

 

 

 

 

-キイィン!!!!!!-

 

 

 

 

「ッッッ!!!!!!!?!?!?」

 

例えるなら感情が爆発したとでもいうのだろう。

 

気付けば私は神機を振り被るあの人に向かって駆け出し。

咆哮と共に一瞬で間合いを潰し、人ならざる力を以て振り下ろされた刃を切り払っていた。

 

………

 

レンに迫る凶刃を退けた私は、そのまま庇うようにレンを背にあの人の前に立ちはだかる。

 

あの人はというと剣撃を切り払われた事で崩れた体勢は既に立て直しているものの。

先程のような猛攻を再開する様子はなく、真っ直ぐに真紅に染まった青い瞳をこちらへ向けている。

 

その視線の先にあるのはアラガミ化した私の左腕。

 

『違うっ!リーダーさんじゃない!倒すのは僕の方だ!』

 

身体を震わせながらも、腕を支えにハンニバルレンが強引に立ち上がり。

同時にあの人の意識が警戒と共に背後のレンへと向けられる。

 

 

-ザスッ!-

 

 

「…ごめん、レン。でもさっき攻撃されたからお相子って事で。」

 

が、ふらつくレンの膝目がけて剣戟を打ち込むと。

ダメージが蓄積したその足はいともたやすくバランスを崩して倒れ込み。

それを確認したあの人の視線が再び私の左腕へと戻っていく。

 

『ッ!?リーダーさん、斬るなら足じゃなくてコアをッ…!』

 

斬られた事にではなく、斬った場所に対してレンが文句を言う。

しかし私はその言葉に耳を傾けるではなく、斬った際に神機から感じた手応えに己が結論に確信を抱く。

 

間違いない。

レンは、()()()()()()()()()()()

 

体勢を崩す意図は確かにあった。

同時に斬るつもりなども毛頭なかった。

 

そして結果、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

ならば今、私が刃を向けてでも止めるべき相手は--

 

 

「…そんなにこれ左腕が気になりますか?」

 

改めてレンから渡された神機の感触を確かめながら。

レンの前からゆっくりと進み出ながら言葉を紡ぐ。

 

「…リンドウさんの介錯に向かう時、私貴方に泣き言を漏らしちゃいましたよね。"覚悟は出来ていたつもりだった。”…けれどそれでもなお、"アラガミに成り果ててたとしても、リンドウさんを殺したくない"って。」

 

見せつけるように、左腕を軽く肩程に掲げ、

未だ神機を手に固まったままの、あの人の虚ろな青い瞳に語り掛ける。

 

思い出されるのは出撃直前に交わしたあのやりとり。

 

そうするしかないと諦め。それこそが最善なのだと自分を洗脳し。

あまつさえ思い出したように自身の原動力まで引っ張り出して。

 

それでもなお私は醜態を晒した。

 

私以上に覚悟の決まった人間の、文字通り仲間を倒してでも目的を達成するという躊躇いの無さ。

 

それに対し、その覚悟を目の当たりにした私の取った行動はというと"自身の覚悟に対して背を押してもらう事を請う"という不甲斐無さ。

今更ながら自分の覚悟の弱さに顔を覆いたくなる気分だ。

 

「結局のところ、私の覚悟はその程度だったんです。自分が犠牲になるならまだしも、誰かを犠牲に何かを成す程の覚悟は無い…まったく、介錯する気だったリンドウさんはおろか、咎めに来たソーマにスタンガンまで押し付けた貴方と比べたらホント情けない話ですよね。」

 

--けれど。

 

「今はあの時、泣き言を言って本当に良かったと思ってます。」

 

あの時この人に泣き言を言ったおかげで。

私はリンドウさんを殺すという結末を否定する事が出来た。

 

「ただ背を押されなかっただけではきっと私は納得しなかった。何だったら押されるまで泣き言を言い続けていたかもしれません。」

 

でも、あの時。

 

 

-大丈夫だ。-

 

-何も心配するなルーキー。-

 

-全て、全て上手くいく。-

 

 

「わかりますか?貴方のおかげなんです。この言葉があったからこそ私は最後まであきらめなかったし、結果私とレンでリンドウさんを蝕んでいたアラガミを倒して…皆、皆生きてアナグラに帰ってきたんです。」

 

リンドウさんを介錯するためにレンが差し出した神機を受け取り。

アラガミ化したリンドウさんのコアをこの目で確認し。

 

ハンニバルアラガミから、リンドウさんというコアを引き抜くために。

神機ではなく、アラガミ化したこの手を伸ばし。

 

見事リンドウさんを皆の元へ救い出す事に成功した。

 

「…だから、もういいんです。レンはリンドウさんを蝕んだハンニバルなんかじゃない。だから、殺す必要なんて何処にも無いんです。」

『…リーダーさん。貴女の思いはわかりました。もしこの人がその結末を受け入れられるというのであれば、僕が死なずとも僕の目的は達成されると言えます。』

 

言い終えて。

レンの言葉と共に掲げていた左腕を下ろし。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

『…けれど、無理なんです。それが受け入れられない人だからこそ、この人は()()()()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

この人は私が話している間、頷くでもなくただ黙って話を聞いていた。

 

神機を手にし。

アラガミ化した私の腕を見つめたまま。

 

喰い殺すと言わんばかりの重圧を帯びた殺意を私に浴びせ続けながら。

 

「えぇ、でも私は諦めるつもりはありません。レンはもう知ってると思いますけど…頑固なんですよ、私。」

 

諦めと絶望の入り混じる声色で話すレンとは裏腹に。

私はそれこそ普段のミッションと変わらない様子で言葉を返して見せる。

 

気付けばアラガミ化した左腕はまるで心臓のように強く脈動しており。

まるで血液が巡るかのように全身に力が満ち溢れていく。

 

「きっと私は今も仲間を介錯するリンドウさんを殺すという覚悟は持てていないと思います。けれどその代わり、()()()()()()()()()()という覚悟であれば、私は誰にも負けません。」

 

だからこそ。

私は決して諦めない。

 

この人があらゆる困難をその覚悟を以て踏み越えて行ったのと同じように。

 

………

 

--目の前の神機使いが地面に神機を突き立て。

空いた手を胸元に突っ込み、乱雑に何かを取り出し口に含み、嚥下する。

 

程なくして右手に持った神機の捕喰形態が蠢きを増し。

同時に目の前の人物が発するプレッシャーも目に見えて重みを増していく。

 

 

『--駄目だ、逃げてくださいリーダーさん!貴女だけは間違ってもこの空間に囚われる訳には…!』

 

後ろから必死にそう訴えかけるレンに耳を貸さず。

私は目の前の神機使いに全神経を向ける。

 

この人は最初ハンニバルと化したレンをターゲットにしていた。

 

それはレンの話からそれはオラクル細胞に侵喰されたリンドウさんがアラガミへと至った姿。

当然それを知るこの人からすれば明確な介錯の対象に他ならない。

 

だからこそ私はこうして前に出てきたのだ。

 

単にレンを庇い、この人に話をするために前に出てきた訳ではない。

 

オラクル細胞に腕を侵喰され、アラガミへと至る寸前のリンドウさん。

その時と同じ状態の私が目の前に現れれば、きっと。

 

そして私の予想通り、この人は私をリンドウさん--

即ち、介錯すべき対象と見なして意識を向けた。

 

あの時のように()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

あの時のように神機と腕輪をコードで繋ぎ、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

アラガミとして、文字通り私を喰い殺しに来る。

 

 

『リーダーさん…!!』

「--大丈夫。」

 

 

 

 

-何も心配しないでレン。-

 

 

 

 

 

「--全て、全て上手くいきます。」




以下現在の状況説明。

Q1.ここはどこ?
A1.無口さんの夢(意識)の中。
リンドウさんの時と逆でルーキーちゃんの意識が引き摺りこまれました。

Q2.皆の状態は?
A2.それぞれ以下の通り。
 レン君ちゃん:ハンニバル化してる。リンドウさんがタツミ達と遭遇した時みたいに意識はあるけど完全には制御出来ていない状態。
 ルーキーちゃん:侵喰リンドウさんのルーキーちゃんVer。左腕があんな感じになってます。
 無口さん:"嗤う鉄心"と"精神汚染(兇)"、お好きなほうをどうぞ。
狂化は付いてないので安心ですね。

Q3.ルーキーちゃんアラガミ化しそう?
A3.Nein(いいえ)。ラケル先生みたいな状態。
あと神機(レン)と対話済みですね。

Q4.夢の中で倒され(負け)たら?
A4.レン君ちゃん「どうなるかわからない。(本編より)」
意識だけ持ってかれてるので死にはしないけど目覚めなくなりそうですね。
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