無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
Q1.ルーキーちゃんの装備は?
A1.Anotherレン君ちゃんと同じ侵喰ハンニバル装備。
Q2.やられちゃったら?
A2.当然バッドエンド。
Q3.勝っても?
A3.選択肢ミスったらバッドエンド。
Q4.もしかしてマルチバッ…
A4.Nein(食い気味にいいえ)。
トゥルーエンドは地雷原の果てにこそ掴みとれるもの。
ルーキーちゃんが掴んだ奇跡、躓かせる訳にはいきません。
共にエンディングを見に行きましょう。
風切り音を響かせて、少女の頭上数センチをロングブレードの刃が通り過ぎる。
舞い落ちる数本の髪を視界の端に捉えながらバックステップで距離を取る彼女だが。
鍔の役割も兼ね備えた銃口が自身に向けられているのに気が付き、直ぐ様横転。
直後直前まで自分がいた場所に向かってオラクル弾が多数着弾し雪煙を上げる。
-笑えませんよ。何時の間にそんな射撃上手になったんです、かッ…!-
苦笑いとともに紡がれる皮肉気味な軽口を黙らせるように。
今度はバスターブレードが文字通り唸りを上げて振り下ろされてくる。
大型のアラガミですら両断する重量を生かした渾身の一撃。
その重量と勢いを止める術は彼女には無く。
再度その場を飛び退いて火急の場から避難する。
『リーダーさん、どうしてッ…!』
地面に伏しつつも、傷付いた身体を肘で支えながら。
遠巻きに戦いを見つめるアラガミから、誰に聞かせるでもなく疑問の言葉が漏れ響く。
『どうして、一太刀も反撃をしないんですかッ…!』
…………………………………………………………………………………………
暴風のような猛攻を紙一重で避け続けながら。
不意に何時だか一緒になったミッションの事を思い出す。
訓練を終えての初めての実戦。
それは私にとっては、夢にまでみた悲願到来の日でもあった。
アラガミによって唐突に奪いさられた家族との平穏な日々。
その現実を受け止められるだけの強さは私にはなく。
ただひたすらに家族の仇を殺す事だけを思う事で心の平穏を保ち続けてきた。
そうしてようやく訪れた復讐の時。
自身が望み続けてきた想いを解き放つかのように、私は思う存分アラガミを神機で喰い殺した。
斬って、千切って、撃ち抜いて。
徐々に疲労で満足に動けなくなっていき。
満身創痍になりながらもその殺意が薄れる事は無かった。
しかしそんな復讐劇は同行する神機使いの手によって強制的に幕を下ろされる。
殺しても殺しても飽き足りなかった家族の仇。
それがあれよあれよという間に無残な何かへと変えられていく。
あるアラガミは神機で激しく打ちつけられ。
結合が脆くなった所を壁に叩きつけられて潰された。
あるアラガミはあえて一刀のもとに切り捨てず。
嬲るように僅かに繋がる身体を引き千切られた。
それは"確実に仕留める"などという表現では到底言い表せない--
そう、まるで
-ブオォンッ!!-
「ッ!!…流石に、もう考え事しながら凌げる状況ではないですね…!」
今度は顔前数センチ先。
ほぼ無意識に感覚で後ずさる事でやり過ごした惨劇に恐怖つつ距離を取る。
積み上がっていく疲労に荒くなる呼吸を整える中。
視界の先に相変わらずの鉄仮面と評される無口無表情のあの顔が映り込む。
しかし唯一普段と明確に違うのは。
「…出来る訳が無いんです。いくら神機使いにとって神機は手足のように扱えると言っても。
無表情の仮面から滝のように滴り落ちる大量の汗。
そう、片手で扱うショートブレードならいざ知らず。
ロングブレード、ましてやバスターブレードを片手で振り回すなんて真似、本来逆立ちしたって出来よう筈が無い。
しかし目の前の人物は実際にそれをやっている。
「増強剤だけでは当然足りないでしょう。でもだからと言ってたかだか神機と腕輪を繋げただけで、そんな芸当出来るようになるものなんですか?」
「………………………」
私の言葉に対する彼からの回答はない。
しかし先程まで文字通り息付く間もなく繰り出されていた連撃が、ここにきて唐突に私の言葉に呼応したかのように中断する。
「おまけに…気付いていますか?戦っている貴方の表情、以前私と言ったミッションと同じ表情してますよ?」
過剰なまでのドーピングに、神機と直結しての強制的なバースト。
限界まで引き上げた身体能力を持って、本来扱う事の不可能な負荷の武器。
「
そう私が口にした途端。
その言葉を振り払うかのように神機が私に向かって振り抜かれる。
しかし先と違って警戒していたこともあって、刀身は避ける私を捉える事が出来ず空振りし。
それどころか勢いを制御できなかったために、神機使いは倒れ込むようにその場に片膝を付く。
「…もう止めましょう。貴方が抱く懸念は、私が何とかして見せます。だから、もうこれ以上自分を追い込むのは--」
--まだ、だッ…。
「え?」
--俺は…俺はッ…
「--俺は二度と、おめおめと生き恥は晒さんッッッ!!!!!!」
「ッッッッッッ!!!!」
…………………………………………………………………………………………
咆哮のような叫びと共に。
何かを噛み砕いたような耳障りな音が辺りに響く。
同時に目の前の神機使いが勢いよくこちらに飛び掛かり。
身構えていたにも回避が間に合わず、咄嗟に神機を滑り込ませることでその凶刃の手から難を逃れる。
「ゥッ…!…何だ。貴方、言いたい事そんなにはっきり言えるんじゃないです、かッ…!」
言葉を言い切る直前で、遮るように目の前で三本の刃が交差する。
その向こう側から射貫くように私の目を見つめ続ける狂気に染まった青い瞳に。
私は鍔競り合いを解く事無く言葉を続けます。
「私とレンでリンドウさんを蝕んでいたアラガミを倒して…皆、皆生きてアナグラに帰ってきたんですよ?…貴方は一体、それの何が不満だと言うんですか?」
その問いに対する返事は無い。
代わりに私を喰い殺さんとばかりに唸る呻き声と共に、押し込められる刃に力が籠る。
「…確かに言葉だけでは信じられない気持ちはわかります。これが文字通り奇跡のような出来事だというのも理解しています。」
同じ神機使いとは思えない、最早アラガミのそれと言っても過言ではない程の異常な膂力。
何とか上半身の体勢を保ってはいるものの、踏ん張る足はずるずると少しずつ後方へ押しやられていく。
「けれど、こうして掴み取る事が出来た望んだ結末。…それを受け入れ認める事の、一体何が悪いというんですかッ!」
「…………………ッ!!」
怒鳴りつけるように感情に言葉に乗せて。
強引に、力任せに鍔迫り合いを打ち切る。
しかし弾き飛ばせたのもほんの一瞬。
相手の神機使いはすぐさま崩れた体勢を立て直すと。
次の猛攻の準備とばかりに呼吸を整え神機をこちらへ向けて構え直す。
「…生き恥なんかじゃありません。私は貴方のおかげで、レンをリンドウさんを元へ連れていく事が出来ました。貴方とレンのおかげで、私はリンドウさんを皆の元へ連れ戻す事が出来たんです。」
息も絶え絶えながら、何とか呼吸を整えつつ言葉を紡ぐ。
ただでさえギリギリのせめぎ合いだった所なのに。
思わぬ猛攻を受けてさらに体力を消耗してしまった。
正直会話を試みている余裕など存在しない。
防ぎ、躱し、凌いでいるが。
正直どれほど持つのかは私にもわからない。
けれどそれは相手も同じ。
こここそがまさに正念場という奴だ。
「…もしここで私が逃げ出してしまえば。貴方はきっとレンを殺してしまう。--そんな悪夢、私は絶対に認められません。」
--そう。
家族を守る事の出来なかった、無力なあの日とはもう違う。
「正直まだしっかりとした実感を持ててるとは言い難いですけど。
大切な仲間を殺す事無く。
大切な仲間を守り抜く。
私は、最後まで生きる事から逃げる事を認めない。
「--だから、いいですよ。貴方の気が済むまで付き合ってあげます。」
--奇跡を認めないというその悪夢。
「私が、一片残さず喰らい尽くしてあげます!」
…………………………………………………………………………………………
--それは"戦い"というには余りに一方的な光景。
一瞬でも誤れば即座に命の灯が消し飛ぶような嵐の中で。
少女は決してそこから逃げる事無く、踏み留まってその災禍に耐え続ける。
時折その猛攻を避けきれず、受け止めた身体が木っ端のように石垣へ叩きつけられる。
一瞬苦悶の声が上がったのもの束の間。
追撃の牙が届くよりも早く、再び嵐の中へ身を投じていく。
…しかし、物事には必ず終焉の時が訪れる。
「ッ!?ガ、ハッ…!」
決して彼女が油断した訳ではない。
言うなれば、ただ単純に"攻め切られた"というだけの話。
壁に叩きつけられた少女の身体。
逃がさぬとばかりに二本の神機が補喰形態で迫るも、寸での所で神機を割り込ませてその牙を押し留める。
しかし少女の身体は今や狂ったように唸る二頭の狼の牙に完全に壁際へと捉えられ。
かろうじて神機で押し防いでいるものの、最早喰い殺されるのは時間の問題。
『リーダーさんッ!!今、助けにッ…!!』
無理矢理身体を起こした事で傷口からオラクルの粒子を噴き出すも。
構う事無くハンニバルが駆け出そうと--
「…大丈夫。レン、何もしなくて大丈夫。」
したところで、こちらに伸ばされた彼女の腕に制止される。
今まで直撃こそ受ける事は無かったものの。
刃が掠り、地面に擦られた彼女の腕は痛々しい程に滲んだ血に染まっていて。
「言ったでしょう?身を以てよく知ってますって。」
狼は未だ少女を喰らわんとその顎を蠢かせている中。
彼女は慈愛と哀れみを含んだ表情で言葉を続ける。
「……この人、もう限界なんです。」
言いながら、少女がゆっくりと歩を前に進める。
「…………………ッ!!」
彼女の身体は依然狼の口内に捉われてはいるものの。
その牙が閉じられる様子は感じられず、力なく彼女の歩むままに押し返されていく。
「…これは貴方が望んで掴み取る事の出来た夢物語。けれどそれは決して貴方の恐れる悪夢なんかじゃありません。」
先程とは逆に、今度は男の方へと押し込まれる刃。
刀身こそ捉え外れる事はないものの、小刻みに震える腕がもう彼が限界なのだという事を如実に表している。
「安心してください。私が、きっとその夢物語を叶えて見せます。」
「………………………」
-だからどうか貴方も、今少しだけ良い夢の続きを見てくれませんか?-
「………………………………………………」
そう彼女が優しく告げると同時に、二匹の狼が溶けるように神機へとその姿を消す。
そして消えると同時に彼の手から滑るように神機が落ち。
一拍遅れて神機使いもまた、膝から前のめりに地に倒れ込んだ。
何とか一話で…と思いましたが。
流石に普段の三倍近い長さになったので区切りました。
無口さん戦闘不能。
残すはレン君ちゃんのみです。
唐突ですがレン君ちゃん神機で切れませんでしたね。
神機で切れないってつまりどういう事でしたっけ?