無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
これにてBurst編終了です。
Q1.無口さんどうなった?
A1.スタミナキル。
Q2.大団円の?
A2.条件達成。
Q3.ルート確定?
A3.Yes,Yes,Yes.
Q4.無口さんちゃんとリカバリされる?
A4.Exactly(その通りでございます)。
完璧に、完璧にリカバリしますとも。
大事な事なので二回言いました。
『………信じられません。まさか本当に、彼を殺す事無く生き延びる事が出来たなんて。』
襲い掛かる絶対の殺意に、何度も目の前を通り過ぎる死の恐怖。
それら全てに一度たりとも屈することなく。
最後まで生きる事から逃げずに抗い続け。
そして彼女はその生をその手に掴み取った。
『…ありがとうございます。これで僕は貴女のおかげで、最後の最後に心安らかに逝く事が出来る。』
そう、唯一の懸念は、僕を殺す途中に彼女が力尽きてしまう事だった。
アラガミ化してしまえば自身を完全に抑えきる事は出来なくなる。
故に彼と協力して自身を殺させる事が当初の目的だった。
それが彼女が左腕を見せつけて彼の敵意を引きつけた事により。
自身が戦闘不能になった最悪のタイミングで彼が明確に彼女を敵と定めてしまった。
もしそのまま彼女がここで死ねばどうなってしまうかわからない。
それは彼にとっても同様であり、しかし二人をどうにかするための力は自身には残されていない。
けれど彼女は勝利した。
自身が死ぬ事無く、彼を殺す事も無く。
純粋に、文字通りの意味で戦闘不能にまで追い込んだ。
これでもう、彼女を止められるものはいない。
後は残滓たる僕を彼女が捕喰するだけ。
そうすれば
そう、僕を喰らう事を以て。
本当に一連の全てに幕を引く事が出来るのだ。
あぁ、でもこれを伝えたら彼女は怒るだろうな。
"僕が死なずとも"なんて、誤解を招くような言い方をしちゃったから。
けれど既に消えかけの存在である僕の意識は、そう時間を置かずに霧散する。
仮に彼女が僕を捕喰する事を拒否しても、僕が消えるという事実に変わりはない。
だから、きっとわかってくれるはず。
ソーマがシオの身体を喰らったあの場に居た貴女なら、きっと。
「--レン。」
そう考えていた僕だったけど。
彼女の手にする神機を見て、それが杞憂だったと再び安堵する。
刀身を覆い隠すように展開された捕喰形態。
客観的に眺める自身のその形状をどこか懐かしく思いつつも、これが最後とばかりに彼女に感謝と謝罪を告げていく。
「一つだけ約束…いや、命令を聞いてください。レンはリンドウさんの神機なんですから、言ってしまえば第一部隊の所属も同然。であるなら当然、部隊長の私の言葉には従ってくれますよね?」
感謝を受け取るでもなく。
謝罪を受け入れるでもなく。
全てを喰らう狼の牙を向けながら。
人ならざる異形となった左腕で触れながら。
彼女は静かに言葉を続ける。
「生きる事から、決して逃げないでください。あの時のリンドウさんと同じように、最後まで、意識の続くその限り。」
『…これから消えていくという僕に、貴女も酷な約束をさせるものですね。』
「だから、命令です。破ったら使用者責任という事で、リンドウさんの配給ビール減らすよう上申しちゃいますから。」
生還したというのに思わぬ所から流れ弾が飛んでいくリンドウに思わず噴き出してしまう。
…本当、最後の最後まで貴女という人に出会えてよかった。
『わかりました。せっかく生きて帰ってきたというのに、楽しみを減らされちゃったらリンドウが可哀そうですからね。』
そう彼女に返事を返したところで、いよいよ瞼を閉じてその時を待つ。
こうしていても緩やかに朽ちていくのがわかる自身の存在。
それでも未だ機能している感覚を集中し、自身を喰らう存在に意識を傾けつつ。
彼女から下された最後の命令を何度も頭の中で反芻する。
「………お休み、レン。」
--
…………………………………………………………………………………………
--凍える寒さと全身に走る痛みに意識が覚醒する。
身体を起こそうとしたものの。
強烈な倦怠感も相まって崩れ落ちる。
ここはどこだ?
一体、何がどうなった?
訳も分からないまま、何とか首だけ起こして周囲の状況を確認する。
見渡す一面は雪景色。
そして少し離れた位置には異形の左腕で神機の捕喰形態を展開する--
「ッッッッ!!!!!!」
……って何だ、
痛つっ、慌てて神機を握って損した。
…って何故俺は神機なんか手にしてる?
ますます状況がわからんぞ?
それに補喰しようとしているその相手は--
「………………………」
--あぁそうか。そうだったな。
お前、リンドウを救い出せたんだったな。
レンが遺言代わりに教えてくれたよ。
クソトカゲの中からリンドウを引きずり出したんだって?
まったく、アラガミ化のリスクを背負ってまで介錯に出向いているというのに。
よくもまぁとんでもない事を思いつく奴だ。
だが良くやった。
リンドウを救い、クソトカゲも仕留める。
無様を晒している俺などとは比較にならない程の大手柄。
そう、仲間一人守れない俺みたいなクズとは--
「………………………」
「………………………」
「ッッッ!?!?!?!?!?!?」
そう思っていた矢先にルーキーがクソトカゲの体内から何かを引きずり出し。
それが何かを理解した瞬間、俺は思わず言葉を失ってしまった。
「…本当、無茶苦茶だなぁ貴女は。アラガミは元より、僕達だってこんな貪欲に獲物に喰らいつきはしませんよ。」
「よく言われます。見た目に反して良く食べるって…女の子に向かって失礼な話ですよね。」
そこにいたのは胴体を貫かれて息絶えた筈の。
俺が守る事の出来なかった仲間の姿。
「ふふっ、それは確かに…それで、どうします?食べますか?僕の事。」
「遠慮しておきます。確かにレンは美味しそうですけど…私、実は結構好き嫌いが激しい方なんです。」
足腰に力が入らないのか、ルーキーにもたれかかるように身体を預けているものの。
そこに俺があの時見届けた二つに分かれた神機使いの姿は微塵も感じられない。
「どうせ食べるなら甘いものが食べたいです。あそこの人のせいで死ぬほど酷く疲れましたし…あっ。」
言いながらこちらへ顔を向けたルーキーと目が合い。
次いでルーキーにもたれかかるレンとも視線が合う。
「…言ったでしょう?死にませんって。こう見えて人間よりずっと丈夫ですから。」
呆気に取られていた俺に困ったように微笑みながら、レンがこちらにひらひらと手を振って見せる。
………確かに空元気を振り絞っているようには見えん。
あれ?もしかして本当に死んでなかったのか?
嘘だろ?胴体に幾つも風穴開けられたのに?
「…ねぇレン。もしかして私の知らない所でこの人みたく無茶してたりします?」
「ふふっ、どうですかね。」
眼前に広げられていたのは何時もの光景。
化け物共が闊歩する終末の世界。
そこに存在する僅かに残った人の世を守りながらも。
仲間同士、他愛のない会話を交わして笑い合う平穏な日常。
ふと気づけば、何時の間にかルーキーが目の前に駆け寄ってきている。
呆けていた自覚はないものの、唐突に眼前に表れた少女の顔に、思わずビクリと後ずさりする。
「--どうです?貴方を支配していた悪夢は、私が全て喰らい尽くしちゃいました。」
ニッコリと…と言うには少々大げさだが。
それでも普段の彼女を知る身としては数える程しか見た事の無い程の嬉しそうな笑みを浮かべながら。
「残っているのは悪夢に釣り合うだけの都合の良い奇跡だけ。…でもですね。私、実はいうと好き嫌いが激しいんですよ。」
振り返る彼女がレンへと視線を向ける。
そこには少々よろつく危なげな歩みではあるものの。
転ばないよう、ゆっくりと気を付けながらこちらへ歩を進めてくるレンの姿。
まぁただでさえ身体に風穴開けられていた所にアラガミの腹の中から引きずりだされたんだ。
唐突過ぎて経緯は良く知らないけれど、いくら丈夫と自称していてもふらつきもするか。
「"都合の良い奇跡"だなんてそんな美味しくなさそうな物、私は食べたいなんて微塵も思ったりしません。…だからですね。」
再びルーキーの顔がこちらへと向き直る。
「そんな美味しくなさそうなものは大人の貴方が食べちゃってください。…大丈夫、貴方なら
こちらに左腕を伸ばし。
俺の頬に触れながら彼女がそう告げる。
--その左腕に、アラガミの面影は最早存在していなかった。
…………………………………………………………………………………………
ここは極東支部の救護室。
ぼんやりとした意識の中で目を開くと。
無機質な白が眩しさを伴って視界を支配する。
えーと、どうして俺はここに運ばれているんだったか。
確かルーキーを連れてリンドウの
身体の節々から上がる痛みの感じから、それが戦闘で強化薬を使い過ぎた副作用だというのは察したが。
肝心のどんなアラガミとやり合ったかという記憶がいまいち朧気で思い出せない。
まぁ思い出せないという事はその程度のアラガミだったという事だろう。
筋肉痛が残るまでドーピングを使う相手ではあっただろうが、記憶に残ってないという事は既存種の変異体か何かだったって事だろう。
そう一人結論付いた所で、とりあえず身体を起こそうと力を込め--
「………………………」
--たが、何故か起き上がれない。
いや、筋肉痛含め身体のだるさに付いては強化薬やら何やらの反動と言うのはわかるけど。
何か
首をもたげて視線を落とし。
視界に入ってきたのは金色の髪。
「………………………」
「………………………」
「………………………………………………????」
………いや何で?
何でルーキーが俺の腹の上で爆睡してんの?
スヤスヤと。
それはもうスヤスヤと穏やかに寝息を立てて眠っている。
椅子に座ったまま身体を預けているところを見るに。
お見舞いに来てくれてそのまま寝入ってしまっただろう。
寝落ちするくらい疲れているのにお見舞いに来てくれるとは。
それほどまでに俺はルーキーからの友好度が高かったのか。
天国の父上母上見ていますか?
貴方達が救った息子は、現世で立派にモテモテですよ。
まぁ戯言はこの辺にしておこう。
好感を向けられている事には素直に嬉しく感じるものの。
今のコンディションで女の子の枕を務めるには荷が思い。
さてどうやって起こそうか?
野郎のように引っぱたいて起こす訳にはいかないから、とりあえずこよりか何かで鼻でもくすぐって…
「…寝かせてあげてください。彼女、本当に凄く頑張ったんです。」
不意にルーキーとは反対側から声を掛けられてどきりとする。
…あぁ、ちょっとだけ思い出してきた。
確かに君は俺なんかより遥かに重傷だったな。
…重傷で済ましていいのかこれ?
命に別状無いのは喜ばしいが。
人間って串刺しにされても生きていられるものだったっけ?
「ほら、言ったでしょう?"人間よりずっとずっと丈夫ですから"って。」
あぁ、そういえばそんな事も言ってたな。
風穴開けられてる癖にそんな事宣うものだから、完全に強がりか冗談の類だと思ってた。
でもソーマも死神呼ばわりされるくらいには頑丈さに定評があるし。
そんな人間が他に居ても別にそれほどおかしい話でもないのか?
まぁいいや、考えても仕方ない。
…で、それはさておき。
「………………………」
「………………………」
「………(スゥスゥ)」
………この子どうしようか?
「………………………」
「………(スゥスゥ)」
「………(ニッコリ)」
-シャッ-
…嘘だろ信じられねぇ。
レンの奴、無言でアイコンタクト無視しやがった。
おまけにしれっと部屋から退室までしやがって。
カーテン閉めてバレないようにしたつもりだろうが、
文句の一つも叫んでやりたいところだが。
それでルーキーが目を覚ましてしまうとそれはそれで面倒な事になりそうなのでグッと堪える。
「…まったく。もういいや、俺ももう一眠りするか。」
何か知らんがどっと疲れた。
増強剤諸々使いまくった反動なんだろうが、身体がだるくてだるくて仕方ない。
今更ルーキーをどかすのもおっくうだ。
俺の腹を枕にするルーキーをそのままに。
天井を仰いだままに瞼を閉じる。
「………………………」
--良い所は全てルーキーに取られ。俺は結局無様を晒しただけだったが…
まぁいい。
生きていれば、いつか胸を張って証明出来る日も来るだろう。
俺を生かしてくれた両親の選択は、何も間違っていなかったのだと。
クリアランクSSS。
偉い人「諸君、我々は(ry」
全リカバリ完了。
ロールフォワードなのでバックアップ以降の処理結果もバッチリ。
上書きしたとか言ってはいけません。
無口さんは元からこういう人。
少し間を挟んでからリザレクション編の予定。
いつもの無口さんが帰ってきますよ。