無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.おおまかには考え済み。
Q2.シオちゃんは?
A2.もちろん出ます。
リザレクション編始動に向けてプロット整理中です。
と言っても大筋考えたら後はいつも通り思うままの即興書きなのですが…
無口さん、今回は誰の味方になるんでしょうね?
三者三様、緊迫こそしていないがただただ戸惑い沈黙する三人に唐突にそう告げるのは今宵の主役。
沈黙する二人の後ろから、ハンマーを担いだルーキーがちょこちょこと俺の方へ近寄り言葉を口にする。
「本当、榊博士の言う通りでしたね。正式なミッションという体裁さえ整えたのなら、貴方はそれを建前にこれ幸いと色々あれこれやり始めるだろうって。」
「え、と…ルミナ先輩、一体どういうことです?」
問い詰めるという程ではないものの、それでも確かな呆れと詰責の込もった口調で俺に告げるルーキー。
その言葉に先程の質問と合わせてますます状況が分からなくなったアネットがルーキーに向けて質問する。
というか、え?
その口ぶりからすると俺もしかして博士に何か嵌められた?
「今回のミッション、一応はエイジス島近辺に大量発生したシユウの討伐という建前ですけど。元々はこのポール型神機…もとい、ポール型神機用の戦闘服の運用データを集めるのが目的です。そういう意味では別に無理して強いアラガミと戦ったりそれを討伐する必要は無いんですけど…」
-実際、乱入してきたセクメト含めて戦ってみた感想はどうですか?-
「例えば正直手ごたえがなかったとか。セクメトも接触禁忌種の割には思ったより大したこと無かったな、とか。」
「そ、それは確かに…ミッション前の説明で『発生したてのアラガミでオラクルの反応が弱いから手強くはないはず』という説明はありましたけど。」
「私もこう言ったら何ですけど、正直今日のミッションは"訓練"って感じでしたね。ターゲットの数こそ普段より多かったですけど…」
念のためフォローを入れておくと。
これは決して二人が慢心してるとかいう訳ではない。
無論、確かに今回の相手が弱かったというのも事実ではある。
が、狙撃弾のヘッドショット連射で頭を穴だらけに吹っ飛ばしたり。
ハンマーの横薙ぎフルスイングで上下半身泣き別れにさせといて。
"このミッションは手強かった"は流石に皮肉にも程がある。
ていうか実際、二人とも普通に他所の支部ならエース張れるくらいの実力はあるので。
この程度の相手であれば"訓練"という感想になってもまぁ仕方ない。
ただまぁ、それでも前提としてこの極東支部が大分おかしいっていうのもあるんだけどな。
弱い云々の前に人間越えサイズの中型種数体と休みなく連戦とか。
他所の支部なら間違い無く神機使い側からふざけるなと任務拒否されるレベルだし。
「そう、討伐任務でありながら実際は元々予定していた目的のついで。対峙したアラガミの強さも二人が感じた通りで、何なら事前の段階で大した脅威ではないという事までわかっていました。でも…そうだとしたら尚の事不思議に思いませんか?」
-数の問題を差し引いたとしても、どうしてこんな強敵でもない相手に。-
-私達四人もの新型神機使いがアサインされたのか。-
「ちなみに答えを先に言いますと私が榊博士にお願いしたからです。たまたま今回は都合が付かなくて居ませんですけど、元々はアリサも一緒にこのミッションに参加してもらう予定でした。」
「アリサ先輩もですか?…いえ、新型神機使いと言っても俺達はまだまだ新人だっていう自覚はありますけど。」
「それでも新型神機使い五名は流石に過剰戦力ですよね?ルミナ先輩にユウマ先輩だっていますし、現にこの四名でも全然苦戦は…」
言いながら揃って視線を俺の方へ向けるフェデリコとアネット。
ルーキーはというと同じように視線を…
っておい、何で俺に銃口向けている?
「あ、安心してください。バーストが切れそうだからリンクバーストで延長するだけです。」
言うが早いかズドンという音と共にアラガミバレットが撃ち出され。
反応する間もなく直撃した俺の身体に再度溢れんばかりの活力が満ちていく。
「今二人も見た通り、私達新型神機使いはリンクバーストを行う事で他の神機使いをバースト状態にする事が出来ますが…って引かないでください。今大事な話をしてるんです。」
いや引くだろ普通。
人にトリガー引いといて自分の事は引かないでとかわがままとかいうレベルじゃないぞ。
ていうか正直カノンよりも引き金早かったぞ今。
止めるどころか回避も防御も間に合わんかったわ。
そう二、三発ツッコミを入れてやりたい所だが。
俺もルーキーが話そうとしてる事が気になるので空気を読んで黙っておく。
教育的指導を施すのは話が終わってからでも事足りるからな。
とりあえず"今"は仕方ないから静かにしておいてやる。
突然の先輩の奇行にやや顔を引く付かせて後ずさりしている新人二人と。
広い大人の度量を発揮して生暖かく後輩を見守る先輩一人。
そんな静まり返る場に堪えかねたのか。
ルーキーはコホンと小さく咳払いして仕切り直した後、何事もなかったかのように話の続きを口にする。
「リンクバーストによるバースト化には段階がありますが、次の段階へ移行するためにはアラガミバレットの膨大なエネルギーを使って瞬間的にオラクル細胞を臨界状態へ持っていく必要があります。--言い換えますと、今私達が使っている神機の運用技術では、単独で二段階目以降のバースト状態を発露させる事は不可能なんですよ。」
「で、ですよね?でもユウマ先輩、さっきルミナ先輩にリンクバーストされる前から…」
「それに現行犯って…あの、ユウマ先輩。出撃前に御馳走してもらったコーヒー、実は本当に何かの"口止め料"なんて言ったりしませんよね…!?」
コーヒー返せフェデリコ。
先輩からの善意の差し入れになんて邪推を入れやがる。
大体何だ、黙って聞いてりゃ現行犯とか口止め料って。
まるで俺が何か大手を振れないやましい事をやっているような言いぶりじゃないか。
俺は榊博士から個別に頂いたお仕事をこなしただけだぞ。
割の良い報酬こそ頂きはするが、別に怪しい仕事なんかじゃないはずだ。…多分。
「そこですフェデリコ。そこが今回私が新型神機使いだけを集めた意味なんです。」
万が一怪しい仕事だった時のためにそれとなく榊博士を売り飛ばす算段を立ててた所。
ルーキーが勢いよく振り返りながらフェデリコの言葉に反応する。
「私が疑っているのはもちろんフェデリコじゃなくてこの人。今二人も目の前で確認した通り、しれっと単独で神機の最大解放なんてしでかしている、この怪しさ満点の遊撃部隊隊長の口を割らせるのが今回の私の狙いです。」
まるで推理物に出てくる探偵よろしく。
ビシッと俺の顔を指さしながらそう告げるルーキー。
隊長。うむ、良い響きだ。
思わず"人を指差すな"と注意するのも忘れて聞き入ってしまった。
そう、俺これでも歴とした一部隊の隊長なんだよ。
色々な部隊やミッションに顔出してるせいで忘れられがちだがな。
"怪しさ満点"という部分は聞かなかったことにしよう。
ただでさえクール・イケメン・ジェントルメンのナイスガイだというのに、ミステリアスまで加わってしまうと流石に属性過多になってしまうからな。
「ま、まぁ疑いというか、そこは私も出来るなら知りたいところですけど…でもどうやってルミナ先輩の聞きたい事を聞き出すんです?」
「ユウマ先輩、口を割らせる云々の前にそもそも言葉を喋る事自体出来ないんですよね?後でレポートか何か文書で教えてもらう方が確実なんじゃ…」
お前らいい加減人を喋れない扱いするの止めろ。
どいつもこいつも無口だとか無表情だとか、挙句の果てには感情の無い神機兵だとか。
荒唐無稽なデタラメばかり言いやがって。
仮に居たとしてもそいつ普段どうやって人とコミュニケーション取ってるんだよ。
人は一人じゃ生きていけないんだぞ?
というか今気付いたが。
何時の間にかアネットとフェデリコまで俺が言葉を発する事の出来ない人間だと思ってるじゃないか。
「いえ、私達新型神機使いにはもっと良い方法があるんです。二人はまだ体験した事はないかもしれませんが…話だけなら榊博士から聞いた事あるじゃないですか?」
「…あ!も、もしかして感応現象!確かにあれならユウマ先輩が言葉を喋れなくても問題無く意思疎通が…!」
「それにユウマ先輩は新型神機も使えるから"新型神機使い同士"っていう条件もクリアしてる…!」
ルーキーの言葉に合点がいったと声を大にするアネットとフェデリコ。
そんな二人に満足げに頷いて見せると、ルーキーが再びこちらへ向き直り、ズズイと俺の方へ一息に近寄ってくる。
「まだ必ずしも確実に起こせるというものではありませんので、諸々の検証も兼ねて…というのが正直なところですが。それでもリンクバーストによって全身のオラクルが活性化している今の貴方なら起こせる公算は高い筈です。」
なるほど、感応現象。
確かにあれは意思疎通--もとい、記憶や潜在意識の強制共有。
秘密を探るにはもってこいの反則技だ。
しかしとはいえ残念ながら。
今の俺に探られて困るような腹はない。
先も言ったようにルーキーが知りたがってる何故神機が最大まで解放されたのかについては俺も知らない。
探った所で精々榊博士から依頼された検証を色々試してたってのが感応されるのが関の山だ。
まぁそこから今度は榊博士へルーキーの追求の手が伸びるのかもしれんが。
流石にそれは俺の知った事じゃないし、何かしらやましい実験であったというのであれば寧ろ進んでルーキーに情報提供を依頼してもいいくらいだ。
なので徐々に伸びてくるルーキーの手を避ける事なく。
今か今かと俺の身体に触れるのをじっと待っていたのだが。
ここで唐突にある考えが頭をよぎった。
--これ、別に俺の方から触れても良いのでは?
俺の知る限り感応現象は新型神機使い同士の身体的接触によって発生する。
そして接触の関係上、俺が体験した際の接触部位はいずれも"手の平とどこか"という組み合わせだった。
そして先ほど言った教育的指導は手の平を相手に接触させて行うもの。
-ガシッ!!-
「へ?」
そう、つまりは機は熟した!
教育的指導を施す時は今!
「え、いや、ちょ、これってまさか…ま、待ってください!!」
過去の記憶でも呼び起されたのだろう。
慌てたルーキーが両手で俺の右手を掴んで引きはがそうと試みる。
しかし残念、今の俺は君のおかげでバーストレベルMAX。
いくらルーキーの腕力が化け物染みているとはいえ、流石に一瞬で振りほどかれるほどやわな鍛え方はしていない。
いやー本当はこんな手荒な教育したくないんだけどなー。
さっき"諸々の検証も兼ねてる"ってルーキー言ってたしなー。
安心しろルーキー。
別に酷い事も痛い事もしたりしない。
キミのご要望通り、その可愛いおつむに直接感応現象を刷り込んでやる!
--結論から言うと。
ルーキー泡吹いて倒れた。
決して俺がルーキーの頭をシェイクしたせいではない。
というか引き剝がされこそしなかったが思いっきり腕を握られたせいで。
シェイクどころか僅かに揺さぶる事すら出来なかったし。
寧ろ俺の腕の方が握り潰されるかと思った。
が、拮抗状態になって間もなく。
『っ!?今、ちょっとですけど本当に感応現象が…!』とか。
『…何で神秘と私の格好に関係が?』で呟いたかと思うと。
急に『苦ッ!?ま、待ってください!そんな苦いの私飲めなっ…!』って叫んだ後、泡吹いて倒れた。
コイツ、俺の潜在意識の何を見たんだ?
他人が悶絶するような味の飲み物なんて俺口にした覚えないぞ?
初恋ジュース?でもあれはどちらかというと甘酸っぱいしなぁ。
それに巷でマズいマズい言われてるけど、たしかルーキーもイケる口だったし。
そこからいくと苦いってのは出撃前に飲んだあのコーヒーか?
まぁルーキーお子ちゃま味覚だからな。
泡吹く程とは思わんかったが、ブラックは少々お嬢ちゃんにはきつかったか。
ちなみに帰りの輸送ヘリの中。
俺へのアネットとフェデリコの態度が文字通り腫物を扱うかのようだった。
乗り込むなり二人して座席の反対側に陣取り。
それっきり俺の方へは近寄ろうとすらしやしない。
「…ルミナ先輩の苦いって言葉で思い出しましたけど。そう言えばユウマ先輩、ちょっと味覚が普通の人とは違いましたね…」
「感応現象は夢を見ている感覚に近くて通常自分の意志で動いたり出来ないって話ですし、もしユウマ先輩の食べてる物を感応現象で感知しちゃったとしたら…」
「………………………………………………」
………
ヘリが極東支部へ到着する寸前。
俺は携帯端末を取り出し、急患が二名増えた旨の連絡を入れる。
…フェデリコも逝ったって事はコーヒーじゃなかったのか。
まだまだ感応現象には謎が多いな。
※この後スタッフ(リッカちゃん他)にしばかれました。
美味しい物はおすそ分けしたくなるのが人情というもの。
ただし物によっては有難迷惑になってしまうのが困りもの。
次回で今回の神秘の探求を締める予定です。