無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A.無口無表情の鉄仮面。
今回はシンプルスタート。
書こうと思ってた書き出しが138話の最後に既に書いてあったので。
ごきげんよう紳士淑女の諸君。
このクソッタレな昨今の世の中、皆様いかにお過ごしだろうか。
ここ数か月何かと忙しかったこの極東支部。
つい先日ようやく全ての後始末が完了し、依然と変わらぬ日常が戻ってきた。
具体的に言うとまずリンドウ及び俺とルーキーの経過観察期間が無事満了。
それぞれの原隊復帰の手続きが始まるのに伴い、リッカ率いる臨時整備班もまた解散という流れになった。
リンドウが使っていた神機は救出の際、原因不明の損傷がアーティフィシャルCNSに生じ。
一時廃棄も止む無しかという状態にまで陥っていたらしいが。
これをリンドウではなくルーキーが何故か断固としてその判断を拒絶。
何とかならないかと必死にリッカに訴え、リッカもまた神機を大切に想うルーキーの意見に賛同。
結果俺やリンドウも二人の意見に後押しされる形で素材調達や各種調整に尽力する事となり。
旧型神機としてのリペアリングではなく、新型神機としてモダナイゼーションという形となった。
そう、つまりはリンドウ君も晴れて新型神機使いデビュー。
最新装備を引っ提げたベテラン神機使いとしてここに復帰を果たしたのである。
--それはいい。
リンドウが生還する事自体は皆だけでなく俺も心から望んでいた事だし。
再び神機使いとして生きていくというなら、可能な限り最新の装備を手にしたって良いと思う。
だが片やそれに加えて美人で年下の幼馴染と結婚まで果たし。
片や後輩の女の子に"触らないでください"と今更ながらに警戒感丸出しにされるというのはあまりに不公平ではなかろうか。
何が腹立たしいってリンドウの奴、結婚報告に加えてしれっと自分が父親になる発言までしやがったんだぞ?
美人の嫁さん侍らせながらナチョラルに我ら男どもにマウント取りやがって。
タツミ君が可哀そうだと思わないのか。
こっちは事情を知らないアリサがうっかり感応現象で同じ目に合わないよう。
まるで母親が子供を守るかのようにルーキーが俺とアリサを物理的に遠ざけようとするってのに。
挙句リンドウは美人の嫁と可愛い後輩を連れ立って和気あいあいと原隊復帰。
一方俺は誰もいない幽霊部隊に姿の見えない誰かに一人愚痴りながら寂しく帰還。
何だこれイジメか?
大団円って皆等しくハッピーになる結末の事を指すんじゃないのか?
腹いせに「こいつらリンクエイドしたんだ!」って大声で叫んでやろうかと思ったわ。
叫ばなかった大人な俺をマジで誰か褒めてほしい。
ちなみにこれは余談だが。
裏でこっそりレンや先日知り合ったオウガ君、キグルミ君の異動希望要請を手配していたが駄目だった。
"
断るにしても嘘付くならもっとマシな嘘付けと言いそうになったが。
そういやレンは元支部長直属の特務兵だったなと思い出し。
じゃああの二人も同じ秘匿要員かと泣く泣く諦める事にした。
そんな訳だからリンドウ君、ツケのビールは容赦無くむしり取っていくからな。
サービスでタバコも利息代わりに回収しといてやる。
後ろで「そりゃないぜ!」と叫ぶリンドウの声が聞こえたが。
生憎リア充の叫びは俺の心に響かない。
これから生まれてくる子供の影響にも悪いしこれはむしろ功徳という物。
いやぁ、美味いものだな善行を積んだ後の勝利の一服というやつは。
実質負けだろといった奴は表出ろ。
……………………………………………………………………………………………
--所変わって。
ここは旧エイジス島の最深部。
ヨハネス前支部長が製造していたアルダノーヴァとかいうデカブツを作り上げるための巨大培養層が設置されているエリアである。
本日のお仕事は調査班の付き添い。
こちらは多少なりともアラガミと戦う術を持った偵察班とは異なり、純粋にオラクル関連の調査を専門に行う非戦闘部隊である。
やってきた目的は先に言ったアルダノーヴァが残した残滓の調査。
近隣のアラガミに変質が見られるという別の調査報告を受け、現在アルダノーヴァ関連の業務を担当しているソーマから急ぎの先行調査としてミッションが発注された事が発端となる。
実はこの手の調査というのはオラクル細胞の性質上、現地で突然の活性化によるアラガミの急襲に繋がる危険性が非常に高く。
通常は神機使いで回収班を結成して対象を確保、然るべき処置を施した後にアナグラで解析や研究を進めるというのが一般的なのだが。
今回は元となったアラガミがアラガミである事に加え、アーク計画自体極東支部外秘となる程度には重い機密事項。
表立って多数の人間を関わらせる訳にはいかないとの事で、可能な限り現地で必要な調査を進めてしまおうという方針になったらしい。
なのでお察しの通り、この調査班の人間は全員アーク計画に関わった--というより、船に乗り込んでいた箱舟組。
俺という護衛付きとはいえ普通に想定外の襲撃を受ける可能性もあるこのミッション。
保身に走った自身の選択を後悔しているらしい彼らは、この話を知るや自ら進んで参加を申し出たとの事。
俺的にはそこまで気に病む事ではないと思うんだがな。
まぁこればっかりは個人の感覚だから俺からは何とも言えんが。
だから別に"この人船で見なかった"とかで警戒しなくてもいいから。
まぁ俺の役目は有事の護衛であり、専門的な調査を手伝えるような知識はない。
無意味に側にいて緊張させるよりは警戒名目で周囲を散策している方が向こうも気が楽か。
そんな感じに互いに干渉する事無くしばらく。
「--偵察班より入電!中型種と思われるアラガミの反応がエイジス島へ急接近中!五分後に調査エリア周辺に到達する模様です!直ちに撤収準備に入ってください!」
調査も一区切り付いたという段階で唐突に入ったヒバリからの通信。
元々想定されていた想定外のアラガミの急襲を告げる連絡である。
これは調査班の面々も想定していた事態であり、覚悟の方も決まった上での参加だったのでさしたるパニックも無し。
粛々と調査結果を取りまとめの上、足早に脱出経路へ向かおうとして--
「--ッ!?き、緊急連絡!アラガミが突如加速を開始!このままだと到達予測時間を大幅に短縮して--ッ!!」
ズガアアァァァンッッ!!!!!!
突如として辺りに響き渡る轟音。
同時に壁をブチ抜いて現れたのは通常よりも二回りは巨大なコンゴウの姿。
「--ッ!?--・ッ………!!」
衝撃で周辺の電波に何らかの影響が出ているのであろう。
先程まで聞こえていたヒバリの叫びはノイズにかき消され、時折聞こえる意味をなさない声の切れ端だけが事の重大さを物語る。
とはいえ焦るな。
焦る必要は全くない。
これでも立派な古参兵。
緊急時の場数はそれなりに踏んでいるし、相対するアラガミの特徴も冷静に分析出来ている。
唐突に懐から拳銃を取り出して空に二発。
建物内に響く破裂音に人もアラガミも俺の方へと視線を向ける。
そう、サイズがデカかろうとコンゴウはコンゴウ。
特筆すべきはその聴力であり、こそこそと隠れて逃げる際には脅威というより他はない。
故に初手でアラガミの警戒心をこちらに向けさせ。
同時に同じく視線を向けた調査班の面々にハンドサインで撤収を促す。
アラガミを刺激しないようなるべく静かに。
かつ務めて迅速にまだ確保されている脱出経路から離脱する調査班。
残されたのは仲間の退避が完了するまで不退転の様相を見せる古参兵と。
余裕からか神機使いと相対したまま、少しずつ数を減らしていく餌を見送るアラガミ。
--気に入らんなぁその余裕。
多少サイズがデカいのは認めるが。
だからと言ってバケモノ風情にデカい顔でのさばられては人間様の沽券に関わる。
調査班の撤収は順調で数分も耐えてやればそれで問題無い。
ここエイジスはアナグラからの直通路もあるのでそう遠くない内にこちらの増援も来るだろう。
という訳で後顧の憂いも特に無し。
先日確立した新戦術の実戦投入も兼ねて。
一つ古参兵様がエテ公に世の厳しさという物を教えてやる!
…
……
………
「…何やってるんですかまったく。またリーダーさんやリッカさんに無茶するなって怒られますよ。」
肩で息する俺に向かい、呆れた様子で話しかけるのは中性的な容姿をした新型神機使い。
いや、弁解をさせてくれ。
たかがコンゴウがここまで強いって思わんじゃん。
実際攻撃だってしっかり躱せていたし。
時間はかかったが結合崩壊だってきっちり残さず決めてやった。
--そう、
神機が適合していないのではなく、何か単純に神機の通りが鈍かったというか…
で、巨体を生かしたスタミナ勝負に持ち込まれかけたせいで、ピンチとまではいかずともややジリ貧気味になっていたところ。
増援でやってきたレンの手を借りて顔面に致命の一撃を叩き込んでやり、ようやくこうして決着が付いたという訳だ。
「--さんッ!聞こえていますかユウマさん!もうすぐ第一部隊が到着します!何とか退避を--って、え?」
戦闘が終わって電波状況も改善したのか、ヒバリからの通信も復活。
まだ呼吸を整えている最中だったので返答せずにそちらを優先し、代わりに携帯端末から作戦完了の信号を発信して心配しないよう伝えておく。
送信後は神機使いのお約束である捕喰タイム。
コンゴウなんてこの極東じゃさして珍しいアラガミでもないが。
このサイズならワンチャン、レア物も期待出来て--
…データ適合無し?
え、という事はコイツ新種?
「………………………」
………よっしゃ!臨時ボーナスゲットだぜ!
喜べレン君。
助けてくれた礼に君にも分け前を…ってどうした?
レンの目もあるので派手なガッツポーズは心の中だけに留め。
この後の打ち上げの話でもしようとしたところ、コンゴウの死体を観察するレンの思わぬ真面目な表情に言葉が詰まる。
「………ん?あぁ気にしないでください。詳細は言えませんが実は僕も別に任務を受けていまして…ここで少し調べる事があるので貴方は先に帰投していてください。」
あー、そういえば君特務兵だもんな。
支部長が居なくなったとしても、それはそれで普通に所属が変わるってだけか。
うむ、特務兵であれば変に表立って分け前を分けると逆に目立って不都合が生まれるもの。
つまりは俺が今回の成果を独り占めするのもむしろレンにとって良い結果、即ち功徳となるに違いない。
心配するな、助けてもらった事実に変わりはない。
また別の機会にきっちり礼はさせてもらう。
という訳でまたなレン君。
ちなみに我が隊は何時でもウェルカムだぞ。
……………………………………………………………………………………………
ここは旧エイジス島の最深部。
かつて極東支部前支部長であるヨハネス・フォン・シックザールが作り出した、特異点である彼女を終末捕喰の引き金とするための聖櫃が置かれていた場所。
「ほら、食べれるかい?霧散しないよう僕がコア代わりに安定させてるから、慌てずゆっくり食べるといい。」
言いながら手の中にあった青く光る球体をコンゴウの死骸の上に置く。
「美味しいかい?良かった、君の身体じゃコアは早いかなって彼にあげちゃったから。もし"物足りない"って言われたらどうしようかと。」
暖かなぬくもりすら感じられるその光に手を添えたまま。
子供に語り掛けるように優しく言葉を続ける。
しばらくして球体が放つ光量が少し強まり。
同時に霧散せず形を保っていたコンゴウの亡骸が少し崩壊するように塵と化す。
「--キミはリンドウを助けてくれた。アラガミでありながら、人間の僕の相棒を助けてくれた。」
だから、今度は僕の番。
人間の僕が、アラガミのキミを助ける番。
「もっとも、僕一人に出来る事なんて大した事じゃないから。きっとあの人の手もたくさん借りる事になるだろうけど。」
--え?
--ふふっ、心配いらないよ。
「--全て、全て上手くいくさ。」
暗躍しそうなレン君ちゃん。
もちろん皆様は信じてくれますよね?
大丈夫、榊博士だって途中滅茶苦茶胡散臭かったじゃないですか。
きっときっと全部大丈夫です。
今回は誰に付くと思います?(別に展開は変わりません。)
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シオちゃん
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ルーキーちゃん
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レン君ちゃん
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レディの味方