無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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「……。(何かないか、と聞かれても。)」
「……。(…特に無いな。新人だし、失敗しても普通だろう。)」
「……。(…寝るか。貴重な合法の休日だ。)」

NORMAL COMMUNICATION!(友好度±0)



無口と無口な新型さん-幕間2-

油断、そして死。

 

ギロリと点のような瞳に睨まれた次の瞬間。

頭によぎったのがそれだった。

 

肘から先の無い腕が、貫かんとばかりに突き出される。

それは瀕死のそれからは想像出来ないほど鋭く、力強く。

 

躱す?もう遅い。

防ぐ?間に合わない。

…耐える?…不可能だ。

 

腕が迫る。

ゆっくりと、スローモーションで真っすぐ体の中心を目指してくる。

 

首根っこが引っ張られる。

同じように、スローモーションで突き出される腕から遠ざかる。

 

食らった。が、想像以上にダメージは無い。

神機使いというのは自分が思っている以上に頑丈なのだと感心する。

 

これならいける。

直ぐに体勢を立て直して…

 

…?

 

いやおかしい。

いくら神機使いが頑丈だと言えど、アラガミの一撃が直撃したにしてはあまりにダメージが無さすぎる。

 

そもそも前提がおかしい。

腕が触れてもいないのに、どうして身体が吹っ飛んでいるのか。

 

…違う。認識が間違っている。

吹っ飛ばされたのではなく、誰かに後ろへ引っ張り倒されたのだ。

 

理解と同時にスローモーションの世界が解ける。

合わせたように思考速度も急速に加速していく。

 

そうだ、私はアラガミの一撃を食らいそうになった。

 

なったが、()()()()()()()()

当たる直前に誰かに後ろへ引っ張り倒されたのだ。

 

(そうだ!まだアラガミが生きて…)

 

覚醒した意識が体勢を立て直そうと身体を起こす。

 

-ドンッ-

 

「…えっ?」

 

人から出たとは思えない。

 

否。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

目の前で先達の神機使いが吹き飛ばされる。

 

次の瞬間、私の視界は鮮やかな赤一色に満たされた。

 

……………………………………………………………………………………………

 

…あれから数日。

自分でも自覚するくらい、動きと思考が噛み合わなくなった。

 

幸いにして吹き飛ばされた神機使いは何事も無かった。

衝撃で軽い脳震盪こそ起こしたものの、命に別状はなかった。

 

せめてもの責任と付き添いを願い出た。

同時に消えかけていた感情が、再び奥底から噴き出してくるのを認識する。

 

私のせいだ。

私の、私のせいで。

 

防げた事態だった。

以前の私なら、アラガミが死んだくらいでは攻撃の手を緩める事は無かっただろう。

 

私は弱くなった。

人で無くなる事を恐れるあまり、人が亡くなるという現実を忘れようとしてしまった。

 

そうだ思い出せ。

私は何のために神機使いになったのだ。

 

姿が思い出せない?

それがどうした。それがアラガミというのなら、()()()殺しても一緒だろう。

 

姿が思い出せない?

それがどうした。それが家族というのなら、()()仇を捧げても一緒だろう。

 

思い出せ。思い出せ。

()()出せなくとも問題無い。

 

ただアラガミを殺せれば、それでいい。

 

「………………………」

 

視線に気付いて身体が跳ねる。

この人、目が覚める時すら無言なのか。

 

「あぁ起きてましたか、ちょうどいい。」

 

後ろからの声に連続してビクリとしてしまう。

どうやら自分でも気付かないくらいに自分の世界に入り込んでしまっていたようだ。

 

「軽い脳震盪ですね。念のため今日一日は安静にして様子を見てください。」

 

脈を測り終えても特に所見が見られなかったのか、当直の医師が診断結果をそう告げる。

良かった。別状が無いようで本当に良かった。

 

安堵したのも束の間。

当直の医師が去ってしまえば、残されるのはヘマをやらかした当人とその割を食らって救護室送りになった部隊長。

 

「…ごめんなさい。私のせいでこんな事に…」

 

色々考えてみたものの、これ以上の言葉が出せなかった。

怪我がなかったからよかった、などと言う単純な話ではない。

 

自身の未熟、慢心が原因で危うく人一人が死にかけたのだ。

償おうにも、償う術すら今の自分には思いつかない。

 

「………………………」

 

いつもと変わらない、感情の無い瞳がしばらく見返してくる。

 

が、次の瞬間。瞬き一つした後に身体ごと壁の方へ寝返りを打ってしまった。

 

…え?

 

後ろ姿だけでも十分わかる。

これは普通に寝ようとしている人間の息遣いだ。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。」

 

予想外の動きについ乱暴に体をこちらに向け直した。

結果開いたままの瞳と視線があって三度驚いてしまうが、それをごまかすためにしばらく視線と向き合ってしまった。

 

…いや、そんな事はどうでもいい。

 

何か、何か無いんですか?

私のせいで、貴方は危うく大怪我するところだったんですよ。

それどころか、下手をすれば命に係わるかもしれない所だったのに。

 

「………………………」

 

青い瞳は答えない。

いつも通り無表情のまま、一言も発しないまま時間だけが過ぎていく。

 

…本当に、何も無いんですが?

言葉は喋れないかもしれませんが、貴方は感情は普通に持っているでしょう?

 

―私はそんなに、感情すら伝えるに足りない人間ですか?―




さらに長くなったのでさらに区切ります。
投稿するかはその内に。
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