無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.不明なユニットが接続されます。
Q2.神機壊し過ぎじゃない?
A2.ひと手間加えてやらかす人。
独立遊軍といえば聞こえはいいが。
要は体のいい何でも屋のお助け部隊である。
ノルマこそはないものの、忙しい時はとことんこき使われる。
飛んでくる任務内容にも節操が無い。
討伐、防衛、護衛に救助。偵察、強襲、殲滅戦に陽動、囮、伏兵部隊とまぁまぁ枚挙に限りが無い。
おまけに最近はここに新型技術の試験運用も加わった。
"試験運用"と言えば聞こえはいいが、要するに体のいいモルモットである。
文句の一つも言いたいところだが、残念ながらそんな事言えるほどいい御身分ではない。
宮仕えの下っ端の辛いところだ。
そんな訳で今日も今日とて神機保管庫にお呼ばれだ。
可愛いレディからの毎度の御指名、男冥利に尽きるね全く。
次の休みは何時だろうか?
「よぉ、また彼女からデートのお誘いか?色男は大変だねぇ。」
向かう途中、すれ違った元凶そのものが軽口を叩いてくる。
不満の一つも言ってやりたいが、今日の所はリンドウに構っている暇はない。
寝坊して結構時間がギリギリなのだ。
覚えておけよ、今度サクヤにある事無い事吹き込んでやるからな。
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「やぁやぁ待ってたよ!早速だけど今回使ってもらう神機について説明するね!」
部屋に入った瞬間理解した。
あ、これヤバイ案件だと。
ハンマーが置いてある。
金槌とかそんな生易しい代物じゃない。
何だったら"戦槌"って表現すらまだ足りないくらいだ。
これを使えと?冗談言うなよ、ファンタジーじゃないんだぞ。
思わずリッカの方に顔を向ける。
ニコニコと上機嫌そうに笑っている。
良い笑顔だ、可愛いなコイツ。
可愛すぎてちょっと怖いくらいかな。
だってこの子、目にハイライトが無いんだもの。
張り付いた笑顔にハイテンション、極めつけは目の下のクマである。
油汚れだって?騙されんぞ。
何年顔を突き合わせてると思ってる。
ははーん、さてはコイツ寝てないな?
何徹目かは知らないが、たまに寝ずに色々やってるという噂は聞いている。
よし、気付かなかった事にしよう。
神機に視線を戻す。
どう見てもハンマーである。
いや、バスターブレードにもハンマーあるだろう。
何でわざわざポールウェポンとして作り直した。
「これすごいんだよぉ~?見ててね見ててねー…」
ニッコニコだ。この笑顔で目のハイライトオフと言う君の方がすごいと思う。
一部の人種にクリティカルヒットしそうだな。
リッカが手元の端末を操作する。
神機がガシャンと音を立て、ハンマーの形が変化する。
待って。まさか君、これ作るために徹夜したの?
何をどうすれば
何?チャージスピアの時といい、今のムーブメントはジェットなの?
お兄さん年だから最近の流行りわかんない。
「すごいでしょ?いやー苦労したんだよホント。この前の試験データを基に一から組み直して…」
前回同様、リッカ先生の神機講座が始まる。
いや、説明は良いから寝なさいよ。何だったら子守唄でも歌ってやるから。
途中、言葉が怪しくなってきたのであやしつけたら寝てしまった。
…ちょうどいい、今の内にミッション行くか。
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今日のターゲットはコクーンメイデンだ。
小回りの利く相手は相性が悪いとみなされたのか、動かない相手を対象にデータを集めるとの事。
こうして見ても本当にマンガに出て来そうなハンマーだな。
軽く振り回してみたものの、案の定かなり扱いづらい。
何故ハンマーなのかという話だが、何でも破砕属性に特化した武器を模索した結果らしい。
神機の比重に偏りを持たせることで遠心力を生み出し、そこにジェット噴射で更なる速度エネルギーを加える事で威力向上を目指したとの事。
なるほど。マニュアルを読んでみた限りだが、思った以上に計算されて作られた武器なんだな。
先程の徹夜テンションを見た後でなければ素直に感心出来たんだが。
まぁいいさ、アナグラの技術班の腕前は信用している。
彼らが丹精込めて開発整備した神機なら、使うに何も心配はない。
良いデータが残せるよう、頑張るとしますか。
………
…と、考えていたんだが。
有り体に言って、この武器は課題点が山積みだな。
まずブーストを駆使した機動戦についてだが、如何せん調整が難しすぎる。
チャージグライドの機動力でチャージクラッシュの威力を叩き込める、と言えば聞こえはいいのだが。
不安定な重心で急加速するので姿勢制御が難しく、止まっている相手に対してすら当てづらい。
当たったら当たったで反動で体勢を崩しやすいので一撃離脱と言うにも安定性に欠ける。
速度を落とせばとも考えたが、それだとそもそものコンセプトから外れてしまう。
中途半端な威力向上と引き換えで扱いづらさが増すくらいなら、多少威力が低くても確実に安定した武器の方が信頼できるというものだ。
いっそブースト無しで運用するという手もあるが、そうなると今度は重量そのものがネックとなる。
神機使いは身体能力に補正がかかっているとはいえ、それでも振り回しているだけスタミナを消耗するくらいの重量がある。
ブーストを付けて振り回した日にはさらに倍疲れる。
バスター使いの俺ですらそうなのだから、恐らく相当使い手を選ぶ神機になるだろう。
ついでに言うなら俺にはこの武器合わない。
相手の死角に潜り込んでの一撃が基本戦術なんだが、この武器でその立ち回りをするには少々難がある。
スタンス的にも性格的にも正面からの戦いは苦手なんだ。
逆に
…さて。
ここまでの運用結果で言えば、はっきり言って失敗作の部類なんだが。
「………………………」
…うん。あの笑顔を見てしまった以上、このまま成果無しで終わるのは忍びない。
徹夜云々を抜きにしても、これだって考え抜いて開発してくれた神機なのだ。
何とかして良い話の一つも残したいと考えるのが人情。
目にハイライトが無かった点はもう忘れよう。
気にしたら負けである。
--そうだなぁ。こうなったらいっその事、趣味と浪漫に振り切った運用を考えてみるか。
………
まずは発想を変えよう。
前提としてこの武器は使いづらい、即ち使い手を選ぶ武器である。
つまり一回でも使いこなす事が出来るなら、とりあえず短所には目を瞑れる。
では現実的に使いこなせそうな部分はどこになるか?
重量は流石にどうしようもない。
なのでここは最大の売りとして実装されているブースト機能に焦点を当てる。
ブースト機能のコンセプトの一つは"加速による威力の向上"である。
重さ×速さ=破壊力の方程式に従い、速さの部分を増加させるというのが目的だ。
短所はもう評価出来ているので割愛する。
長所を簡潔に評価し直すとどうなるか。
簡単である。
当然、加速に伴って途中の制御は難しくなっていく。
これも解決すべき短所だが、じゃあどうするか?
これも簡単である。
狙いは最初に添えるだけ。後は野となれ山となれ。
これなら途中の制御の難しさなど何の問題にもならない。
何故なら途中で制御する必要がそもそも無いからだ。
ここまでが"使いこなす"と判断するために必要な最低ライン。
だがこれだけではまだ足りない。
これに浪漫を一つまみする事でようやく運用レベルに到達する事が出来る。
最後の課題だ。浪漫とは何ぞや?
これに至っては皆大好き"アレ"しかない。
「………………………」
…うん、理論は出来た。後は実戦でどうなるか。
そこまで思考を整理した所で緊急を告げるアラートが鳴り響く。
どうやら想定していなかった中型種のアラガミが接近しているようだ。
ちょうどいい、小型種では流石に運用テストにならないからな。
一撃離脱、なんてケチな事は言わない。
それでは浪漫足りえない。
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ここは極東支部の救護室。
怪我をした神機使いがお世話になる場所だが、実は利用率はそこまで高くない。
と言っても最近は利用する奴が増えてきているらしい。
無茶をする馬鹿が増えたのか、生き残る確率が増えたのかは判断に悩むところである。
やはり趣味と浪漫に走るとそれなりに代償を伴うようだ。
アラガミは無事倒せたものの、対価として右手の手首を持っていかれてしまった。
まぁちょっと捻っただけだがな。
使い手にもダメージが跳ね返るあたり、やはり浪漫に留めておいた方がよさそうだ。
限界まで加速したブーストハンマーによる全力の一撃。
その威力は受け止めたシユウをそのまま建物の角まで運搬し、端っこで挟み込んで上下に潰し千切った。
当然勢いなんて殺せるはずもないのでハンマー部分が壁に叩きつけられるが、それをブレーキ代わりに利用して数メートル先の所で停止した。
この前使ったチャージスピアの経験が生きた瞬間である。
しかし自分でやっておきながら凄まじい威力だ。
シユウの翼手は相当硬いはずなんだが、受け止めた両手ごと胴体を千切り飛ばすとは。
奥の手として考えればワンチャンありかもしれない。
本格配備が始まったら、真面目に考えてみてもいいか。
さて。そろそろバレる頃合か。
用も済んだし、さっさと自室に逃げるとしよう。
下手したらハンマー同様、
………
まぁ同じアナグラに住んでる以上、逃げ切れる訳が無いんだが。
後ほど普通に呼び出されてしばかれた。
Q.アリサまだ?
A.もうちょっと。
間に差し込むかは考え中。
元々即興投稿なのでご容赦をば。