無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.喋れないの?って聞いたらどうなります?
A.喋れるぞって返してくれます。


無口な無口な運用テスト-幕間2-

試験もそろそろ大詰め。

既に小型種は刈りつくされ、数分後にエリアへ乱入してくる中型種の撃破を持ってミッションは完了となるのだけど。

 

「あら?あの子何処に行ったのかしら?」

 

ふと周りを見渡せばいつの間にか同行者の姿が消えている。

一瞬はぐれたかとも思ったが、そもそも作戦圏内がそれほど広くない事を思い出す。

 

「かくれんぼでもしてるの?まさかね…」

 

-変な事し始めたら狙撃しちゃっていいからね。-

 

(それってつまり、変な事するような人間だって事よね…)

 

不意にミッション前に言われたリッカの言葉を思い出して考え込んでしまう。

味方に弾が当たっても問題無い事を確認するためのミッションでもあるとは言われてるけれど。

 

何なら開始直後で既に前科が発生している。

だからと言って仲間に銃口を向けられるかと言われると流石に、ね…

 

物思いにふけっていたところ、アラームが鳴り響いて中型種の乱入を告げる。

まぁあれだけの実力者だし、アラームを聞けばそうかからない内に戦闘を始めて…

 

「…えっ!?」

 

思わず声が上がった。

 

乱入してきたのはサリエル種に属するアラガミ。

フワフワと空中を浮遊し、オラクルエネルギーを用いたレーザーで攻撃してくる厄介な相手だ。

 

それがエリアに入ってきた次の瞬間。

それよりもさらに上空から突如強襲され、肩口から牙のように鎌を突き立てられて地面に叩き伏せられる。

 

「嘘でしょ、いつの間にあんな高所に…というかどうやって移動したの?」

 

サリエルの浮遊している高度はジャンプした程度では到底飛び越すことは出来ない。

私はスコープで捉えていたにも関わらず、あの神機使いは明らかにその範囲外の高さから襲い掛かってきた。

 

確かにこの付近にいくつか建物は存在しているものの、既に崩壊しかけているものが殆どなので階段を使ってという訳にはいかない。

一体全体、この短時間でどうやってあんなところまで移動したのだろうか。

 

(いけない、今は目の前の敵に集中して…って、何してるのあの子!?)

 

サリエルが引きずり回されている。

それはさながら、肉食獣に背中から噛みつかれた草食獣のような様相だ。

 

アラガミも追尾型のレーザーで抵抗を試みるものの、巧みに相手の身体を盾にして防ぐ神機使い。

自身の攻撃で逆に自傷してしまい、悲痛とも感じる叫び声がサリエルから上がる。

 

その間も隙を見つけてはアラガミを引きずりまわして地面や壁に叩きつける。

オラクル細胞で構築されるアラガミに対して、叩きつけそのものによる物理的なダメージは発生しない。

しかしその衝撃で肩から深く突き刺さった神機がえぐりまわされ、その度にアラガミの体力は容赦なく奪い取られていく。

 

傍から見れば惨く、悲惨な光景。

しかし私は神機使いだ。アラガミに同情するような感情は生憎持ち合わせてはいない。

 

「可哀そうではあるけれど…ごめんなさいね。これが私のお仕事だから。」

 

銃声が響く。

サリエルの頭部に的中し、弾け飛んだオラクル細胞が花を咲かせる。

 

サリエルの悲鳴が響き渡り、同時に四方八方へレーザーが射出される。

本来であれば追尾性を持った危険極まりない攻撃であるのだが。

 

「…残念ね。貴方の言葉は、私の心に響かないの。」

 

一直線にレーザーが向かってくるが、狙撃体勢は崩さない。

銃身の先まで届いたところでそれは急速に色を失って消え果てる。

 

単純な話、射程距離外である。

然るべき距離が確保できているのであれば、近~中距離用のホーミングレーザーと長距離特化の狙撃弾では勝敗は火を見るより明らかだ。

 

ましてや彼女の背後には死神が取り憑いている。

もう彼女が助かる術はもはや残されていない。

 

-ギィヤアアァァッ!!-

 

悲鳴が響き渡ると同時に次弾が着弾する。

着弾前の悲鳴と合わせ、いよいよ最後の時が見え始める。

 

(…って、あら?ちょっと、どこへ行くの貴方?)

 

既にレーザーも撃てなくなるほどサリエルの抵抗は弱まり、もって数分だろうと見たところで死神の気まぐれが発動した。

動くこともままならなくなったアラガミを背負い、少しずつどこかへ向かって移動を始める。

 

警戒は解かず、狙撃体勢のまま追尾する。

建物の角を曲がったところで、アラガミの断末魔が響き渡った。

 

恐らく彼が止めを刺したのだろう。

しかし何故このタイミングで?別に目の前で仕留めても不都合は無いと思うのだけれど。

 

建物の角を曲がる。

先程まで戦っていたアラガミ"サリエル"の身体と首が転がっていた。

 

近寄ってみるが完全に反応が消失している。

肩から背中にかけて切り開かれ、その上で首まで斬り飛ばされている。

 

(やっぱり、あの子アラガミを憎んでいるのかしら。)

 

以前聞いた彼の生い立ち。

変わろうとしていると支部長は言っていたけど、やはり心に刻まれたトラウマはそうそう癒えたりしないものなのだろうか。

 

「それにしてもどこに行ったのかしら?」

 

既に辺りにアラガミの反応は無い。

安全は確保されていると言えるが、その静けさが今は逆に不穏さを増している。

 

ここにはもう一人、確実に存在してるはずなのに。

周りを見渡せど動く生物は一人としていない。

 

まるでホラー映画にでも入り込んだ気分だ。

そしてそういう話ではお約束のように次の瞬間…

 

-ドンッ!-

 

突然背後で物音が響く。

前方に飛び出しながら振り返り、咄嗟に神機を構えなおす。

 

…何もいない。

そう思った次の瞬間。

 

-ガシッ!-

 

肩を掴まれ、悲鳴が上がった。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「…ホラーかな?」

「どちらかというとコメディよ。あの子、絶対撃たれた事根に持ってたわよ。」

 

缶コーヒーとクッキーでティータイムと洒落込みながら女性二人の雑談は弾む。

リッカの言う通り、本当にあの子はお茶菓子を持ってきてくれた。

 

ちなみに脅かされた腹いせに今度は本気で狙撃した。

近距離の初弾こそ直撃させたが、二発目以降は全弾避けられたというのがまた腹立たしい。

 

「えっ!?あの人狙撃弾躱せるの!?ど、どうやって!?」

「タネがわかれば簡単よ。ちなみに短時間で高所へ移動したのも同じ方法。」

 

彼は今回、運用試験と言う事で鎌型の神機を持っていた。

実際の刃物と違って神機の斬撃は喰い千切っていると表現するのが正しく、刃部分もそこまで研ぎ澄まされた作りはしていない。

 

要するに色んな所に引っ掛ける事が出来るのだ。

窓辺だろうと壁の縁だろうと、その気になれば鉤爪代わりにする事が出来る。

 

おまけに神機使いは偏食因子の影響で身体能力が非常に高い。

その気になればそれこそ忍者ムービーのように動き回る事も不可能ではないだろう。

 

恐らくだが高所に移動したのも同じ方法だと思う。

窓辺などに引っ掛けて壁を上り、そのまま屋上に潜んでアラガミを強襲したのだ。

 

「えぇ…神機使いってそんな事出来るの…?」

「あくまで理論上はって話よ。私は無理。どう考えてもあの子が異質なだけ。」

「撃ち落とすのも無理だった?」

「無理よ。あれ、人の動きじゃなかったもの。まぁ最後に一泡吹かせる事は出来たけどね。」

 

これでも狙撃兵としての自負がある。

狙撃弾の弾速があれば平面上を移動するターゲットを外したりはしない。

しかし流石に三次元移動で逃げ回る相手は分が悪い。

 

挙句、弾丸が尽きたと見るや"弾切れか"と言わんばかりに逃げるのを止めるのだ。

悔しかったので後ろを向いてる隙にOアンプルを飲み、ダメ押しの一発を撃ち込んでおいた。

 

それを聞いたリッカはケラケラと楽しそうに笑った。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「…で、どうだった?あの人とのミッションは。」

 

話が一段落したところでリッカが切り出してくる。

 

「そうね…月並みだけど、人の噂は当てにならないって感じかしら。」

 

例えるなら人型神機。

語らず、感じず、何も思う事無く戦い続ける神機兵。

 

この極東で実しやかに語られる、彼と言う人間を表す総評だ。

嘘か誠かは知らないが、裏では本部直属の部隊として色々後ろ暗い事もやっているだとか。

 

噂とは関係なしに自分もそう感じていた一人ではあった。

もっとも、そんな前評判は今日のミッションで綺麗さっぱり覆ってしまったのだが。

 

「あんな行動を取る性格の持ち主がそんな生き方するのは無理でしょ。」

「だよねぇ~…」

 

会話をしていない以上、これもあくまで推測の域を出ない話だけれど。

これで評判通りの人間だとしたらそれはそれで末恐ろしい物を感じる。

 

「ちなみにリッカは何時ぐらいから気付いてたの?」

「んー、結構最初の方からかなぁ…だって神機の扱い雑なんだもの。」

 

そういう人って良くも悪くも丁寧だし。

神機に並大抵ではない熱情を捧ぐ彼女に言われてはもう返す言葉が無い。

 

「…と、言う話なんだけれど。貴方はどう思う?」

 

背後に気配を感じて振り返りながら話しかける。

ミッションの時と変わらず、感情の無い表情でこちらを見返してくる。

 

「………………………」

 

相変わらず返事は無い。

それにしてもここまで筋金入りだと、むしろミッションの時に見たあの行動の方が異常なのではないかと思えてきてしまう。

 

「君さぁ…本当は優しい人なんだから、偶には返事の一つも「リッカ。」

 

言い切られる前に言葉を遮る。

そう言えば私達と違ってリッカはあの話を知らないのかもしれない。

 

「それは言っちゃダメ。後で教えてあげるから…ね?」

 

許可を取るように神機使いの反応を伺う。

青い瞳は何も答えず、そのまま神機保管庫を後にした。

 

(ままならない話ねぇ。)

 

いつの間にかクッキーも最後の一切れだったようだ。

ちょうど時間も頃合、今日の所はお開きにするとしましょうか。




-幕間の幕間_無口な無口な部隊長の視点2-

サリエルに襲い掛かった後。

(奇襲成功。流石にこの体勢からは逃げられまい。)

(おっとレーザー、だが甘い。それは既に織り込み済みよ。)

(暴れるな暴れるな、傷が開いてすごい事になるぞ。まぁ黙ってても俺が暴れまくるんだがな。)

(おっとジーナも撃ってきたか。だがカノンの爆撃をも凌ぎ切る俺に死角はない。)

………

サリエルが瀕死になった頃。

(流石にもう秒読みだな。すぐ楽にしてや…待てよ?)

(いくらふざけた俺が悪かったとはいえ、流石に警告無しの発砲はやりすぎなのでは?)

(うん、ちょっとくらい仕返ししても許されるだろう。さてどうしてくれようか?)

(…古典的だが、後ろから脅かすか。)

………

脅かしました。

(ちょっと待った!本気で撃ってきてる!)

(待て!話せばわかる!軽いスキンシップじゃないか!)

(…おっと、弾切れか?マジでビビった。全く…)

(どうしたお嬢さん?撃てるものなら撃ってみな。)←この後普通に撃たれた。

………

神機保管庫、ジーナがリッカを遮って目配せしてきた。

(…何の目配せだ?)

(よくわからんが…まぁ女性同士の話題に野郎が割り込むのも野暮な話か。)

(男がいると話しづらい事もあるだろうしな。ここはクールに去るとしよう。)

NORMAL COMMUNICATION!(友好度±0)


一部の人にはちょっとづつ地金がバレてきた模様。
ただしそれでもトラウマで喋る事が出来ないと思われてます。
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