無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.この人騙されやすいの?
A.人を見る目は確かです。

時系列がちょっと進みます。


無口と新型とカウンセラー1

長らく続いた後方勤務もようやく終わり。

今回から再び前線勤務に戻るらしい。

 

…おかしいな、後方勤務って本当はもっとのんびり出来たはずなんだが。

こき使われた挙句に毎度のように怒られた記憶しか残ってない。

 

支部長、俺頑張りましたよ。

ボーナスの一つも欲しいんですが。

 

そんな事を考えていたら支部長直々に呼び出された。

 

………

 

「よく来てくれた。」

 

机に座ったまま、支部長が正面から声をかけてくる。

 

しかしこの部屋、相変わらず高そうな調度品ばかり並んでいる。

絵画や陶器の価値はよくわからんが、これも経費で買ってたりするのかな。

 

そして隣のおじさんは誰でしょうか。

俺もそこそこ古参のつもりだが、少なくともこの人は見たことが無い。

 

「紹介しよう。この度ロシア支部から配属されてきたオオグルマ博士だ。」

 

「オオグルマだ。博士と言っても本業は医者、心理カウンセラーのようなものをやらせてもらっている。」

 

なんとお医者様。それも心理カウンセラーとは。

見た目は中年過ぎのオッサンなのに、人は見かけによらないもの…いや、初対面でこれは流石に失礼か。

考えてみれば支部長や榊博士の若作りの方が違和感あるし。

 

まぁ俺は純粋に若いんだけどね。

 

「皆に伝えるのはもう少し後だが…近く、この極東支部に二人目の新型神機使いが配備される。彼はその子の専属カウンセラーとして招かせてもらった。」

「普段の業務は他の神機使いの心理ケアも兼ねさせてもらうがね。聞くところによると…君も色々複雑な生い立ちだと聞いている。」

 

まぁ複雑かどうかは置いといて。

それなりにアレな人生は歩んでいると思う。

 

何せ目の前で両親食べられてますからね。

素面の時はそうでもないんだが酒が入るとこう、フィルターが外れて鮮明になるというか。

 

「私は、君の助けになりたいんだよ。支部長からも、同じ気持ちだという事は既に言質を取っている。」

 

あ、読めたぞ。これ君のトラウマ云々って話だったのか。

というか支部長、まだ勘違いしたままなのか。

 

うーん、正直、金一封でも貰えたらそれで満足だったんだけれど。

考えてみればちゃんとした心理ケアって受けたことなかったな。

 

仕方ない、恩を感じたように見せておくのも処世術の一つか。

ここは一つ、支部長様の思惑に乗らせてもらうとしよう。

 

……………………………………………………………………………………………

 

…調子が良い。

いや、正直カウンセリングというものの効果を舐めていた。

 

靄が消えたというかなんというか。

まるで今までが()()()()()()()()()()()()()()()()()()錯覚してしまう。

 

とうにトラウマなど乗り越えたかと思っていたのだが。

実際は俺が思う以上にそれは俺を蝕んでいたらしい。

 

腕が軽い。足が軽い。

頭が軽い。神機が軽い。

 

むしろ今までよく戦えていたと感心してしまう。

まぁ正直言うとたまに二日酔い気味の時が無かったでもなかったが。

 

うん、これは金一封なんかよりずっと得したかもしれない。

一人頷いているところに新しい大型種の接近を告げるアラームが成り響く。

 

いいぜ、来いよ?

紳士たるもの、淑女の誘いは断らないのが常識だ。

お前がレディかどうかは知らんがな。

 

 

アラガミ?上等だよ。

 

 

 

 

 

今の俺は、()より強いぞ。

 

 

 

 

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部のエントランスホール。

周りの任務上がりの喧騒の傍らに、一人片隅で勝利の美酒に酔いしれる。

 

大型2、中型4、小型種多数。

それが本日叩き出したミッションの成果である。

 

いやぁ、我ながら頭がおかしい。

単独でこの戦果とか、これはソーマも超えちゃったかな?

 

まぁ単に調子が良かっただけなので慢心したりはしないけど。

 

しかしこれがカウンセリングの成果なのか。

ぶっちゃけると()()()()()()()()()()で、何がどうこうした記憶はないのだが。

 

「調子がよさそうだね。」

 

顔を見上げる。

腹の出た黄色いバンダナのオッサンが立っている。

 

やぁ先生、これは気付かず失礼を。

こんなに調子良くしていただいて、貴方には足を向けて眠れませんよ。

 

もっとも、古参兵と言う立場上、感謝はあれども大っぴらにそんな事をいう訳にはいかない。

何だかんだで古株と言う肩書きは面倒くさいのだ。

 

代わりに買い込んでいた酒を差し出す。

今日は思わぬ臨時収入が入ったので、珍しく良い所を買い込んでいる。

 

「あ、あぁすまない。ありがたくいただくよ。」

 

ん?思ったより反応がよろしくないな。

もしや先生下戸だったか?

 

んー、じゃあ次は普通に食べ物をチョイスしておくか。

あ、先生。とりあえずその酒全部上げますよ。

飲めなかったら周りの奴らに振る舞ってやってください。

 

アナグラには酒好き多いですから。

分け合うだけで好感度が鰻登りですよ?

 

……………………………………………………………………………………………

 

「ちょっといいですか?」

 

後ろから声をかけられる。

おっとこれは失礼。見慣れないお嬢さん。どこかでお会いしたかな?

 

「貴方、ここの旧型神機使いみたいですけど…オオグルマ先生の知り合いですか?」

 

オオグルマ?あぁ、あのオッサン先生の知り合いか。

そう言えば元々専属カウンセラーとして招かれたって言ってたか。

 

という事はこの子が例の新しい新型神機使い?

 

「アリサ・イリーニチナ・アミエーラ。この度極東支部の配属となりました。…失礼ながら、貴方には先に言っておく事があります。」

 

あ、嫌な予感。

こういう事言う人って、何故か前振りが似たり寄ったりなんだよな。

 

「先生は私のカウンセリングに来てくれてるんです。旧型は旧型なりに迷惑かけずに…ってちょっと!どこ行くんですか!」

 

ん?ちょっとジュース買いに。

だって絶対これ口悪いアレだもの。

 

それに先生に酒上げちゃったから口さみしくて。

 

「人が話してる途中で帰ろうとするなんて…何ですか、奢りませんよ!自分のお金で買ってください!」

 

自販機を指差したら怒鳴られた。

 

いや、何飲むかって聞こうとしたんだが。

むしろ俺が奢ってやろうかと…

 

あれ?もしかしてこの子、結構面白い子か?

打てば響くし、何かからかい甲斐が凄くあるぞ。

 

…カウンセリング必要かこれ?




糸目の胡散臭い科学者とむさい腹出た医者のオッサン。
どちらを信じると言われれば…ねぇ?
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