無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

26 / 154
Q1.この人オオグルマ先生に甘くない?
A1.中の人なのでそこまで裏事情は知りません。

Q2.トラウマ突かれても効かないの?
A2.突っつかれてるのは()地雷です。


無口と新型とカウンセラー4

(幼い君は、さぞかし自分の無力さを呪った事だろう。)

 

えぇもちろん。何しろ目の前で生み育ててくれた親が消えていきましたからね。

 

(だが、今の君には力がある。憎い仇を討ち滅ぼす力がある。)

(戦え。喰い破れ。今度は君が。力を手にした君が。)

 

(憎い仇を、喰い破れ!)

 

…いいよ、もうそういうの。正直お腹一杯なんだよ。

どいつもこいつも、何で同じ事を言うんだか。

 

………

 

(こいつらが君たちの敵、アラガミだよ。)

 

えぇ存じてますよ。何しろ目の前で生み育ててくれた親を消してくれましたからね。

 

(そしてコイツが、君の両親を食べてしまった…アラガミだよ)

 

…いいえ、ひと違いです。

というかそれ、アラガミですらないんですが。

 

(でも、君はもう戦える。憎い憎いコイツらを殺すための力が。)

(怖がることは無い。私が、勇気の出る()()()()()を教えよう。)

 

-один(アジン)、два(ドゥヴァ)、три(トゥリー)-

 

いや、何でロシア語だよ。

俺がロシア人に見え…るかもしれんな。アイカラー的に。

 

(そうだよ。そう唱えるだけで、君はどこまでも強くなれる!)

 

「………………………」

 

 

 

 

 

そうですね先生。そう唱えるだけで、俺はどこまでも強くなれます。

ありがとうございます先生。俺を強くしていただいて、先生には感謝しかありません。

 

腕が軽い。足が軽い。

頭が軽い。神機が軽い。

思考が軽い。気持ちが軽い。

今ならどんなアラガミが相手でも怖くない。

 

素晴らしい、やっぱり先生は優秀なんだな

この言葉は忘れません。これからもありがたく使わせていただきますよ。

 

よくも人様のトラウマをえぐりやがって。

この御()は絶対に忘れないからな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部の救護室。

怪我をした神機使いがお世話になる場所だが、実は利用率はそこまで高くない。

 

おまけに今の利用者は二人だけ。

カウンセリングに来た古参一人と、心を怪我して入院中の新人が一人だ。

 

いや、正直迷った。迷ったんだ。

あのオッサンのカウンセリングを受け続けていいものかと。

 

でもこれってそもそも支部長直々の好意なんだよ。

立場的なものもあるし、理由なしに無下に断るのもちょっとまずい。

 

それに榊博士に頼むっていうのも悪手な気がする。

だってあの人、支部長と長い付き合いなんだろ?

 

何かやられても、そのまま握り潰されそうじゃん。

 

悩んだ挙句、結局オオグルマ先生のカウンセリングを受け続ける事にした。

まぁ手の内は分かったし、それならそれで対処法はあるからな。

 

これが()()()()()()()とかだったらわからんかもしれんが。

何だかんだで俺も男だからな。色香に惑わされるというのはあるかもしれん。

 

思考に耽っていたところで名前が呼ばれる。

後は診断結果を受け取ってカウンセリング終了だ。

 

…と、思っていたんだが。

 

叫び声が木霊する。

よく聞き慣れた、現実と認識のズレから生じる金切り声だ。

 

…仕方がない。所属は違うが可愛い後輩には違いない。

 

ちょっとだけ様子を見ておくか。

 

………

 

わぁ悲惨。

絵に描いたような光景ですね。

 

金切り声を上げて暴れる少女。

取り押さえる看護師。手には鎮静剤とおぼしき注射器も見える。

 

まぁそうだよな。

いくらお見舞いと言ってもタイミングが悪すぎたか。

 

生憎俺に医療知識は無い。

手伝おうにも足手まといにしかならないのが現状だ。

 

仕方ない出直すか…

 

-パリンッ-

 

あ、鎮静剤が。

でも予備が…って無いのかよ。

 

出番ですよ先生…ってオッサンもいないのか。

おいおい、あの先生肝心な時にどこ行ってるんだよ。

 

こういう時にああいう()()を使わなくてどうするんだ。

 

…仕方ない、経験頼みの素人療法で申し訳ないが。

看護師を押しのけ、正面から力任せに抱きしめる。

 

 

暴れるな暴れるな。大丈夫、大丈夫だから。

ゴメン?いいよ別に。お前は悪くないからな。

 

何をそんなに気に病んでる?

あぁわかってるわかってる。言われずとも全部わかってる。

 

私のせいで?なんだそんな事か。

何でもないよそんな事。親として当然の事だからな。

 

娘を守るのに理由がいるのか?

俺だったら娘を守る時にそんな事考えてたりはしない。

 

落ち着いたか?

良い子だ、良い子だ。だから…

 

 

 

今はおやすみ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部の救護室…の、外の廊下。

慣れない事をしたせいか、ちょっと頭が疲れた気がする。

 

連絡を受けたのかオオグルマ先生がやってきた。

おい、ヤニ臭いぞオッサン。一体どこで煙草を売っていた。

 

仮にも専属のカウンセラーだろうが。

次やったらガソリン押し売りしてやるからな。

 

入れ替わるようにすれ違い、缶コーヒーを買って一息入れる。

思い返されるのはさっきアリサを宥めるのに言ったあの言葉。

 

なるほど、親として当然の事か。

我ながら大した人生観を積んできたものだ。

 

-貴方、そんな冷たい人間だったんですか。-

 

止めろルーキー、その言葉は俺に効く。

自覚している欠点を突かれるのは滅茶苦茶精神に来るんだよ。

 

コーヒーの苦みが頭をスッキリさせていく。

そういやルーキーと言えば。

 

-あの子が悪いのは分かってる。けどここは一つ、先輩として度量の広さを見せてあげてもいいんじゃない?-

 

先日我らがリッカ様から言われた言葉を思い出す。

何で様付けかって?だってレンチ片手に脅してくるんだもの。

 

しかし、まぁ、うん。

度量云々はともかくとして、リッカがそういうのもわからん話ではない。

 

期間は短くとも十分交友は結べていたようだしな。

それにサクヤのあの顔を見続けるのも忍びない。

 

仕方ない、損を引くのも先輩の役目か。

 

次のミッション、同行頼むぞルーキー。




赤は即ち情熱の色。
ひっくり返っても赤はAKA。

信用ならんが優秀なオッサンっていうのが隊長さんの評価です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。