無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.何も言わずに変な味の飲食物を仕込まれたらそう思うかも。
Q2.ルーキーちゃんは良い性格?
A2.根っこはいろんな意味で良い性格。
後半ちょっとシリアス気味。
「あの人、頭おかしくないですか?」
私と同じ新型神機使いの言葉に思わずうんと頷いてしまった。
流石にこれはと思ったのも束の間、周りからも肯定の言葉が次々上がる。
やっぱりあの人、誰に対してもそうなんですね。
出会った当初は、こんな人間だとは欠片も思いもしなかったけど。
無口で、無表情で。同時にアラガミに対してはどこまでも無慈悲で。
機械のように淡々と処理しながら、時折思い出したかのように残虐性が剥き出しになる。
仇討ちという大義名分に休むこともできず。
擦り切れた心をさらに燃やして、無理やり次の仇を探す燃料にし続ける。
そんな姿を見せつけられたおかげで、私は自分と言うものを見つめ直すことが出来た。
今ではもうそんな心配はしていないけれど、もしかするとあんな
そんな予想を思い返すだけでも、背筋がゾッと冷え込んでいく。
まぁ実際はあの人、そんな人間ではなかったようだけれど。
喋らないという一点を除けば普通の…いや、それを除いて考えても変な人か。
この前ミッションでスタングレネードを投げつけられた時などはその最たる例だ。
リンドウさん曰く、仲間の強さを信じる大切さを伝えたかったとの話だが。
「まぁ、あれは無いわな。ソーマの奴もお冠だったし。」
同感である。普通に口で言ってください。
いや、喋れないのはわかっていますけど。
不器用なのにも程がある。
文句の一つも言いたいところだが、なまじ生い立ちを聞いてしまったばかりにそれすら言えなくなってしまった。
「この前のミッション、あの人ヴァジュラの前で棒立ちだったんですよ?咄嗟に声をかけたから大事になりませんでしたけど。」
何かデジャヴを感じる話だ。
もっとも、私の時は私自身のヘマが原因ではあったけど。
一時期引き摺ってしまったのは忘れたい過去でもあるのだが。
それと同時に、今にして思い返せば不満に思わない事も無くは無い。
人が散々悩みながら謝っているのに、何も言わずに普通に寝直そうとするし。
今だから言いますが。文句を言うのもコミュニケーションの一つですよ。
喋れないならせめて行動で意思表示してください。
…だからと言って、またスタングレネード投げてきたら怒りますけど。
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「…どうだった?あの人とのミッション。」
まぁその姿を見れば聞くまでも無いような気はするが。
「その様子だとスタングレネードでも投げつけられた?」
「いや、どの様子を見ればそんな見解になるんですか。味方にスタングレネード投げられるなんて話、聞いたことありませんよ。」
残念ながら事実です。
何なら私の他にも二名ほど被害者がいます。
「…本当の話ですか?」
「うん、本当の話。」
「…ドン引きですね。」
私もそう思う。
挙句にその言い訳が私の事を思ってだとか宣うのだからふざけた話だ。
まぁ言葉としては一言も口に出されてないけれど。
「ちょっとコンゴウと正面から戦ったから疲れちゃって。駄目ですよね、せっかくの新型神機を使ってるのにこんなんじゃ。」
コンゴウか。そう言えばあの人を見返してやると誓ったのもコンゴウの討伐ミッションだったか。
背中を任せてもらえたと喜んだのも束の間、時間切れとばかりにあっさり獲物を取り上げられてしまった。
あんまりと言えばあんまりな話。
まるで私など最初から戦力として計算していないかのような戦いぶりだ。
行動で意思表示しろというのはこういう事じゃありません。
お菓子奢ってもらったくらいじゃ忘れませんからね。
…あぁそうだ、良い事思いついた。
「疲れた時は甘いものがよく効くよ。」
「甘い物、ですか?」
「うん。それも人から奢ってもらったものは特に、ね。」
「…え?」
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…
……
………
リンドウさんが未帰還になってから、もう三日が経過した。
ミッションをこなす傍ら、時間さえあれば付近の捜索に精を出すが成果は無い。
ままならなさに気持ちが焦る。
ままならなさに気持ちが苛立つ。
他の神機使いも同様に探索に精を出す。
ミッションが奪い合うように受注され、同時に達成率の低下に上層部の目も厳しくなり始める。
…ままならなさに気持ちが焦る。
…ままならなさに気持ちが苛立つ。
リンドウさんが未帰還になってから早五日。
いよいよミッションの受注条件に制約が設けられ、満足に探索に行くことも難しくなった。
帰還して横になっても気持ちが休まらない。
引きづられるように身体の疲労も蓄積していく。
見つけなきゃ。早く、早く見つけなきゃ。
けれどどうすれば。どうすれば、探索に行く理由が付けられる?
…そうだ、あの人なら。
あの人ならきっと、私達の気持ちを分かってくれる。
--あの人は、
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「…うん。流石にそれは、君が悪いよ。」
エントランスでの一悶着の後、飲み物片手にはっきり言われた。
「仮にもあの人は部隊長だからね。立場もあれば責任もある。それに…」
人の優しさに漬け込むようなやり方、私は嫌いだね。
面と言われたその言葉に、反論一つ出来ず下を向く。
正に正論。それこそぐうの音の一つも出せない。
わかってはいた。わかってはいたはずなのに。
都合の良い自己解釈の産物に、愚かにも飛びついてしまった自分がいる。
先程睨まれたあの瞳が頭をよぎる。
相変わらずその表情に感情は見えなかった。
けれど、睨みつけてくる青い瞳には、表情以上のそれが込められていた。
-もう一度言ってみろ。-
-お前に俺の何がわかる。-
文字通り、目が口ほどに物を言っていた。
決して軽々に口にしたつもりではなかったのに。
その瞳を前にして、私はもう先程の言葉を繰り返せなくなっていた。
静まり返るエントランスホール。
程なくして事態を聞きつけたサクヤさんとリッカが、私達の間に割って入って引き離す。
しばらくサクヤさんに宥められて頭が冷えた頃、入れ換わるようにリッカがやってきた。
私の話を聞き終わると目に見えて不機嫌そうな表情をし、先程の言葉を告げられた。
「…今すぐじゃなくていい。後でちゃんと、あの人に謝っておきなよ。」
返事をする事は出来なかったが、それでも何とか頷いては見せた。
………
「…さて。それじゃどんな理由であの人のミッションに同行するか、作戦会議を始めようか。」
「え?」
「え?じゃないよ。君だって半端な気持ちであんな事言ったわけじゃないでしょ?」
事態を飲み込めずに思わず変な声がでてしまったが、重ねるように言葉が続けられる。
「あの人は冷たい人間なんかじゃない。言葉こそは喋らないけど、君の気持ちは痛いほどわかってくれている。」
だからこそ、ちゃんとあの人の都合も考えて頼みに行こう。
都合良く解釈した優しさを当てにするんじゃなく。
お互いの立場を尊重した上での頼みなら、きっと答えてくれるから。
「…ね?」
優しく微笑みながら聞いてくるリッカ。
そうか。この人も、あの人を優しい人間だと信じてくれている人なのか。
「…うん。」
「ん、良い返事。それじゃまずは…どうしよっか?」
折よくサクヤさんも戻ってきたところで作戦会議が始まる。
…リンドウさんが未帰還になってから、六日目が終わろうとしていた。
-少し前のエントランスホールにて-
「君!一体何があって女の子相手にあんな…ちょっとどこ行くの!」
「………………………」←興奮しながらレンチ持ってる相手と会話なんてできるかと逃げている。
何気にリッカもテンパっていたというお話。
なおこの後普通に捕まった模様。