無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.逃げ出す割には捕まり過ぎじゃ?
A.瞬発特化なのでスタミナG。


無口な無口な名探偵1

「あの子が悪いのは分かってる。けどここは一つ、先輩として度量の広さを見せてあげてもいいんじゃない?」

 

「…うんわかる、わかるよ。君の立場や事情も分かってる。」

 

「それでもさ、あの子が半端な気持ちで言ってきたわけじゃないって事は君もわかるよね?」

 

「それに私もサクヤさんも、ちゃんと君に協力するからさ。」

 

「だからお願い。今回だけでいいから、何とか彼女達に協力してあげて。」

 

 

わかったわかった。

何とかする、何とかするよ。

 

女性には優しくしろって親に教育されたからな。

もっとも言葉がわかる頃には…まぁこんな話はどうでもいいか。

 

全く女性の上目遣いは反則だな。

だからレンチはさっさと置いてこい。

 

仕事道具?

お前は廊下にまでレンチを持ち歩いてくるのかよ。

 

これなんて言うか知ってるか?

棍棒交渉っていうんだぞ。

 

貸しにする気はなかったが。

脅されたから気が変わった。

 

今度何かたかってやるからな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは通称"贖罪の街"。

朽ちかけた建物が並び立つ前時代の遺物。

先日のミッションで崩れた瓦礫が、今も教会の入り口にいくらか残っている。

 

うん。予想通り、話で聞いたよりは既に撤去が進んでいる。

撤去というか付近のアラガミが邪魔だとばかりに吹き飛ばしたんだろうが。

 

ちなみに今回のミッションの目的は新種のアラガミの索敵と偵察、及び可能であれば討伐というもの。

明確にターゲットが捕捉されているわけではないので、もしかすると空振りに終わる可能性も無くは無い。

 

索敵が必要、つまり付近の探索を行う人手が必要な任務である。

 

「それじゃヒトフタマルマルになったら、この教会前に。」

 

サクヤが手慣れた様子で指示を出す。

コウタとルーキーもそれに従い、各位付近へ散開していく。

 

一人残されたところで探索開始。

付近の探索?それはもう専門の部隊がやっている。

 

こういう言い方はしたくないが、正直サクヤたちの行動はほぼ無益だ。

潜んでるにしろ動いてるにしろ、俺たちで見つけられるくらいなら、とっくの昔に発見されてるはずだからな。

 

もっとも、そんな事をいちいち言ったりはしないが。

 

何か行動をせずにはいられないという気持ちはよくわかる。

それにわざわざ水を差すほど、俺は冷たい人間ではない。

 

なら俺は何をしようとしてるのか。

端的に言うと現場検証をするのである。

 

あの時の状況は詳細に聞いている。

質問するまでもなく、事細かに語ってくれたので正直助かった。

 

瓦礫を避けて建物に入る。

ふむ、ここが件の現場ですか。

 

入ってすぐに感じた違和感。

これが良い結果に繋がるかはまだわからない。

 

 

さて、昔読んだ小説のように、探偵の真似事でも始めてみようか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

まず第一の疑問を定義しよう。

"リンドウは最初の襲撃で命を落としたか?"

 

まず解決すべき疑問はここである。

もしそうなら文字通りここで話は終了だからな。

 

まぁ新種のアラガミが相手とは言え、リンドウが一対一で負けるとも思えんが。

 

そしてこれは早々にNOという結論が出ている。

何故か?この部屋…というか建物内には()()()()()()()()

 

聞いた話ではヴァジュラタイプのアラガミである。

獲物が動かなくなったのであれば頭からバリバリというのが定石だ。

 

人間が頭から喰われるとどうなるか。

簡単な話、周囲に血液が噴き散らされる。

 

流れるなんてレベルじゃないぞ、文字通り炸裂するって感じだ。

目の前で見た事あるんだから間違いない。

 

だが見渡した所、そのような痕跡は見当たらない。

ましてやここは建物内部、雨風で流されたという線はありえない。

 

お行儀よく全部舐め取られたとか言われたら流石に知らんが。

とりあえずは生きてるという前提で話を進めるとしよう。

 

次に取り出したのは煙草。

といっても本物ではなく、紅茶の茶葉を薄紙でくるんだだけのもどき煙草だが。

 

だって俺喫煙者じゃないし。

おまけに本物高いんだもの。

 

口にくわえて火を付ける。

ふぅ煙い。こんなの吸って、本当に気分転換になるのだろうか。

 

一人愚痴りながら辺りをうろつく。

時折煙草を吸い直し、漂う紫煙に次の思考を巡らせる。

 

……………………………………………………………………………………………

 

第二の疑問を定義しよう。

"襲撃を凌いだリンドウは何をしていたのか?"

 

命からがら敵の襲撃を退けたリンドウ君。

状況は予断を許さないと理解しながらも、彼はきっと一時の憩いを求めた事だろう。

 

普段リンドウは憩いを求めて何をしていたか?

 

御存じの通り煙草である。

俺にはよくわからんが、喫煙者にとっては文字通り一服入れるには最適らしい。

 

ならばどこで、どのように一服入れたのか?

 

立ちながら?歩きながら?

座りながら?寝ころびながら?

 

辺りをうろつきながら喫煙を続ける。

吸いきってしまったところで新しい煙草もどきを取り出し、先程と同じようにウロウロと彷徨う。

 

「………………………」

 

違うな。

 

「………………………」

 

…ここじゃない。

 

「………………………」

 

こっちか?いや違う、むしろこっちの方が…

 

「………………………」

 

…ここか?この辺りなのか?

 

「………………………」

 

…ここだ。きっとここに違いない。

 

入口付近の大きな瓦礫。

そこに背を預けて座りかかり、穴の開いた天井を見上げて煙を吐き出す。

 

ここが一番しっくりくる。

緊張した中で一服入れるには最高の場所だ。

 

喫煙者であるリンドウなら恐らくノータイムで見つけた場所だろう。

ティータイムと洒落込む時の話であれば、俺も多分同じ事出来るからな。

 

焚火のような臭いの煙が空中を漂う。

最後に一息吸いこんで、指先でピンと煙草をポイ捨てする。

 

 

…ビンゴ。

我ながら探偵の素質ありだな。

 

 

火のついた煙草の飛び先に。

 

()()()()()煙草の吸殻が転がっていた。




○○探偵?何のことやら。
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