無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.懐から何を出すつもりです?
A1.懐から出るものと言ったらアレしかないやろ。(昔読んだSSより)

Q2.fc(フェンリルクレジット)は電子マネーじゃ?
A2.いつもニコニコ現金払い。


無口な無口な復帰訓練-幕間2-

私は幻覚でも見ているのだろうか。

それにしてはリアルな光景で、おまけに爆音と狂気的な笑い声が隣から聞こえてくる。

 

「それは私の獲物だよッ!」

「ちょ、カノンさん!?」

 

射線上には味方がいるが、止める間も無く引き金が引かれる。

この人、躊躇いが無さ過ぎる。

 

向こうも向こうでアラガミを盾にして銃撃を防いでる。

傍目に見れば討伐相手がアラガミなのか神機使いなのか、よくわからない光景だ。

 

「どうしたのアリサさん!さっきから全然撃ってませんよ!」

 

新手が来るまでの若干の間。

先程のテンションを引きずりながらカノンさんからどやされる。

 

「撃たないと訓練になりませんよ!アリサさんの腕なら大丈夫ですから!」

 

その言葉にハッとする。

そうだ、これは訓練だ。撃たない事には何も始まらない。

 

銃器を構える。

昨日のような吐き気はもうなかった。

 

前衛の神機使いに跳びかかろうとするオウガテイル。

牽制とばかりに小口径弾をばらまいて注意を引きつけ、合わせるように前衛が切り捨てていく。

 

「また盗った!私の獲物だって言ってるでしょう!?」

 

ほっといても息絶えるであろうアラガミの破片が木っ端微塵にされる。

 

待ってください、趣旨変わってません?

このミッションって私のメンタルケアも兼ねてるんですよね?

 

別の意味で新しいトラウマが出来そうなんですが。

あの人もあの人で避けれているのがおかしいですし。

 

…駄目だ、これは考えても仕方ない。

私は私で、与えられたミッションをこなすとします。

 

………

 

「私、今日誤射が少なかった気がします!」

 

言葉が出ないとはまさにこの事。

嘘でしょカノンさん。アレ、本当に狙って撃ってたんですか?

 

-いっそ私を練習台に二、三発撃ってみる?-

 

あの人の言葉が頭をよぎる。

いえ、もう大丈夫になりました。

 

今日の光景を見た後なら、私は誤射なんてしませんから。

 

…それにしても。

この人もよくこんな無茶苦茶な事をミッションメニューに組み込んで…

 

 

「………………………………………………」

 

 

いや、これ物凄く怒ってません!?

カノンさん、あれって話し合った上でやったんじゃないんですか!?

 

…まさかこの人、自分に対してもスパルタなんです?

 

……………………………………………………………………………………………

 

何だかんだで訓練も進み。

いよいよ次が最後の訓練となる。

 

終われば晴れて前線復帰。

第一部隊で再び神機使いとして戦場に立つ事になる…のだが。

 

「…はぁ。」

 

端末を見て溜息をつく。

映し出されたのは本日全休とする旨の連絡。

 

かれこれこれで三日連続だ。

 

ここに来て急に足止め。

訓練を終えていない以上、他の隊員についてミッションに赴くことも許されない。

 

何か不手際をしてしまったのだろうか。

思い当たる節は無いのだが、言いようのない不安に心がざわついてしまう。

 

「また何か悩んでる?」

 

顔を上げるとお世話になってる彼女がいた。

缶ジュースを差し出しながら「隣、座るね。」と一言告げて腰を下ろす。

 

「いえ、悩みと言うほどではないんですが…もう三日も訓練がお休みで。」

「…どこか体調でも悪いの?」

 

若干心配そうにされてしまったので慌ててそれを否定する。

 

「私自身は上手くやれているつもりだったんですけど…何か不手際でもしてしまったのかと思って。」

「うーん、それは流石に私にもわからない。いっそ聞いてみたらどう?」

 

なるほど直接聞いてみる手があるか。

しかしそれには問題が一つ。

 

「教えてくれますかね?」

「…駄目かな、自分で言っといてなんだけど。あの人、都合の悪い事は喋れない事を利用するから。」

「最近は聞こえてない振りもしますよね。」

 

無表情なので相手からすればわかってないのか無視しているだけなのかよくわからないのだ。

近くで観察すれば何となくわかるのだが、都合の悪い場合はあっという間に逃げてしまう。

 

ちなみに私達がそれを知ったのはリッカさんとのやり取りを見てたから。

怒るリッカさんを後目に鉄面皮のまま無言の行。挙句逃げ出そうとして後ろから叩かれたのだからしょうもない。

 

となるとやはり待つしかないか。

もどかしさはあれども、文句を言えるような立場ではない。

 

「意外と単にちょうどいいミッションが無いだけだったりして。」

「まさか…」

「物は試し。明日アリサも含めてあの人に同行申請出してみる。」

 

ミッションが無いからお休みってそれも中々すごい話だと思うけど。

ふんす、とやる気の彼女に水を差すのも悪かったのでありがたく受け取る事にした。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「…本当にミッションが無かっただけかもしれませんね。」

「むしろ休みを貰うためにアリサをダシにしてた可能性もある。」

 

彼女が申請した同行依頼はものの数分もしない内に承認の返事が返ってきた。

余りの返信の早さに私も彼女も、しばらく開いた口が塞がらなかった。

 

「流石に忘れてただけとかは無いですよね?」

「わからないよ。あの人結構天然だから。」

 

中々酷い評価だ。

でも否定しきれないというのがまた悲しい。

 

…本当に忘れてただけですと言うなら、私怒っていいですよね?

流石にそれぐらいは言う権利があると思うんですけど。

 

まぁ愚痴を言っても仕方ないです。

どうせ真実を知る手段は無いんですから。

 

そうこうしている内に携帯レーダーがアラームを鳴らす。

どうやら討伐対象がまもなくエリアに到達するらしい。

 

ここからが本番だ。

犯してしまった過ちを償うためにも、失敗するわけには…

 

-ぺちっ-

 

「気負い過ぎ。」

 

頬を軽くはたかれる。

不思議と身体から良い感じに力みが消えた気がする。

 

「…はい。」

 

一言だけ返事を返し、気持ちを入れ替える。

同時に討伐対象が姿を現して…

 

あれ?そう言えばあの人はどこに…

 

 

疑問に思った次の瞬間。

 

二つに裂けたグボログボロの向こう側から件の人物が姿を現した。

 

………

 

凄い剣幕だった。彼女の本性を垣間見た気がする。

派手さは無く、静かな感じではあるけれど。

 

後ろ姿からでも感じる威圧感。

多分あれ、睨みつけてもいますね。

 

おまけにこれ見よがしに不機嫌そうに神機を揺らしてる。

雰囲気も相まって、彼女の持つロングブレードが大きな鉈か何かのようにも見える。

 

それでも相手は相変わらずの無言無表情。

本当に鉄でも張り付いているかのような鉄面皮だ。

 

しかしすごいなこの人。

神機凶器を持っている相手に対してもこの態度を貫くのか。

怖い物とかないのかな?

 

「…はぁ、アリサ、行ける?」

 

待つ事数分、恫喝…もとい、威圧する彼女の方が先に折れた。

不意に話かけられて反応が遅れたが、問題無い旨をはっきり返す。

 

再びレーダーに反応あり。

直ぐに残りの一匹がやってきて…

 

「ッ二匹!?」

「近くにいたのね。大丈夫、やる事は変わらない。」

 

視線を交わしてお互い頷く。

元々は二人掛かりで挟み撃ちにする予定だったが。

 

前と違って今回は地の利が生かせる。

中型種一匹程度なら十分渡り合う事が出来る。

 

…ふと初めの頃の同行ミッションを思い出す。

コンゴウ一匹と正面から戦わせられ、情けない姿を晒してしまったあの日の事。

 

ふつふつと気持ちが湧いてくる。

 

あくまで冷静に。

ただちょっとだけ、あの日の悔しさを込めて。

 

 

--今度こそ、私の実力を認めてもらいますから。

 

……………………………………………………………………………………………

 

いや、個別に対峙した時からそんな予感はしてたんですけど。

 

挟み撃ちが出来なくなったのでお互い正面から一対一の体勢になる。

そうなると必然、三人目は頭数的にノーマークとなるわけで。

 

そして死角や後ろに回り込んでの一刀両断があの人の戦闘スタイル。

そんな人がフリーな状況になったらどうするかなんて、わかりきってたはずなのに。

 

いえ、信じてはいたんですよ?

直前にあれほど怒られたんだから、流石に舌の根も乾かない内にやらかす筈は無いだろうって。

 

二匹が近づいたタイミングでまとめて()()()()

縦に切るなって意味で怒った訳じゃないんですけど。

 

もしかしてこの人。

わかるのは感情の機微だけで、実は人の気持ちと言うものは理解出来ていないんじゃないでしょうか。

 

あの後がまた大変だった。

文字通り激昂して殴りかかる彼女に、所属違いの部下にボコボコにされる部隊長。

 

そのくせ二人して一言も喋らないのがシュールさを加速させる。

私は一体何を見せられていたんだろう?

 

…で。

そんな暴行劇を終えてアナグラに帰投してきたわけですが。

 

「ほらアリサ、遠慮しないで好きなの買いなよ。」

「い、良いんですか本当に?ここ、結構高いみたいですけど…」

「大丈夫だよ。私たちが払うわけじゃないし。」

「いや、だから余計に気にしてるんですが…」

 

チラリと振り返って様子を伺うが、そこにあるのはいつもの青い瞳の鉄仮面。

何を考えているのかはわからないものの、終始懐に手を入れているので少し怖い。

 

というか貴方、あれだけボコボコにした挙句お金まで巻き上げるんですか。

 

「あ、これとかどう?新しい甘味料を使用したビスケットに…あ、こっちは本物の砂糖をコーディングしたドーナツがあるよ。」

 

無邪気にあれこれ選んではいるが、付いてる値札が中々エグい額をしている。

 

「ね?アリサもこれ、一緒に食べよう?」

 

 

……

 

………

 

…ごめんなさい先輩。私、この誘惑には勝てそうにないです。

 

お世話になっている人の無邪気な笑顔。

見ているだけで思わず唾飲む、美味しそうな甘味。

 

あ、これマルメラードに似てる。

でも結構いいお値段…

 

「これ美味しいの?じゃあ一緒に食べようか。」

 

躊躇いゼロでカゴに放り込まれた。

ほ、本当に良いんですかこれ?

 

チラリと後ろを振り返る。

青い瞳は何も答えない。

 

…まぁ何も言わない以上、私があれこれ悩むのも変な話ですね。

割り切って私もお菓子選びを楽しむことにしましょう。

 

………

 

-ペシりっ-

 

「…私達が選びますから。先輩は選ばなくていいですよ。」

 

後ろから伸びてきた手が、ごく普通にはたき落とされた。

嘘でしょ、お金巻き上げられた上に、自分が食べたい物も選ばせてもらえないの?

 

 

…この人だけは怒らせないようにしよう。

 

……………………………………………………………………………………………

 

-Side_エトセトラ-

 

「いやぁ災難だったな兄ちゃん。まぁ俺は儲かったから良いんだが。」

 

「んで金額なんだが…まぁ多少おまけしてxxxxxってところだな。」

 

「どうした?いつになく固い顔して…てか前にも言ったがその懐に手を入れる癖直してくれよ。」

 

「外じゃ色々物騒なんだ。早く金を払って…ッ!?…ってなんだ、カードじゃねぇか。ビビらせるなよ全く。」

 

「知ってるだろ?うちは現金専門なんだ。カードだと色々面倒だからな。」

 

「どうしてもっていうならそれなりに手数料をいただくが…どうした?」

 

「…マジか。アンタ、マジで有り金全部むしられたのか。」

 

「俺が言える立場じゃねぇのはわかっちゃいるが…アンタ、嫌なことは嫌ってはっきり言った方がいいぞ。」

 

………

 

「マジかよあのルーキー、鉄仮面の有り金全部むしりやがったぞ。」

「新人のやる事じゃねぇな。…ここだけの話、何でもあの鉄仮面と兄妹だとかなんとか。」

「はぁ?ありえないだろ。髪も目の色も何一つ似てねぇぞ?」

「だからだよ。よくあるだろ?"血の繋がらない"って奴さ。」

「…確かにありえそうだな。あの鉄仮面が女に狂うってのも想像できないしな。」

 

 

 

 

 

(…何か今日は妙に視線を感じますね?)

 

(まぁアリサの事を言ってそうな雰囲気でも無し。)

 

(特に気にすることも無いですね。)




なお後日、滅茶苦茶後悔する模様。

いつの間にかアリサの悪評が消えたって?
逆に考えるんだ、それよりヤバいのが現れたと。
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