無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A.会話しないし、単騎特攻するし、フレンドリーボムをお見舞いするから。
駄目な隊長の見本例。
なお、言えば普通にしてくれる模様。
ここは極東支部のエントランスホール。
以前の喧騒を取り戻し、神機使い達がせわしなくあちこちを往来している。
今日は久方ぶりの休暇である。
アリサの訓練が終わった後、ようやく
リンドウの一件を経て他の神機使いの意識にも変化があったらしい。
救援依頼は目に見えて数が減り、代わりに万が一に備えた後方支援の件数が増えた。
うん、こういう依頼の仕方であればまぁ許容範囲だ。
欲を言えば自分たちで済ませろと言いたいところだが、それを言ってしまうと俺の仕事がなくなってしまうからな。
身の丈知らずの無茶をしといて"死にたくない"と叫ぶ馬鹿は気に入らんが。
"死にたくないから"と事前に助けを求めてくる奴は嫌いじゃない。
人間、死んだらそれでおしまいだからな。
目の前で両親喰われた俺が言うんだ間違いない。
まぁ俺の話はどうでもいいや。
とにもかくにも、ここ最近はお忙しく働かせていただいた結果、ようやく仕事も一段落してお休みタイムと言うわけだ。
報酬で懐も少し温まったので言う事無しである。
…ん?あぁ、第一部隊は今から出撃ブリーフィングか。
しょうがない、ここのテーブルは明け渡すとしよう。
流石に真面目に働いている同輩の邪魔は出来ないからな。
まぁ後で煽りはするけど。
これも愛嬌という奴だ。
………
階下に移動し、壁際に寄りかかって酒を呷る。
ビール一缶で十分酔える体質、安上がりで大変よろしい。
「…またお酒飲んでる。」
人聞きの悪い事を言うな、誰がアル中の酒カスだ。
休暇中に酒を飲んで何が悪い。
部屋で飲めと言われたら言い返せないが。
というか今話しかけてきたの誰だ?
わざとらしくキョロキョロして子供心を煽ってやる。
わかってるけど、からかうと反応が楽しいし。
「もう!貴方わざとやってるでしょ!」
イエスレディ、よくご存じで。
視線を下げれば裕福そうな少女がそこにいた。
表情は華麗というより年相応の可愛らしい怒り顔をしていたが。
「何時もそうやって子ども扱いして…それより!何時になったらミッション受けてくれるの!」
ふてくされてたと思ったら急に怒りの矛先が変わる。
やれやれ、お子ちゃまはこれだから。
というかはて、何の話だ?
民間向けのミッション受注なんて聞いた事無いんだが。
「貴方の噂は知ってるの。お金を積めば仕事請け負ってくれる"何でも屋"さんだって聞いている。」
おい待て、何だその悪意全開の肩書は。
どこの誰が金を積めば何でもするって…
「………………………」
あながち否定出来んかもしれん。
独立遊軍といえば聞こえはいいが、要は体のいい何でも屋のお助け部隊みたいなもんだからな。
でもだからって金で何でもするわけじゃ…
いや、ミッション報酬出てるからそれも強く否定しきれん。
実際、タダ働きだったら怒るしな。
待って。まさか俺、巷でそんな風に言われてるの?
納得いかねぇ、真面目に働いてただけなのに。
少女が何か言ってるが気にしない。
どうせいつものお兄様の事を調べてきてって話だろうし。
全く、ソーマも変に隠すからこういう面倒な話になるんだ。
しかし何でも屋ねぇ…
味覚音痴とか後輩いびりとか、根も葉もない悪評よりはマシかもしれんが。
俺、一応正式な部隊長なんだけどな。
他に隊員いないけど。
………
階上からルーキーのリーダー着任についてのあれこれが聞こえてくる。
「こういうの、何つったっけ…下剋上!?」
止めろコウタ君、その言葉は俺に効く。
あのルーキーもこのミッション明けには正式に部隊長。
隊員数は総員五名の大所帯だ。
片や隊員数ゼロの幽霊部隊。
おまけに主要な任務内容も特に決まってたりはしない。
一応特務もあるんだが、公に出来ない以上は無いも同じ。
「………………………」
いいさ。俺、少尉様だし。
頭が高いぞルーキー、こちとら上官様だぞ。
まぁ一月もすればあっちも昇進すると思うけど。
短い間だが、精々上官面させてもらうとするか。
というか支部長、マジで俺の部隊増員してくれよ。
……………………………………………………………………………………………
ここは極東支部の支部長室。
着任時を除いて一般隊員が訪れる事はほぼ無く、上層部や隊長クラスの人間のみが訪れるような場所。
部屋に入るとルーキーがいた。
まぁ呼ばれた要件を聞いた時点でいるとは思ってたが。
何の事は無い、ルーキーも晴れて特務部隊の仲間入りである。
これで名実ともにリンドウの代わりとして抜擢されたと言うわけだ。
権限付与されたら特務案件も閲覧できるようになるからな。
今時点で下手に探索に行かれても困るし。
まぁそれ以外の心配は特にない。
今となっては普通に優秀だしなこのルーキー。
この前のアリサのミッションでも思ったが、動きや判断には迷いが無い。
不測の事態に対しても咄嗟に最適解の戦術を組み立てる事が出来る。
それに本人の戦闘能力も上々。
自分を犠牲にしてとかやらない限り、俺から言う事は特にない。
「まぁ、そうは言っても急にリーダーに任命されて君もまだ困惑する部分はあるだろう。差し当たり、今後の事はそこにいるユウマ君に相談すると言い。」
…何だって?
視線が思わず支部長の方に向く。
「知っての通り、彼はリンドウ君に並ぶベテランだ。リーダーとしても特務隊員としても高い経歴を持っている。会話だけは難があるだろうが…普段の君達の話を聞く限りでは問題無いだろうと判断した。」
リンドウ君に並ぶベテラン。
うむ、事実なだけに鼻が高い。
特務隊員としても高い経歴を持っている。
うん、相当こき使われてますからね。
リーダーとしての経歴?
万年一人部隊の何処に経歴が積まれているんだ。
普段の君達の話?
上官なのに有り金全部お菓子に変えさせられたんですが。
「表向き上、正式な形には任命できないが…君もようやく、念願の部下が出来たな。」
微かではあるがいい笑顔だ。
イケメンってこういうのを言うんだな。
でも違うそうじゃない。
まさかそれ、ドヤ顔の微笑みなんじゃあるまいな。
俺は表向きで欲しいんだよ。
だいたい同じ特務部隊なんだから、部下じゃなくて同僚じゃん。
既にソーマが同僚だよ。
隣を見るとルーキーもこっちを見ている。
「そう言えば部隊長でしたね。就任祝い、期待してます。」
張り倒すぞお前。
可愛いは正義と言っても限度があるぞ。
上官から金巻き上げて楽しいか?
頭きた、いい機会だしルーキー扱いは止めてやろうと思ってたが。
就任祝いに、これからも【ルーキーと呼んで貰える権利】をお前にやるよ。
差し当たり、次の同行申請にルーキーって書いてやる。
-後日の出撃前-
「…あの人、まさか私の名前を知らないの?」(←メンバー欄の名前を見て震えてる。)
改めて見返したら和風趣味は榊博士の方だった件。
しれっと直しておきましょう。
続けばタイトルに"1"って付くかも。