無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.リッカちゃんは無口な人でも恐れない?
A.神機は口ほどに雄弁。


無口な無口な新人さん3

新人が部隊を去るケースは概ね三つに分けられる。

 

調子に乗ってヘマをこく。

ビビり過ぎてポカをする。

お利口ぶってからの神隠し。

 

この三つだ。

 

あのルーキーの場合は…

 

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いっちょ前に神の名なんぞ冠しているが、言ってしまえばその辺の害虫や畜生と違いはない。

そのレベルが熊やライオン以上しかいないってのが問題なんだが。

 

目の前にいるのは真っ二つにされて事切れた大型種のアラガミ。

騎士だなんて大層な肩書を持っちゃあいたが、うちのルーキーの前じゃカトンボと大差なかったっていうオチだ。

 

信じられるか?騎士様の最後は命乞いだぜ?

アラガミが言葉を話す訳もなし、あんまりな姿に俺がそう感じただけなんだが。

 

死角から足を一本一本切り飛ばされ、奥の手の尾槍も叩き割られて。

コイツは攻撃前に防御を固めるんだが、俺には助けてくれって拝み倒してるように見えたね。

 

まぁ顔色を窺ってきた瞬間にうちのルーキーは神機を叩き込んでたがな。

俺が言うのもなんだが命乞いってのはもう少し"人間らしい奴"にやらんと効果ねぇだろと思ったね。

 

んで、実は今回に限ってお偉さん方がモニタリングしてて、是非とも子飼いにって青田買いが始まったって寸法よ。

まぁそれの経緯はお荷物を抱えてるはずの俺の戦果が余りにも羽振りが良すぎるって訝しまれた結果なんだがな。

 

やれやれ、出世レースは完全に負けちまったな。

まぁ少しでも恩に感じてるってんなら、たまには美味しいおこぼれを奢ってくれよルーキー。

 

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アラガミの誕生プロセスっていうのは謎が多いらしい。

極端な例ではものの数分足らずでヴァジュラみたいな大型アラガミがいきなり出現するケースもあるそうだ。

 

だから事前の安全確認っていうのも実は気休め程度しかないらしい。

どんなに安全確保を行っても、運が悪いといきなりアラガミ動物園のど真ん中ってこともあるらしい。

 

"らしい"ばかりだから正直気にするのもしょうがないレベルではあるのだが。

何にせよ事前準備で危険性を減らせるのならそれに越したことはない。

 

今回の"不測の事態"とやらは新しい中型アラガミの発生パターンが検知されたとの事。

耐久性は文字通り"赤子”レベルとの事だがとにかく大量に生まれてくる事だ。

 

まぁ不測の事態が起こる事はしょうがない。

気をつけろと言うオペレーターの向こう側から興奮した科学者の声が聞こえるのも許そう。

 

だがいつの間にか任務詳細を新人の御守から"殲滅戦"へと変えた奴。

テメーは駄目だ、何時か目にもの見せてやる。

 

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「………………………」

 

ここは極東支部のエントランスホール。

今日も今日とて同輩である神機使い達が忙しそうに任務を受注し、出かけて行っている。

 

結果的に昨日の任務は大成功に収まったようだ。

新人護衛は無事成功。嫌がらせみたいに押し付けられた殲滅戦も、蓋を開けてみれば文字通り大した事は無し。

 

"ケモノ道"と呼ばれるアラガミ専用の通り道から出てきた個体を片っ端から薪割りするだけの簡単なお仕事。

討伐報酬に加えて素材も手に入るのだから存外割に合う任務だったともいえる。

 

さて、こうなると思案するのは臨時収入の使い道。

食う寝る遊ぶに困ってはいないし、使わず貯金と言うのも芸が無い。

 

と、言うわけで。

 

目の前にいるのは件の新人。

この前酒を買い込んでたところから、いけるクチだというのは知っている。

 

ゴッドイーターと言う職業は一般に比べれば遥かに高収入だ。

それを踏まえても酒のような嗜好品はたまさかの御褒美と言っても過言ではない贅沢品だ。

 

そんな代物を取り急ぎ十本ちょっと揃えてみた。

流石に飲み切りはされないだろうが、余ったならお土産替わりに持ち帰ってもらえばいい。

 

「す、すいません先輩…流石にこの量は飲みきれないというか…」

 

おいばかやめろ、誰がこの場で飲み切れと言った。

祝っている側とはいえ、流石にそれをやられたら俺でも引くぞ。

 

ふと気づけば酒飲みどもがチラチラこちらを伺っている。

おうコラ散れ散れ、見せもんじゃねーぞ。何で新人の独り立ち祝いなのに関係無い同期の高給取りに奢らなくちゃいけないんだ。

 

「もぅ、またやってる…コラコラ君ぃ、流石にアルハラは看過できないよ?もう神機メンテナンスしてあげないからね。」

 

見物人をかき分けて世話になっている整備士様がお出ましになる。

ふと新人に視線を向ければ、わからいでかと言わんばかりに嬉しそうな表情をしている。

 

おっと、これはストロベリーなお話の予感か?

 

若人のそれは老若男女問わず体に良い。

いずれガンにも効くようになる。

 

そうと分かれば長居は無用。

独り身の部隊長はクールに去るぜ。

 

こういうのは外から眺めるのが一番美味しいのだ。

祝いの品を置いたまま、上機嫌でエントランスを後にすると、入れ換わるかのように教官殿が向かってくる。

 

「公の場で酒盛りしている奴がいると聞いてきたが…」

 

貴様か?と指さされたので弟君を指さしておく。

酒代ってことで一つ身代わり頼むよリンドウ君。

 

 

俺は茶でも飲みながらストロベリーを見物させてもらおうか。

 

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「一杯空けたら解散しろよ。」

 

そう言って鬼教官と恐れられるその人は血の繋がる弟を連れて去っていった。

 

 

「…まぁさっきの話の続きだけど。正直ね、ホントにそうかと聞かれたら自信が無いんだけど」

 

何事もなかったようにこちらを向き直し、仕事終わりの一杯だとチューハイ片手に教えてくれるのは整備士の先輩女性。

 

「神機っていうのはただの道具じゃない。文字通り扱う人の人柄が浮き出るものなんだよ。」

 

仲間を想い、守るために身を挺する人の神機にはそういう傷跡が付く。

自分を愛し、守るために身を庇う人の神機にはそういう傷跡が付く。

 

ちなみにこの前の自分の醜態についても同じように傷が付いていたそうだ。

始めはそんなものだよと慰めてくれたが、今となってはただただ恥ずかしい黒歴史だ。

 

ではあの人の神機にはどんな傷が付いてたのか?

聞いてみると答えに困ったように先輩の女性は眉をしかめて答える。

 

「一言で言うと雑に変な傷が付いてる。多分丁寧な使い方をしていないんだろうね。」

 

良い意味なのか悪い意味なのかはわからないが、語る先輩の目は笑っていない。

たぶん、ろくでもない意味ではあるのだろう。

 

「でも、だからこそわかるんだ。きっとあの人の本質は、見かけとは全然違う気がする。」

 

もしかすると実はおしゃべりとか、何だったらネジが外れてるんじゃないかってレベルの天然だったリとか。

 

「それに、本当に他人がどうでもいいと思っている人だったら、こんな風に差し入れなんてしないだろうしね。」

 

ここに並んでいるのはそこそこに高価な贅沢品だ。

本当に他人に無関心なのだとしたら、身銭を切って準備するはずもない。

 

「ま、やり方は大分難有りだと思うけどね。」

「そこは激しく同意です…」

 

目の前には未開封の酒缶が六つ。

解散しろと言われた以上、もうここで飲むわけにはいかない。

 

 

とりあえず、飲みたい人にでも配ろうか。

 




新人シリーズはひとまずおしまい。
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