無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.賄賂は何だったの?
A1.新しいプリン味のレーション。

Q2.上物なんです?
A2.コウタ君はどう思う?

質問文に質問文を返したのでテスト0点。
シオちゃんも覚えておくように。


無口と無邪気なアラガミ少女1

「最後の確認だ。考え直すつもりはないのかい?」

 

我ながらわかりきった事を聞いたものだ。

それでも言わざるをえないというのが人の性か。

 

返ってきた答えも予想通り。

となれば、私ももはや行動を起こす事に躊躇いは無い。

 

先日とある筋から入手した新種と思しき報告をヨハンに話してやる。

案の定、目の色を変えて飛びついてきた。

 

「特異点か!」

「それはまだわからないよ。」

 

もっとも、その可能性は低いという事までは黙っておく。

何、別に嘘をついている訳ではないし、もしかしたらという可能性だってゼロじゃない。

 

「君が貸してくれたボディーガードもいるからね。本当なら今すぐにでも私が出向きたいところなんだが…」

 

そこで一旦言葉を止める。

聡明なヨハンの事だから私の言いたい事はわかるだろう?

 

………

 

想定通り、ヨハンはしばらくヨーロッパに出張する事になった。

当然、その間は私がアナグラの統括を代行する事になる。

 

「…これで、目下の邪魔者はいなくなった。」

 

あぁ、勘違いしないでほしい。

私は別にヨハンの事を嫌っているわけではないし、むしろ好ましい人物とさえ思っている。

 

今の私の目的とは相容れないというだけの話さ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部の個人部屋。

所謂"ベテラン区画"と呼ばれる場所にあり、新人区画の部屋よりちょっと設備が良いのが特徴だ。

 

自分で言うのもなんだか、同期に比べれば比較的整理整頓された部屋だと思う。

まぁ小物やら何やらを箱詰めして脇に積んでるだけなんだが。

 

悲しい事に掃除が出来ない人間でね、一度散らかしてしまうとそのままになってしまうんだ。

それこそ数日で絵に描いたような独身男性の部屋になる予感しかない。

 

よくエントランスホールで飲み食いしてるのもそれが理由。

備え付けのゴミ箱に叩き込むだけで済むし、多少汚しても清掃員の人がしっかり綺麗にしてくれる。全く頭が上がらんね。

 

「おっす!」

 

うん、元気のいい声だ。

どうやら現実逃避は許してもらえないらしい。

 

そういう訳で本題に入ろう。

 

 

…君、何でアナグラにいるの?

 

………

 

事の発端は一時間ほど前。

部屋のドアがノックされたのがきっかけだ。

 

来客とは珍しい、今までリンドウくらいしか訪れる奴なんていなかったのだが。

そもそもエントランスにいる事が多いから用がある奴はまずそっちを見に行くはずだからな。

 

別に友達がいない訳ではない。

ないと思う。ない筈だ。ないと信じよう。

 

言ってて悲しくなってきた。

この話は止めようか。

 

話を戻そう。いざ部屋のドアを開けてみたのはいいものの、普段の視線の位置に人影が無い。

はてなと思って首を傾げたところ、視界の端に白い何かが写り込む。

 

「………………………」

「………………………」

 

下げた視線と見上げる視線が交差する。

子供?いやちょっと待て、お前確かソーマに憑いてきた幽霊じゃ…

 

「………………………」

「………………………」

 

ガン見されている。勘弁してくれ、俺幽霊とかは駄目なんだよ。

例えそれが両親であっても、夢枕に立たれたら悲鳴を上げる自信があるね。

 

「………………………」

「………………………」

 

…よし、見なかったことにしよう。

エントランスで茶でも飲もうかと思っていたが諦めよう。

 

扉を閉め、部屋の中へ振り返る。

 

「………………………」

「」

 

普通に部屋の中にいた。

そうね、幽霊なら扉閉めたって関係ないものね。

 

「おっす!」

 

うん、子供らしい元気な声だ。

心臓止まるかと思ったよ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

とりあえず状況を整理しよう。

 

朝起きた。モーニングティーと洒落込もうとする。

ドアノックされたので扉開けた。幽霊ちゃんがいた。

扉閉めたけど遅かった。ドアオープン=入室許可らしい。

 

 

以上。

 

うん。この子が勝手に入ってきたのであって、俺が少女を部屋に連れ込んだ訳ではない。

とりあえずこれで霊感のある治安部隊員への言い訳は出来たな。

 

「なーなー、これ、なんだー?」

 

おっと、目を離した隙になんかごそごそやってる。

コラコラ駄目だぞお嬢ちゃん、ベッドの下には夢と浪漫が仕舞ってあるんですから。

 

とりあえずその拳銃は離そうか。

弾丸抜いてあるけど子供のおもちゃじゃないんだから…

 

待った。この子何で普通に銃持ててるの?

幽霊って物理的な干渉は出来ない筈じゃ。

 

…ははーんわかった。これがいわゆるポルターガイストという奴か。

ホラーとかでナイフが飛んでくるアレですね。

 

こんな所に居られるか!俺は部屋に戻らせてもらう!

 

とりあえずお約束の言葉を頭の中で叫んでおく。

フラグというのは先に立てておけば却って安全と昨今の研究報告で挙がっている。

 

そもそも戻るも何もここが俺の部屋だしな。

 

「なーなー、これ、食べていいかー?」

 

おまけに何でも口に入れたがるお年頃か。

それは食べ物じゃありません。

 

まぁ俺も腹減ったしちょうどいいか。

飯のついでにお供え物でも持ってくるとしよう。

 

 

あ、ソーマ君。これツケにしとくね。

君に憑いてる幽霊ちゃんなんだから、ちゃんと面倒見なきゃ駄目だぞ。

 

………

 

…さて、どうやら重大な勘違いをしていた事に気付いてしまった訳だが。

 

この子、幽霊じゃなくてアラガミらしい。

自供もしてるし状況証拠から言ってもほぼ確定である。

 

改めて状況を整理しよう。

 

缶詰と缶ジュースをお供えする。缶ごとパクリ。

何かアラガミっぽい食い方だな…君本当に幽霊?

聞いてみたら違うって言われた。

 

 

以上。

 

「………………………」

 

これ、滅茶苦茶ヤバい状況なのでは?

何だったら幽霊の方がまだ危機的にはマシだった感がある。

 

ここアナグラでも結構な中心区画なんだが。

そこにアラガミが進入してるとか、もはや緊急警報ものの事態である。

 

おまけに俺は既にエサをあげてしまっている。

何らかの関与を疑われた日には言い訳も出来ない。

 

どうする、ここで仕留めるか?

しかし神機を持ってるならいざ知らず、流石にここにある武器じゃアラガミは倒せない。

 

じゃあ神機を持ってくるか?

あんな馬鹿デカい得物、居住区に持ってこれるか。

 

ならば保管庫まで連れていくか?

だがアラガミとはいえ、この子の見た目は完全に少女のそれ。

辿り着く前に治安部隊へ通報されるのが関の山か。

 

うーん、普通に詰んでるなこれ。

フェンリル有数の大型支部なのに、意外と幕切れはあっけないものだ。

 

支部長も気の毒に。出張中にアナグラ壊滅してるとか。

見方によっては命拾い出来て運が良いとも言えるが。

 

だがまぁ最後まで諦めないというのが人間の良い所。

死んでない限り逆転の可能性はゼロではないのだ。

 

 

ここは一つ、一縷の可能性に賭けるとしよう。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部のラボラトリ。

純和風な調度品とゴテゴテした研究機材が置かれている榊博士の拠点である。

 

部屋に入ったら第一部隊の面々がいた。

 

何だ、何をそんなに驚いている?

俺はまだ何も言っていないぞ。

 

「シオちゃん!」

 

アリサが駆け寄ってきてアラガミの少女を抱きしめる。

え、何これどういう事?

 

「だ、大丈夫かシオ?何か変な事されなかったか?」

「変な味のする食べ物とかも食べたりしてない?」

 

張り倒すぞお前ら、俺の事を何だと思っている。

事情はわからんが人の顔を見るなり不審者扱いとか良い度胸してるじゃないか。

 

「おい…」

 

ソーマに至っては疑わしそうな目でこっちを見ている。

納得いかねぇ、元はお前が目を離したのが元凶だろうが。

 

俺は何もしていないぞ!

叫びたいところだがどっから聞いても犯罪者の言い訳にしか聞こえないのでやめておく。

 

というかソーマはこの子の飯代を払え。

アラガミに育ち盛りがあるのかは知らんが結構な量食われたぞ。

 

「まぁこうなっては仕方ない。かくなる上は、彼も共犯者になってもらおうか。」

 

場が落ち着いた頃を見計らって博士が口を開く。

怪しい微笑みでそう告げられた瞬間、俺は全てを理解した。

 

()()()()()

 

クソッ、やっぱり科学者なんか信用するんじゃなかった。




しれっとシオちゃん登場回。
シオが食べたご飯分は博士が別途融通してくれました。
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