無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.質問に肯定してたらどうなったの?
A1.ノーコメント。良心の呵責が消えるだけ。

Q2.改めて肯定したらどうなるの?
A2.ちょっとだけ齧らせてくれる。美味しくないって言ったらチョップされます。

どうしても書きたかったこの人の背景。

過去を忘れて慢心してはいけない。
でも答えは得られたのでもう大丈夫。


無口と無邪気なアラガミ少女3

…いやぁ、我ながら久々に青ざめた。

"星の観測者スターゲイザー"なんて大層な肩書を持ってはいるが、実際はこんなものだと痛感してしまう。

 

まさかシオが人間の捕食について聞いてくるとは。

いやまぁ、彼女の前で散々アラガミの偏食傾向を述べていた私が言える立場じゃないんだがね。

 

私はどこまで行っても研究者だ。

どんなに信じられない事であってもそれが事実と裏付けされれば受け入れるし、そうでなければどんなに筋が通っていても納得はしない。

 

いやはや、いやはや。

 

まさかたった一日で、これまでの観察結果全てを否定される事態が起きかねたとはね。

私の目利き不足を嘆くべきか、彼女アラガミの学習能力の高さに目を見張るべきか。

 

…感慨に耽っている場面ではない。私が回答を誤れば、文字通りこの極東支部は終わりかねない。

さて、何と答えたものかな。

 

「…シオは、人間を食べたいと思っているのかな?」

 

「んーん。」と子供のような否定と共に首が振られる。

どうやら小細工は無意味と直球で切り出した甲斐はあったようだ。

 

「よくわからないけど、なんかイヤ。それに、人間を食べるのは偉くないって。」

 

ふむ、これは重要な情報だ。シオ自身が人間を捕食する事を望んでいないのであればいくらでも手の打ちようはある。

シオが食べたいと思うアラガミを十分に確保し、飢えさせる事が無ければ少なくとも当面の危険はない。

 

となれば、ある程度備蓄の予備は取っておくべきだろう。

まだ残りのコアに余裕はあるが、万が一を考えてここらで大規模に補給しておこうか。

 

 

…しかし、一体どこから人を食べるなんて情報を仕入れたんだか。

その類の情報だけは与えないよう、厳重に管理していた筈なんだがね。

 

「ないしょ。"オトナのヤクソク"だって。シオ、オトナだからなー。」

 

残念、どうやらご丁寧に口止めまでされているようだ。

 

…もしかして、彼が彼女に何か伝えたのかな?

いやしかし、何のためにだ?

 

両親を目の前で貪られ、今なお言葉を失ったままの彼が。

 

わざわざ彼女に"人食い"の道を示すだろうか。

仮にそれが上手くいったとして、彼に何のメリットがある?

 

もっとも、わからないからと言って放置するには事の重要度が少し大きすぎる。

…仕方ない。とりあえず今回の所は、彼は裏方に徹してもらうとしようか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部のラボラトリ。

支部長が出張で不在の今、ここの主がこの極東支部を統括していると言っても過言ではない。

 

今日呼ばれたメンバーは俺の他にルーキーとソーマ。

特務案件ですねわかります。

 

もっとも、シオが同席している時点で特務扱いなのは間違いない。

ただ、それなら第一部隊の面々が呼ばれていないのが気にかかるところだが。

 

考えても仕方がない。

とりあえず話を聞いてみるとしますか。

 

………

 

「今日君たちを呼んだのは他でもない。実に切実な問題…シオの食料確保だ。」

 

珍しく神妙そうな顔で話が続けられるが何の事はない。

シオが食べているアラガミのコアが無くなりそうだから外で捕食させてきてほしいとの事だ。

 

まぁそれくらいなら普段の討伐ミッションと変わらないから問題はない。

ウロヴォロスとか接触禁忌種を狩ってこいとか言われたら流石にきついが。

 

…今更だがシオってアラガミコア以外食えないのか?

俺が初めて会った時は普通に缶詰とか食われたんだが。

 

試してみるか。

んー、何か持ってなかったかな。

 

ごそごそと懐をまさぐり、さっき買った新発売のレーションを取り出す。

封を破ってシオの前に差し出すと、クンクンと軽く匂いを嗅いでからむしゃりと一口に齧りつかれる。

 

「んー…びみょう!」

 

うむ、元気な声で大変よろしい。

レーション返せこの野郎。

 

「犬猫じゃないんだぞ馬鹿。」

「シオに変な物食べさせないでください。」

 

おまけに同僚からもありがたいお説教を賜ってしまった。

というか変な物ってなんだよルーキー。これ意外と高かったんだぞ。

 

「とまぁこの通り、彼女も大変グルメでね。フルコースのディナーをよろしく頼むよ。」

「たのむよー。」

 

ペコリと頭を下げるシオ。

うん可愛い、でもやだ。

 

だってさっきの見る限り食べれない訳じゃないんでしょ?

これただの好き嫌いとどう違うんだよ。

 

まぁ実際は科学的な話が絡むんだろうから受けざるをえないんだろうが。

ルーキーはルーキーで不満そうなソーマを無視して普通に受諾の意志を示してるし。

 

ただ受けるからには納得の上で取り掛かりたいのが人情だ。

とりあえず他の味なら食べられるのかどうか試してみるか。

 

懐から違う味のレーションを取り出し、先程と同じようにシオの鼻先へ差し出す。

 

-クンクン、クンクン…-

 

-パクリッ-

 

「んー…びみょう!」

 

うむ、さっきよりも元気があって大変よろしい。

でもぺっぺするのは行儀悪いからバッテンな。

 

「だから変な物食べさせないでください。お腹壊したらどうするんですか。」

 

隣からすっごい目で睨まれる。

多分"三度目は無いぞ"っていうニュアンスだこれ。

 

おかしいな、これ普通に配給レーションの筈なんだけど。

どうやら第一部隊の隊長様は余程美味しい物しか口にしていないらしい。

 

畜生、俺普通にレーション食われ損じゃん。

今度何かたかってやるからな。

 

………

 

「あ、そうそう。ユウマ君だけ少し残ってもらえるかな。」

 

ミッション内容を説明されて部屋を後にしようとしたところで後ろから呼び止められる。

こういう時って何か嫌な予感しかしないんだが。

 

「実は今回のミッション、君は君で別に動いてもらいたくてねぇ。」

 

うーん怪しい。

正直聞きたくは無いんだが、下っ端風情に意見なんぞ出来るはずも無し。

 

まぁいいさ、これも立派なお仕事だ。

いくら胡散臭くとも上司は上司。俺はお仕事をこなすだけさ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは通称"愚者の空母"…の隣に位置する作戦エリア。

損傷による地形の隆起が激しいために中型種ですら避けるルートであり、もっぱら偵察や諜報に利用されるゾーンである。

 

今回の任務は言うなればSP役である。

ルーキーとソーマ、コウタの三人がお姫様をエスコートする傍ら、主要箇所に陣取って安全を確保する黒服のそれである。

俺の部隊は他に隊員がいないので全部俺一人でやってるが。

 

向こうはキャッキャウフフしながらディナーの準備を進めてる。

俺は安全確保した場所で一人寂しくレーションを齧ってる。

 

何だこれイジメか?古参兵イジメて楽しいのか?

畜生、やっぱり科学者なんて信用するんじゃ(ry

 

まぁ真面目な話。言い方は気に食わないがシオは曲がりなりにも重要な"サンプル"である。

万が一にも事故などがあってはいけないが、だからと言って大人数で繰り出せるような程軽い機密ではない。

 

そこで俺が所属する部隊の出番。

独立遊軍という名の何でも屋、他部隊のサポートを目的とした後詰というのも担当部門の一つである。

おまけに今回はエスコート部隊の三人とはマイクが繋がっているので何かあればすぐに連携もできるようになっている。

 

ま、今回は特に問題は起き無さそうだ。

特務部隊二人は元より、見たところコウタもいつの間にかルーキー扱い出来ない程度の実力にはなっているようだし。

 

言ってる間に最後の一体も倒されてディナータイムの到来だ。

さて、こっちもティータイムと洒落込んで…

 

 

何だ?ソーマの奴、何を急に揉めてるんだ?

 

………

 

水平線に日が沈み始める中、マイク越しにソーマの過去が語られる。

 

ルーキーめ、()()()マイクの電源を入れて話したな。

リンドウの奴じゃあるまいし、いつの間にそんな小賢しい真似をするようになったんだ。

 

人様の過去などみだりに聞いていいものじゃないんだよ。

当人が話してるんならいざ知らず、他人が勝手に話すようなもんじゃないだろうに。

 

ただまぁコウタに話したのは正解だったな。

あのままだと色々不和の元になりそうだったし。

 

それにしてもソーマの奴、何か抱えてるとは思っていたが。

あんな過去を背負ってるなら、多少ひねくれた性格になるのも仕方が無いか。

 

「………………………」

 

まぁソーマについては時間が解決するしかないな。

何時になるかはわからんが、切っ掛けを掴むまでは変われんだろうし。

 

男なんだから頑張りなさいな。

俺も何とかなったんだしいけるだろ。

 

それより問題はシオの方だよな。

多感なこの時期にあんな拒絶のされ方はキツいだろうに。

 

ケアの一つもしておかんと後々ヤバそうだ。

しかしどうする。いくら俺が孤児院育ちとはいえ、女の子の慰め方なんて知らんぞ。

 

サクヤとか同じ女性陣に任せるのも手だとは思うんだが。

丸投げっていうのもそれはそれでなぁ。

 

うーん。

うーん。

 

とりあえず、またおやつでもあげてご機嫌取りしますかね。




榊博士は内心ドキドキしてますが、既にフラグはへし折れてます。
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