無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A.お話したいって言われたから。
知らないというのはある意味無敵。
なお周りはトラウマ案件と思って触れないようにしてる模様。
-モグモグ-
「…そーま、おこってた。」
怒ってたな。まぁ思春期にはよくある話さ。ほい次。
-モグモグ-
「シオ、えらくなかったか?」
さてどうかな。それを答えるのは俺の役目じゃないし。ほい次。
-モグモグ-
「おしえてくれないのかー?」
内緒内緒。
「けち。」
ハッハッハ、大人は総じてケチな物なのさ。
まぁ俺は若いけどな。ほい次。
-モグモグ-
でも一つだけ教えとくか。シオ、ソーマと仲直りしたいか?
「なか、なおり?」
こうやって一緒にお話ししたり、おやつ食べたりする事さ。
どうだ?仲直りしたいか?
「したいぞ!」
うん、元気なお返事で大変よろしい。
とはいえ難しい事じゃない。一言"ごめんなさい"って謝ればいいのさ。
「ごめん、なさい?そういえばそーま、"仲直り"してくれる?」
くれるくれる。意図せず他人を傷付けてしまうなんてよくある話だからな。
ソーマも多分許してくれるさ。
「…わかった。シオ、そーまにごめんなさいするぞ。」
よしよし偉い子。ただまぁすぐに謝っちゃ駄目だぞ。ちゃんと何が偉くなかったのか、シオがわかってからじゃないと仲直り出来ないからな。ほい次。
-モグモグ-
「なにがえらくなかったのか…うーん、むずかしいなー…」
何、別に時間が限られている訳じゃない。焦らずシオなりにわかってからで十分さ。
それにもし許してもらえなかったら俺に言うといい。
カッコいいお兄さんがソーマ君にお話をつけてきてあげるから。
「カッコいいかー?」
うん、自分で言っておいて何だがそこに食いつくのは止めてくれ。
おまけにその発音の仕方は滅茶苦茶傷付く。
偉い子じゃないぞシオ。
とりあえず先に、俺にごめんなさいをしようか。
「これはえらくなかったかー。むずかしいなー。」
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ここは極東支部の個人部屋。
一人きりの部屋の中、誰に邪魔される事無く黙々とミッションレポートを仕上げていく。
何時もならエントランスの一角に陣取って作成するところだが、今は諸事情で自室に籠って作業している。
作業しているのだが。
正直進捗が芳しくない。
だって気乗りがしないのだ。別に内容がアレとかいう訳ではない。
自室で何かやろうとするとモチベーションがえらく落ちるタイプの人間なのだ。
何なら今すぐレポート作成なんて放り投げてベッドに寝転がりたい。
茶か酒でも飲みながらまったり本でも読みふけりたい。
もっとも、提出期限が差し迫っているおかげでそんな事は許されない。
流石にシオとお話しばっかりし過ぎたか。
おまけに提出先が榊博士なので、誤魔化そうにもサボっていた事がバレバレなのである。
「………………………」
…モチベが上がらん。
諦めてエントランスで作業しようかな。でもなぁ…
………
-少し前、ラボラトリにて-
「キャアッ!?」
驚きの声に反応して視線を向けたらシオがアリサの胸を揉んでいた。
「プニプニ…」
まぁそうでしょうね。男としては中々羨ましい光景である。
もっとも俺はそれどころではないのだが。
音を立てないよう静かに端末を閉じ、部屋の出口へと急ぐ。
退出する間際に振り返るとシオがルーキーに抱き着いていた。
「プニプニ…」
はいアウト。内緒って言ったじゃないかシオ。
まぁ子供相手に秘密厳守というのも土台無理な話か。
言ってしまった物は仕方ない。
ここは逃げの一手。振り返らず、速攻で自室に引きこもろう。
………
で、今に至るという訳である。
恐らく今頃はルーキーとアリサが血眼で俺の事を探しているだろう。
捕まったらシオのご飯にされる事待ったなしである。
しかしこのままだとマジで終わらんどうしよう。
諦めて素直に提出期限伸ばしてもらおうか。
手を止めて云々悩んでいると、突然ミッション受注端末が鳴動する。
画面を見てみるとタイトルには"緊急"の二文字が付与されている。
ミッション発注元は榊博士。
シオが逃げ出したので直ぐに迎えに行ってほしいという内容である。
「………………………」
そっか、直ぐにか。
それじゃあレポートの提出期限は何とか融通してもらえそうだな。
同行者一覧を確認する。
もはや定番となりつつある第一部隊の面々が登録されている。
当然、アリサとルーキーの名前も載っている。
よし、サクヤのチームに入れてもらおう。
プライド?命に代えられるかそんなもの。
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ここは通称"鎮魂の廃寺"。
シオに付けられているGPSによるとこのエリアの何処かにいるらしい。
わざわざこんな雪まみれの地域に逃げ込むとは、あんな薄着とすらいえない恰好なのによく寒くないものだなと妙に感心してしまう。
聞くところによると何でも服を着るのを嫌がって逃げ出したとかなんとか。
そういや前に人間の衣服は触るとチクチクするとか言ってたな。素材的な問題か何かなんだろうか?
まぁとりあえずは見つけてみない事には始まらない。
さて、我らがシンデレラ嬢はどこにいるのかな?
………
いたいた。
人もアラガミも、隠れて引き籠るのは建物の最深部と相場は決まっている。
話かけるとバツが悪そうな目でこっちを見てきた。
こうしてみるとアラガミというのを忘れそうになるくらい人間らしい仕草である。
「シオ、わかった。そーまもきっと、こんなきもちだったんだな」
どうした急に。
流石にこれだけではわからないので続きを促してみる。
「シオ、ふくってきちきち、ちくちくするから、いやだった。」
やっぱり服を着るのが嫌だったのか。
壁を壊して脱走する辺り、本当に不快だったんだろうなと察する。
「でもみんな、シオにちくちく、きせようとしてくる。」
まぁ見た目は人間なだけにその恰好のままっていうのはなぁ。
ここだけの話、最近のラボラトリの絵面は査問会への通報待ったなしのそれだからな。
「これ、いやなことだな。シオ、そーまにいやなことしたんだな。」
-シオ、えらくなかったんだな。-
あぁなるほど、そっちに繋がったか。
でもまぁうん、それはそれで"よく出来ました"って言ってもいいんじゃないか?
お兄さん花丸をあげよう。
それじゃあどうする?ちょうどソーマもシオを探しに来てるぞ?
「ごめんなさい、する!」
元気があって大変よろしい。花丸二つ目をあげよう。
それじゃ、ソーマが来たら"ごめんなさい"するか。
服着せるのかって?それは博士にお任せする。
素材云々の話は専門外だからな。レディのお肌はデリケートなんだぞって言っておきなさい。
………
「………………………」
いやぁハッハッハッハッハ。
ソーマも中々可愛いところがあるじゃないか。
ここに来てまさかのツンデレとは恐れ入った。
"バケモノ"と恐れられる神機使い様も、可愛い少女の前には形無しだな。
万が一やらかした時を考えて聞き耳立ててたが、これなら必要なかったか。
まぁ何だかんだソーマも年相応の感性だったようで何よりだ。
良い仲間にも恵まれているし、あの分なら性格の方もそう遠くない内に丸くなるだろ。
「………………………」
…"ジブンサガシ"ね。
いや、いいさ。
俺にはもう必要無い事さ。
道中はどれほど曇らせてもよい。(今期二本目)
こんなだけど良い人ですよ。