無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.闇落ちしちゃう?
A1.Nein(いいえ)。

Q2.二重人格なの?
A2.Nein(いいえ)。多重人格とかいうトンチでもありません。

シリアスタイムは終了です。



無口と無邪気なアラガミ少女5

アラガミの素材で服を作る…

 

端的に思った。

 

アホなの?

 

アラガミ素材って大半がオラクル細胞の塊だよな?

何でも食うって性質のそれを服として纏うって…

 

アホなの?

 

大事な事なので二回言いました。

やっぱり科学者ってどっかぶっ飛んでるんだな。

 

「…という訳で、材料のアラガミを狩ってきてほしいんだ。」

 

技術者もぶっ飛んでたか。まぁ知ってたけど。

実際は科学的な話も絡むんだろうし、そこまでぶっ飛んだ発想なのかどうかは知らないが。

 

「大丈夫、シオちゃんの事はちゃんと聞いてるから。言うまでもないと思うけど…内緒にね。」

 

口元に指を当て、悪戯っぽく告げられる。

 

ちくしょう、可愛い。その仕草は卑怯だぞ。

もう何か指摘するとか出来ないじゃないか。

 

あぁわかった、わかったよ。

お兄さんの胸の中だけに留めておくよ。

 

「それじゃあいつもの事だけど…はい、これ。」

 

決心したタイミングに合わせて手慣れた手付きで差し出されるミッション発注書。

可愛いと思った矢先にこの流れ、極東の技術局は美人局でもやってるんだろうか。

 

おまけに紙にはもはや見慣れた"特務"の文字がでかでかと明記されている。

今更だが特務を乱発し過ぎではなかろうか。

 

権力者とグルって恐ろしいな。

 

まぁいい、深入りはしないでおこう。

思考を切り替えてミッションの概要に目を通す。

 

"新装備(服飾)の素材調達、及び運用試験"

 

へぇ、新装備(服飾)の運用試験ねぇ。

 

「………………………」

 

待って、運用試験って事は俺もアラガミ製の服着させられるの?

嫌だよそんなの、食われたらどうするんだよ。

 

顔色を読まれたのか、リッカは上目使い気味にねだってくる。

 

「ついでにって訳ではないんだけど、せっかくだし君の分も作ろうと思うんだ。…ダメ、かな?」

 

ちくしょう、可愛い。その言い方は卑怯だぞ。

こんなのもう断れないじゃないか。

 

男の性って悲しいな。

我ながらチョロすぎるのは分かってるんだが。

 

…仕方ない、これも立派なお仕事か。

ついでとはいえ、贈り物をしてもらえるというのは純粋に嬉しいし。

 

決して色香に惑わされた訳じゃないぞ。

大体いい歳こいた大人が、年下の小娘相手に惑わされる訳なかろうに。

 

あと十年、いや五…まぁおまけして二年経ってから出直してきなさい。

 

 

うん。ボロが出る前に、さっさとミッションに出かけようか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部のラボラトリ。

もはやお馴染みとなった面々が集まり、今か今かとそわそわした様子で部屋の一角を見つめている。

 

「お待たせ。」

 

奥の扉が開いてサクヤが告げる。

続いてその手を引かれながら、純白のドレスを身に付けたアラガミの少女が姿を現す。

 

「キャー!カワイイじゃないですか!」

「ホントに普通の女の子みたいよね。」

 

開口一番、アリサが興奮を隠しきれないと言った感じで口を開き、続けてサクヤも率直な感想を口にする。

 

うん、俺もそう思う。

とてもじゃないがこれがアラガミって言われてもにわかには信じられないレベルである。

 

「可愛いじゃん!!なぁソーマ!」

「まぁ…そうだな。」

 

何と、意外なリアクション。あのソーマまで大絶賛とは。

まぁ気持ちはわからんでもない。

 

シオもシオで周りからの称賛に子供のように嬉しそうな笑い声を漏らしている。

 

「なんか、きぶんいい…」

 

うん可愛い。苦労して素材を集めてきた甲斐があったというものだ。

この笑顔が見れただけでも十分報われて…ん?

 

不意に室内が驚きで静まり返る。

 

なんと。歌だ。

シオが、歌を歌っている。

 

驚いた。誇張抜きで言葉が出ない。

上手いとか良い声だとか、そういう次元の話ではなく。

 

透き通った感情の乗せられたその声が。

 

ただただ純粋に、綺麗だなと思ってしまった。

 

………

 

歌が終わる。

 

シオが得意げに歌について説明する。

先程と同じようにアリサが絶賛し、ルーキーが褒めたたえ、シオが気分良さそうな声を上げる。

 

そして飛び出る爆弾発言。

 

「そーまといっしょにきいたんだよ!」

 

おい、おいおいおい。

 

第一部隊の面々の視線が一斉にソーマへと向けられる。

マジか。マジかよソーマ君。

 

「し、知らん…」

 

はいギルティ。大人の目は誤魔化せんぞ。

男のツンデレに惑わされるほど、俺の眼は節穴じゃない。

 

何だよ水臭いな、いつの間にこんないたいけな子を手籠めにしたんだソーマ君?

何も知らない無垢な少女を自分好み(の曲)に染め上げようってかいやらしい。

 

あー絡みたい。

近頃稀に見る甘酸っぱい若者のそれに、これでもかってくらい絡みつきたい。

 

もっとも、それをやったら間違いなく救護室送りにされるのでやれないが。

一山いくらの一般神機使いじゃ、本気でソーマに暴れられたら手も足も出ないからな。

 

うざ絡みしてる以上ぶっ飛ばされても文句も言えないし。

ここは大人しく遠巻きに眺めるだけにしておこう。

 

………

 

「…で。お前は何でそんなイカれた格好をしているんだ?」

 

馬鹿、ツッコむなよ。

ここはシオの歌で良い感じに締める場面だろうが。

 

誰が好き好んでこんな()()()()()()()()なんて着てるかよ。

 

一応これ新技術の塊なんだぞ。この後この格好でミッションに行かされる俺の身にもなってみろ。

 

そんな俺の気持ちも虚しく、ソーマの視線は明らかに"アホかコイツ"って目をしてる。

おまけに他の隊員様の目にも、気付けば呆れと哀れみが混在した色が込められている。

 

どうやら男のオシャレに対する世間様の目は厳しいようだ。

悔しい、俺はただ職務に忠実なだけなのに。

 

あったまきた。

誰でもいい、こうなったらお前らも不審者の仲間にしてやる。

 

サクヤを見る。

顔ごと視線を横に反らされた。

 

アリサを見る。

顔ごと視線を下に反らされた。

 

コウタを見る。

顔ごと視線を上に反らされた。キミ、存外器用だね。

 

シオを見る。

「ん?」って疑問符付きの視線を返された。

 

まぁシオはドレスのお披露目があるのでどの道一緒に行くんだが。

子供と着ぐるみが一緒にいる分には別に変でも何でもないだろう。

 

ソーマを見る。

顔ごと視線を横に反らされた。

 

お前は逃がす訳ないだろう。

 

「ッ!?」

 

回り込んで正面からガン見してあげた。

これで俺と縁が出来たな。

 

ルーキーを見る。

何ですか?と言わんばかりの怪訝そうな視線を向けている。

 

今こっちを見たな?

 

「ッ!?」

 

正面から間合いを詰めてガン見してあげた。

これでお前も縁が出来たな。

 

近接二人に新型一人。

まぁバランスとしては悪くない。

 

 

 

 

 

さぁ、鉄塔の森でウサギのお兄さんと触れ合おうか。




リッカちゃんはまた徹夜明けのようです。
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