無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.この人キグルミ?
A.中を見てない以上未確定。

シュレーディンガーのキグルミ。


無口と無邪気なアラガミ少女-番外編-

俺が言うのも変かもしれないが。

ここ最近のリッカは本当に頑張ってくれていた。

 

ただでさえ人員不足の中、神機のメンテナンスも行わなければいけないというのに。

僅かな空き時間を見つけては新素材のテストとシオのドレス作成に時間を割いてくれていた。

 

俺も最初こそは乗り気ではなかったが。

こんな健気な頑張りを見せられたとあってはやる気を出さねば失礼というもの。

 

「うーん、良い素材なんだけど足りないなぁ。…キミ、何とか調達してきてくれないかなぁ?」

 

いいぞ、何匹仕留めてくればいい?

とりあえず目についた奴全員狩れば、足りないという事はないだろう。

 

「うーん、上手くいかない…キミ、何か良さげな素材の当てはないかなぁ?」

 

ゴメン、技術的な事はさっぱりなんだ。

とりあえず目についた奴全員狩れば、一つくらい良さそうなのがヒットするだろう。

 

駄目でもシオのおやつになるだけ。

誰も困らない素敵空間の完成だな。

 

少しずつ、少しずつ。

時には失敗も重ねながら、それでも着実に歩み続けて。

 

………

 

すやすやと静かな寝息を立てて夢の世界を満喫するリッカ嬢。

彼女の前には今日までの努力の結晶ともいえる"ドレス"が広げられている。

 

フライング?馬鹿言え、これは役得というものだ。

まぁ当日のお楽しみというのも捨てがたかったが、見てしまった以上はそういう事にしておこう。

 

アラガミ素材を流用して得られた未知の新素材。

それらを惜しみなく使用して織られた、清楚にしてどこか神秘的な雰囲気のドレス。

 

うん。苦労してアラガミを狩ってきた甲斐はあったな。

一人満足した所で毛布を調達し、目の前の女の子に掛けてやったところで思い出した。

 

そう言えば建前上、俺の衣服も作ってるんだったか。

シオのドレスの製作過程はよく目にしてたが、そっちの方はとんと見た覚えがない。

 

うーん、でもまぁ、いいとこ普通に制服かな。

真っ当に考えればアラガミの討伐に来ていく物になるんだし。

 

好み的にはシンプルで実用性のある物だと嬉しいが。

流石にそこまで求めるのはわがままというものか。

 

こんなに頑張ってくれてるのだもの。

仮に多少アレなデザインに仕上がっても、二つ返事で受け取るのが紳士の作法というものだな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

部屋に入った瞬間、嫌な予感はしたんだよ。

 

そこらに転がる冷やしカレードリンクの空き缶。

作業に行き詰ったリッカが、息抜き代わりによく口にしている飲料だ。

 

いや、確かに美味いけどな?

こんなのどう見たって飲み過ぎだろうに。

 

太るぞって冗談の一つでも言ってやろうかと思ったんだが。

無表情&ハイライトオフの目で佇むリッカの姿に思わず言葉を飲み込んでしまった。

 

何があったお前。

いつもの可愛らしい笑顔はどうしたんだよ。

 

まさかまた徹夜したんじゃないだろうな。

 

「君、動物は好きかな?」

 

「動物は良いよ。大小問わず、すべからずして人に安らぎを与えてくれるんだ。」

 

「昔一度だけ、動物と触れ合う機会があったんだ。」

「今でもあの感触は忘れられない。暖かくて柔らくて、すべすべしてるのにとてもふんわりしてたんだ。」

 

「君は、どんなタイプがお好みかな?」

 

「犬とか猫はどうかな?気に入った?わかるよ、その気持ち。あのすべすべした感触がたまらないんだよね。」

「オウムとかの鳥類も捨てがたいね。わかるかな、この気持ち。あの子たちって触ってみると思いの外ふわっとした感触がするんだよね。」

 

「…でもね。人の好みはそれぞれっていうのはわかるけど。それでも私が一番に思うのは…」

 

「ウサギさん。」

 

「つまり、バニーさ。これだけは、誰であっても譲れない。」

 

良い顔だ。良い顔過ぎる。可愛いというよりイケメンだ。

どうしよう。この子ハルオミみたいな事を言い出したぞ。

 

俺はシオの服を受け取りに来ただけなのに。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「そもそもあの子たちのデザインには一つとして無駄が無いんだ。」

 

「一見不要にしか思えないようなそれらも、本質は過酷な自然環境を生き抜くために手に入れたもの。」

 

「生きるため。ただそれだけのシンプルな理由。それだけにどこまでも突き詰められた機能美に満ち溢れている。」

 

「ズルいと思わない?そんなつもりは微塵もなかったって言ってるくせに、どこまでも人を魅了するんだから。」

 

「…でもね。私は気付いちゃったんだ。」

 

「あの子達は皆、遥か昔に神様がデザインした存在なんだってことを。」

 

「アラガミではなく、本物の神様。」

 

「そう。つまるところ、人間は何時の時代も、神様という名のデザイナーに魅了され続けてきたって事なんだ。」

 

…スパイスでもキメてらっしゃる?

多分だけど、神様そこまで考えてなかったと思うよ。

 

「そしてそれは、私が一番に推すウサギだって例外じゃなかったんだ。」

 

「でもさ、悔しいじゃない。私だって技術者の端くれなんだ。自分が最も可愛いと認める存在が、見た事もない誰かの手で染められたままなんて。」

 

「そう思ったらさ、もう作るしかないじゃないか。」

 

「暖かくて柔らくて、すべすべなのにふんわりしてて。」

 

「強くて、カッコよくて。それでいてどこまでも愛らしい。」

 

「私だけの、一番のウサギを。」

 

ゴメン、もう一回言ってくれるかな?

ウサギは可愛いって話だと思ってたのに、後半でいきなり認識が異世界へジャンプしたぞ。

 

ウサギって強くてカッコいいものだったっけ。

 

「大変だった。でもね、ようやくここまで漕ぎ着けたんだ。」

 

待って。いや、マジで待ってくれ。

わかってはいた。ヤバいものがあると最初からわかってはいたんだが。

 

まさか本当にそうくるとは思わないじゃん。

今ならまだ見てないし、シュレーディンガーのウサギって事で済ますから…あっ。

 

「暖かくて柔らく、すべすべなのにふんわり。後は君の手で証明してほしい。」

 

-強くて、カッコよくて、それでいてどこまでも愛らしいその姿を。-

 

聞きたくないし見たくない。

呆れて言葉も出ないってこういう時に使うんだな。

 

というか。シオはドレスだったのに俺のは衣服ですらないのか。

ハハッ、ウケる。いい歳こいたお兄さんが女の子の色香に流された結果がこのザマである。

 

おまけに男に着せるというのにウサギのデザイン。

どんな意匠になるのかなと少しは期待してたんだがな。

とりあえず、俺の純心を返してくれ。

 

 

 

 

 

で、何?これを着てヴァジュラの討伐に行ってこいって?

最早ただの喜劇だな。

 

もういいや、考えるのはシオにドレス届けてからにしよう。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここはアナグラが誇る輸送ヘリの格納庫。

作戦エリアに到着するまでの間、ジュースを飲みながら新兵装(?)のマニュアルに目を通していく。

 

ゴッドイーターには比較的色んな種類の衣服が支給される。

一見薄着に見えるものでも、実際は最新素材を惜しみなく利用した耐久性に優れる一品となっている。

 

個人個人の好みに合わせた豊富なデザインを用意しつつ、同時に実用性に足る品質も確保する。

たかが服飾一つと言ってみても、そこには技術局員の絶え間ない努力の結晶が詰め込まれている。

 

例え着ぐるみであってもそれは例外ではない。

むしろこの着ぐるみにはシオのドレスを作成するに当たって培われた、これまでの叡知全てが詰め込まれていると言っても過言ではない。

 

ウサギである必要は全く無いがな。

そのくせデザインを生かした補助機能だけはふんだんに仕込んであるというのがまた腹立たしい。

 

例えば今シオがじゃれついているウサミミにはアンテナが仕込まれており、通信精度の向上に一役買っている。

丸い尻尾には簡易レーダーが仕込まれており、背後から忍び寄るアラガミがいるとアラートが鳴る仕組みになっている。

他にも視界フィルターに備えられたアラガミの活性状態を測定するスカウターや、動きやすさを高めるために仕込まれた関節部の補助装置など。

 

要するに着ぐるみというよりはパワードスーツと表現した方が近いかもしれない。

ただの着ぐるみのくせに分厚いマニュアルだなと訝しんだが、これなら納得である。

 

ウサギである必要は全く無いがな。

これでロールアウト品は普通のデザインだったらどうしてくれよう。

 

…とか考えてる間に現地に到着したようだ。

マニュアルを置き、気持ちをミッションに集中させるべく切り替える。

 

ふざけた格好だが一応これもお仕事だからな。

というかこれで怪我でもしようものなら文字通り一生の不覚である。

 

顔を上げ、同行者二人に視線を向ける。

示し合わせたように二人揃って顔を横に背けられた。

 

ちくしょう、不審者扱いしやがって。

お前ら後で覚えていろよ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部のラボラトリ。

榊博士に留守番を頼まれたので、先程の着ぐるみ…もとい、パワードスーツに関する運用レポートをここで書き上げている。

 

もちろん、今はいつもの服に着替え済みである。

ウサギスタイルでアナグラを闊歩する趣味は俺にはないからな。

 

ちなみに脱いだ着ぐるみは現在シオがお部屋でお人形遊びに興じている。

どうやらあの着ぐるみを随分お気に召したらしい。

 

最初はふよふよ動く耳にじゃれついていただけと思っていたが、ミッション中も妙にまとわりついてきたので正直戦い辛かった。

ミッションが終わった後もべったりくっついて離れないため、仕方なく返却はレポート提出の時にすることにした。

 

まぁ脱ぎさえ出来れば別に急いで返しに行く必要もないしな。

子供がお人形で遊びたいとねだるのだから、ちょっとくらい貸してあげてもいいだろう。

 

さて、肝心の評価なのだが。

 

悔しい事に性能面はこの上なく優秀だった。

何なら俺がこのまま貰い受けたいくらいである。

 

レーダーのおかげで不意打ちはほぼ無効だし、スカウターのおかげで結合崩壊を起こしそうな場所も一目瞭然。

見た目からは想像できないほどに機動性も高く、白兵戦にも滅法強い。

おまけにただでさえ丈夫なアラガミ素材を分厚く纏っているので多少吹っ飛んだ程度ではダメージにすらならない。

 

本当に何でウサギのデザインにしたのか意味不明である。

もう彼女に徹夜で何かを作らさせるのは止めさせた方が良いと思う。

 

なお俺の評価に反して同行者二人からは不評だった。

ソーマに至っては「不気味だから近寄るな。」と、にべもなく一刀両断である。

 

ウサパンチするぞこの野郎。

 

でもまぁ気持ちはわからんでもない。

要約すると"高速で動き回ってバスターブレードを振り回す、得体の知れないウサギの着ぐるみ"だからな。

 

俺なら思わず発砲してしまうかもしれん。

結局のところ、デザインがよろしくないの一点に落ち着くのである。

 

…よし、レポートの方はこんな所でいいだろう。

機能面は悪くなかったし、デザインがまともになったら一着融通してもらおうかな。

 

端末を閉じ、ラボラトリ奥のシオの部屋の扉を開ける。

 

ごきげんようお嬢さん。

そろそろウサギさんはお家に帰る時間…

 

「…?(モグモグ)」

 

…あー、そうね。

見た目はただの着ぐるみだけど、実際は()()()()()()()()()()使()()()()()()代物だものね。

 

そりゃシオにとっちゃただのオヤツにしか見えんわな。

所詮はウサギ、これがホントの弱肉強食ってやつか。

 

-シャクリ-

 

あ、見られても食べるのね。

この子"やっちゃった"っていう自覚ないな?

 

「…ゆーまもたべるか?」

 

…うん。頂くよ。

もう()()()()()()()()()()()()()()みたいだけど。

 

 

 

 

 

まぁいいや。

さて、リッカに何て言い訳しようかな。




キグルミがつぎはぎだらけの理由。

リッカちゃんに徹夜させようと思ったら作者が徹夜でお仕事だった。
何言ってるかわからないかと思うが(ry
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