無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A.BURSTが始まる少し前。
独立遊軍といえば聞こえはいいが。
要は体のいい何でも屋のお助け部隊である。
ノルマこそはないものの、忙しい時はとことんこき使われる。
飛んでくる任務内容にも節操が無い。
討伐、防衛、護衛に救助。偵察、強襲、殲滅戦に陽動、囮、伏兵部隊とまぁまぁ枚挙に限りが無い。
うん、これ一人でこなす仕事じゃないよな。
こちとらワーカーホリックじゃ無いんだぞ。
部下、とは言わないが仲間が欲しいな。
チームを組めるなら別にオールラウンダーで無くてもいいとは思うし。
ものは試しと申請書に役割毎に欲しいメンバーを書き出してみる。
討伐、強襲班:リンドウ、ソーマ、カノン
防衛、救助班:タツミ、ジーナ、ブレンダン
偵察、陽動班:カレル、シュン
ん、書き出してみると別に俺いらないな。
それこそ隊長の肩書だけでふんぞり返ってても十分回る気がする。
…これワンチャンいけるのでは?
言うだけタダだし、これで部隊申請してみるか。
…………
部隊申請は却下された。
「絶対無理です。」と窓口で十回は連続で拒否された。
そんなに全力否定しなくてもいいだろうに。
そこまで言われると黙って引き下がるのが癪になってくる。
まぁ言われている事は正論以外の何物でもないので何も言い返せないんだが。
それでも逆転の一言を考えていると騒ぎを聞きつけて支部長がやってきた。
困っていた受付係が事情を説明し提出された申請書に支部長が目を通す。
無言のまま読み通していたが、最後まで見終わったところでフッと鼻で笑われこう言われた。
「結論から言おう。君の要望は受けられない。」
支部長直々に言われてしまった。
まぁ申請した本人が言うのもなんだが、現実的に通る訳ないメンツだしな。
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「………………………」
ここは極東支部のエントランスホール。
今日も今日とて同輩である神機使い達が忙しそうに任務を受注し、出かけて行っている。
今日の任務は"シユウ"の討伐。
珍しく他チームとの共同ミッションなので、ブリーフィングのためにホールの一角に陣取っている。
共同ミッションと言っても実際は穴埋め要員のようなものだ。
自分で言うのもなんだが隊員が一人しかいないのに共同も何もないだろう。
今回の作戦メンバーはタツミ、ジーナ、シュン。
前衛3に後衛1とバランス的には悪くない。
「基本的な作戦は説明した通りだ。シュンが先行して偵察と小型の排除。俺とマカヅチは主にシユウの討伐。ジーナは状況を見て苦戦してる方への援護射撃だ。」
うむ、各々の特性に沿った有効かつ簡潔で分かりやすい説明、極東支部でも指折りの古参と言う評価に偽りなしだ。
質問はあるかと聞かれたが特に無いので無言を持って肯定する。
「ちょっと待てよ!何で俺が小型の露払いでコイツが本命の相手なんだよ!」
穏便に終わるかと思いきや納得いかないとばかりに叫ぶのは薄赤髪の青年。
いや、青年言うよりは言動的にガ…小僧と呼んだ方がしっくりくるか。
先に言っておくが年齢差がデカいからって訳じゃないからな。
いや、お前コンゴウ相手に苦戦するじゃん。
一応俺部隊長様ぞ?今更シユウなんぞに遅れは取らんわ。
「適材適所だよ。小型種相手にはバスターよりもロングブレードのお前の方が適任だ。そもそもコイツはブレンダンの代役だしな。」
そういや任務説明の時にそんな事言ってたな。
ブレンダンはどうしたんだ?チラリとジーナに視線を向けるが特に答えが返ってくるわけでもない。
そんなこんなで揉める事5、6分。
納得どころか不満たらたらと言った様子で引き下がるシュンと無駄に疲れたといった感じのタツミ。
どうやらシュンと俺の役割が入れ替わる形で落としどころが付いたようだ。
悪いなとタツミに謝られたがまぁ元からそういう任務だったと思えば問題はない。
問題無いだけで根に持たないとは言わないがな。
まぁいいさ。何はなくともお仕事だ。
気乗りはしないが、気合を入れていきますか。
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「………………………」
結果的に言うと散々だった。
ミッション自体はちゃんと完遂したけどな。
小型殲滅も終わってないのにどこぞの誰かが独断専行、あわや袋叩きのところを何とか三人がかりで助け出す。
ボーヤにはまだおしめが必要だったようだ。
狙撃兵も参加する大乱戦とか一体どこの脳筋戦術だ。
あのジーナが「帰りたい」とボヤくとかよっぽどだぞ。
ちなみに件のボーヤは始末書&数日間の謹慎だ。
一歩間違えたら部隊全員が危なかったし当然だな。
全滅の危険を考えたら見捨てた方がよかったか?
まぁあんなのでも死なれると目覚めが悪いし、何とかなったから良しとするか。
…さて、それはひとまず置いといて。
目の前にあるのは二つの神機。一つは俺のバスターでもう一つはシュンが使ってるロングブレード。
簡単に状態を説明するとバスターの方は刃こぼれを起こし、ロングブレードの方は横一文字に亀裂が走っている。
何でこんな傷が付いているのか。
何のことはない。シュンがシユウに喰われそうになっていたので、鍔迫り合いの後ろからチャージクラッシュを叩き込んだだけである。
無防備な背中に神機を叩きこまれたシユウは無事真っ二つ、一方シュンは構えていた神機で打ち込みを防いだ形になって事なきを得たという寸法だ。
五メートルくらい吹っ飛んだがな。
よろめきながらブチ切れてたが喰われるよりはマシだろう。
コラテラルダメージだと思って納得しろ。
さて、神機使いの方はジーナが窘めて納得させていたが。
「君さぁ。言いたいことがあるなら言っても良いんだよ?」
いつもお世話になっているリッカ様はアドレナリンが絶賛活性化状態のようだ。
下手に言い訳しても火に油だと思ったのでここは沈黙を貫く。
神機の破損には報告義務がある。
貴重な戦略物資である事に加え、破損の経緯一つとっても重要なサンプルデータになるからだ。
故に虚偽報告などは御法度。場合によっては偽証罪なども適用されかねないほどに重要な義務。
なので作戦終了後の報告書にありのままこう書いたのだ。
"種別)バスター 経緯)神機に全力で打ち込んだ。 結果)刃こぼれが発生。"
"種別)ロング 経緯)神機の打ち込みを防いだ。 結果)横一文字の亀裂が発生。"
提出後、エントランスでまったりしていたところを怒れる女神(アラガミ)がすっ飛んできて拉致された。
どういうことだオペレーター、緊急警報が無かったぞ。
とりあえず。
最初から最後までひどいミッションだったが収穫になったことがある。
神機同士なら全力で打ち込んでも折れなさそうだ。
今度気に喰わない奴を助ける時はこの手でいこう。
周りから見たこの人は今回最後まで無言です。