無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.優秀だけど性格にしょうもない難がある人。
Q2.元上官懐かれてるの?
A2.定期的にアガリを差し入れしてくれる程度には。
Q3.会話した事あるの?
A3.食べ物あげたらお礼を言われた。
一宿一飯の恩義は大事。
先日迷惑をかけてしまった母娘に手土産を持って謝罪に行ったら、開口一番悲鳴を上げられた。
やめてくださいしんでしまいます。
神機使いはガラスのハートの持ち主なんです。
一緒に来てくれた元部隊長が取り成しをしてくれる。
どうやらこの前やらかしたのは双子の弟という方向に持ってくらしい。
相変わらずこの人、遠慮無しにアレなネタをぶっこんでくるな。
俺一人っ子なんだけど。何なら家族すらもういないし。
ツバキさんに嫌われてるというのも納得だ。
オッサンにデリカシーを求めるのも酷と言えば酷か。
まぁ俺は気にしてないから別にいいけど。
変に腫れもの扱いされるよりは楽なものである。
しかし双子の弟か。よくそんな取って付けた言い訳が通せるものだ。
話しぶりが何時聞いてもただの詐術にしか聞こえない。
そりゃツバキさんと相性が悪いわけだ。
それとも俺が知らないだけで、実は俺そっくりな神機使いが極東にいるのか?
何ならドッペルゲンガーという線も…
うん、この話は止めようか。
幽霊なんて非科学的なものはこの世にいない。
考えるだけ思考の無駄遣いである。
それより今は現実の問題を何とかしよう。
………
お話終了。
俺は一言も口を開いてないけれど。
無事"弟"の不始末は片付いた。まったく上官殿様々である。
こういう時会話しなくても事態が収束するというのは本当に楽な事である。
丸投げした訳ではない。
「お前は黙っとけ」と言われたのでそれに従っただけである。
一応軍属だしな。
上官命令は絶対なのだ。元だけど。
無口な兄とイカれた弟の存在が広まっているようだが気にしない。
存在しない弟の風評を気にするほど、俺は細かい性格はしていないのだ。
やらかしの全ては全部弟くんが背負ってくれたので別に気にする必要も無し。
無口云々はまぁ、コラテラルダメージという事にしておこう。
………
元上官と別れた後、何とはなしに外部居住区を見回ってみる。
今後も弟がやらかすだろうから、その時のために顔を売っておけとのお言葉である。
まぁ今日は非番だから別にいいけど。
呼び出しがあってもオッサンが何とかしてくれるだろう。多分。
トコトコと、トコトコと。
当ても無しにぶらついてみる。
生活音が聞こえてくる。
少し前にアラガミの襲撃があったとは思えない、人の営みの音がそこかしこから響いてくる。
楽し気な笑い声が聞こえる。
愉快な騒ぎ声が聞こえる。
喧嘩するような声も聞こえるが、それだって立派な生きる音だ。
うん。
やっぱり人間、こうあるべきだな。
アラガミ絶対殺すべし、なんて。
真っ当な人間の考える思考じゃないよ。
意外と神機使いはそういう奴が多いからな。
ルーキー然り、アリサ然り。
今はそんな雰囲気はしなくなったけど。
そういう観点で言うとコウタが一番
最初はただのお調子者かと思ってたんだが、付き合ってみれば存外好感の持てる青年だった。
願わくば、彼と彼の家族に、幸多からん未来があろう事を。
ハッハッハ、縁起でもない。
俺としたことが、妙なフラグを立てるものじゃ無いな。
独り身のデリケートな心に家族連れの声は意外と堪えたようだ。
散策もちょうどいい区切りだし、そろそろアナグラに帰るとしよう。
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ここは極東支部のエントランスホール。
ここ最近すっかり定位置と化した一角に陣取り、今日もお茶を飲みながら出撃警報を待ち続ける。
先日上層部から正式なお達しがあった。
防壁のアップデートが完了するまでの間、当面は防衛任務を主軸にしてほしいとの事。
まぁ別に何かを訴えようとか言う気はさらさらない。
向いていない仕事とはいえ、防衛だって立派な神機使いとしてのお仕事である。
出来る限りの事はやる所存だ。
-ビーッビーッビーッ!-
そんな事を思っていた所に鳴り響くアラーム音。
放送を聞くに、ついに大型種の侵入を許すまでになってしまったらしい。
既に第一部隊はアラガミ防壁のバージョンアップに向けて必要な素材を収集中との事。
つまりは彼らが戻ってくるまでの間耐え凌げばいいというお話である。
うむ、実に単純明快。
我ながらそんなに頭の出来は良くないからな。これくらい簡潔に勝利条件を指し示してくれると嬉しい。
つまり、全員殺せば良いのである。
おっといけない。こんな言い方、また上官様に怒られてしまうな。
んー、何か良い言い方ないかな。
…あぁそうだ。ちょうどぴったりな言葉をアーカイブのアニメで見た事あるな。
-別に倒してしまってもいいんだろう?-
うん。言ったはいいけどちょっと恥ずかしいなこれ。
俺、別にそんな大層な強さの神機使いという訳でもないし。
気を取り直してさっさと現場に向かうとしよう。
警報が鳴った場所は…
Eの26か。
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ミッションコンプリート。
アラガミの襲撃を退け、被害を
先程助けた母娘連れがお礼を言うべく駆け寄ってきた。
この前の二人かと内心ドキリとしたが、今回はどうやら無関係の他人の御様子。
お礼を言われた。
無垢な少女とその母親に、貴方のおかげで助かったと掛け値なしの感謝を告げられた。
聞けばアナグラに神機使いの兄がいるらしい。
ちょっとお調子者だから心配なのだと話す家族の目は、どこか羨ましいほどに温かみが溢れていて。
やっぱり家族って素敵だな。
…っと、いけないいけない。ここらで一つパフォーマンスをしなくては。
先の件は場の空気を読まなかった俺のミスだからな。
優秀な神機使いは同じミスを繰り返したりしないのだ。
取り出したるは何の変哲もないボールペン。
まぁ難しい事をしようとしている訳ではなく、ごくごく普通の手品で場を和ませようとしているだけである。
それでもこの緊迫した空間には十分すぎる効果だったようだが。
少女も母親も同僚たちも、何が起きるのかとペンに視線を集中させ、次の瞬間には花束に代わったそれに目を白黒させる。
花束から一輪抜き、少女の前に捧げる。
勇気あるレディに称賛を。よく泣き出さずに頑張ったね。
花束から一輪抜き、母親の前に捧げる。
気高きマダムに賛辞を。貴方の諦めない心が御息女の未来を紡いだのです。
花束から一輪抜き、タツミの前に捧げる。
ハハハ、「え?」って言わんばかりの顔してる。安心しろ、俺に男色の趣味は無い。
ヒバリに吹き込んでみるのも、それはそれで面白くなるかもしれないが。
残った花束を丸ごとブレンダンに渡す。
ハハハ、俺と花束を交互に見たって何も起きたりしないぞ兄さん。理由?特に無いよ。
強いて言うなら頭上にハテナマークを浮かべて困惑する様子が見たかっただけである。
大体真面目な理由で男に花渡したって…ねぇ?
性的嗜好を疑われてしまうよ。
まぁふざけるのはこの辺りにしておこう。
折よく場も和んだようでちょうどいい。
正気に戻ったタツミが撤収の段取りに入っていく。
被害も
…人が死んでるのに最小限の被害、ね。
あーやだやだ。
やっぱり神機使いって
おっといけない。
こんな言い方、そんな子供に育てた覚えは無いって両親に怒られてしまうよ。
残念ながら、この人はとことんまでに何かを守る戦いに向かない人。
長くなるから書けない?
逆に考えるんだ、ちょっとずつ仕込んでいけばいいさって考えるんだ。