無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.今はそうでもない。
Q2.何で急に不穏な空気に?
A2.地雷センサーに引っ掛かった。
悪気は無いとわかっているので別に根に持ったりはしません。
曇った後はお酒を飲みましょう。
ここは極東支部のエントランスホール。
今日は何やら朝から受付が騒がしい。
-誤解だヒバリちゃん!俺はヒバリちゃん一筋で…!-
わかってますよと苦笑しながら話すオペレーターに必死に弁解を繰り返す隊長様。
先日洒落で渡した手品の小道具が、どうやら他の女性からプレゼントされた物という話になってるらしい。
いやぁモテモテじゃないですかタツミさん。
ちゃんと本命がいるというのに、色男はツライですね。
ラブコメの波動を感じるな。俺こういうの大好き。
誤解から生じるすれ違い、大変美味しゅうございます。
今でこそ効果はまだ無いが、やがてはアラガミ化の治療にも採用される事間違い無しだ。
愛する人の呼びかけで元に戻る。うむ、王道故にいつ味わってもたまらんな。
ちなみにブレンダンの方もと期待はしたんだが、あいにくそっちは特に何も無かったらしい。
強いて言うならジーナに花束を取り上げられてたくらいか。
何でもデッサンのモチーフにちょうど良いとの事。
うーん、ブレジナか?解釈違いだな一冊ください。
まぁいい、知人のナマモノは止めておこう。俺は分別のわかる人間なのだ。
昔の極東ではこれが原因で血で血を洗う惨劇(呆れ)も起こった事があるらしいからな。
閑話休題。
と言っても戻す話も無いのだが。
先日第一部隊の面々が入手してきてくれた新しい偏食因子によって、無事防壁の強化も成功。
それ以来防衛班の出勤回数もめっきり減ったので大変喜ばしい事だ。
喜ばしい日はお酒に限る。
クピクピお酒を飲みながら束の間の平穏を享受する。
うん、今日も平和で酒が旨い。素晴らしい事この上無しだ。。
願わくばこの平穏が何時までも続k…
-ビーッビーッビーッ!-
いや早い、早いって。フラグ回収が早すぎるだろ。
何?俺の腕輪って思考検知機でも付いてるの?
良い感じに酔えてたのに台無しだよ。
偶然だと分かっていても愚痴りたくなるのが人情。
あーやだやだ、どこのアラガミだよ人様の限られた休息タイムを削ってくる馬鹿たれは。
まぁ仕方ない。これも立派なお仕事だ。
酔い覚ましのお薬飲んで、さっさと任務に備えるとしよう。
…ところでタツミ隊長。やむを得ないから迎え酒を許可する、なんて言う気はない?
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ここは外部居住区外れの外周部。
先日アップデートされたアラガミ防壁がどこか新区画の様相を匂わせる場所である。
例えるならスチームパンクの世界と言ったところか。
鉄錆はびこる壁の一部に、不釣り合いに調和の取れた鋼鉄部品が取り付けられた巨大な防壁。
男なら心のときめきが止まらない素敵空間の一つである。
まぁ今は任務で来ているのでワクテカしている場合ではないのだが。
今回の作戦概要はざっくり二つ。
防壁付近に近寄ってきたアラガミの群れに対して二種類の戦術を取る。
1.迎撃部隊は後方に周り込んでこれを強襲、殲滅する。
2.防衛部隊は万が一防壁が破られた際はこれを迎え撃ち、迎撃する。
要するに背面強襲を主軸に敵の撃破を狙う作戦だ。
うん、いいんじゃないか?背中を襲うのは得意だし。
ちなみに外壁から引き離すだけでもいいらしい。
まぁ居住区の防衛が目的だしな。侵入さえされなければそれでいいんだろう。
さて、気になるチーム分けである。
先日市民に犠牲が出た事を鑑み、今日は普段よりも厚いメンバー層でのミッションだ。
外壁側の迎撃部隊は俺とタツミ。
タツミが小型と戦場をかき回し、俺が大物を仕留めていく方針。
内壁側はブレンダンを筆頭に残る防衛班の面々。
仮に防壁に穴が開いてもそこまで大きくはならないであろうと見越し、ブレンダン他近接使いが抑えてる間に遠距離神機使いで蜂の巣にするという方針だ。
うん、イジメかな?
外壁側2名に残り全部内壁側とか明らかに比率がおかしいだろ。
良いんですかタツミ隊長。
こんな横暴、断固抗議する事も辞しませんよ。
チラリと恨みがましい視線を向ける。
返ってきたのは眩しいまでに爽やかな信頼の笑顔。
「正直キツイ任務ではあるが…まぁお前さんがいるなら安心だな!」
クソッ、良い笑顔だイケメンめ。でも男に期待されたって嬉しくないやい。
どうせならヒバリ呼んで来いよヒバリを。
言ったら本気で殴られそうなので言わないが。
これでも良い大人だからな、人様の恋路を邪魔する気は毛頭無いのだ。
しかしこんな優良スペックを持ちながら未だに落とせてないというのだから不思議でしょうがない。
もしかして俺が知らないだけでよっぽどヤバい性癖でも持っているのか…
この話は止めようか。
ヒバリちゃんは立派なレディ。アリサやルーキーより年上なんだから間違いない。
六歳差?極東の最高記録は十歳差だからセーフ…うん、本当に危ないから止めておこう。
ただでさえ命がけの仕事なのにこれ以上モチベーションを削ってどうするんだ。
横を見ればタツミが怪訝そうな目でこちらを見ている。
まぁ"貴方がロリコンか否かを脳内で議論していました"なんて、言える訳も無し。
気持ちを切り替えて任務にかかるとしましょうか。
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ここは極東支部のエントランスホール。
朝と同じように定位置と化した一角に陣取り、任務上がりの美酒に舌鼓を討つ。
本日も無事ミッションコンプリート。
うむ、タツミと組んだ回数は少ないのだが、やはり相性の方は抜群だな。
タツミが小型と陽動を担当し、俺が大型と止めを担当する。
役割分担がはっきりしているというのは、ただそれだけで戦いやすさに直結する。
その結果は防壁付近のアラガミの全撃破。
引き離すだけでも良かったことを考えれば、文句無しの完全勝利というやつである。
ちなみに内壁班の一部からは不満の声が上がっている。
やれ花が咲かせられたなかっただの、やれ討伐出来なかったから報酬が稼げなかっただの。
知らんわそんな事。俺に言われても普通に困る。
もっとも、この辺の不平不満は隊長様に丸投げしたので俺の知った事ではないのだが。
所属部隊が違うから仕方ないね。
それとも俺の部隊来る?花も咲かせ放題だし、一応実入りも他より良いよ?
まぁその分こき使われるんですがね。
良かったな俺が優しい人間で。
いくら自分が楽になるとはいえ、甘い言葉でブラックな環境に誘ったりはしないのだ。
シュン君?残念だが選考落ちだな。
ブレンダンは俺がサボってたら小言言いそうだからダメ。
ちなみに誰が欲しいと言われたらカノンなんだがな。
あの火力は魅力的だ。誤射は酷いがそれならそういう戦術を立てるだけである。
-俺に構わずコイツを撃て!-
うむ、男なら一生に一度は言ってみたい台詞だな。
まぁ言ってないのに問答無用で撃ってくるから困りものなんだが。
「よぉお疲れ。悪かったな、ここしばらく防衛任務に突き合わせて。」
おっと、色男の登場だ。
顔を向けたのを見計らい、配給ビールが放られてくる。
くれるの?これはどうもサンキューね。
差し入れとは有り難い。
こういう細やかな気遣いが出来る部隊長というやつか。
「第一部隊で回収してきてくれたコアのおかげで防壁を破られる回数も激減した。だが適用されるまでの間、お前さんが手を貸してくれたおかげで被害も
全く、褒めたと思った矢先にこれである。
「礼を言うぜ」と爽やかに言われてもなぁ。
まぁ悪気が無いのはわかっているのでいちいち目くじらを立てたりはしない。
それにその言葉に一番納得してないのが本人だというのもわかってるし。
現実は厳しいのだ。悲しいが。
「ま…それはともかく。とりあえず今回の件で一段落着くはずだ。お互いお疲れさん。」
配給ビールの口を開け、こちらに突き出してくるタツミ。
乾杯か。いいね、本当に盛り上げるのが上手い隊長さんだ。
悔しいまでにイケメンだ。
これでなんでヒバリを落とせないのか本当に謎。
まぁいいや、人の恋路は遠巻きに眺めるもの。
いちいち口を出すなんて、それこそ野暮の極みもいいところ。
黙って二杯目のビールを奢られておくとしよう。
うん、美味しい。やっぱりお酒は最高だな。
何か眠たくなってきた。
………
「お、おい。大丈夫か?おい。」
「どうしたのタツミ?何か問題でも…あら。」
「ジーナか。いや、コイツとちょっと酒を飲んでたんだが…何故かいきなりぶっ倒れてな。」
「飲ませ過ぎね。駄目よタツミ、この人お酒弱いんだから。」
「え?いやだってコイツ、普段から結構酒飲んで…」
「飲んでるだけよ。この人見た目は全然わからないけど、立て続けのビール二杯で簡単に倒れるんだから。」
「あー、確かに俺が来る前から飲んでたみたいだが…てかよく知ってるな?」
「そりゃそうよ。イケる口だと思って派手に潰した事あるんだから。」
………
気付いたらいつの間にか自室で朝を迎えていた。
確かタツミと酒盛りしてた筈なんだが…何が起こった?
お酒くれたから無口さんの好感度+5。
相手が男でも部屋に送ってくれる良い隊長さん。
次で時系列がちょっと進む予定。