無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.あんまりない。
Q2.食べ物あげたのに?
A2.そもそも賄賂と割り切られてる。
ちょっと短め。
時系列が少し進みます。
ここは通称"鉄塔の森"。
地域特有の気候と建物から流れる廃液の化学反応で、時折濃霧が発生して視界不良となるエリア。
今日は珍しく一人任務。
もっとも、別に特務だ何だという訳ではないのだが。
リンドウとやり合ったと思しき新種の討伐依頼が出ていたので受領した。
別にリンドウは死んでいないと思っているのでそこまで気負う必要は無いのだが。
それでも同僚が傷付けられてアラガミ化までさせられたというのは流石の俺も思う所がある。
現実は厳しいものとは知っているが、それと感情が納得できるかというのは別問題だ。
とどのつまり、ただのお礼参りである。
第一部隊の面子を誘おうと思ってたんだが、その前にリンドウの腕輪の反応が調査班から上がってきたため、皆そっちへ出張ってしまった。
あれ、もしかして俺の方ハズレ?
お礼参りどころか単なる八つ当たりになってしまった。
まぁいいや、とばっちりになるがアラガミ相手に慈悲は無い。
人権とは人間に与えられるものなのだ。
………
話は変わるが。
あと二、三日したら支部長が出張から帰ってくるらしい。
何でもヨーロッパまで特異点の調査に出張っていたとの事。
まぁ日本にもシオみたいなアラガミがいるくらいだしな。
欧州大陸ともなればそれこそ色んな種類のアラガミがいるんだろう。
ちなみに俺の勘ではシオが支部長の探している特異点なんだと思っている。
まぁ博士から賄賂を貰っているので俺から報告したりはしないが。
だってそもそも俺、特異点がどんなアラガミなのか聞いてないもの。
珍しいアラガミとかだけ言われても、探しようなんてある訳ないだろ。
まぁ元々は一番に観察したいから報告を止めといてくれって依頼だし。
その内博士の方から支部長に話が行くでしょ。多分。
…珍しいアラガミと言えば。
今仕留めたアラガミはなんでも雌雄の概念が存在している可能性が高いとか。
見た目のライオンっぽさの通り、オス型一体にメス型複数体が付き従っている目撃例が散見されているらしい。
リア充かよ、くたばれ。
アラガミですら女の子侍らせているのに俺は一人寂しくミッションか。
世の無常を感じるな。
まぁハーレム云々はさておき。
オスメスの概念が生まれるという事は、その内アラガミにも子供が生まれたりするんだろうか?
別にそうなったとしても不思議な事ではないと思うが。
何だったらこれの中を覗いて調べてみようか。
ほら、そこで寝ているパパも気になってるだろうし…俺の子じゃない?最低だなこのスケコマシめ。
ハハハ、イッツ・ア・ブラックジョーク。
俺にスプラッターの趣味は無い。
いくらアラガミ相手とは言え、興味本位で腹を開くとかサイコパスも良い所だしな。
…よく考えたら第一部隊の方で今それをやってる可能性が高いのか。
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ここはフェンリル極東支部、通称"アナグラ"と呼ばれる場所。
そこを統括するお偉いさんからお呼びが掛かり、現在支部長室へと向かう途中である。
エレベーターに乗って目的階へ着くまでの間、最近の第一部隊の様子について思案を巡らせる。
何か避けられているような気がする。
正確には第一部隊の女性陣に、だが。
時期的にはリンドウの腕輪を回収してきた辺りからか。
余所余所しいというかなんというか、どうも何かを隠しているような雰囲気だ。
あれ?もしかして俺信用されてない?
シオの事を支部長にタレ込むとか、そんな風に思われてたりする?
そりゃ支部長命令とかまで言われたら流石に隠しきれんが。
少なくとも自分から進んで報告するつもりはないぞ。
賄賂まで受け取ってるのにあんまりな扱いである。
ちゃんとシオの面倒だって見てきたというのに。
決してロリコン扱いされて白い目で見られている訳ではないと信じたい。
そう言えば最近シオの姿を見ていないな。
閑話休題、目的階に到着だ。
まぁ呼ばれた要件については何となく察しが付いているけれど。
………
"全ての任務に優先して、特異点の捜索に尽力しろ"ね。
どうやら欧州出張の成果は芳しくなかったと見える。
その特異点、ラボラトリ行けばすぐ見つかるんですけどね。
行くなら別に止めはしないけど。
どうせ博士は博士の方で何か企んでるんだろうし。
その場合は運が無かったと諦めてもらおう。
信用?
友人を出し抜こうとしている人はちょっと…
まぁいいさ、これも立派なお仕事だ。
ましてや支部長直々の特務案件である。
どうせ外にはいないんだし、息抜きと思って気楽に探索してこよう。
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ここは通称"愚者の空母"…の隣に位置する作戦エリア。
損傷による地形の隆起が激しいために中型種ですら避けるルートであり、もっぱら偵察や諜報に利用されるゾーンである。
小型種なら別に問題無いルートであり、シオ…もとい特異点のサイズであれば、普通に通れる場所でもある。
つまりこれはサボりではない。
純粋にターゲットの情報を元に行動を予測し、網を張っているに他ならない。
我ながら一分の隙も無い完璧な作戦だ。
うん、夕焼けを見ながら飲むジュースは美味い。
エリアの小型種は既に排除済み。
何か知らんが妙に活性化しててちょっと手こずったけど。
後は作戦時間が終了するまでのんびりと…
「………………………」
シオがいる。
え、待ってまさかの同種?
確かにシオはアラガミだし、同じ種類が現れても不思議じゃないけど。
いや、あのドレスはシオだけの一張羅だ。
という事はまた脱走してきたのかあの子。
いやいや、これは流石にマズい。
支部長がいなかった時とは状況が違う。
遭遇してまで知らんぷりを通すほどの賄賂は貰ってないし。
それ以上を受け取る程、
あくまで持ちつ持たれつ、ビジネスライクな付き合いだ。
少なくともエイジス計画を袖にしてまで、博士に手を貸す義理は無い。
仕方ない、とりあえずシオを確保してアナグラに…
何だ、ソーマもルーキーもいるんじゃないか。
焦らせやがって、人が悪いぞ。
クルリと背を向け、足早にその場を後にする。
見なかった事にしておくから、早くシオを連れていけ。
職務怠慢じゃないぞ。
あの二人はシオを庇うだろうし、二対一じゃ分が悪いから退いただけ。
我ながら一分の隙も無い完璧な言い訳だ。
丁度いい、この件をダシに支部長に携行武装の支給嘆願でも出しておくか。
この人から見れば支部長も榊博士も同じくらい真っ黒。
博士が説明してくれないから仕方ないね。
会話はコミュニケーションの基本です。