無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.使える物は何でも使う。
Q2.アラガミに銃火器は効かないんじゃ?
A2.目潰し代わり。怯んで見失うと…。
Q3.語らず、感じず、何も思う事無く戦い続ける神機兵?
A3.ジーナさんがハズレと採点してくれます。
相変わらず隊長さんは語らない。
それでも信じてくれますか?
-Side_アリサ(chapter1)-
「あら?残念ながら残りのセーフガードは私が全て破壊しましたけど?」
消えてもらうと明確に殺意を告げてきた相手に答えを返す。
だが、油断は出来ない。
困ったと言いながらも、支部長は不敵な態度を崩していない。
相手は極東支部の最高権力者。
てっきり私兵の一つも連れてくると思ってたんですけど。
(…貴方は、そちらに付くんですね。)
初めて一緒に任務に出向いた時、正直私はこの人を下に見ていた。
古参とはいえ旧型使い、おまけに補助だというのに前衛に出張った挙句に棒立ちで吹っ飛ばされていたのだから。
次の任務で感じたのは畏怖と怒り。
チームが綿密な作戦を立てて挑むような討伐を単独でこなす強さに憧れと見まごうような畏怖を抱き、侮蔑混じりの未熟者扱いに怒りが溢れた。
侮り、尊敬、恐れに憤怒。
やがてそれらはただの人に対する認識へと変化し、さらには疑念へと変化して。
人伝手ではあるが彼の過去を聞いた。
両親を目の前で喰い殺され、言葉も表情も失ってなお戦い続ける神機使いの話を。
語らず、感じず、何も思う事無く戦い続ける神機兵。
それが彼という人間を示す表現だった。
でも、そんなことは無かった。
言葉は何一つ語らないし、喜怒哀楽も顔に出しすらしないけれど。
子供のように、何度も私をからかってきた。
大人のように、何度も私を嗜めてきた。
ただ何も喋らないだけ。
ただ何も表情に表れないだけ。
ただそれだけの話だった。
--敵対したく、ありませんでしたよ。
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-Side_サクヤ(chapter1)-
信じた。
確証なんて、どこにもない。
それでもただ、貴女の強さを信じた。
-血迷ったかサクヤ!-
男性が叫び、次の瞬間驚愕の声を上げる。
「お生憎様、回復弾よ!」
文字通りの千載一遇の隙を逃さず発砲する。
長年使い続けてきた愛用の神機だ。この距離ならば外さない。
故に、理解していた。
私の神機は狙撃に特化したスナイパー対応。
命中精度では頭一つ抜けているものの、複数を相手取る連射性は兼ね備えてはいない。
オオグルマ博士を仕留めたとしても、残るもう一人の神機使いを止めることは出来ない。
だから、もう一度だけ賭けをした。
分の悪い、普段なら絶対にベットしないような内容の賭けだ。
暗示の解けた直後、夢か現かもわからないその状態で。
………
「嘘…」
賭けは勝った。
ダイスの目は、私達が賭けた方に向いた。
唯一の誤算は、それが勝利を確定させる目では無かったという事。
爆煙が晴れる。
予想通りなら、私が放った一発はオオグルマ博士に。アリサが放ったもう一発はあの人に当たった筈だ。
私が放った狙撃弾の弾跡を見る。
撃たれたであろう人物の姿は無い。
アリサが放った爆発弾の弾跡を見る。
青い目をした神機使いが、
青い、青い。
温度をまるで感じさせない深い蒼。
「防げるんですか…あのタイミングで…」
アリサが驚愕を隠しきれずに声を漏らす。
その声に反応するかの如く。神機使いは手にした神機を手放すと、男性の影へと右手を隠す。
「…っ!」
何時だろうか、今のリーダーとミッションに行った時を思い出す。
油断したのか、死にかけのヴァジュラにこの人が吹っ飛ばされた時の事。
脳震盪でふらつくこの人を強引に寝かせた時に知った、この人が普段持ち歩いている装備。
防弾チョッキどころか、至るところに
「防いで!アリサ!」
咄嗟の叫びに反応したアリサが装甲を展開する。
次の瞬間、甲高い跳弾の音が響き渡った。
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-Side_アリサ(chapter2)-
「信じられません!あの人頭おかしいんですか!」
開口一番、感情を抑えきれずに声を荒げた。
「何でサブマシンガンなんか持ち歩いているんですか!一介の神機使いが装備してていい武器じゃないでしょう!」
怒り心頭のままで先程の光景を思いだす。
サクヤさんの呼びかけに何とか反応し、咄嗟に神機の装甲を展開した直後、盾の向こう側から響き渡る甲高い音と衝撃。
退き際に見えたのはオオグルマ先生を盾にし、銃をこちらに構えたまま見据えてくる古参の近接神機使い。
ゴッドイーターが銃火器に頼るなんて何事ですか。
「多分支部長からの支給品ね。前から銃器をミッションに持ち込んでいたのは知ってたけど…まさかあんな物まで用意していたとはね。」
「ちょっと待ってください。あの人、以前からあんな物騒な人だったんですか?」
その質問に苦笑しながら頷いて見せるサクヤさんに思わず頭を抱えてしまう。
やっぱり"頭のおかしい人"って評価、間違ってなんかないじゃないですか。
アラガミに既存の火器が通じないなんて知らない筈がないし。
その上で持ち歩いているとすればアラガミ以外に使おうとしているとしか思えない。
「…まぁリンドウも言ってたけど、持ち歩いてはいても人に向かって使った事は無かったらしいから。」
「光栄ですね、それじゃあ私があの人の
その言葉に返す言葉を無くしたのか目を丸くして黙ってしまったサクヤさん。
いけない、皮肉を言うつもりではなかったのだけど。
「すみません、別にそういうつもりで言った訳では無かったんですけど…」
「えっ…あ、あぁそっちの意味ね!?えぇうん、もちろんわかっているわよ!」
急に上ずるサクヤさんの声に疑問符が浮かんだが、状況が状況なのであまり気にせず思考を切り替える。
「ともかく、私としては一旦引くのがベストかと思いますが…」
「問題はどうやってあの人を切り抜けるか、ね…」
私たちが潜んでいるのはアナグラ方面にある大ホールの一角。
途中に潜入時に使用した通用口があるものの、侵入がバレたせいか先程訪れた際はカードキーが無効になっていた。
スムーズに脱出できればそれでよかったものの、銃を持った近接神機使いが迫る中でロック解除など行えるはずも無く。
やむを得ず迎撃のためにこちらへ退避したのが現状である。
「当初の予定通り、射撃戦に持ち込むのは駄目ですか?」
「…多分無理ね。神機だけならいざ知らず、携行火器で武装している以上、正攻法じゃ勝ち目はないわ。」
複数の銃器・爆薬で武装した近接戦闘のスペシャリストが相手である。
加えてサクヤさんが言うには銃器だけでなく防弾チョッキまで着込んでいるらしい。
対してこちらは神機以外には護身程度の火器しか持っておらず、戦力差は文字通り火を見るより明らかだ。
射撃戦で優位を取れる保証はなく、近付かれれば即詰みかねない程の実力者が相手。
まともにやり合っては勝ち目がない。が、十分な戦略を練る時間は残されていない。
…足音が響いてくる。
慣れ親しんだ、そして今は死神のそれと聞き間違うような音が真っ直ぐこちらに向かってくる。
こうなったら覚悟を決めるしかない。
こんな形で、あの人に私の実力を見せたくは無かったけれど。
「…私が仕掛けます。一分…いや、三分は抑えてみせますから。その隙にサクヤさんがあの人を仕留めてください。」
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-Side_サクヤ(chapter2)-
アリサの作戦はこうだ。
躊躇無く銃を抜いているところから、恐らく射撃戦は読まれている。
ならばいっその事白兵戦から乱戦に持ち込み、隙を見て
もちろんそんな作戦なんて呑めるはずもない。
が、告げた否定の言葉に彼女は淡々と理詰めで答えを返してくる。
「議論している時間なんてありません。それに銃型神機のサクヤさんじゃ、あの人相手に近接戦なんて不可能じゃないですか。」
言葉に詰まって窮している私をしり目に、アリサは構わず言葉を続ける。
「
何時ぞやの彼女がよく口にしていたその言葉。
あぁ、最近はその事をネタによくリーダーからからかわれていたっけか。
彼女の表情に皮肉や侮蔑の色は無い。
寧ろ覚悟を決めたような、近接もこなせる自分にしか出来ないと言った決意の表情。
「…わかったわ。でも、これだけは約束して。」
-死なない。-
-死にそうになったら逃げる。-
-そして隠れる。-
-隙を突いて敵を倒す。-
「…何ですかそれ、リンドウさんと同じじゃないですか。」
クスリと苦笑しながら返すアリサにつられて、こちらからも笑みが零れていく。
「仕方ないじゃない。リンドウに口酸っぱく言われていたのは貴女達だけじゃないんだから。」
「フフッ。それじゃ、何としても生きて帰らないといけませんね。」
お互い、命が掛かった状況とは思えない軽口を叩く。
…足音が響いてくる。
死神が、運命を運んでこちらに近づいてくる。
「サクヤさん。」
配置に付く直前、アリサが真っ直ぐにこちらを見据えて一言告げる。
「えぇ。お互い、絶対に生き延びましょう。」
決意のアリサ&決意のサクヤ。
だからこそ、この人は何一つ喋らない。
オオグルマ先生は流れ弾の犠牲になりました。
偶然です、ね。