無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.サクヤさんがいなかったけど?
A.オペレーター勤務の頃の印象が強かったのでメンバー候補に浮かばなかったため。


無口な無口な交友関係2

想定外だが、良い傾向だ。

 

普段滅多に浮かべることのない笑みが思わず上がる。

労せず手駒の懸念要素が解消されそうになっているなど思っても見なかった。

 

却下と共に回収した申請書に改めて目を通す。

こうして見返してみると、よくよく自分との接点が()()()メンバーばかり書き出してみたものだと感心まで覚える。

 

これでも彼の事は高く評価している。

少なくともこんな申請が本気で通るなど露ほどにも思ってないはずだ。

 

では何故通りもしない申請を出してきたのか?

簡単だ、今はこのようなやり方しか思いつかなかったのだろう。

 

自分以外の誰かとの繋がりを求めてみたが、それを実現させるための経験が圧倒的に足りていないのだ。

結果として無駄と知りながらも、縋らずにはいられないジレンマ。

 

良い傾向だ。実に良い傾向だ。

 

もし上手い具合に誘導させられたのなら、洗脳なぞより()()()()()()()()()こちらに依存させることができる。

 

とは言え、精神的なアプローチに対して焦りは禁物だ。

月並みだがじっくり時間をかけてやらねばな。

 

 

…ふむ、とりあえず、他部隊との交流でも増やしてみるか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

ここは極東支部の神機保管庫。

同輩である整備士達が忙しそうに工具を振るい、神機の整備を続けている。

 

今日の任務は新型技術を用いた神機の運用テスト。

普段は出撃の時に立ち寄るくらいだが、神機に関係するミッションのためか今日はここでミッションブリーフィングを行うとの事。

 

目の前に置かれているのは"スナイパー"と呼ばれる狙撃に特化した銃型神機。

ジーナが使っているのもこのタイプだったか。

 

ん?でもこのタイプは今じゃもう旧型と呼ばれているような。

新型と言えば銃剣一体型の可変機って形で話が進んでいた筈じゃ。

 

視線を上げるとその先にいるのはいつもお世話になっているリッカ嬢。

ニコニコと笑顔を浮かべているがその目は全く笑っていない。

 

「言いたいことがあるなら言っても良いんだよ?」

 

どうやらこの前神機を壊した件の怒りは収まっていないらしい。

任務前に蒸し返しても厄介なのでここは一つだんまりを決め込むとする。

 

さて、本題だが今回も珍しく他チームとの共同ミッション。

カノン、カレル、ジーナと射撃戦に特化したメンバーだ。

 

「気を取り直して…今回お願いする運用試験だけど君にはこの神機を使ってもらうよ。」

 

え、俺の神機はバスターなんだが。言われる言葉に疑問が浮かぶ。

神機使いが使う神機は一品物の筈だし、他人の神機を使うとオラクル細胞に喰われるって話だが。

 

…もしかして神機に喰われてしまえって暗に言われてる?

 

「心配しなくても大丈夫だよ。見た目こそ銃型神機だけどこれはちゃんとした君の神機。オラクル細胞に浸食されることはないから安心してよ。」

 

どういう事かと思考を巡らせていると今回のミッション目的について説明がされる。

 

端的に言うと今回の目玉である新型技術とは装備の換装を目的としているとの事。

アラガミ毎に有効な属性を持つ神機へと換装する事で討伐効率の向上を目指しているとの事。

 

なるほど、技術的な話はついていけないが戦術的に考えると悪くない。

わざわざ非効率な武器で戦うよりは効果的な武装に逐次変えて戦った方が良いに決まっている。

 

加えてこれは戦力幅を増やすことにも直結する。

射撃の才に恵まれない者が、あるいは近接戦闘のセンスに欠ける者が。

己が資質を生かせる新たな場を探す機会が増やせれば、結果として組織全体の質の向上にも繋がる。

 

うん、これは存外茶化し半分で聞いていい話ではなさそうだ。

何より個人的にも興味がある。

 

「安心した、意外と乗り気みたいだね。…でもまぁ念のため一言言っておくよ。」

 

ブリーフィングの内容も話半分にどのように運用しようか考えていると横から不意に一言告げられる。

 

「壊したら、本気で怒るからね。」

 

心配ご無用、これでもそこそこの古参だからな。

ていうか銃型神機って普通に使ってて壊れるものなのか?

 

まぁいいさ。これはれっきとしたお仕事だ。

胸の高鳴りは否定しないが、任務はきっちりこなして見せるさ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

本題こそ新型技術の運用テストだが、一応これは討伐ミッションも兼ねたものとなっている。

射撃の的代わりと言わんばかりにオウガテイル八匹の討伐も副目標に設定されている。

 

「ほら、また呼吸に銃口が引きずられてるわよ。獲物を狙って。息を吸って、止めて…今。」

 

パァン、と銃声が響くが当たったのはオウガテイル…の後ろにあった朽ち看板。

狙撃されていることにすら気付かず、落下した看板の陰に対して警戒を強める小型アラガミ。

 

下手ね、と耳元で囁かれてしまう。

時間の無駄だ、と皮肉を言われてしまう。

努力すれば何時か多分…と慰められてしまう。

 

止めてくれ、これでも古参の自負はあるんだ。

最後の奴が一番メンタルに効く。

 

銃型神機使いで統一された理由は一つ、文字通り射撃に関してのレクチャーを兼ねての事だ。

最も、今回生徒になった神機使いに才能はなかったようだが。

 

終いにはオペレーターから「作戦終了時刻が近づいてきました」とまで言われてしまう。

畜生、極東支部の女性は男のプライドを傷つける趣味でもあるのか。

 

まぁいいさ、とりあえず自分に狙撃のスキルが無い事は分かった。

であれば次はそれなりにどう運用していくかを考えればいいだけだ。

 

"あえて使わない"のと"そもそも使えない"のでは文字通り天地差だ。

戦略の幅は多い事に越したことはない。

 

俺の場合、あくまで"狙撃"スキルが無いだけであって、"射撃"自体は新型技術のおかげで実現可能な話ではあるのだ。

加えて自称するのもなんだか近接スキルに至っては中々のレベルだと自負している。

素手で倒せる…なんて事は言わないが、凌ぐだけなら神機無しでも十分やりあえる。

 

戦闘準備を始める同行メンバー同様、神機を構えなおして気持ちを引き締める。

 

距離はとりあえず気にしない。

 

蝶のように躱し、蜂のように"撃つ"。

まずはここから始めていこうか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

結果的に言うと上々だった。

遠距離狙撃は難しくても、多少近接慣れした神機使いなら近~中距離での射撃戦も十分こなせると言えよう。

 

実践してみた身としては多少安全距離を取っても有効射程内なので比較的安定して攻撃を加えることが出来た。

もし射撃の素質がある神機使いなら一層生存率の高い戦術も視野に入ってくる。

 

ちなみに今回のミッションでは小型種の乱入もあったが、特段問題も無く片付いた。

カレルに至っては労せず臨時収入が入ったと珍しく上機嫌だ。

 

…さて、それはひとまず置いといて。

 

目の前にあるのは運用試験を行った銃型神機。

簡単に状態を説明すると銃身がざっくり40度はひん曲がっており、少なくとも"歪んでいる"などと生易しい表現が通るレベルではない。

 

何でこんな状態になっているのか。

何のことはない。背後に突如出現したオウガテイルに振り向き様チャージクラッシュを叩き込んだだけである。

 

ドンピシャのタイミングで神機を叩きこまれたオウガテイルは爆発四散。銃型神機でも破砕タイプとして使えそうだと感心した矢先、曲がった銃身に気付いて青ざめた。

 

「ちょ、貴方ねぇ…あんな花の咲かせ方ってある?」

 

この光景にジーナは滅多に見せない大爆笑をしていた。

出現を察知して狙撃モーションに入っていたところ、銃身で殴られて吹っ飛んだオウガテイルをもろに見てしまったらしい。

 

うーん、美人なんだがいまいち笑いのツボがわからない。

一般的にはスプラッター映像の類だと思うんだが。

 

「…あのさぁ、聞いてる君?言いたいことがあるなら言っても良いんだよ?」

 

現実逃避している横では絶賛怒れる整備士様(アラガミ)が活性状態だ。

弁明したいところだが誤解を招きそうなので沈黙を貫く。

 

銃型と言っても本質的には近接神機と変わりはない。

神機を構成するオラクル細胞がアラガミのオラクル細胞を接食破壊するのが基本の仕組みに変わりはなく、神機本体も同様にオラクル細胞をベースに構成されている。

どういうことかと言うと別に撃たなくとも、銃身本体による打撃でも細胞にダメージを与える事が出来てしまうのだ。

 

そして神機と言うのは金属パーツを多数使用している。

例え刃は付いていなくても、アラガミにとっては鈍器と言って差し支えないのだ。

 

加えて神機での銃撃と言うのは従来火器による射撃機構とは文字通り一線を画している。

レーザーガンやビームライフルと表現すればわかりやすいだろうか。

 

結論から言ってしまうと"銃身が曲がっていても射撃可能"である。

狙撃であるならいざ知らず、ほぼ近距離での白兵戦であれば曲がった銃身を意識しての射撃は特段の問題を感じることはなかった。

 

仕方ないじゃないか、もう銃身は曲がってしまったのだ。

せめてこの状態で撃っても問題無いというデータくらいは取っておかないと。

多少ヤケクソ気味に吹っ切れて、殴りまくって撃ちまくったというのも否定できないが。

 

…まぁそれを差し引いたとしても。

 

近接では神機本体による白兵戦、中~遠距離では銃形態での射撃戦。

新型神機のように銃剣一体型で無くとも、この戦闘スタイルの拡張幅を見逃すというのは中々惜しいところ。

 

強いて言うならもう少し近接もこなせる程度の強度は欲しいか。

なので作戦終了後の報告書にありのままこう書いたのだ。

 

"種別)スナイパー 所見)遠近両用のコンセプトは良好。白兵戦において神機強度に不安有り。 要望)小型種と打ち合える程度の強度改善を望む"

 

 

提出後、エントランスでまったりしていたところを怒れる女神(アラガミ)がすっ飛んできて拉致された。

どういうことだオペレーター、今回も緊急警報が無かったぞ。

 

とりあえず。

今回のミッションでは中々新しい見解を深めることが出来た。

機会があるかどうかはさておき、次の任務までにバレットエディタについて勉強してみるか。




リッカ「新しい技術が確立できた!早速運用試験だ!」

リッカ「えっ、壊した!?壊れたじゃなくて壊したってどういう事!?」
ユウマ「……。(アラガミ殴ったら壊れた…んだが、言うと怒りそうだから黙っておこう)」
ジーナ「あぁ、この子銃身でアラガミ殴り飛ばしてたわよ。(←笑ってる)」

以降、神機保管庫でのやり取りに続く。
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