無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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箸休めのハイパーすっとこタイム。
ちなみに…

Q.シオがイヤイヤしたら?
A."アラガミ"と見なした上で、もう一度シオに()()()()くれます。

例のルートよりは遥かに有情。
それでも実は現時点でWarningが出まくってたりする。

我々の業界では警告は異常ではありません。


無口と頼れる協力者1

「…君の神機ね、神機で切られたような傷が付いてたんだ。」

 

-傷の深さ的にロングブレードかな?あぁ、そう言えばアリサの神機もロングブレードだったよね。-

 

本能が即座に警鐘を鳴らす。

ヤバい、逃げろ、この状況は非常にマズいと。

 

相手は背中を向けている今が好機だ。

仕留める?馬鹿言え、か弱い女性にそんなふざけた真似できるか。

 

ついでに言うならどう見たって誘いだろうが。

襲いかかったが最後、「やっぱりね。」と身の毛もよだつ表情を向けて無残な仕打ちをしてくる場面に間違い無い。

 

アーカイブのホラー映画で見たぞこういうの。

主人公と同じ行動を意識した結果、何度俺が悲鳴を上げたと思っている。

 

だから逃げる。逃げの一手だ。

戦略的撤退、そこに何も恥じるところはない。

 

-ガチャ-

 

…は?

 

-ガチャ、ガチャガチャガチャ-

 

鍵がかかってる。

いやちょっと待て、いつの間に鍵なんてかけやがった。

 

「…君、今逃げようとしたね?」

 

ヤバい。ヤバいヤバいヤバいヤバい。

畜生、ミスった。今回はそういうパターンか。

 

クルリと目の前の女性整備士がこちらに身体を向ける。

 

細身ながら均整の取れたプロポーション。

白に近い銀色の髪がモニターの光に照らされ、何とも言えない美しさを醸し出している。

 

うん、美しすぎて何も言えないな。

決して恐怖で言葉を失っている訳ではないと信じたい。

 

リッカちゃんはカワイイですよ。

たとえ両目のハイライトがオフになっているとしても、そこに議論検証の余地は無い。

褒めちぎって何とかなるなら怒涛の如く言葉を紡いでいるところだ。

 

「とりあえず、君には聞きたい事があるんだ。あぁ別に喋る必要はないよ?長い付き合いだし、君の事はよく知ってる。」

 

嘘つけ、俺の事何もわかってないだろ。

本当に付き合いの長い人間は「偶にはちゃんと喋れ」ってツッコんでくれるんだよ。

 

まぁ流石にこの状況でそんな事言える訳がない。

「今まで騙してたんだ?」とか言いがかりをつけられて、余計に酷い状況になる事くらい俺でもわかる。

 

レンチを片手に、やや濁ったブラウンの瞳が真っ直ぐこちらに近づいてくる。

 

「とりあえずは身体に問い質すよ。大丈夫、わかりやすく説明してくれれば痛くしないから。」

 

ふざけんな、身体にじゃなくて言葉で聞け。

あ、待て待て待て。レンチを振り被ってどうするつもり…

 

-ガンッ!-

 

 

 

 

 

…畜生、よくもやったな。

俺は何も悪いことしていないのに。

 

こうなったら、お前も()()()になってもらうからな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部におけるとある神機使いの個室…の入り口。

悪い神機使いが麗しいレディをお持ち帰りし、今まさに巣穴である自室へ誘い込もうとしている場面である。

 

驚くなかれ、ここ数日で何と連続三人目である。

いやぁお恥ずかしい、我ながら気付かない内にプレイボーイになってしまっていたとは。

 

いよいよ両親に顔向け出来んな。

命がけで助けた息子は無事何人もの女性を誑かす色男になりました、なんて口が裂けても言える訳が無い。

何だったら両親が怒りで終末捕喰を引き起こすまでありそうだ。

 

まぁ冗談はこの辺にしておこう。

 

「開けるよ。…いいね?」

 

目の前が女性が確認するようにこちらに視線を向けてきたので、頷いてそれを肯定する。

扉が開いたその先には、彼女が安否を確認したかった二人の神機使いの姿。

 

「…本当にいた。いや、事前に聞いたから知ってはいたんだけど。」

 

ほぅ?よくもまぁ悪びれも無く言うものだ。

極東ではレンチで散々ボコボコにしながら居場所を問い質す事を事前に聞くというのか。

 

「私達も彼から連絡があった時点で覚悟していたけど…それより事前に聞いたって言うのは?」

「あぁ、このレンチで身体に聞いたんだよ。神機同士で戦ったような痕跡があったし、絶対何か知ってると思って。」

 

恐ろしい。悪びれないどころか自覚無しか。

見ろよ、サクヤもアリサも表情が引きつってるだろうが。

 

……………………………………………………………………………………………

 

華やか。端的な感想がそれである。

まぁ独り身の男部屋に女性が三人も集まっていればそんな感想もやむ無しだろうが。

 

「…そう。やっぱり支部長は終末捕食を…」

「えぇ。私たちはそれを止めようとしたんだけど…結局は彼に止められちゃってね。」

 

熱い視線。いや、どちらかと言えば痛い部類だな。

可憐なレディ三人からの同時アプローチは独身男性の身には少々刺激が強すぎる。

 

特にアリサからの視線が強い。

視線というよりもはや睨み、いつか絶対お礼しますからねという強い意志を感じる。

 

モテる男というのも辛いものだなハッハッハ。

 

「………………………」

「………………………」

「………………………」

「………………………」

 

…女性陣からの視線が痛い。

誰かマジで助けてくれ。

 

………

 

「…で、結局二人は当面はこのままこの人の部屋に潜伏するの?」

 

居たたまれなさに堪えかねてお茶を入れている間にどうやら話題が進んだ様子。

かいつまんで聞くに、当面の二人の動向について話し合っているようだ。

 

「まぁ心苦しくはありますけど…」

「私たちはもうお尋ね者の身の上だしね。それに正直なところ、彼の手引きが無ければ生きていられたかも怪しいし。」

 

そう言ってサクヤが右手に嵌められた腕輪をちらつかせる。

携行投与キットを渡しているので特に変わりはないものの、通常であればそろそろ何らかの変化が表れていてもおかしくない頃合である。

 

ちなみに貸しだからな。タダじゃないぞ。

悪いが物資は木に実った物を収穫してくる訳じゃないんだ。

 

まぁ請求はリンドウにするからサクヤ達が心配する必要は無いがな。

何、リンドウ君なら喜んでサクヤのために身銭を切ってくれるさ。

 

生きて帰ってきた時に請求書を突き付ける瞬間が今から楽しみだ。

三か月くらいは配給ビール全没収になるだろうが、まぁ仕方ないな。

 

閑話休題。

そろそろ本題に入ろう。というか入れ。

 

「…それじゃあ、及ばずながら私も出来る限り協力するよ。正直、支部長が提言しているアーク計画、私は気乗りがしないんだ。」

 

-具体的にこれという代案がある訳じゃなし。何だったら間違っているという意見さえただの主観に過ぎないけれど。-

 

「それでもね。沈没しようとする船から真っ先に逃げ出すのは、船の修理者たるべき技術者のする事じゃないと私は思うんだ。」

 

そう言った後、「ただの独りよがりな考えなのかもしれないけどね。」とリッカは紡ぐ。

 

いや、良いと思う。

正直本気で見直した。

 

独りよがりで大変結構。

大切なのはそこに譲れない信念があるかどうかだ。

 

やはり頼ったのは間違いじゃなかったな。

 

 

「でもまぁ…そこに支部長が差し出す船に乗ろうとしてる人がいるみたいですけどね。」

 

言いながらアリサがジト目でこちらを睨んでくる。

おい馬鹿やめろよ、今良い感じで締める流れだったろうが。

 

「「あー…」」

 

お前らもマジで止めろ。

自覚はしていても実際やられると滅茶苦茶居心地悪いんだぞ。

 

 

…冷静に考えてみれば俺以外全員反対派ってこの状況、中々にカオスだな。

よくもまぁ揃いも揃って仲良くお茶してられるものだ。

 

 

体よく搾取されている訳ではないと信じたいな。




束の間の休息タイムです。
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