無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.殴って問い出したの?
A1.一発目は壁を叩いて脅しました。

Q2.一発目?
A2.事情が呑み込めた後に"わかりにくい!"と二発目を叩き込みました。

YesNoで答えられる質問はリッカちゃんにはバレます。
二人が生きているのかどうかの質問なので強硬手段もやむ無し。

ちなみにルーキーちゃんにも何となくバレます。


無口と頼れる協力者2

-○月×日。-

 

切っ掛けは、とても些細な事だった。

 

ルーキーが二人の事を聞いてきたので、ボロが出ないように聞こえない振りをし。

ジュースを買おうと財布を出したところ、勢い余って例のチケットを落としてしまう。

 

それを見たルーキーが血相を変えて胸倉を掴みかかって情熱的にアプローチ。

 

以上、状況説明終わり。

 

何を言いたいのかというと、ついに口説くまでもまでもなく異性を引きつける色男になれましたという話だ。

 

いやぁ照れる、モテすぎるというのがこれほどまでに辛いとは知らなんだ。

是非ともタツミ君辺りに代わってあげたいところだな。

 

「…説明して貰えますね?何で貴方がこのチケットを持っているんですか?」

 

いや、これ説明を求める姿勢じゃないだろ。

一体何処の世界に相手の胸倉を締め上げるのが聞き手側の姿勢だと言い張る世があるというんだ。

 

大体チケット持ってる理由なんて言わなくてもわかるだろ。

わざわざ口にしないと理解できないのかルーキーめ。

 

我ながら当たりが強いような気がしないでもないが。

言いがかりみたいな理由で胸倉を掴みあげられているのだからこのくらいは大目に見てほしい。

 

「…アリサとサクヤさんが、先日から指名手配されているのですが。」

 

ゴキリ、と彼女の右手が不吉な音を立てる。

待ちなさいお嬢さん、可憐なレディにそんな音は似合あわないぞ。

 

というか寧ろ、君アーク計画に反対の立場だったのね。

あまりそういうの言葉にしないからてっきり賛成派だったのかと。

 

「単刀直入に聞きます。二人の行方、知っていますね?」

 

知らんな。あいにく白の切り通し方には自信がある。

いやぁ残念、レディの期待にはなるべく応えてあげるのが俺の信条なんだが。

 

知らない以上はこの完璧なポーカーフェイス以外に返せるものは無い。

 

「なるほど、言うつもりはないという顔ですね。…わかりました、身体に問い質す事にします。」

 

ふざけんなこの野郎、お前の目は節穴か。

俺のどの面を見て嘘をついているなんて断言してくるんだよ。

 

もっと言うなら身体じゃなくてまず言葉で聞けよ。

リッカといいコイツといい、どいつもこいつもどうしてすぐ暴力に訴えようとするんだ。

 

対話はコミュニケーションの基本だぞ。

基本無くして成功無しという言葉を知らんのか。

言葉も無しに意思疎通を図ろうなんざルーキーには十年早いわ。

 

まぁいい、こういう事もあろうかと既に手は打っている。

 

という訳でカモン、リッカ君。

お兄さんを助けておくれ。

 

「ちょ、ちょっとちょっと!君達何してるのさ!」

 

殴られる寸前でリッカが割り込み、俺とルーキーを引き剥がす。

どうだルーキー、モテる男というのはここぞという時にレディが助けてくれるものなのだ。

 

 

うん、これってもしかしてヒモ…この話は止めようか。

口説いたレディに身を守ってもらっているなんて、冗談抜きであの世の両親から天罰を下されそうだ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

-○月△日。-

 

ここは極東支部におけるとある神機使いの個室。

無事後輩の襲撃からも免れ、服を着替える事も無く無言でベッドに倒れ込む。

 

「お、お帰りなさい。今日もお疲れみたいですね…。」

 

うん、お疲れなんだ。

レディからの労いの言葉は下手な栄養剤なんかより効果抜群だが、欲を言えば膝枕の一つでもして甘やかしていただきたい。

 

これが彼女とかなら遠慮なく行くところだが。

残念ながら彼女は同僚、もっと言うなら諸事情から匿ってあげてるだけの関係だ。

 

そんな醜態を晒した日にはストロベリーどころかシベリアの永久凍土顔負けの氷点下になる事間違い無しである。

 

あーあ、俺はきっと独り身のまま寂しく死んでいくんだろうなー。

俺もリンドウみたいに彼女欲しいなー、甘えたいなー。

 

実際そこのところはどうだったんだサクヤ君?

どうせ二人きりの時はイチャラブしてたんだろうけど。

 

あーいやらしい、いやらしい。

流石にデリカシー皆無の発言だから口にしたりはしないけど。

 

「こ、この人何でいきなりベッドの上で悶えてるんですかね?」

「気にしちゃ駄目よアリサ。きっとこの人も色々葛藤があるのよ…」

 

 

その葛藤、女の子に癒されたいってだけなんですけどね。

まぁ余計な事言って自分から株を下げる必要もないだろう。

 

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-○月□日。-

 

今日も今日とて朝から晩までお仕事だ。

 

午前はアーク計画を進めるための計画とシミュレーションを行い。

午後は特異点捜索に集中し過ぎてミッションをおざなりにする馬鹿共の尻拭いに奔走する。

 

気に食わないのは後者の仕事。

リンドウの一件で反省したかと思いきや、この後に及んで同じ轍を踏み続ける阿呆の多い事。

 

そして以前と同様にリカバリーに遠慮なく俺が駆り出される。

いくら俺が温厚を売りにしていると言っても、流石に堪忍袋の緒が切れるというものだ。

 

シオがラボにいる事を知っている身としては、無意味な努力に無駄な手間暇をかけさせられているというのがまた腹立たしい。

 

まぁ、以前もやらかした事のある人間は遠慮なく箱舟送りにしてるがな。

学習能力の無い無能な働き者程害悪なものは無いと昔の人間も言っている。

 

人生は短い。一足早いが、これは俺からの餞別代りのプレゼントだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、今の内にゆっくり救護室で体を休めるといい。

 

あーあ、俺もお休み欲しいなぁ。

言っても詮無い事ではあるが。

 

………

 

夜。

 

…俺が寝た頃を見計らってアリサとサクヤが何やら計画を立てている。

どうやら二人はまだエイジスへの潜入を諦めていない様子だ。

 

まぁ俺の知った事ではないが。

どの道、俺が動く方が早いだろうしな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

-○月○日。-

 

今日はリッカが二人の着替えを工面してきてくれる日である。

 

当初は男物で申し訳ないが、同じものを着続けるよりはマシだろうと思っていた。

が、その認識は誤ったものだとすぐに気付かされた。

 

確かに俺もそこまで体格に優れた方とは思わないが、それでも標準かそれ以上である事には違いない。

その上で貸し出した衣服がアリサの身体に合わないのだ。

 

ズボンはともかく、上半身が。

 

「す、すみません。もう少し大きいサイズはありますか…?」

「私はギリギリ着れるけど…アリサはその、胸周りがちょっと…ね?」

 

正直言えば眼福。が、それ以上に何で普段あんな格好してるのか納得してしまった。

女性のファッションセンスはわからんと思っていたが、あの格好って実は切実な悩みを反映した結果だったんだな。

 

確かに男の場合、胸囲をそれほど気にして選んだりはしないしな。

ベルトで誤魔化しが効く下半身と違い、上は着れないとなればどうしようもない。

 

とはいえ、衣服を貸してる身としてはあんな格好をさせる訳にはいかない。

人様に見られて俺の趣味だと思われた日にはもう大手を振って表を歩けなくなってしまう。

かといってこれ以上のサイズの服なんて持ち合わせていない。

 

どうしたものかと悩んでいた所にリッカ様の降臨だ。

二人に事情を説明して貰った所、それならこちらで用意すると快く引き受けてもらえた。

 

そういえば神機使いの衣服については整備班も開発に絡んでいたな。

そういう事なら黙って専門家に任せるとしよう。

 

ただ採寸するなら一声かけてからやってくれ。

いくら服の上からとはいえ、男としては気まずいんだよ。

 

終わるまで他所に行ってるから。

リッカの場合はそれほどじゃないから気にしないのかもしれないが…

 

おっと危ない、口は災いの元。

さっさと退散するとしよう。

 

 

「…言いたい事があるなら言っても良いんだよ?」

 

逃げる前に周り込まれて殴られた。

解せぬ、俺は一言も口にしてないのに。

 

……………………………………………………………………………………………

 

 

……

 

………

 

-○月◇日。-

 

静まり返った夜中、エントランスで報告書をまとめ終えたので部屋に戻る。

 

さて。

 

計画は出来た。支部長にも報告した。

後は実行に移すだけ。

 

ベッドは占領されているのでソファーにごろりと横たわる。

早ければ一週間、どんなに遅くとも一月と待たずに全ての準備が整う見込みだ。

 

「………………………」

 

目を瞑って思いを巡らす。

浮かんでくるのは今まで生きてきた中で見てきた数多の光景。

 

守ってきた外部居住区の人たちも。

地球に残ると決めたアナグラの住人も、何も知らない極東以外の存在も。

 

ミッション帰りに何度も見たあの美しい情景も。

未だどこかで生きているであろうリンドウも。

 

両親が喰われて消えたあの場所も。

二人が確かに存在していたと証明するあの血溜りも。

 

全部、全部消えて無くなる。

終末という名の波涛に飲まれ、痕跡一つ残さずに消滅する。

 

良いのだろうか?

本当に、間違ってはいないのだろうか?

 

今ならまだ、取り返しはつく。

今ならまだ、その選択を選ばずに済む。

 

 

……

 

………

 

「………………………………………………」

 

我ながらほとほと意思の弱い人間だな。

腹を括ったと宣わっておきながら実際はこの体たらく、何とも情けない有様だ。

 

まぁ人間は機械のように割り切れないからな。

悩むのは大いに結構。それでも俺は、俺の思いに従って動くだけ。

 

良し悪しなど俺にはどうでもいい。

正誤など結果を見なければわからない。

 

寧ろ正解なんてありはしないと思っているしな。

 

だから、俺は。

俺の両親の選択が間違っていなかったのと示すだけ。

 

 

…あぁそうだ、大事な事を忘れていた。

 

シオにもちゃんと聞かなくちゃな。

 

終末捕喰の鍵にするって。

それでもいいかって、聞かなくちゃ。

 

 

出来れば、イヤだって言ってくれないかな。

 




良いか悪いか?正しいか間違っているか?
自ら問い方を間違えてしまった様子。

次で時系列が進むかもです。
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