無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.言い訳がましくないですか?
A1.おっと心は(以下略)。

Q2.本当に自分の意志で選んでる?
A2.おっと(以下略)。

Q3.拒否したら助けてくれるの?
A3.心は(以下略)。

ダイヤでも何でもない。どこにでもある硝子玉。
喋れない訳では無いけれど、ただただ何も喋らないだけ。

気付けば粉になっている。
それなら圧縮して塊に変えましょう。

美しく透き通るそれは、もはやダイヤと見分けはつきません。


無口な無口な最終日1

おやつを食べさせる。

ごはんを食べさせる。

 

お腹が空いたとねだるので。

欲しがるままに食べさせる。

 

美味しいものはもっともっとと。

食べては身体を光らせる。

 

不味ければもういいやとばかりにぷいとされるが。

まぁ保護者じゃないので好き嫌いしてても何も言わない。

 

それにアラガミは偏食してなんぼだろうし。

 

ん?他に美味しい物は無いのかって?

うーん、手持ちのレーションは一通り食べさせたしな…

 

そうだ。何だったら人間でも食べてみるか?

最後だし、少しだけなら齧ってみてもいいぞ?

 

「んー、いらない。」

 

どうして?自分で言うのもなんだか若くて生きの良いお肉だぞ?

一部の女性には大変需要のある…何でもない。

 

「おいしくない…ちがうなー。これ、"たべたくない"だな。」

 

なるほど、食べたくないか。

なら俺も無理に食わせるつもりはないな。

 

…なぁシオ。

 

()()()()()()()って言われたらどうする?

 

「んー…」

 

-いらない。-

 

どうして?食べないと死んじゃう殺されちゃうんだぞ?

 

-それでも、いらない。-

 

どうして?

 

-たべたくないから。シオ、たべたいものだけ"イタダキマス"したい。-

 

…そうか。

 

食べるイヤだ、とは言ってくれないんだな。

 

「………………………」

 

「どうしたゆーま?はかせやそーまみたいに"かんがえごと"か?」

 

あぁいや何でもない。

気にするほどの事じゃない。

 

 

まぁ、仕方ないよな。

 

俺は一介の神機使い。

ただ己が生きるために、自分の職務を果たすだけ。

 

やりたくないがな。まぁ、いい大人が我儘を言うものではない。

他人にあの光景を見せるほど、俺は悪趣味な性格はしていない。

 

そういうのは俺一人で十分さ。

"なんかよくわからないけど、気付いたら救われてました"ってくらいがちょうど良いんだよ。

 

 

"()()()()()()()()()()()()()()()()()()"なんて。

そんな奇跡、あるなら是非お目にかかってみたいものだな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部におけるとある神機使いの個室。

ソファーから身体を起こし、アラームが鳴る前に端末の時刻を確認する。

 

久々に最悪な夢を見た。

よりにもよって両親の姿がシオに代わって見えるとか。

 

夢見の悪さワーストランキングを余裕で更新だ。

少女を犠牲に生きたいと思うほど、俺は下衆に育った覚えは無い。

 

まぁ実際はそれをやろうとしているんだが。

 

両親の教えはどうなっているんだか。

教わる前に二人とも亡くしてるけど。

 

 

まぁいいや、今更俺の話なんてどうでもいい。

顔でも洗って気分をリフレッシュするとしよう。

 

………

 

うん、それにしても。

最近随分あの日の事を夢に見るようになったな。

 

いかんな、俺としたことがらしくない。

終わりが見え始めて、流石に気の一つも緩んだか。

 

こほん、とわざとらしく咳払いをする。

何とはなしに鏡に映った顔を観察する。

 

不満そうにこちらを見ている。

さっさと終われと、言わんばかりに見つめている。

 

早く早く。あと数日が待ち遠しいと。

注射が終わるのを待つ子供のように、現実を拒絶する無表情がこちらを向いている。

 

 

 

 

 

まぁいいさ。今更考えても仕方がない。

 

()()()()()。時には迷う事もあるだろうさ。

だが迷いに気付いた時、それを乗り越える事が出来るというのも()()()()()()()だ。

 

あの両親が命を対価に息子の命を救ったという選択が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

俺なら出来る。今までもやってこれただろう?

楽観的かもしれないが、()()()()()()()()()()さ。()()な。

 

それに猫かぶりの一つくらい()()()()()()()()()()()()

 

 

俺の両親の選択は、()()()()()()()()()()()()()()()

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部の最深部。

本拠地アナグラのさらに深淵、アーク計画の中枢となる人工アラガミ"ノヴァ"が収容されている場所である。

 

ふむ、女性型か。

滅びの女神とはまた洒落ている。

 

まるで大人になったシオみたいだな今なら塵に出来るんだが

 

「…では、特異点をこちらに置いてくれたまえ。」

 

支部長に促され、両手で抱き抱えた御姫様を恭しく玉座に座らせる。

途端、人口アラガミから触手のような物がシオに伸び、しっかりとその華奢な身体を固定する。

 

何かいけない物を見ている気分だ今が最後のチャンスだな

 

おっといけない。俺に少女を嬲る趣味は無い。

こんな感情、誰かに聞かれた日には性的嗜好を疑われてしまう。

 

まぁいいや。

ここまでくれば残りは消化試合のようなもの。最終フェーズが終わり次第、終末捕喰が地球を覆って終わりである。

 

支部長を見る。

いつもの冷静な表情は崩さないものの、「ようやくここまで来た」と感極まったように言葉を漏らしている。

 

シオを見る。

特殊な鎮静剤を打たれて眠る彼女は、もう食べられないと幸せそうな寝言を漏らしながらスヤスヤと寝息を立てている。

 

…もうすぐ、それも無くなるんだがな。

まぁ覚悟の上だ。仕方ない満足か?このアラガミ殺しめ

 

これも人類が生き残るためには仕方ない事。

それにだ、コウタ達にこんな役目は任せられないからななるほど、選んで殺すのは許されるんだな

 

ゴメンなシオ。

また美味しい食べ物見繕って持っていくから、ちょっとだけ我慢してくれ。

 

………

 

「…正直に言えば。君は私を裏切ると思っていた。」

 

シオの頬を撫でている中、後ろから支部長に声をかけられる。

 

「だが蓋を開けてみれば、君は誰よりも私の理念に賛同し、最後まで力を尽くしてくれた。…ありがとう。心の底から、私は君の尽力に感謝する。」

 

…何言ってるんだこのオッサン。

俺が何時アンタの理念に賛同したというんだ?

 

…あ、もしかしてこのチケットか?

これを受け取ったから変な勘違いをされてしまったのか。

 

 

 

 

 

うん、丁度いい頃合だ。

用済みだし、()()()()()()()()()()()()()

 

あ、でもこれ一応値打ち物なのか。

確かに持ってさえいればアラガミのいない新世界へ行くことが出来るんだものな。

 

じゃあ支部長にあげるよ。

ただ捨てるのももったいないし、息子さんを船に乗せてやってくれ。

 

もう息子の分は確保してる?

おいおいオッサン、身内贔屓は不正だぞ。

 

まぁいい、それならアンタが乗ればいいよ。

どうせ自分の分は確保していないんだろ?

 

その方が、俺みたいな親殺しが乗るよりよっぽど有意義だろ。

 

()()()()、支部長へチケットを投げ渡す。

 

「…何のつもりかな?これが無いと、箱舟には乗せられないのだが。」

 

怪訝そうに質問する支部長に、一名キャンセルだと何でもないように答えて見せる。

驚きながらも理由を聞かれたので、どうせアンタの席は取ってないんだろと答えてあげた。

 

 

何を図星を付かれたって顔をしてるんだか。

真面目君の行動は読みやすいってだけだよ。




無口さんの貴重な発言(咳払い)シーン。

奇跡を信じられないお年頃。余裕が無いから仕方がない。

あと一押し。それなら戦う理由とかは如何です?
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