無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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※半分幕間です。

Q1.図星を突かれた?
A1.喋っていることに気が付いた。

Q2.裏切ると思ってたんじゃ?
A2.このタイミングは予想外。

Q3.アルダノーヴァは?
A3.呼び出すには相手が近過ぎる。

無口な無口な饒舌家。
ブラックジョークが大好きな、どこにでもいる一介の神機使い。




無口な無口な最終日2

-Side_ヨハネス・フォン・シックザール-

 

「…いや、何もわかってないじゃないですか。支部長、もしかして意外と天然なんですか?」

 

それはこちらの台詞だ。

終末を前にようやく口を開いたかと思いきや、紡がれるのは理解に苦しむ思考の数々。

 

「ノアの箱舟、大いに結構じゃないですか。生き延びると自分で決めた千人を助けるために他の全てを贄にする。それの何処がいけないんです?」

 

-…選べなかった人達?知った事じゃありませんよそんな事。生憎俺は神様じゃありませんから。-

 

淡々と、無表情のまま言葉を告げられる。

まるで己の罪を突き付けられるかのように。どこまでも冷酷で、道理的に事実のみを語られる。

 

「まぁ戻ってきた時、本当にアラガミがいなくなっているのかは知りませんが…その時はもう一回アーク計画をやればいいんじゃないですか。今回は億単位ですけど、次は千もいかないでしょうし。」

 

-数が増減しようが今更大して変わりませんよ。それに一回やった後だから最初より気楽にやれるでしょうし。-

-俺が言うんだから間違いありません。何しろ気付いた時には両親二人が生贄済みですからね。-

 

ハッハッハ、と。まるで冗談を言うかのように()()()()()()()()()、神機使いが言葉を紡ぐ。

 

「まぁ、今ならまだ間に合いますけどね。どうします?命令とあらば、今すぐこれを塵に変えますけど。」

 

青い瞳がこちらを見つめながら問いかける。

鉄仮面と評される無表情に取り付けられた、感情という温度が込められていない青い瞳。

 

ここに来てようやく自分の不明を恥じる。

よもや生かすべきと選んだ人類の中に、このような人の皮を被った得体の知れない何かが潜んでいようとは。

 

おまけにそのような存在が、実に人の心を抉る甘美な誘いを持ちかけてきているものだから始末に負えない。

 

覚悟はあるのかと。

ここから先の後悔は効かないと。

 

だから、ここで引き返さないかと。

 

故に私は--

 

 

 

 

 

「その必要は無い。引き返せないから進むのではない。私は、自分の意志を持って前へと進むのだ。」

 

 

 

 

 

悪魔のような誘惑に、はっきりとした声で答えを返す。

 

多数の犠牲、大いに結構。

人類を次なる世代へと繋ぐ。そのために屍の山を築き上げてでも、命を紡いでみせると私は誓ったのだから。

 

「不器用な人ですね支部長。そんなだからソーマにも嫌われるんですよ。」

「君にだけは不器用とか言われたくないな。大体口が利けるというのなら、もっと早くからそう言いたまえ。」

「いや、そもそも喋れないと言った覚えは無いんですがね。」

「だからそういう所だと言っているのだ。」

 

無表情のまま言われた言葉に、思わず感情的に言葉を返す。

当たり前だ。喋れないと思っている相手に、わざわざ喋れないのかと聞く人間など見た事が無い。

 

それを言うに事欠いて"言った覚えは無い"ときたか。

僅か数分程度のやり取りではあるが、ここに来て随分と彼の印象が目まぐるしく変化したように感じる。

 

良い機会だ。これで最後になるのだし、もう少し彼との会話を楽しみたいところだが…

 

-ビーッビーッビーッ!-

 

唐突に地下空間にアラーム音が鳴り響く。

 

いつの日か渡した、彼専用のミッション受注端末から響く音。

失礼、と一言断ってから彼が端末を覗き込む。

 

「何事かね?」

「外部居住区にアラガミが侵入したみたいです。まぁ大半の神機使いは()()()ですから仕方ないですね。」

 

やれやれと呆れたように呟き、彼が私に背を向ける。

 

「行くのかね?ここまでくれば終末捕喰までそうかからない。今からでも船に乗る方がいいのではないかね?」

「嫌ですよ。ただでさえ選べなかったあの日の事を気にしているのに。それに言ったじゃないですか。数が増減しようが変わらないって。」

 

-おまけに今度は親どころか、シオも市井の人達も犠牲にして…-

-それでのうのうと生き延びた日には、冗談抜きで親から勘当されてしまいますよ。-

-まぁ小さい頃から親無し子で育ったんで、勘当されているのと変わりないんですけどねハッハッハ。-

 

「…理解できるからこそ流せるが。些か、君の冗談は寒すぎるな。」

「ひどい。どこにでもあるブラックジョークじゃないですか。」

「限度があると言っているんだ。この期に及んで言うのもなんだが、よもやペイラー以上に空気の読めない人間がいるとは思わなんだ。」

「あんな胡散臭い人と一緒にしないでください。大体あの人、未だにシオを利用して何をしようとしているか話してくれていないんですよ?」

 

-そんな人間、信用できるわけないじゃないですか。-

-まぁフェンリル所属の科学者なんて、最初から信用なんてしていませんが。-

 

…冗談だろう?一時期とはいえ、君は彼の猟犬だったのだろう?

彼の計画も理解しないままに、あそこまで私に疑念を抱かせるような報告書を仕立て上げていたのか?

 

「…君という人間がわからなくなってきたよ。何だったら終末捕喰を一日先延ばしにしてでも、君と雑談でも交えたくなってきたくらいだ。」

「俺は構いませんよ。ミッション明けになりますが…延ばしますか?」

「いや、いい。どの道その前にソーマが乗り込んでくるだろうさ。」

「ですね。」

 

会話が途切れ、彼が歩み出す。

残されたのは特異点をセットされたノヴァと私の二人きり。

 

「あ、そうそう。最後に一つ。」

 

彼が足を止め、向こうを向いたままに言葉を続ける。

 

「最後なんだし、ソーマにちゃんと語りかけてあげてくださいよ。何だったら、一方的に話すだけでも構いませんから。」

 

-俺みたいに、親の最後の言葉もわからず引き摺らせるよりはマシでしょう?-

 

 

「…助言、心から痛み入る。それではさらばだ、極東古参の神機使い。」

「えぇ。今期の査定、期待してますよ。」

 

……………………………………………………………………………………………

 

-Side_部隊長-

 

支部長と別れ、アナグラに続く道を戻っていく。

 

ミッション受注用の端末を再確認する。

外部居住区にアラガミが多数侵入してきているとの事だが、思っているより状況は深刻な様子。

 

まぁ大半の神機使いは今頃ロケットの中だからな。

シオの影響でアラガミが活性化しているとの事だし、残りの面々だけじゃ流石に防ぎきれないか。

 

というか今誰が残っているんだ?

 

第一部隊…は多分支部長のところへ行ってる。

そういや普通に別れてきたけど支部長大丈夫か?

ソーマがキレて殴りかかりでもした日には、生身の支部長じゃスプラッターまっしぐらな気がするが。

 

まぁ今更戻るのも恥ずかしいしどうでもいいか。

あの人の事だし、切り札の一つも持ってるだろう。多分。

 

防衛班は確かカレルとシュンが賛同派…あぁ、そういえばブレンダンもそうだったか。

正直意外だったが、まぁ覚悟の上なら俺がとやかく言う筋合いはない。

 

となると戦力として期待できそうなのはタツミにカノンにジーナ、あとは志に燃える何人かか。

戦力不足もいい所だな。

 

対する敵は…これは酷い。

多数の小型に中型がそれなり、何なら大型もちらほらか。

 

これ普通に詰んでるな。

アナグラ捨てて逃げた方が生存率高くないかこれ?

 

まぁいいや、これも立派なお仕事だ。

行けと言われたら行かざるをえないのが下っ端の辛い所である。

 

武器庫に立ち寄って装備を補充。

普通はアラガミ相手には通じない物ばかりだが。物は使いよう、俺にかかればどうという事は無い。

 

神機無しでアラガミを殺す方法は、腐る程想定したからな。

 

その後自室に戻ってしばしのティータイムと洒落込む。

流石にアリサもサクヤも姿は無かった。

 

最後くらいレディとお茶したかったところなんだが。

現実って厳しいな。

 

 

…さて。

 

ようやく最後だ。長かったような短かったような。

これでいよいよ最後かと思うと、逆に諦めで頭が澄み渡っていくような気がする。

 

敵はアラガミ。

俺の両親を喰らってくれた、忌々しいクソどもだ。

 

味方は…まぁ数えなくてもいいか。

どうせ大半はもうすぐお空の上へと旅立つし。

 

フフフ。

 

フフハハハ。

 

アハハハハハハハハハハハハ。

 

良いな、良いな。

まるで仇のバーゲンセールという奴だな。

 

まぁ、今となっては別にどうでもいいんだが。

どうせ今日で皆死ぬんだし。

最後くらい、仇討ちの一つでもしておこうかというレベルの話。

 

いかんな、俺としたことがらしくない。

終わりが明確に見え始めて、流石に気の一つも緩んだか。

 

こほん、とわざとらしく咳払いをする。

何とはなしに鏡に映った顔を観察する。

 

もうその表情からは何も感じない。

 

自分の意志と言いながら、他所にばかり理由を求めて。

自分で選んだと言い張るままに流された結果、全てを諦めてしまった瞳がこちらを見ている。

 

まぁいいさ。今更悔やんでも仕方がない。

 

幸い、後の事を考える必要は無く。

最後まで人類を守るという大義名分がここに置いてある。

 

選んで生かす殺すのが上等とは言わないが。

それでも人のために世のために、俺が思う最善を選んで生きたと胸を張れる。

 

うん。やはり俺の両親の選択は、()()()()()()()()()()()()()()

 

だから最後くらい、思う存分好きに生きようか。

何、別に難しい話じゃない。

 

"終末捕喰が起きたけど地球は無事でした"。

"シオも死なずに済みました"。

 

そんな奇跡を夢に見て、命尽きるまで戦ってみるだけ。

 

 

 

 

 

まぁ…

 

 

 

 

 

そんな奇跡、最初から期待なんてしちゃいないがな。

それよりも一匹でも多く、仇を塵にして満足感を満たすとしよう。

 




二週目のオーバーフローは起きなかった模様。
そもそも安全装置では無いので仕方ない。

選んだ上で死を確定させるという、自分の地雷を全て踏み抜いてしまった人。
こんなですが、自分の事はよくわかっているらしいですよ。
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