無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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※一部色付きが多いので苦手な方はご注意。

Q1.サクヤ達とすれ違わなかった?
A1.武器庫寄ってる時にニアミスしました。

Q2.一緒に戦わないの?
A2.そんな資格が無いと思ってる。

Q3.理性壊れてない?
A3.壊れてないけど正しくないだけ。

誰かの命を天秤に掛けて動くのは、この人には荷が重過ぎただけ。



無口な無口な最終日3

空を見上げると、無数の宇宙船が空の彼方へ飛び去って行く。

 

うん、中々壮観な光景だ。

アーカイブの映像では見た事はあったが、いざこうして目の当たりにすると迫力がまるで段違いである。

 

空から見下ろす地上はどんな感じなのだろうか?

 

もし奇跡が起きたのなら、今度コウタかブレンダンにでも聞いてみよう。

カレルやシュンだと情報料だとかいって金取ってきそうだからな。

 

ソーマ達やサクヤ達も今頃は支部長と御対面しているところか。

 

ここまでくれば時間なんてさほど気にする必要もなし、お互い想いの旨をぶつけるといい。

もしかしたら肉体言語になるのかもしれないが、まぁそれはそれ。

 

俺も最後に雑談の一つもしたかったがな。

あそこで終わらせられなかった時点でそんな資格はどこにもないか。

 

まぁいいや、過ぎた事を思ってもしょうがない。

目の前の現実を見るとしよう。

 

視線を空から下げてみれば、そこにはアナグラへと一目散に避難する人達の姿。

 

キャパシティの関係上、普段は避難のために収容するなんて事は無いのだが。

残った誰かがゲートを開放でもしたのだろう。

 

逃げ惑う人達を横目に見ながら、神機を担いで外周へと歩みを進める。

何気なしに列を見ながら進んでいると、何時ぞや助けた少女がこちらを見ていた。

 

母親に叱られながら。止まる事無く進みながら。

怯える目で身体を震わせながら。不安そうな瞳が真っ直ぐこちらを見つめている。

 

ひらひらと軽く手を振って答えてあげる。

何でもないと、心配するなというように答えてあげると、ようやく少女は列の流れに戻っていく。

 

うん、あんな不安そうな目をされちゃ、お兄さんも最後まで頑張らざるを得ないな。

 

…本当に。シオにも、イヤだって言ってほしかったな。

 

 

 

 

 

まぁ。

 

 

 

 

 

今となってはどうでもいいや。

今更憐れむ資格なんて俺にはない。

 

……………………………………………………………………………………………

 

超視界錠60を飲む。

研ぎ澄まされた視野に、うごめくアラガミの姿が映る。

 

 

戦闘準備を開始する。

 

スタミナ増強剤Sを飲む。スタミナ活性剤改を飲む。

筋力増強錠90改を飲む。体躯増強錠90改を飲む。

体力増強剤Sを飲む。強制解放剤改を飲む。

 

人のいなくなった居住区で餌を求めて徘徊するアラガミの群れ。

準備も滞りなく終わったので、後ろから襲い掛かって塵へと変える。

 

うん、昔やったVR訓練を思い出すな。

そう言えばあの時も最初はコイツ等からだったか。

 

不意に物陰からオウガテイルが飛び掛かってくる。

流して後ろに回り込み、神機を振り下ろして叩き割った。

 

…あの時と違って手に残る感触が心地良い。

仮想空間ではないのだから、まぁ当たり前ではあるのだが。

 

物足りない。音も色も、何もかもが足りないな。

一回だけじゃ物足りないが、今日は数の心配をする必要はない。

 

より取り見取りとはまさにこの事。

どれから八つ裂きにするか目移りしてしまうな。

 

武器もアイテムも十二分。

おまけに今度は大義名分も揃ってる。

 

両親を犠牲にしている時点で、俺に誰かを犠牲に生き伸びる資格はない。

両親を犠牲にしている時点で、俺に誰かを犠牲の道連れにする資格はない。

 

誰かが犠牲になる時点で、俺に誰かを救っていい資格など無い。

意思ではなく、物の道理に沿う場合に限り、従う事が許される

 

だが。

 

両親が犠牲になった時点で、俺にはアラガミに復讐する資格がある。

今この場において、それは逃げ惑う人々を救う事に繋がる。

 

目の前に迫る脅威から誰かを助ける。この上なくわかりやすい理由。

あの日抱いた感情は、ようやく両親に顔向けできるそれと相成った訳だ。

 

フフフ。

 

フフハハハ。

 

アハハハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハハハハ

 

良いな、良いな。

誰かのために戦えるとは、こんなにも気持ちがいい物なのか。

 

…あぁそうか、ようやく理解が追い付いた。

 

俺の両親は、こんな素晴らしい人間を助けたかったんだな。

 

アーク計画では、シオや選ばれなかった人達を。

この場においては、()()()()()()()()()()()()()を。

 

千人を助けるために、この手で殺したように。

残された人たちを助けるために、この手で殺しているように。

 

全ては誰かを救うため。

()()()()()()()()()()()()、それでも尚突き進める、素晴らしい意志を持った人間を。

 

 

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

 

 

…狂った感情?

 

…俺はその感情を、狂っていると感じるのか?

 

…俺の両親は、狂っていたから俺を助けたのか?

 

…いや、いい。

 

正直疲れた、もう考えるのは止めにしよう。

 

……………………………………………………………………………………………

 

小型アラガミの首を刎ねる。

オラクル細胞で構築された強靭な生命が、死にきれずに最後の抵抗を試みる。

腹を神機で貫いて、縦に裂いたところでようやく息絶えた。

 

次。

 

中型アラガミの両足を叩き折る。

膝から落ちて地面に這いつくばるその姿は、まるで助けを求めているかのように見えなくもない。

お前の命乞いは求めてないと、頭を叩き割って絶命させた。

 

次。

 

大型アラガミが真っ向から突っ込んでくる。

口内の薬を一気に飲み込み、効き目が表れるのと同時に真正面から両断する。

裂けた身体に神機を抉り込み、コアを引き抜いて霧散させた。

 

………

 

誰かがアラガミと戦っている。

注意がそれてるうちに周り込み、何時ものように後ろから横一文字に斬り飛ばす。

 

何か話しかけてきているようだがよくわからない。

悪いが人の言葉で話しかけてくれ。

 

次。

 

誰かがアラガミと戦っている。

後ろから腹を貫いて動きを止め、彼女の射撃の的にしてあげた。

 

何か話しかけてきているようだがよくわからない。

悪いが人の言葉で話しかけてくれ。

 

次。

 

誰かがアラガミと戦っている。

影から足を切り崩してダウンさせ、急所を彼女の爆発弾に曝して吹き飛ばした。

 

何か話しかけてきているようだがよくわからない。

悪いが人の言葉で話しかけてくれ。

 

………

 

…アラガミが見当たらない。

ミッション用の簡易レーダーを確認したところ、反応は残っているがどれも消え入りそうなほどに小さい。

 

一番反応が大きいのは、ちょうど俺の近くに居る三つの点か。

固まってる辺り小型種だろうが、まぁ小さかろうがアラガミはアラガミだ。

 

 

視界に件のアラガミを捉える。

ほぉ、この期に及んで()()()()()()()とは珍しい。

 

神機みたいなのも持ってるし、いよいよシオそっくりだ。

まぁ似てるからと言って見逃すつもりは毛頭無いがな。

 

シオは助けてやれなかったくせに、シオに似ているからと助けていい道理などない。

むしろシオに似ているという事は、それはつまりシオになれなかったアラガミ。

 

だから、殺す。全ては誰かを救うため。

合っているかはどうでもいい。それだけわかっていれば、他はもう何だって構わない。

 

戦闘準備を開始する。

初見のアラガミ相手に油断はしない。

 

超視界錠60を飲む。

既に過剰摂取でまともな視界になっていないが、認識は出来ているので問題はない。

 

スタミナ増強剤Sを飲む。スタミナ活性剤改を飲む。

何だかアラガミがこちらに話しかけてきているような気がする。

 

正直何を言っているのかわからない。

アラガミ相手に言うのもなんだが、対話したいならまず言葉を覚えてきてくれ。

 

シオで慣れているし、話せるなら喜んでおしゃべりしてやるよ。

 

筋力増強錠90改を飲む。

体躯増強錠90改を飲む。

体力増強剤Sを飲む。

 

アラガミの一体が後ろに下がり、身構える。

ありがたい、正直結構限界だからな。

 

吐き気を催し、その場に蹲って嘔吐する。

まぁ即効性の薬で既に効果は出ているから問題は無い。

 

最後の薬を手にしたところで先程の一体が駆け寄ってくる。

 

好機と見えたか?

甘い、既に()()()()()()()()

 

強制解放剤改を飲む。

身体が躍動する感覚と同時に、神機を切り上げるために上を向く。

 

 

 

 

 

白い、どこまでも白い何か。

 

アラガミに神機が食い込む直前。

それがゆっくりと空に昇っていくのが見えた。

 

…あぁそうか。

 

奇跡は、起きたんだな。

 




奇跡は何時だって間に合ってこそ奇跡と呼ぶ。
終末捕喰が地球を覆わなかったので、無事この人の苦悩の前提が崩れました。
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