無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.戦っていた神機使いは?
A1.残っていた防衛班の面々。

Q2.赤目の正体は?
A2.アドレナリン全開&オーバードーズ。

赤目はもれなくリミットブレイクの証。
なお正しくメンタルブレイクしているので弱り気味。

Q3.何を見てアラガミと?
A3.偏食因子入りは皆アラガミ。

Q4.自分もでは?
A4.両親が助けたのはまごう事無き"人間"。

鏡を見ると自己矛盾で(ちょっとだけ)冷静になれる。


無口な無口な終末後1

--ミスった。

 

死の間際に己の失態を理解し、言葉になるより早く思考がよぎる。

思えばコイツに先程話しかけた時点で異常な状態だったのだと気付くべきだった。

 

表情こそはいつも通りの無表情。

だがその鉄仮面に宿していたのは、中央に浮かぶ青い瞳さえ飲み込む、血のような赤に染まった眼。

 

話かけたはしたものの二の句が止まる。

迷い悩んでいる内に、次の獲物を求めて去ってしまった神機使い。

 

そして先程再会したものの、一目見て最悪の状況だと理解する。

 

先程こちらを助太刀してくれた赤い目をした神機使い。

それがこちらの姿を認識し、その上で明らかな戦闘態勢を取っている。

 

あらん限りの叫びをあげて声をかけるが、神機使いには届かない。

こちらの声を全て無視し、何か薬のようなものの服薬を続ける。

 

恐らく十中八九、支給される強化薬の類。

何故このタイミングでと動揺する二人に声をかけながらも、自身も神機を身構えて備える。

 

どういう状態かはわからないが、間違いなくアイツはこちらに襲い掛かろうとしている。

ならばこちらも無防備でいる訳にはいかない。

 

会話は不可能。ならば力づくで止めるしかない。

 

そう、覚悟を決めた矢先に。

 

神機使いが俯き、嘔吐する。

初めて聞いた彼の声…というより、慟哭のような呻きと共に。

 

--今だ。

--今しかない。

 

体勢を崩し、視線も切られた今ならば。

降って湧いた好機に後ろから聞こえる制止も無視して距離を詰め--

 

--「大丈夫か」と、月並みな言葉をかけたタイミングで気付いてしまった。

 

コイツは、()()()()()()()()()()()()()

 

-ガリッ-

 

何かが噛み砕かれる音がする。

同時にコイツの纏う空気の質が明らかに変質する。

 

神機使いの首が跳ね起き、赤く染まった青い瞳に睨まれる。

しまった、と口にしたがもう遅い。

 

古参の神機使いが愛用するバスターブレードが、刀身を翻して胴体に迫る。

防御はもう間に合わない。

 

あぁ、せめて最後くらいヒバリちゃんと…

 

 

……

 

………

 

…来るであろう衝撃がこない。

何事かと目を開けると、胴に触れる寸前で神機が止められている。

 

 

いつの間にか、神機使いの瞳から狂った赤色は消えていた。

 

……………………………………………………………………………………………

 

…身体が重い。

 

いや、重いというより動かない。

それに頭も痛いし吐き気もする。

 

(どうなってるんだ!リンクエイドの効果が無いぞ!)

 

リンクエイド…あぁそうか、俺やられたのか。

これは恥ずかしい、普段古参を気取っておきながら、あの程度のアラガミの群れに遅れを取るとは。

 

(…信じられない。多分だけどこれ、強化薬の過剰摂取よ。外傷じゃないからリンクエイドじゃ効果が無いわ。)

(過剰摂取…それじゃまずは胃の中の薬を吐かせなくちゃ!)

 

何だ、お前たちもいたのか。

防衛班の面々がお揃いとは、最近にしては珍しい事もあるものだ。

 

というか強化薬の過剰摂取?

…そういやどうせ最後だと思ってバカスカ飲みまくった気がする。

 

(吐かせる…ならこれが手っ取り早い!後で謝るから許せよ!)

(あっ、ちょっと待ってタツミ…)

 

タンマ、声だけでも察しが付くぞ。

悪い事は言わないから止めておけ。

 

-ガンッ!-

 

ほらな?言わんこっちゃない。

 

(な、何ですか今の音!?)

(やっぱり…この人、全身銃器と防弾チョッキで固めてるのよ。鳩尾を殴るなら、まずは脱がさないと話にならないわ。)

(そ、そういうのは早く言ってくれ…)

 

言う前に殴ろうとしといて何て言い草だ。

まぁいい、痛い思いしてるみたいだしチャラという事にしておこう。

 

それにしてもマジで指一本動かせん。

年甲斐も無くハッスルし過ぎたかな。

 

俺はまだまだ若いけど。

この中だとカノンを除けば一番年下だし。

 

おっといけない、タツミに年齢の話をするのは失礼だったな。

何しろヒバリとは結構歳の差があr-ドゴッ!-

 

鳩尾を殴られて意識が遠のく。

そう言えば吐かせるとか何とか言ってたな。

 

決して心が読まれた訳ではないと信じたい。

 

 

 

 

 

 

……

 

………

 

目が覚めると、そこは極東支部の救護室。

壁にかけられた日付がわかるタイプの時計に目を向けると、日付はとっくの昔に変わっていた。

 

見慣れたとまでは言わないが、いつもと変わらない周りの風景。

どうやら終末は乗り越えたらしい。

 

あの世は意外と殺風景なんだと言われたら流石に知らないが。

 

「………………………」

 

 

…うん。

まぁ、死のうとか死にたいという気はこれっぽっちも無かったんだが。

 

 

生き延びちゃったか。

()()()()()()()とは恐れ入る。両親に顔向け出来ないな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部の救護室。

少し前までは箱舟送りにしてあげた方々がいらっしゃった筈だが、今は俺一人の貸し切りである。

 

というかまず医者がいない。

ついでに言うなら看護師もいない。

 

アーク計画のせいで主要な人員がごっそり休暇を取っているためである。

おかげで入院患者だというのに身の回りの事は自分でしなくてはいけない有様だ。

 

ちくしょう、俺は怪我人だぞ。

何で入院してまで自分で自分のお世話をしなくちゃいけないんだ。

 

怪我してるのかと言われたらまぁ微妙な所ではあるが。

 

入院の理由はリミッターを吹き飛ばして暴れた事による全身筋肉痛と、強化薬の過剰摂取によるオーバードーズ。

徹頭徹尾自業自得なので、これを怪我や病気と言い切るには我ながら少し戸惑ってしまう。

 

治療にしても対症療法を取りながらの休息がメイン。

正直"自室で寝てろ"と言われてしまえばそれまでである。

 

あえて自室療養する理由も無いので居座っているが。

 

あーあ、誰か残っている人で看護してくれる人いないかなぁ。

例えば"銀髪"で、"年上の余裕があって"、"どこか謎を感じさせる妖艶な美しい女性"とか。

 

「…おっと、もうお目覚めだったかな?予定ではあと300秒は夢の中だと思っていたんだが。」

 

閑話休題、そろそろ現実を直視しよう。

明らかに男性とわかる声色を聴きながら夢想し続けられるほど、俺の心は強くない。

 

先程も言ったが医者がいない。

が、医療の心得がある人間という意味で言えば、残っていない事もない。

 

アーク計画に乗らず地上に残り。

医療の知識は元より、化学的な方面にも明るい逸材。

 

「さぁ、お薬の時間だよ。何、ちょっとした回復促進剤さ。」

 

怪しい緑色の液体で満たされた注射器を見せられながらそう告げられる。

回復弾の色だと言われればそれまでだが。

 

治療を受ける患者というより、新薬実験のモルモットと言われた方がしっくりくるな。

まだ身体が本調子じゃないから逃げようもないし。

 

これが北欧とかなら美しい戦女神がお世話してくれるって話なのに。

オオグルマ先生の時といい、何で極東はわざわざオッサンに看護させたがるのか。

 

頑張ってアナグラ防衛したというのにこれである。

現実って厳しいな。

 

 

まぁ奇跡の代価だと思って我慢するか。




苦悩する理由が崩れたので少しずついつもの調子に。
防衛班の三人もこの人の声を(一応)知る人の仲間入り。

一区切りまでもう少し。
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