無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.ロシアンクッキング?
A1.サクヤさんが付いてるのでノーマルクッキング。

Q2.お仕置きタイム?
A2.わちゃわちゃスキンシップ。

華やかな女性陣Side。
ルーキーちゃんは距離感のつかみ方がちょっとアレな子。



無口な無口な後日談1

-Side_アリサ-

 

「…なるほど。行方を眩ました君たちが、どう偏食因子の投与をやり過ごしていたのかと気を揉んでいたのだが。」

 

検査機器の出力結果に目を通しながら、得心したという風に話を続ける榊博士。

 

「偏食因子の活性レベルも正常値。差し当たって気になるようなところも見当たらないね。」

「じゃあ…」

「うん、検査結果は問題無し。明日から通常通り過ごしてもらって結構だアリサ君。」

 

その言葉にようやく人心地ついたような気になり、機器から降りて身体を伸ばす。

 

あの戦いが終わった後。

私とサクヤさんは榊博士に引っ張られるようにして、すぐさま精密検査を受ける事になった。

 

理由は単純。私達は潜伏期間中、偏食因子の定期投与が出来ていなかったと思われていたからだ。

アラガミ化を防ぐために急ぎ偏食因子の定期投与を行い、場合によってはそのまま治療のため入院する手筈まで話が進んでいたようで。

 

「しかし携行キットとは盲点だった。言われてみれば、確かに頻繁に特務を請け負っていた彼ならいくらかストックを持っていてもおかしくは無い。何しろ彼はヨハンが持つ手札の中でも指折りの猟犬だったからね。」

 

まぁ結果的に全て博士の杞憂で事は済みましたが。

簡易的とはいえ定期的に偏食因子の投与がなされていた事がわかった博士の顔には珍しく目に見えて安堵が浮かんでいて。

 

その後はそれまでの緊迫した空気はどこへやら。

雑談交じりにトントン拍子にスムーズに検査が進んでいきました。

 

「そんな彼をどうすればこちら側に引き込めるものか。私も一時期は相当頭を悩ませたものだよ。その最適解がシオと同じように食べ物を用意するだけで良かったというのは中々にパンチの効いた洒落ではあったが。」

 

自嘲気味に苦笑しながら博士は言葉を続けます。

 

「確かに私はアラガミと人の共存を夢見て色々動いていた訳だが…まさか引き込む手段まで共存出来たとは。星の観測者の異名を持つ私の目を持ってしても、流石にあの回答で良いのかと最後まで半信半疑のままだったよ。」

「いや、そこに関しては一緒にしないでほしいんですけど…というか本当にあの人、食べ物を横流ししてもらったというだけでシオちゃんの事秘密にしてたんですか?」

 

呆れ半分、信じられないと言った具合に返した私の言葉に博士は力強く頷いて見せます。

 

「事実、ヨハンがシオの存在に気付いたのは相当後になってからだ。そして君達が彼に匿われたのと時同じくして、彼はようやくシオの存在に気が付いた。まるで誰かと取引でも交わしたかのように、ね?」

 

意地悪く言われてしまい言葉が詰まる。

それを言われてしまっては私にはもう立つ瀬が無い。

 

先走った結果あっという間に制圧されてしまった上、刃を向けた本人に助けられてしまったのだ。

そんな私には皮肉も文句も言える資格などありはしない。

 

「まぁ、流石に快適な捕虜生活とは言えなかったみたいだがね。何しろ着る物にも随分不自由していたとリッカ君から聞いて「セ、セクハラですよ榊博士!」」

 

唐突に紡がれる発言に思わず横槍を入れてしまった。

 

仕方ないじゃないですか、好きでこんな体型になった訳じゃないんです。

というかよくよく考えてみれば。リッカさんに何とかしてもらうまで私、普通に男性のシャツを着て過ごして…

 

うん、これ以上考えるのは止めましょう。

 

「ハッハッハ、失礼。年を取るとどうにも、この辺の機微に疎くなってしまってね。」

 

わざとらしく、悪びれも無い笑い声で謝罪されます。

これがあの人だったならリーダーのように拳で訴えるところなんですが。

 

「まぁふざけるのはこのくらいにして本題に入ろう。…アリサ君。君は、彼にお礼をしたいと考えてたりはしないかな?」

 

唐突に振られた話題転換。

何時ぞやサクヤさんに見せていた、胡散臭い表情を浮かべながら榊博士が続けます。

 

「何、今回の一件で彼は信用に値する人物だという事がわかった。…にも拘らず、悲しい事に彼は私の事をそれほど信用していないようなんだ。」

 

それは、まぁ…

今はシオちゃんの件がありましたからそこまでではないですけど、それ抜きで博士の事を手放しで信用できるかと言われたら少し言い淀むところはありますし。

 

というか自覚があるんでしたら、もう少しその胡乱な言い回しを止めた方がいいと思うんですけど。

 

「しかし幸い、彼には付け込めるポイントがある。ヨハンなら一笑に付していたところだろうが…幸いな事に、私達はこの上なくこれを実感しており、かつ既に何度か活用させてもらっている。」

「あの…もしかしなくてもその弱点って…」

 

つい言い淀みつつも聞き返してみる。

正直言ってあまり当たって欲しくないというのが本音なんですが。

 

だってそうでしょう?今回の件に当てはめれば、あの人は()()()()()()()()()()()()って事になるんですから。

そんな人間、逆にこっちが怖くて信用できませんよ。

 

「"食べ物で釣る"という言い方はさておき…食事を共にするというのはコミュニケーションの取り方としては悪くない。まさに"同じ釜の飯を食う仲間"というやつだね。」

「物は言いようですね。まぁ私としても、あの人にお礼をするというのは吝かではありませんが…」

 

色々ありましたが面倒を掛けてしまったのは確かですし。

 

最後の最後まで何も言わず、自分だけで完結させて銃まで撃ってきた事には少し思う所もありますが。

まぁその辺りは今度リーダーも交えてじっくりお話させていただくとしましょう。

 

「決まりだね。それではアリサ君、早速で申し訳ないのだが…一つ、頼まれ事をしてくれないかな?」

 

………

 

「お疲れアリサ…って何か暗い顔をしてるけど…もしかして何か異常でもあったの?」

「お疲れ様ですサクヤさん。いえ、特に異常があった訳ではないんですけど…」

 

 

 

 

 

「…サクヤさん、料理とか得意です?」

「え?人並みには出来ると思うけど…突然どうして?」

 

……………………………………………………………………………………………

 

-Side_ルミナ-

 

「…やっぱり何度聞いても納得がいきません。私、完全に蚊帳の外じゃないですか。」

 

ここは極東支部のエントランスホール。

ロビーの一角でモキュモキュとクッキーを頬張りながら不満を言う私に、アリサとサクヤさんは困ったような苦笑を浮かべます。

 

「通信してきた時、実は同じフロアの部屋に居たって何ですか。それならそうと一言くらい言ってくれたっていいと私思うんですけど。」

 

シオを取り巻いていたアーク計画の件が幕を閉じ。

帰ってきた二人から私の知らない裏事情を色々聞いた。

 

二人が行方をくらますまでに起きた事。

指名手配され、その後私達に合流するまでに起きた事。

 

「ごめんなさいね。あの時は私達もまだ色々余裕が無かったの。」

「それにあの人に匿われてた以上、勝手に他所へ助けを求める訳にもいかなくて…」

 

言いたい事はわかる。わかるが、悔しい物は悔しいのだ。

曲がりなりにも二人が所属する部隊のリーダーなのに、ここ一番の時に何一つ知らされなかったのだから。

 

「…あの人ホント意地悪ですよね。私には支部長側だってあからさまに匂わしてきたくせに、肝心の二人の事は何も教えてくれないんですから。」

 

二人の事を聞いても何も答えようとしない。

かと思えばこれ見よがしに例のチケットを落として見せてくる。

 

挙句、さらに強く問い質せば"自分、言葉を喋れませんけど何か?"と言わんばかりの無表情を返され。

最終的にはリッカさんに割り込まれる形でうやむやにされてしまいました。

 

おかげさまで"喋れないことを悪用している場合"の感覚に確信が得られるようになりましたが。

まぁ今はとりあえず置いておきましょう。

 

「今にして思えばあの時点で既にリッカさんもグルだったんですね。私、もしかしてあの人に嫌われてます?」

「そんなことは無いと思うけど…それにリッカの場合は、ねぇ?」

「レンチで殴って聞き出したとか言ってましたもんね…」

 

何だリッカさん、やっぱり私が取ろうとした方法は間違っていないじゃないですか。

寧ろ道具を使っていない分、私の方がずっと優しい聞き方なのでは?

 

前例も確認出来たことですし。

次からは手っ取り早く肉体言語で問い質すことにしましょう。うん。

 

 

…ところで。

 

よくよく考えてみれば、確かに二人は私に連絡するのは憚られたかもしれませんが。

リッカさんは別に教えてくれたって良かったんじゃないですか?

 

私、あの時ずっともやもやした気分で過ごしていたんですけど。

…うん。これは間違いなく私の言い分が正しい。

 

せめてリッカさんは私に一言くらい相談してしかるべきだった。

それをしなかった以上、私をもやもやさせてくれたツケは払うべきだと私は思う。

 

「…リーダー、何か悪い事考えていません?」

「人聞きが悪いねアリサ。別に悪い事は考えていませんよ。」

 

私の正義をリッカさんに執行しようかなと考えているだけです。

 

…というか、それを言い出したならそもそもの話。

 

「な、何かしら?」

 

事の発端的にサクヤさんが()()()()()()()()()()()勝手に動いたのがいけないですよね?

それが心配してくれていたからだというのはわかりますが。

 

結果的にもっと心配する羽目になったんですから悪手であった事に変わりはありません。

そのせいでアリサも独断で動いて同じ結果になってますし。

 

…うん。これも間違いなく私の言い分が正しい。

それなら二人にも心配させてくれた罰を与えないといけないですね。

 

決して相談されなくて悔しいからじゃありません。

規律と感情は別物ですし、これはリーダーとして独断で動いた隊員にお灸をすえるだけです。

 

証明完了、確かQ.E.Dと言うんでしたっけ。

そうと決まれば早速リーダーとしての責務を果たさなくては。

 

おもむろに席を立ち、さりげなく二人の座る側へ歩み寄る。

アリサは何となく勘付いて逃げようとしているみたいですが、残念ながら壁側に座っているので逃げられませんね。

 

 

という訳で、まずはピンと来ていないサクヤさんからお仕置きです。

 

………

 

その後、三人でわちゃわちゃしてたらツバキさんにホールで騒ぎを起こすなと怒られました。

まぁちょっと気分もスッキリしましたし、二人についてはこのくらいで勘弁してあげましょう。

 

 

さて、それじゃあ次はリッカさんの所に行きますか。




女性陣Sideなので無口さんの出番無し。
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