無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.新型使うの?
A1.使えるようになっただけ。

Q2.宝の持ち腐れ?
A2.Yes。

可変型は夢の塊。
特化型は浪漫の塊。


無口な無口な新型使い(仮)1

新型神機--

 

それまで射撃戦か白兵戦かのどちらかしか選択できなかったそれを、"可変機構"という概念によって打ち破った画期的な新兵器。

 

-ガシャコン、ガシャコン-

 

遠距離においては銃撃で敵を撃ち倒し。

近距離においては剣撃で敵を切り倒す。

 

-ガシャコン、ガシャコン-

 

加えてこれほど複雑な機構を備えているにも拘らず、銃剣の切り替えは己の意思一つで容易に可能である。

 

忘れがちではあるが神機というのは立派な生体兵器。

細胞レベルで同期されているそれは機械のような煩雑な操作を必要とせず、手足を振るうがごとく簡単に扱う事が出来るのだ。

 

-ガシャコン、ガシャコン-

 

-ガシャコン、ガシャコン-

 

「………………………」

 

-ガシャコン、ガシャコン、ガシャコン、ガシャコン、ガシャコン-

 

「…別に感触を確かめるのは構わないけどさ。キミ、もしかして遊んでないよね?」

 

後ろから疑念の籠った声が掛けられる。

遊んでいるとは人聞きの悪い、これは操作感を確かめていると言うんだ。

 

確かに俺ほどの古参ともなれば、多少得物が変わったところでそれなりに戦う事は出来る。

だがベテランたるもの、そんな事は当たり前のように出来て当然の話だ。

 

故にそこで満足してしまっては二流のアマチュア。

俺は常日頃から一流のプロフェッショナルを志しているんでな。

 

つまりこれは神機の可動状況を入念にチェックしているだけの事である。

決して単に物珍しくてガシャガシャやっている訳ではない。

 

「まぁわかってるとは思うけど…もし壊したりしたら()()だからね。」

 

パシリ、とリッカが目の前でレンチを手のひらに軽く叩きつける様を見せてくる。

 

ふむ、人も機械も締めれるレンチとは恐れ入る。

ひょっとしてそのレンチも新型か?

 

出来ればずっと機械専用の旧型レンチを使ってくれないかな。

まぁネジ締めされそうだからこの辺りにしておこう。

 

若いとはいえ俺も歴とした大人だからな。

ちゃんと空気を読んで、怒られる前に止める事が出来るのだ。

 

「…やっぱりキミ、遊んでなかった?」

 

弄るのを止め、神機を整備棚に戻したが圧力の方は止まらない。

 

だからレンチをパシパシするんじゃない。

キミ、最近暴力装置を稼働させ過ぎだぞ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

--時は少し前に遡り。

 

支部長室に呼ばれた。

元の部屋主であるヨハネス支部長は既にいないため、代理を務める榊博士に呼ばれての事だが。

 

何でも先日の一件に関して特別ボーナスをくれるとの事。

どうやらアリサとサクヤが匿われていた時の事について喋ってたらしい。

 

何だ、喋っても別によかったのか。

一応俺の口からは何も言ってなかったのだが。

 

だって年頃の女性が男の部屋で寝泊まりしてましたって話だからな。

いくら事情が事情だったとはいえ、わざわざ言いふらすような事でも無し。

 

それにこの手の話題は下衆な勘繰りが付いて回るのも常だしな。

レディにいらん恥を欠かせないよう努めるのは紳士として当然の義務である。

 

まぁ本人たちが喋ったっていうなら別に構わないけど。

流石にこれだけで女を部屋に連れ込むチャラ男なんて風評は広まるまい。

 

広まらないよな?広まらないと祈っておこう。

特にリンドウ辺りが知った日には滅茶苦茶弄り倒されるのが目に見えてるしな。

 

そんなこんな考えている内に支部長室に到着。

ノックをして許可が下りるのを待ってから部屋に入室する。

 

榊博士が机の上で手を組み、その上に顎を乗せたままこちらを見ている。

 

支部長の真似かな?

別に代理だからと言ってそこまで真似る必要は無いと思うが。

 

まぁ興味は無いしどうでもいいや。

もしかしたら本人的には何か真面目な理由やこだわりがあるのかもしれないし。

 

「ふむ、特に反応は無しか。ヨハンっぽく振る舞えば、少しは君の心も開くかと思ったんだが…」

 

いや、本当に理由があってやってたのかあのポーズ。

別に俺、支部長に心開いていたって訳じゃないんだけどな。

 

普通にお仕事上の付き合いしかなかったし。

多少任務に私情を挟んだりはしたかもしれないけど。

 

宮仕えの下っ端は命じられたらただ従うしかないのだ。

まぁシオ絡みで私事の任務出してた博士に言うのも今更か。

 

………

 

そんなこんなで査定についての話が進む。

内容は事前の予想通り、先に当たって二人を匿っていた事に対しての事だったが。

 

「それにこれは、ヨハンからの言伝でもあるからね。」

 

何と、支部長わざわざ榊博士に伝えてくれたのか。

ただの冗談だったんだけどなアレ。

 

確かに支部長、あまり冗談通じなさそうだったしな。

アーク計画が伸るか反るかの瀬戸際でそんな余裕なかったろうに、何か悪いことしてしまったな。

 

まぁいいや、今更訂正した所で意味もなし。

それなら役得と割り切って受け取るとしよう。

 

さて、何が貰えるのやら。

 

お金かな?食料かな?

どちらにしても二人を匿って消費した物資を補充したいのでちょうど良い。

 

期待に胸を膨らませているとおもむろに博士が席を立ちあがる。

 

「ついてきたまえ。きっと君も気に入ってくれると思う。」

 

ふむ、どうやら金一封ではなさそうな雰囲気。

となると無難に食料物資か何かかな。

 

部屋の外に用意しているくらいだから、多分段ボール一箱くらいはあるのではなかろうか。

独り身の生活者にとっては大変ありがたい話である。

 

誘われるままに博士の後をついていく。

 

エレベータに乗り、ホールを通り抜け。

倉庫の前を通り過ぎ、辿り着いたのは神機保管庫。

 

…何で神機保管庫?

 

疑問に思いつつも博士に連れ添って中に入る。

作業をしていたリッカがこちらに気付き、にやりとしながらこちらに向き直る。

 

「来た来た。待ってたよベテランさん。」

 

いつものようにオイルの筋を付けた顔でにっこりしながら話しかけられる。

うん、良い笑顔だ可愛いな。

レディの笑顔というのはいつ見ても悪くないし見飽きない。

 

ところで待っていたとは?

まさかスマイルボーナスなんて洒落を言うためだけに待っていたのではあるまい。

 

子供相手ならまだしも俺は大人だからな。

ボーナスだと言い張るなら、せめてデートの一つくらいまでは用意していただかなくては。

 

まぁ女性にそんな事を要求するのは紳士のやる事ではないから言わないが。

アリサとサクヤの件?あれは役得というものだ。

 

まぁ戯言はこの辺にしておこう。

こんな事ばっかり考えてたらリンドウの事言えなくなるからな。

 

「やぁ待たせたねリッカ君。早速だけど先程連絡した例の物の用意を頼むよ。」

 

博士の言葉に了解と答え、リッカが何かを取りに部屋の奥へと消えていく。

 

…これボーナスの話だよな?

何やら食料物資でもなさそうな雰囲気だが…

 

あ、もしかしてシオの時作りそびれていた俺の制服か?

それならリッカが絡んでるというのも納得できる。

 

あれから時間も経っているし、素材の研究も進んだと聞いている。

とすれば普通に実用的な代物が出てくる可能性も十分考えられる。

 

何時ぞやのウサギスーツが出てくる可能性も無きにしも非ずだが。

まぁネガティブな方向に考えるのは止めておこう。

 

おっと、そうこう考えてる内にリッカが戻ってきて…

 

「………………………」

「ふふっ、流石のキミも驚いているようだね。」

 

いや、驚くというかなんというか。

 

運ばれてきたのは一振りの神機。

 

サバイバルナイフを大型化したような刀身に、ガトリングガンのように束ねられた六つの銃身。

カラーこそ異なれど、ここ極東支部で有名な二人の新型神機使いを彷彿させる造形。

 

俺の目に狂いが無ければの話だが。

これルーキーたちと同じ新型神機だよな?

 

渡されても俺使えない筈なんだけど…

 

「初めは私も、物資や金銭が良いかなと思っていたんだがね。」

 

何とも言えない気持ちで神機を見ていると唐突に博士が話しかけてくる。

 

「だがあのヨハンがわざわざ査定について口にしたくらいだからね。そうなると、ありきたりの物資や金銭を感謝の形とするのは何か違うのでは、と感じてね。」

 

違わない違わない。寧ろそれでいいんですって。

無駄に変化球なんて考えなくていいですから。

 

「そこで私は考えた。色々大層な肩書を持ってはいるが、所詮私はどこまで言っても一科学者。とくれば、私が用意できるありきたりでない物は何かと言えば…もうわかるね?」

 

わかるけどわかりたくな…え、ちょっとタンマ。

その話の流れだと俺、新型用の偏食因子投与されてない?

 

視線を向けると博士がニヤリとしながら頷いて見せる。

いや、オッサンの笑顔を向けられても嬉しくないんだが。

 

「何、この前君が救護室に居た時にチクッとね。心配はいらない、事前の安全性検証はぬかり無しさ。」

 

ド突いていいかなこの人。

くそっ、権力の盾に守られていなければゴッドイーターパンチをお見舞いしている所なのに。

 

というかこれ、ボーナスじゃなくてただの実験結果の確認じゃないか。

モルモットの経過観察を人事考課と言い張る国なんて、極東以外に多分ないぞ。

 

となるとリッカもグルか。

畜生、あの笑顔がただの美人局の撒き餌だったなんて…

 

あ、いや。この顔は違うな。

"無断でやったの!?"って表情してる。

 

良かった、悪い少女なんていなかった。

俺は信じていたぞリッカ君。

 

「博士、いつかこの人に撃たれますよ。何ならアリサだって撃たれてるんですから。」

「ハッハッハ、それは怖い。となればここは一つ、彼の度量の広さに期待するとしよう。」

 

なるほど、度量の広さか。

そう言われてしまっては大人げなくて怒るに怒れん。

 

 

 

 

 

ただしそれはレディに限る。

オッサンにまで安売りしてたら肝心な時に品切れになるじゃないか。

 

注射の役目はリッカに譲るべきだったな博士。

ところで全く話は変わりますが。

 

 

今度ラボラトリに籠る時は戸締りに注意する事をお勧めしますよ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

-おまけ-

 

(ところでリッカ君。彼の様子なんだが…)

 

「………………………………………………」(←無言で神機を弄っている。)

 

(もしかしてアレ、物凄く怒ってたりするのかい?)

(多分ですけど、物凄く怒ってますよアレ。)

(…何か追加で渡しておいた方が良いかな?)

(そうしといた方がいいですよ。撃たれる云々は冗談としても、あの人意外と子供っぽい仕返ししてきますから…)

 

 

帰り際、「忘れていたよ」と段ボール一杯の横流s…試供品を頂いた。

 

何だ、普通の褒賞もちゃんと用意してくれてるんじゃないですか。

それならそうと初めにちゃんと言ってくださいよ。

 

会話のキャッチボールは潤滑な意思疎通のためには必要不可欠なんですから。

あぁでも、博士はドッチボールの方が得意そうだな。キャッチして投げ返す前から注射打たれてたし。

 

アッハッハ。

俺的には面白いけど、流石に怒られそうだから黙っておこう。




選択順を間違えたので、残念ながら博士に対するこの人の好感度はプラマイゼロ。
ちなみに正しい選択順だと+10。
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