無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A.力こそがパワー。
早速件の神機使いが問題を起こしたそうだ。報告書には仲間と諍いを起こした際、神機を用いたと書いてある。
念のため最後まで読んでみたがやはりただの杞憂だった。
神機で仲間に斬りかかる。
本来なら除隊どころか処罰ものの事態であるが、前後の経緯を見れば異論を挟む者もいなかろう。
未だ自身を知らぬ愚か者が、あるいは己が技量を弁えぬ未熟者が。
好んで死地へと突出し、そのまま帰らぬ人となる。
ある意味でこれもありふれた話の一つになるところだったにも拘らず。
結果だけ見れば件の未熟者はこの上ない幸運の持ち主だったのだ。
仲間が助けてくれたのだ。文字通り、わが身を顧みずに助けに来てくれた仲間が。
その中心人物がほぼほぼ接点を持っていない人間だというのが何とも言えないところだが。
メンバーに恵まれていたという意見は否定しない。
しかし、少なくとも彼無くしてこの結末はあり得たとは私は思わない。
それにしても、そうそうお目にかかれない面白い報告書だ。
小型種とは言え、オウガテイル三匹を蹂躙し、神機を振りかざして助けに来られても相手は困惑するだけだろうに。
もっとも、一番不幸だったのは最後だったばかりに両断されてしまったアラガミだな。
彼を知る身としては
…ふむ。問題は起こしているものの、正直予想の範疇と言えなくもない。
もうしばらくは様子を見てみることにするか。
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「………………………」
ここは極東支部の神機保管庫。
同輩である整備士達が忙しそうに工具を振るい、神機の整備を続けている。
今日の任務も新型技術を用いた神機の運用テスト。
本日使うのは"ブラスト"と呼ばれる広域射撃に特化した銃型神機。
事前準備はばっちりだ。
本職並みとは言わないまでも、技量を埋める程度には多種多様な弾種を揃えてきた。
持ち上げてみると意外と軽い。
バスター使いの身としては正直ロングブレードより振り回しやすい。
「先に言っとくけどね、今日試験するのは君じゃないから。」
声の方に視線を向けると、毎度お世話になっているリッカちゃん。
スパナを片手に腕組みし、怪訝そうな視線をこちらに向ける。
「君はすぐ神機壊すからね。今日はカノンにお願いするんだ。」
本日のミッションは今までと異なり、既存技術に対する拡張対応を試みるとの事。
"オラクルリザーブ"と呼ばれる、増設エネルギーパック(?)のような機能の運用試験らしい。
余剰に溜まったエネルギーを退避しておき、必要な分だけ弾薬として利用する。
用途によっては一発に凝縮して高エネルギー弾として使う事も可能らしい。
…うん、軽く言ってるけどすごい革新的な技術なのでは?
デメリット無しで弾倉/火力の両面強化なんて、素人目に見ても偉業にしか見えない。
射撃については門外漢だが、存外茶化し半分で聞いていい話ではなさそうだ。
その運用試験にカノンが選ばれたというのも感慨深い。
「………………………」
…カノンが選ばれたというのも感慨深い。
大事な事なので二度(以下略)。
待って、これ俺が同行しなきゃいけないミッションなの?
それ以前にカノンがテストするなら俺がブラスト神機じゃなくても良くないか?
「君の神機は修理中なんだ。雑に扱って壊したんだから仕方ないよね?」
大丈夫、その神機のデータは十分取った後だから。
もしアラガミ殴って壊しちゃってもいいからね。
ニッコリ笑顔で告げられる。
ちくしょうコイツ可愛いな。信頼ってこんなに残酷なものだったか?
あれはただの事故だ。常識的に銃型神機をバスター代わりって無理だろう。
助けを求めるようにカノンを見る。
「は、はいっ!期待に応えらえるよう頑張ります!」
ふんす、と擬音が聞こえそうな感じで決意表明される。
ちくしょうコイツ可愛いな。信じるってこんなに過酷なものだったか?
まぁ愚痴を言っても仕方ない。これはれっきとしたお仕事だ。
これでもそこそこ古参兵。任務はきっちりこなして見せるさ。
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「確かに借りは返すといったが…お前、存外性格悪いな。」
任務状況もほどほどに、そろそろいいかとブレンダンに皮肉られる。
すまん、正直悪いと思いはしたが他に頼れる相手がいなかった。
タツミは視線を合わせてくれなかった。
ジーナには笑ってごまかされた。
カレルとシュンは言わずもがな。
リンドウにはもう飲んじゃったからとビールを見せつけられ、
ソーマには「俺はこれからデートだ」とにべもなく拒否された。
何がデートだ、お前そう茶化したらブチ切れるだろうに。
腹いせにお前がその台詞を言ってたって言いふらしてやるからな。
そんなこんなの所にブレンダンとすれ違い、この前ミッションの代役を務めたことを思い出す。
良い機会だ、この前の借りを返してもらおう。
オペレーター経由でミッションを受領したブレンダンだったが、メンバーを知ったところで顔が歪む。
俺とカノンの名前があったところで大体察しがついたようだ。
……………
ミッションは滞りなく進んでいく。
新機能の運用も順調らしく、アラガミが現れる度に瞬く間に榴弾が雨あられと降り注ぐ。
「アッハハハハハハハ!ねぇ良いの君ィ!?早く逃げないと挽肉になっちゃうよぉ!?」
ご機嫌な叫び声を聞きながら、グボロ・グボロの巨体を壁代わりに爆風から身を隠す。
決してアレが俺に向けてる言葉ではないと信じたい。
だいたい俺だってこんな戦場逃げたいよ。
でも射撃が下手だからこのくらい近くじゃないと当てられないんだ。
ちなみにブレンダンは既にキャンプまで後退している。
良い奴だったよ本当に。
現実逃避もそこそこに、突然グボロの体がプルプルし始める。
可哀そうに、もうこの盾も限界だ。
まぁいいさ、一応コイツが最後のターゲットだ。
次の爆撃が来る前に、連続射撃で足でも止めてやるとするか。
-カチンッ-
あ、しまった弾が切れ-
……………
…誰もいなくなった戦場跡。
頃合を見計らってアラガミの下から這い出す。
思う存分撃ちまくったからか、極東の誤射姫様はご機嫌そうだ。
「やりました!私、今日誤射が少なかった気がします!」
言い切りやがったなこのやろう。
いつか絶対のし付けて取り立ててやる。
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「………………………」
ミッションは色々酷かったが。
本来の目的である弾倉/火力の両面強化という観点では間違いなく大成功だ。
誤射の可能性は戦術運用で潰せるし、面制圧が可能な火力も出せるので使用者の練度も低くて済む。
一人の猛者はもういらない。数と作戦さえ整えば、新人だけで大型アラガミと渡り合うのも夢ではないのだ。
…さて、それはひとまず置いといて。
「…あのさぁ、聞いてるカノン?言いたいことがあるなら言っても良いんだよ?」
差し入れのクッキーを食べながら報告書を仕上げる横では、最近よく見た光景がリプレイされている。
チラチラ助けを求める視線を感じるが、お茶を飲むのに忙しいので知らんぷりする。
傍らにあるのは運用試験を行った銃型神機。
見た目は何も変わっていないものの、話を聞くに発射機構が焼け付いて使い物にならなくなってるらしい。
何でこんな状態になっているのか。何のことはない、撃ち過ぎである。
そりゃ外付けタンクにかこつけて、ノータイムで高火力弾撃ち続けたらそうなるわな。
ちなみにそれでも普通に使っていれば問題無いレベルのバッファは設けていたらしい。
ハイになり過ぎてOアンプルを使いまくったカノンがやりすぎだったというだけだ。
「わ、私も頭では駄目だと思ったんです。でも…」
嘘つけ、俺もろとも挽肉にする気満々だったじゃないか。
「マカヅチさんが一人アラガミと戦ってるのを見ると、心がぶわーっと沸騰する感じになって…」
…何?何だって?誰が一人戦ってたって?
「少しでもアラガミを引き離せたらって…でもマカヅチさん全然アラガミから離れる様子もなくて…」
冗談言うなよ、あんな爆撃の中で逃げられるか。
三歩と行かずに吹き飛ぶわ。
ていうかちょっと待て、明らかに風向きがおかしいぞ?
顔を上げると二人揃って視線がこちらを向いている。
ちなみにカノンは涙目だ。
ちくしょうコイツ可愛いな。ははーん、さては思った以上に一杯一杯になってるな?
…まぁいいか。ちょうど報告書もまとめ終わった。
カノンに書類の束を手渡して軽く背中を叩いてやる。
えっ?えっ?ときょどっていたものの、意図を理解すると大きく頭を下げてから慌てた様子で部屋を後にする。
甘いんじゃないかって?
しょうがないじゃないか、もう賄賂(クッキー)に手を付けてしまったんだから。
とりあえずここにはもう用はない。
俺は神機壊してないしな。
部屋に帰ろうとすると服の裾が摘ままれる。
振り返ると最近見慣れた女神様(アラガミ)が活性状態でおわせられる。
「カノンの事はまぁともかくとして…君、今回のミッションの責任者だったよね?」
そうだったか?まぁ言われてみればメインのミッション受注者は俺名義だったか。
「君、一応部隊長様だよね?」
まぁな。一人しかいないがれっきとした部隊長様だぞ。
「…監督責任って言葉は知ってるかな?」
…知らんな。言ったら殴られるから口にしないけど。
カノン(お詫びにクッキー作ってきたけど…流石にこれだけじゃ許してもらえないよね…)
ユウマ「……。(美味いなこれ。仕方ない、今回だけは水に流すとするか。)」 ← 今期通算7回目
リッカ「君、意外と甘い人だよね(クッキーのおこぼれ貰いながら)」