無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A.成功品とは言ってない。
在庫処分と言ってはいけません。
新型神機--
それまで射撃戦か白兵戦かのどちらかしか選択できなかったそれを、"可変機構"という概念によって打ち破った画期的な新兵器。
遠距離においては銃撃で敵を撃ち倒し。
近距離においては剣撃で敵を切り倒す。
加えて銃剣の切り替えは己の意思一つで容易に可能。
生体兵器である神機は機械のような煩雑な操作を必要とせず、まるで神経と直結しているかのようにスムーズに動かすことが出来る。
-ガシャコン、ガシャコン。-
「…アリサ。あれ、どう思う?」
「…まぁ初めはあんな感じかとは思いますけど。」
「オブラートに包まず言うと?」
「不器用ですねあの人。」
酷い、泣くぞお前ら。
俺的には十分スムーズなんだよ。
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ここは極東支部の訓練場。
不慣れな新兵も手練れの古参も等しく訪れ、お世話になる場所。
ちなみに壁に大きな裂け傷が付いているが、噂によると現役時代のツバキ教官がやったらしい。
たまたま不在でその現場を見る事が出来なかったのが未だに悔やまれる。
ホログラムの仮想アラガミ相手に、銃型神機で何をどうすればあんな傷が付くのだろうか?
-あの時の姉上はさながら鬼か…さもなきゃゴリラだった。-
笑いながら話していたリンドウが一瞬で階下に叩き落とされた光景は今も忘れられない。
残念ながらあれを見た後に改めて詳細を質問してみる勇気は俺にはなかったので真相は闇の中だ。
まぁ深く考えるのは止めておこう。
美しいレディには秘密の一つや二つあるものだからな。
所変わって俺はというと、任務の出撃前に新しい神機の最終調整をしている。
少し前までは鳴り物入りのように扱われていた新型神機だが、気付けば少しずつ実用化に向けての改良が進められているらしい。
今俺が使っている神機も試験導入されている試作品の一つ。
何でも旧型神機使いの活動限界を伸ばす一環として、別種の偏食因子を追加投与して新型神機へバージョンアップさせる研究との事。
投与後も従来使っていた旧型神機は使えるので新しい適合神機が見つからなくても問題は無く、単純な身体能力の向上も見込めるのでただ投与するだけでも意味があるらしい。
なるほど、性能だけ聞けば中々の優れもの。
これなら博士がボーナス代わりと言っていたのもわからんではない。
知らない内にモルモットにされたのは気に入らないが。
まぁ過ぎた事をとやかく言っても仕方が無いか。
気を取り直して残りの訓練メニューを片付ける。
近接、射撃共に動作は良好。
以前作成したアサルト銃身用バレットの使用具合も変わり無し。
これなら本番も特に問題あるまい…が。
何が起こるかわからないのが実戦というものである。
これでも立派な古参兵。
新兵のような甘い読みは絶対にしない。
そういう青さが生きるか死ぬかの分かれ目となるのだ。
まぁ俺は普通に若いけど。
さて、若者らしく女の子とデートしてくるか。
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ここは通称"贖罪の街"。
極東支部では新兵の教育現場としてすっかりおなじみとなった場所。
俺も神機使いになって結構経つが、今日は改めて新兵気分で参戦である。
何しろ今日は極東でも指折りの実力者である新型神機使い様直々に実施訓練していただけるとの事だからな。
おまけに相手は女性二人で、一人はこの前とはまた違うレディ。色男冥利に尽きるというものだ。
まぁただの同行メンバーという話なだけで別に俺がモテているという訳ではないが。
妄想の中くらい夢を見たってバチは当たらないだろう。
「今日は私達が先輩ですね。新型神機での戦い方というものをしっかり教えてあげます。」
「ちなみに前みたいに一人で突出したら撃ちますから。安心してください、私達は射撃得意ですから外しませんよ。」
ほら、現実はこんなものだからな。
頼もしいアリサの言葉に引き換え、第一部隊隊長様の思考回路の恐ろしさよ。
お前はリンドウの何を見てきたんだよ。
ハイになってるカノンだってそこまではっきり言わないぞ。
そう言えば以前エイジスでアリサに爆発弾を撃たれたが。
まさかお前もそのバレットを用意してるんじゃあるまいな。
もしそうだと言ったら今度からカノン(妹)って呼ぶからな。
見た目はどこもかしこも似てないが。
閑話休題。ミッションに戻ろう。
今回はルーキーが小隊長となってミッションに挑む。
目的は俺の新型神機の実施訓練だが旧型神機とは勝手が違い過ぎるため、戦闘に専念するためにこの編成となっている。
まぁ慣れない武器で不測の事態が起こると流石に色々大変だからな。
特に俺からの異論はない。
フフンとドヤ顔をしてきた点にはデコピンしてやろうかと思ったが。
子供のやる事に目くじらを立てるのも大人げないので見なかった事にしておこう。
討伐ターゲットはハガンコンゴウとお供のザイゴードが何体か。
戦力的には問題無いとはいえ、しれっと接触禁忌種が指定されている辺り、博士も中々良い性格をしている。
そして肝心の戦術…というより新型神機での戦い方だが。
「まず最初に射撃戦で撃破を狙い、それで仕留めきれなかった場合は白兵戦に移行するというのが基本になります。ただ接近後はずっと近接戦闘に従事するという訳でもなく、オラクルがある程度溜まったら距離を取り直して射撃戦からに戻るというのが私達の戦い方ですね。」
アリサがこの上なくわかりやすく説明してくれる。
まぁそうだろうな。飛び道具を持っているのにいきなり突貫するとかアホのする事だし。
要するにヒットアンドアウェイ。
安全圏から攻撃できる銃型神機使いの戦い方をベースに、オラクル回収も兼ねた近接戦闘を織り交ぜたスタンス…ってこらこらルーキー、何をそこでわかったようにうんうん頷いている。
お前は俺と同じような戦い方だったろうが。
俺はちゃんと初めて同行した時の事覚えてるんだからな。
「いや、頷いてますけどリーダーはどちらかというと近接メインで戦ってるじゃないですか。そっちの戦い方もちゃんと教えておかないと…」
「え?いや、私はその…身体が勝手に動いてくれてると言うか…」
「ちょっ、ドン引きですよそれ!?」
ほら見ろ、アリサにまで言われてる…っておい、コイツとんでもない事言い出したぞ。
アリサも思いっきり顔が引きつってるじゃないか。
もしかして第一部隊って実は相当ヤバいんじゃ…
いや、そういえばリンドウからしてこんな感じだったな。
何時だか別の新人に戦いのコツを聞かれた時、"良い感じの所に神機を振る"とか言ってたし。
うむ、つまりこれは第一部隊の伝統だな。
俺の部隊という訳でもないし、そういう事にしておこう。
そう考えれば目の前でキャイキャイじゃれ合ってる光景の何とも微笑ましい事。
殺伐としたミッションの中でも感じる平穏、まるで一服の清涼剤のように思えるな。
「わ、私が変な訳じゃないです。この人だって、絶対感覚で戦ってますから。」
おっと、清涼剤の中から爆薬が飛んできた。
まぁ知らん振りするから関係無いが。
俺は言葉を喋れないらしいから仕方がないね。
仮に喋れたとしてもシャイだからって逃げるけど。
「ほら見てアリサ。この人、今絶対わざと知らん振りしてる。図星を突かれたって証拠だよ。」
「いや、何時もの無表情と変わりないじゃないですか。それにもしそうだとすると、いよいよリーダーとこの人"似た者同士"って事になりますよ?」
おい、何をショックだって顔してる。
そんなに俺と似た者扱いされるのが嫌かちくしょう。
爆薬を無視したら普通に着火してきやがった。
もういい、さっさとミッション始めるぞプニシスターズ。
余談ですが三連射するバレットを組み合わせた十連射弾がメインバレットでした。
10回撃ち切りで大抵は接敵までに全弾撃てるので大変お世話になってた記憶。