無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.この時点では安全性くらいしか調査されてません。
Q2.偵察は他部隊の役割じゃ?
A2.この人の部隊は何でも屋。
BURST開始直前。
二週目の始まり。
最近、極東支部で実しやかに囁かれる噂がある。
近頃任務帰りの神機使い達が、こぞってよろず屋に持ち込んでいる黒い羽。
新種のアラガミのだとか、絶滅を免れたカラスのだとか色々噂されているが。
特に害有る代物でもないらしく、もっぱら装飾品の原材料として需要が上がってきているとの事。
と言っても、良い稼ぎになるとはお世辞にも言えない。
精々が任務ついでの小遣い稼ぎにでもなればと言ったところである。
だがそこは儲け話に関して極東屈指の嗅覚を持つカレル君。
彼が言うにはどうやら鎮魂の廃寺の外れ辺りに落ちている事が多いとの事。
ふむ、こんなご時世に鳥の羽が落ちている。
それも定期的に採取する事が出来るとは。
何となくだが新種のアラガミの気配を感じる。
ちょうどいい、特務のカバーストーリーにもなるし、一度偵察に行ってこよう。
…あ、カレル君。悪いが君は留守番です。
一般の神機使いの方は特務案件には連れていけませんからね。
タダ聞き?人聞きの悪い。
対価はちゃんと用意するから心配するな。
羽拾えたら、売ったお金でコーヒーくらいは奢ってやるよ。
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ここは通称"鎮魂の廃寺"…の外れにある民家。
本来は作戦エリア外なので立ち入りが禁止されている場所なのだが、今回は偵察任務という事で特別に立ち入りを許可してもらっている。
お、早速羽見っけ。それも二つ、出だしから中々に幸先が良い。
これでカレル君に茶菓子付きでコーヒーを奢ってやれそうだ。
拾った羽を懐に仕舞いつつ。
本題である探索目標の存在にも目を配らせる。
今回のカバーストーリーは恒常ミッションの一つである偵察任務。
定期的に作戦エリア近辺を見回り、新種のアラガミが出没していないかを調査する重要な任務だ。
戦闘を目的としていないので装備も索敵と隠密性を重視。
荷物も少なく身軽なので羽拾いにも精を出せて一石二鳥である。
お、また羽見っけ。
しかも今度は三枚も落ちてる。
流石はカレル君直々の情報。
本当に狭い範囲にまとまって落ちてるな。
これなら奢り分を差し引いても十分懐が潤いそうだ。
しばらく彼には足を向けて寝られないな。
今後のためにも謝礼は奮発しておこう。
先程と同じように拾った二枚を懐に仕舞い。
残った一枚を持ち上げてしげしげとそれを観察する。
「………………………」
辺り一面に広がる雪景色。
白銀の世界にふさわしくない、異物のような黒い羽。
俺も実物のカラスというのは見た事無いが。
アーカイブなどの情報を見る限り、人の肘から指先まで程度の大きさと感じた。
だからこそ抜けた羽の大きさというのも大体予想していたのだが。
この羽は明らかにそれより大きい。
予想より1.5倍くらいは大きく、鳥類だとすれば仮定すれば間違いなく大型に分類されるであろうサイズ。
アラガミが跋扈するこのご時世、そんな馬鹿デカい鳥が生き延びている?
よしんばそうだとしても、今まで調査部隊の誰にも見つからずに過ごせている?
ありえん。
いくら何でもそれは無い。
何時だかアリサやルーキーはいい加減だと文句を言っていた気がするが。
今となっては珍しい野生の鳥の存在を見落とし続けるほど、極東の調査班の目は節穴ではない。
となればこの羽の正体などただ一つ。
そして今の今まで調査部隊に見つかってこなかったのだとするならば…
視線を古びた廃民家へと向ける。
まぁ可能性としては低いだろうが。
シオの事を考えれば十分にあり得る話である。
ここは一つ、御用改めと行こうか。
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雪の重みで建付けの悪くなったスライド式のドアを何とか開ける。
別にぶち破った所で誰かが困る訳ではないのだが。
扉を前にすると開けて入ろうとしてしまうのは人間の性というものだろうか。
ついでに入室の際、つい断りも入れてしまうのも多分同じ感覚なんだろう。
誰もいないとは思っていても、自然と口から言葉が漏れてしまう。
親の教育の良さが伺えるな。
自然と礼儀が身体に染みついている。
実際に教育したのは施設の職員だがな。
その頃にはもう両親この世にいなかったし。
我ながら手のかからない良い子だったよ。
腹に一物抱えてたけど迷惑はかけてなかったはずだし。
まぁ俺の話はどうでもいいや。
和風な作りの室内に油断無く踏み込む。
予想通りアラガミの類が潜んでいることは無かったが、代わりにすぐさま妙な痕跡を発見する。
このエリアはアラガミが出現するようになって以来、ほぼ年中を通して冷たい寒気に閉ざされた地域。
積もった雪が塵や埃の舞い上がりを防ぐので廃屋といえども意外と小奇麗ではあるものの、それでもうっすらと埃のような物は積もっている。
それこそ
部屋の奥へ二人分の足跡が続いている。
一つは人の素足で歩いたような痕跡で、もう一つは普通に靴跡のように見える。
普段の俺なら見なかった事にして即刻建物の外へ飛び出しているところだが。
幽霊の正体見たり何とやら、今回は心当たりがあるのでそのまま奥へと進んでいこう。
………
建物の奥の突き当り。
比較的綺麗な一室まで続いて足跡が途切れたので探索開始。
…したのだが。
予想と異なり、大した情報を得る事は出来なかった。
ふーむ、てっきりここを根城にしていると思ったんだが。
痕跡自体もそこそこに時間経過しているように見えるし、何より件の羽が一つとして落ちてない。
近くで羽が見つかっている以上、このエリア近辺に潜んでいそうなのは確かなんだが。
あれだけ抜け落ちてる羽が室内に無い以上、少なくともこの家屋に寝泊まりしている訳ではなさそうだ。
そう結論ついたのであれば長居をしても仕方がない。
とりあえずは一旦外に出よう。
………
異変に気付いたのは外に出てすぐ。
先程羽を拾った辺りの場所に、再び黒い羽が落ちている。
すぐさま駆け寄り、拾ったそれを観察する。
先程回収したものと同じく、一般的の鳥類にしては大きめの黒い羽。
間違いない、近くに居る。
だがどんな奴だ?歩いてきたのなら少なくとも足跡が残っているはずだが。
周囲を見渡すがそれらしき痕跡はない。
シユウのように空を飛行してきたのか、はたまた風で羽が運ばれてきただけなのか。
どちらにせよ、判断するには情報不足。
であれば本来のミッション目標に従い、周囲の偵察任務に戻るのみ。
羽を懐に仕舞って立ち上がる。
とりあえず、いつもの作戦エリアにまで戻ってみるか。
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…いた。
いや、思ったよりあっさり見つかったのは良いんだが。
懐から先程の羽を取り出して観察した後、双眼鏡に捉えたアラガミに視線を戻す。
てっきりシユウやザイゴード、もしくはハーピーみたいな姿をイメージしていたんだが。
今観察しているアラガミには少なくとも羽らしき物は見受けられない。
見た事が無いアラガミなので間違いなく新種ではあるんだろうが。
ヴァジュラのような獣型というよりは、アーカイブのアニメに出てくる竜種から派生したような姿に見える。
白…というより白銀に近い甲殻と赤胴色の筋肉。
角や骨格部と思しき場所は鮮やかな紫色に染め上げられている。
うん、コイツはヤバイ。
経験則で言うのも信憑性に欠けるが、今回は珍しく見ただけではっきりわかるレベルだ。
少なくとも今の装備と情報量でケンカを吹っ掛ける相手じゃない。
強いだけならまだしも、最悪神機に組み込まれている偏食因子が通用しない可能性だってある。
これでも立派な古参兵。
わざわざ危険を冒すような真似はしないのだ。
そうと分かれば退却準備。
欲を言えば羽の主も見つけたかった所だが。
双眼鏡を顔から離し、手にした羽を弄んでいた所でふと思う。
…アイツ、まさかアラガミ化したリンドウじゃないよな?
別に何か確認したい事があった訳ではない。
強いて言うなら、退却前に今一度姿を見ておこうと思った程度である。
再び双眼鏡を覗いてアラガミを捉える。
白いアラガミのその後ろ。
個人的にBURSTのエンディングは文句無し。
なので道中は(以下略)