無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.治療すれば良いので何も問題ありません。
Q2.完全にアラガミ化しても大丈夫?
A2.治療すれば良いので何も問題ありません。
任務握り潰したのは治療手段確立までの時間稼ぎが目的。
生きてさえいれば可能性はゼロじゃない。
ただし--
双眼鏡を投げ捨てて一気に駆け寄る。
途中偽装フェロモン15を使用したので気付かれる心配は無い。
-何でここにリンドウがいる?-
-アラガミ化はしなかったのか?-
-いや、右半身が変化している。-
-生きてはいるが、今すぐにでも治療が必要だ。-
-じゃあ何であの状態で斬りかかってるんだよ。-
-どうみてもヤバい相手だってわかるはずだろ。-
様々な疑問が一気に脳内に噴出するが、思考を巡らせている余裕はない。
相手は未知のアラガミ。
今時点では討伐出来ない可能性などざらにある。
ならば俺が取るべき行動はただ一つ。
背面強襲で不意を突き、その隙にリンドウと一緒に離脱する。
幸いにして偵察用の隠密装備だ。
一気に間合いを詰めた所でようやくアラガミが反応するが。
振り向くより早く、無防備なその背中にバスターブレードの一撃を叩き込む。
やはり予想通りというか、神機がコイツのオラクル細胞に適合出来ていない。
普段なら間違いなく真っ二つ確定の一撃だったにも拘らず、実際は数センチ程度の浅い切り傷が付いただけ。
アラガミが肩越しにこちらを睨みつけてくる。
おいおい、そんなに熱い視線を向けるなよ。
俺はこれでもシャイなんだ。
そんなに見つめられたら恥ずかしくて喋れなくなるだろうが。
とりあえずその目は瞑っとけ。
言うが早いか、眼前に放り投げたスタングレネードが炸裂する。
ダメージこそ無いものの、ほぼゼロ距離でそれを直視したアラガミが両目を押さえるようにして横へ体勢を崩していく。
開いた道を前に駆け足を止めず。
そのままリンドウの襟首を掴んで勢いのままエリアを駆け抜けていく。
よし、回収完了!
まったく、手間取らせてくれたなリンドウめ。
言いたい事は山ほどあるが。
とりあえずは離脱が最優先だ。
こんな碌な準備も出来ていない状態であんなバケモノとやり合ってなんていられないからな。
さっさと帰るぞリンドウ。
…リンドウ?
どうした…おい、おい!
突然の事に止める間も無く。
再びリンドウがバケモノに襲い掛かった。
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くそっ、最悪だ意味が解らん!
こんな時に何をふざけてやがるんだ!
せっかくこのまま逃げ切れるところだったというのに、あろうことがリンドウ本人が再度アラガミに向かって襲い掛かってしまった。
おかげで二人とも完全にアラガミに認識されてしまったため、先程のように不意を突いて隙を作る戦法はもう通じない。
無論、俺一人なら逃げ切れる。
リンドウとて閉じ込められた空間でない以上、離脱するだけなら問題無く出来る。
だが今のアイツじゃ無理だ。
先程僅かの間に気付いた程度ではあるが、呼吸も荒くとても戦える状態じゃない。
むしろ今やり合えている事の方が異常なのだ。
武器はあの訳の分からない長剣一振り。
拾った神機なのかは知らないが、明らかに握っている方の半身におかしな影響が出ている。
逃げる訳にはいかない。
俺だけが逃げても意味はないし、逃げれば間違いなくリンドウが殺される。
装備を確認する。
強化薬は元より回復薬すらろくになく、見つかっている以上偽装フェロモンはもはや意味をなさない。
携行火器は小口径で豆鉄砲にもならず、おまけに神機はアイツに適合出来ていないので不意を突いて一撃という訳にもいかない。
畜生、ありえん。
よもや俺が
唯一の勝機はリンドウの剣。
俺の神機では浅手しか与えられなかったが、アイツの剣は普通にアラガミの身体を切り裂いている。
隙を突いてリンドウがトドメを刺す以外、今あのバケモノを倒す術は存在しない。
そうと決まれば即座に行動を起こす。
リンドウの方も戦いに余裕があるようには見えず、悠長に検討し直している暇はない。
リンドウの身体を跳ね飛ばしたアラガミが、接近してくる俺に身体を向ける。
負けじと咆哮を上げ、袈裟目掛けて神機を振り上げる。
邪魔をするなクソトカゲ!
テメェに構ってる時間はねぇんだよ!
………
もう何度目になるかわからないが。
壁に叩きつけられて軋む身体に鞭打ち、再びアラガミの背後から襲い掛かる。
甘かった。
まさかここまでのバケモノだったとは。
ただでさえ神機が通りにくいってだけでも厄介なのに。
それが生易しく思えるほどに狂っている神速の一撃。
無論速さだけで攻撃が軽いなどと言う事は無く。
何とか乱舞を受けきっても呼吸を整える前に追撃を放たれ、吹き飛ばされる。
既に回復錠は尽きている。
これ以上は俺が持たない。
-…逃げるなら、今しかない。-
-…今を逃せば、もう逃げられない。-
…ハッハッハ。
我ながらナイスジョークだ。
センスが悪すぎて誰にも言えないな。
逃げる?仲間を見捨てて?
俺が?あの日のようにか?
フハハハハハハハハ。
冗談もここまで来ると笑えんな。
いや、むしろ逆に笑えなさ過ぎて笑いが止まらん。
あれほど指を加えて見てるだけしか出来なかった事を悔やんでいるくせに。
あぁ、だから今度は見ないように背を向けて駆け出そうってオチか?
センスの悪さもここまで来ると才能だな。
まぁいい、冗談にかまけている余裕はない。
俺は逃げん。誰が何と言おうとな。
俺は俺の意志で戦う。
あの日と同じ選択は絶対にしない。
………
さて、ようやくバケモノの動きにも慣れてきたが。
流石に俺の方も限界だ。リンドウも保ってはいるが、恐らく限界間近だろう。
次で決めるしかない。
そしてリンドウの剣でしか装甲を通らない以上、俺が隙を作るしかない。
アラガミが再び俺の方へ向き直る。
どうやら弱っている奴から仕留めようという腹らしい。
好都合だ。来いよクソトカゲ。
古参の意地というものを見せてやる。
アラガミが神速のタックルを仕掛けてくる。
初見では間違いなく直撃していたであろう速さだが。
残念だったな。
もうその動きは見切っている。
合わせるようにチャージクラッシュを叩き込む。
狙いは右腕。当然斬り飛ばすには至らないが。
腕一本なら
スピード違反だ。ブレーキをかけてもらおうか。
叩き落とした腕が地面に刺さり、抉るようにしてアラガミの速度を急落させる。
当然スピードが落ちた事により、身体ごと吹き飛ばすであったろう突進も本来の威力を喪失する。
まるで止められた事に憤るようにアラガミが吠える。
空いている左腕を振り上げ、目の前の神機使いに向かって振り下ろす。
見え見えなんだよ。まぁ所詮は神を騙る畜生か。
簡単に餌に食いついてくれるから大変やりやすい。
ついでにどこを狙うか当ててやるよ。
頭だろ?そこを潰せばおしまいだからな。
ほら、わかりやすい。
まぁ当たってなんかやらないがな。
右腕は神機で押さえられ、左腕は空振った直後。
次はどうする?噛付きでもしてみるか?
喰われるのはお前だけどな。
トゥルーENDの条件は誰一人としていなくなってはいけない。
故にここで逃げる訳にはいけません。
長くなったので次に続きます。