無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.はい。
Q2.足が8本?
A2.はい。
Q3.ハサミがある?
A2.はい。
それは紛れもなく蟹。
蟹に尻尾は無いとか言ってはいけない。
Hey NORN、美味しいアラガミを教えて?
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Hey NORN、蟹タイプのアラガミを教えて?
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…Hey NORN、蟹っぽいアラガミを教えて?
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「………………………」
Hey NORN。
ハサミがあって。
甲殻があって。
足が8本ある。
そんなアラガミを教えて?
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急に増えたな。
抽象的な検索条件じゃダメという事か。
まぁいいや、獲物は多ければ多いほど良いからな。
さっそくコイツを狩りに行こう。
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ここは通称"煉獄の地下街"。
地殻変動の影響で広大となった空間と、地下水のように湧き出るマグマが特徴的の場所。
見ての通り暑苦しい場所なので普段は好んで訪れたりしないが、今回は諸事情あってここにアラガミを誘い込む手筈になっている。
何時だかシオが言っていた。
「これ、そとはかたくてたべづらいけど、なかはやわらくておいしい。」と。
そして同じ時期に榊博士が言っていた。
「シオの感性は限りなく人間のそれに近い」と。
つまり、シオが美味しいと感じた物は恐らく俺にとっても美味しい物に違いない。
逆が成り立たなかったのは子供がピーマンを嫌うのと同じ理由だろう、多分。
そんなこんなで作戦エリアに到着。
今回ここを作戦エリアに選んだのは理由がある。
今回の俺の目的は蟹の実食。
カバーミッションとして討伐任務を選んできているが、仕留めると食べるは両立するので問題はない。
仕留めるのはいつも通りズンバラリンすればいいので懸念は無いが。
問題は仕留めた後の事である。
蟹…もとい、蟹
生食でもしようものなら何に中るか分かったものではない。
なので文明人の知恵である火を通して調理する予定だが。
知っての通り、オラクル細胞で構成されるアラガミの身体に焚火やコンロ程度の加熱などレンチンにすらなりはしない。
求められるのは圧倒的な火力。
"料理は炎"とはよく言ったもの、極東じゃ子供でも知ってる常識だ。
だが悲しい事に俺が用意できる機材ではガスコンロ程度が関の山。
アナグラの調理室を借りれた所でそこまで火力に大きな差は無いだろう。
だが。
あるじゃないかここには。
コンロやクッキングヒーターなど目ではない。
超圧倒的火力を誇る天然の調理場が。
幸運な事に素材の調理法としても適合している。
焼き蟹に茹で蟹と、アーカイブの古い映像で見た時は思わず生唾を飲んだほどだ。
まぁシオはここで泳いだ事があるとも言っていたので本当に火が通るかどうかは疑問だが。
生で食べるのは怖いので、焼けなかった時は素直に諦めるとしよう。
さて、そろそろ作戦開始の時間なんだが。
出発前から気になっている事が一つある。
「………………………」
「………………………」
ミッション受注したら何かルーキーが付いてきた。
いや、何で?
まさかお前も蟹を食べに…そんな訳無いか。
蟹を食べに行くなんて誰にも言っていないしな。
おまけに本物の蟹じゃなくてアラガミだし。
ただ本当にそれが目的だとしても直ぐに分けてやる訳にはいかない。
だってお前は、先に俺に言う事があるだろう?
シオに変な物食べさせるなって言われた事、俺は忘れていないぞ。
古参の神機使い様は執念深いからな。
食べたければ先にごめんなさいをするんだな。
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ミッション開始。
まずは赤蟹…もとい"ボルグ・カムラン"の堕天種である。
まぁこれでも一応古参兵だからな。
これと言って苦戦する相手でもない。
ルーキーの方は…うん、良い感じだ。
ロングブレードだから本来は相性が悪いんだが、新型神機の特性が見事に相性不利を打ち消している。
硬い甲殻はインパルスエッジで破砕し。
関節の継ぎ目はロングブレードで両断する。
第一部隊隊長の実力に疑いの余地無し。
これからは俺も楽をさせてもらえそうだ。
まぁ俺の方が強いけどな。
どっちでも構わないというには俺はまだまだ若過ぎるし。
おっといけない、しょうもない事を考えてたらあっという間にアラガミが死にそうだ。
後輩が強過ぎるというのも考え物だな。
既にルーキーがハサミと前側の足を斬り飛ばしているので。
俺は尻尾と後ろ側の足を仕留めよう。
神機を振りかぶった所でアラガミがテイルスピンの体勢に入る。
わざわざそっちからも勢いを付けてくれるとは有り難い。
回転の始動に合わせて尾の付け根にチャージクラッシュを叩き込む。
一人と一匹分の全力を集中させられたそれはものの見事に両断され、遠心力のままに付け根から先の尻尾が吹っ飛んでいく。
うむ、我ながら思いの外スッパリいったな。
次は足と思っていたが、これなら先に仕留めた方が早そうだ。
狙うは斬り飛ばされて肉と芯が剥き出しになった尻尾の付け根。
そこから一息に神機を突き刺し、やわらかな内側から一気に真下へ神機を押し下げる。
バキリッ、と内側から甲殻が切り開かれる音がした。
神機を引き戻してアラガミを見直すと、よろよろと力なく数歩歩いた後息絶えた。
まずは一匹。
もう少ししたらもう一体来るのでのんびりは出来ないけど。
さぁ、どう調理してくれようか。
焼こうかな?茹でようかな?
あ、でも流石にコイツを茹でるだけの量の水は持っていないな。
もし茹でた方が美味かったらたくさん茹でたいが。
辺りを見回しても当然飲めそうな水溜りなど存在しない。
となると焼き一択か。
悪くは無いがそれだけというのは芸が無いな。
生食は怖いが挑戦すべきか?
しかしそれでお腹を壊しては元も子も…
-グシャリ!-
…グシャリ?
待った、何だ今のグシャリって。
疑問に思ったのも束の間。
見る見るうちに地面に溶け出し、塵と変わっていくアラガミ。
神機使いになって何度も見た、
しまった、油断した。
今日は俺一人じゃなかったんだ。
まだ味見もしていないというのに。
ルーキーめコアを抜きやがったな。
素材は鮮度が命なんだぞちくしょう。
こんなのもう食べられないじゃないか。
溶け切り霧散したアラガミの向こうからルーキーが姿を現す。
「…これは普通のアラガミでしたね。ご馳走様でした。」
澄ました顔しやがってこの野郎。
言うに事欠いてご馳走様と言いやがるか。
神機で捕食したってのに味なんてわかる訳ないだろ。
くそ、せっかく一番蟹っぽかった奴なのに。
まさかこんな結末に終わるとは。
まぁいい。
今回は特別でな、こんな事もあろうかと二体討伐ミッションを選んでいるのだ。
一匹目は蟹っぽさを重視して選んだが。
二匹目はシオから教わった目利きを重視して選んでいる。
シオ曰く、「おいしいのはあまりみかけない」。
要するに美味しい奴はこぞって狙われるので、必然的に数が減るという意味だと解釈した。
つまり、
そしてボルグ・カムラン系統にはとびっきりのSR(スーパーレア)が存在する。
これでも現役特務兵だからな。
その手の情報は最優先かつ秘密裏に回ってくるのだ。
エリアに乱入してくるまであと数分。
悪いが次は譲らんぞルーキー。
あの蟹もどきは、一体どんな味がするのかな?
ルーキーちゃんも特務兵だという事を忘れている無口さん。
追記)
改めて見返したらカムランさんにハサミは無いし、足も四本しかなかった件。
アラガミは進化スピードが速いからという事で一つ。